
【就活生必見!】自動車の業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説します
自動車業界は日本の基幹産業であり、日本経済の中心を担っています。世界中に工場を持ち、世界の自動車市場を席巻している日本の自動車業界は就活生から圧倒的な人気を誇ります。文系・理系を問わずに就活生から人気を誇り、内定者のほとんどが有名私大・旧帝大の学生が集まる、まさに就活最難関業界です。就活で内定をもらうことは容易ではなく、自動車業界について正しく理解し、その上で自分の強みや頑張ったことを、自動車業界でどう活かせるかを具体的にイメージし面接官に伝えることが重要です。この記事では自動車業界の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、自動車業界の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、自動車業界の就活に挑みましょう。
自動車(完成品メーカー)業界とは
この章では自動車業界の
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
- 最新トレンドについて
を解説していきます。
業界構造
ディーラー向け販売
自動車業界は様々な分野があり、複数の会社の協働によって消費者のもとに自動車が届けられます。自動車の完成品メーカーは下請け企業に部品や原材料を発注し、それらを組み立て自動車を完成させます。一般的にトヨタ、ホンダ、日産などの企業は自動車の完成品メーカーに該当します。ピラミッド型と呼ばれる自動車業界ビジネスの頂点に当たるのが自動車の完成品メーカーとなります。
自動車の完成品メーカーは自動車を開発・設計し、総合商社の鉄鋼部門や鉄鋼系の専門商社から必要な素材を調達または自動車部品の供給メーカーから必要な部品を調達します。調達してから、自社の工場や系列の組み立て会社で自動車を製造します。完成した自動車をユーザーと直接の売買契約を締結するディーラーに販売します。このディーラーに自動車を卸した時点で自動車の完成品メーカーに利益が発生します。
自動車の輸出
自動車の輸出は自動車の完成品メーカーにとってもメインビジネスになっています。日本政策投資銀行の「北米における日本の自動車メーカーの動向」によれば、日本の自動車メーカーの輸出比率は40~50%で推移しています。
自動車の輸出の場合には国内のビジネスのようにディーラーが介在せずに、海外にある小会社や輸入・販売代理店へ卸売をします。この時点で自動車メーカーの利益として計上されます。
市場規模・将来性
市場規模
業界動向サーチによれば、2019年の自動車業界の市場規模(主要対象企業9社の売上高の合計)は65兆7,148億円となっており、金融の65.6兆円、総合商社の53.7兆円を凌いで日本の産業全体で3位となっています。
また、海外を見ると、自動車産業は先進国においてGDPの5~10%程度を占める巨大産業です。自動車関連就業者も多く、日本自動車工業会によれば、日本では542万人と日本の全就業人工の8%を占め、世界全体では1,400万人の雇用を生み出しています。世界の市場を見てみると、2005→2010は1.14倍、2010→2015は1.2倍、2015→2019は1.02倍と自動車販売台数が増加傾向にあるものの、最近では自動車産業は停滞しています。
2019年時点で世界の自動車市場は中国が最大の市場であり、世界の自動車の市場規模は中国の景気状況に左右されます。2005年頃には世界自動車販売シェアの10%程度を占めていましたが、今では30%近くになっています。自動車販売台数ベースでの2005→2019年の伸びは、世界全体では1.4倍となっていますが、中国では、4.5倍と急速な伸びを示しています。中国に次いで米国、ヨーロッパとなっています。
2019年は世界最大の市場である中国が米中貿易摩擦の影響を受け、販売台数で前年比8.2%減の2,576万台、生産台数4.2%減の2,576万台となり、世界の販売台数を押し下げる結果となりました。米国やヨーロッパは継続的に横ばいとなっており、中国の市場も鈍化していることから先進国の市場が成熟期に入っています。一方で、インドやASEAN地域では自動車販売ベースでの2005→2019年の伸びは2.4倍になっており、
自動車の完成品メーカー
今後は成長余力のある新興国市場をいかに取り込めるかが各社の成長性のカギとなります。一方、2020年は新型コロナウイルスが世界的に拡大した影響で各国の自動車工場が稼働停止に追い込まれたほか、先進国を中心とした外出規制も影響して、新車販売台数が減少しています。そのため2020年度の新車需要はさらに減少することが予想されています。
不透明な将来性
自動車産業は新型コロナウイルスの影響や消費者の自動車に対しての意識の変化によって、先行きが不透明となっています。新型コロナウイルスの感染拡大によって、自動車市場が急速に冷え込んでおり、サプライチェーンも寸断されています。
