
【就活生必見】ビールの業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
ビール業界は学生からの認知度も高く、有名企業が多いので、文系・理系を問わず学生から根強い人気を誇ります。食品関連志望の学生であれば、多くの学生が一度は就活候補に入れ、そして内定者のほとんどが有名私大・旧帝大の学生が集まる、就活難易度の高い業界です。なので大切なことは、ビール業界についてどれだけ正しく理解し、その上で自分の強みや頑張ったことをビール業界でどう活かせるかを具体的にイメージし面接官に伝えることが重要です。この記事ではビール業界の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、ビール業界の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、ビール業界の就活に挑みましょう。
ビール業界とは
この章ではビール業界の
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
- 最新トレンド
について解説していきます。
関連記事
▶︎【業界研究のやり方】効果的な調査方法とは?
業界構造
ビールの製造・販売
ビール商品を企画、開発したうえで必要な原材料を仕入れいます。ビール製造の過程で必要となる麦やホップなどの原材料は大手メーカーであれば、自社で国内や海外から直接買付を行っています。
買い付けの際には品質や原産国などにこだわって自社に最適の原材料を見つける必要があります。品質の安定化のために自社と契約している農家に対して栽培方法を指導することもあるようです。自社で原材料の倉庫を持たない場合には第一次産業で栽培された麦やホップを商社が買い付け、ビールメーカーに販売しています。こうして自社が調達または商社から仕入れた原材料を加工し、ビールの商品を製造します。
一般的には原材料を発酵させ、貯酒することによってビールが製造されます。ビールが完成し、商品になったら、直接消費者に販