世界の自動車市場の牽引役である中国市場では2018年以来3年連続で新車販売台数が落ち込むと予想されています。さらに近年成長が著しいインド市場においても新しい排気ガス規制の導入、自動車保険の負担の増加、金融機関の貸し渋りによって販売台数が落ち込んでいます。
中国に次いで2番目の自動車市場を誇る米国でも新型コロナウイルスの影響で国内消費が落ち込み、自動車販売台数は減少しています。さらに中国、米国に次ぐ3番目の市場であるヨーロッパではCO”排出量の95グラム規制の適用が始まり、この厳しい基準をクリアするためにはコストの高い電気自動車やハイブリット車を生産しなくてはならないため、販売台数の低下が懸念されています。このように世界的に自動車市場が冷え込んでおり、生産台数の減少が業績に与える影響を見極められる状態ではありません。
また、自動車に対する消費者の意識が変化していることも自動車市場の不透明性を増加させている要因です。若者の自動車離れが深刻になり、自動車に対するニーズは確実に落ち込んでいます。
また、これまでのように自動車を「保有」するのではなく、誰かと「共有」し、利用したときに自動車を利用するというスタイルに変化しつつあります。シェアリングエコノミーの台頭によって、自動車の保有台数が減少し、自動車業界の新車販売台数が減少することは確実視されています。
業界の分類
国内大手メーカー
国内資本の大手メーカーです。国内の自動車メーカーは歴史が古く、日本国内において盤石な顧客基盤を持っています。海外進出も積極的に行ない、海外にも子会社を多数有しています。例えば、トヨタ、ホンダ、日産、三菱自動車、ISUZUなどが該当します。
外資系メーカー
主にヨーロッパの外資系自動車メーカーです。外資系も歴史が古く、日本にも多数進出しています。例えば、ダイムラー、アウディ、ボルボ、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンなどが該当します。
米系メーカー
アメリカは自動車市場規模が世界第2位であり、多数の自動車メーカーが存在します。フォードやGMのような歴史の古い自動車メーカーからテスラのようなベンチャー企業まで幅広く存在します。
最新のトレンド
CASE
CASEとは2016年にメルセデス・ベンツが発表した考えであり、Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとったものです。「CASE」と呼ばれる新しい領域で技術革新が進む中、クルマの概念は大きく変わろうとしています。
CASEのCである「コネクテッド」はいわゆる通信機能です。自動車に内蔵された通信機器によって、自動車の状態や交通状況といったデータを収集・分析・共有することで、スムーズで安全な移動を実現しようとする試みです。例えば、交通事故が発生した際に自動で通報してくれるシステムや駐車場の空き情報や高精度の交通情報がわかります。
また、自動車が盗難された際に位置を特定したり、故障が発生すると、自動で通報してくれるシステムなどです。さらに身近なところではクルマの中で映画や音楽などのエンターテインメントが、今よりもさらに楽しめるようになります。これらは5Gなどモバイル通信の高速化や自動車の通信インフラの向上によって、交通安全と娯楽を楽しむための技術です。
将来的に自動運転の自動車が実用化されると通信×自動運転で新しいサービスが生まれることが期待されています。
CASEのAである「自動運転」は文字通り自動で自動車を走らせる技術です。自動運転は性能に応じて、5つのレベルに分けることができます。
- レベル1(運転支援):システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかを部分的に行う。
- レベル2(部分運転自動化):システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作の両方を部分的に行う。渋滞時にドライバーの疲労を軽減できる。
- レベル3(条件付運転自動化):決められた条件下で、全ての運転操作を自動化。ただし運転自動化システム作動中も、システムからの要請でドライバーはいつでも運転に戻れなければならない。高速道路など特定の場所で全ての操作を自動化でき、ドライバーは運転から解放される。
- レベル4(高度運転自動化):決められた条件下で、全ての運転操作を自動化。
- レベル5(完全運転自動化):条件なく、全ての運転操作を自動化。
日本では2020年に道路交通法が改正され、レベル3の自動車が公道でも高速道路など特定の場所で走行できるようになりました。これを受け、国内のある自動車メーカーが2020年度内にレベル3の量産車を市場に投入すると発表しています。現在の段階では衝突被害軽減自動ブレーキや全車速追従機能、車線キープのステアリングアシストなどの機能に留まっています。
CASEのSである「シェアリング」には「カーシェアリング」と「ライドシェア」があります。「カーシェアリング」とは個人や事業者が必要のないときに自動車を貸し出すサービスであり、レンタカー会社やコインパーキング会社が参入しています。
「ライドシェア」とは複数の所有者で1つの自動車を共同所有するという使い方であり、日本では法律上事業を展開できませんが、海外では急速に普及しています。実際に関西のある地方自治体では過疎化や少子高齢化を理由としてライドシェアを実施しています。以前は自動車は個人が買って利用するという「所有」が一般的でしたが、今ではカーシェアリングやライドシェアのように「共有」するという使い方が普及しつつあります。このようにより便利でコストのかからない自動車の使い方が模索されています。
CASEのEである「電動化」はハイブリッドや電気自動車など自動車の未来に欠かせない要素です。地球の環境問題対策として世界が脱炭素化を目指す中でハイブリッド化や電気自動車は急速に増えています。
例えば、最大の自動車市場である中国は将来的にガソリン車を禁止する方針を決定しています。また、ヨーロッパでもイギリスやフランスが2040年までにガソリン車、ディーゼル車の販売を禁止する方針を発表しています。今後このような各国の規制は広がっていくと見られ、自動車メーカーもハイブリッド車や電気自動車の開発に力を入れています。日本国内でも同様で、2019年に約2万1000台だった電気自動車の販売台数は、今後増加していく見込みです。
テスラ
テスラはアメリカのシリコンバレーであるカリフォルニア州パロアルトに拠点を置く自動車メーカーであり、2003年に設立されたベンチャー企業でありながら今最も注目を集めいている自動車メーカーでもあります。トヨタやフォルクスワーゲンなど歴史のある企業がひしめき合う自動車業界でデスラは異質な存在と言えます。
テスラは自動車メーカーであると同時に電動輸送機器やクリーンエネルギー関連産業にも進出するなど様々な事業を展開しています。電気自動車のほかに家庭用のバッテリー電動輸送機器、ソーラーパネルなど様々なサービスを提供していますが、やはり最も力を入れているのは電気自動車です。
富士経済の調査によると電気自動車の市場規模は2018年から2035年にかけて新車販売台数が16.9倍になると予想されており、世界市場の拡大が見込まれています。歴史のある自動車メーカーもこぞって電気自動車の開発に力を入れていますが、デスラは電気自動車に特化しており、今後市場で高いシェアを獲得する可能性があります。
テスラは2018年に新車販売台数24万5,240台を記録し、2020年には49万9,550台と急速に販売台数を増やしています。毎年、30~50%程度世界自動車販売台数を増やしており、今後はさらなるシェアを占めるメーカーになることが期待されています。
すでにテスラが拠点を置くカリフォルニアではトヨタ・ホンダ・フォード・シボレー・日産に次いで6番目に新規登録販売台数が多いメーカーとなっています。
MaaS
Maasとは”Mobility as a Service”の略称です。2017年にMaaS構築に向けた共通基盤を作り出す公民連携団体「MaaS Alliance」の定義によれば、“Mobility as a Service (MaaS) constitutes the integration of various forms of transport services into a single mobility service accessible on demand.”とされています。これを和訳すると「Movility as a Service(MaaS)とは、いろいろな形式の移動サービスをひとつの交通手段として統合させたもの」となります。つまりは、バスや電車、タクシー、自動車、フェリーなど様々なモビリティサービスや交通手段による異動を1つのサービスに統合し、より便利な移動を実現、ルート検索から支払いまでをシームレスにつなぐ仕組みです。
さらに分かりやすくいえば、現在私たちがどこかに移動する際に地図アプリなどで行きたい場所へのルートを検索して、交通機関の専用サイトでチケットの予約や支払いをし、空港や駅から目的地までのタクシーをまた電話で予約するといった具合にそれぞれの移動手段ごとに違うサービスを使っていますが、MaaSの仕組みを利用すれば、スマホのアプリ一つでこれらすべての工程を完結させることができます。
しかも、MaaSの場合、鉄道やバスだけでなく、タクシー、シェアサイクル、カーシェア、ライドシェアなどあらゆる交通手段が対象となりますので、自宅から目的地までドア・トゥ・ドアの移動がスムーズ、かつ安価にできるようになります。
このMaaSの仕組みを利用することで個人の利便性の向上だけではなく、都市部の交通渋滞の緩和やCO2排出量の削減、駐車場を緑地に変えるなど大気汚染対策ができるようになります。
自動車も当然、MaaSの一翼を担い、例えば、自動車以外に交通手段のない過疎地域などでも自動運転タクシーや自動運転バスなどを効率よく運行させることで、安価で確実な公共交通機関を利用できるようになります。まさに少子高齢化・地方の過疎化が進む日本において、MaaSは非常に有用なシステムとなる可能性を秘めています。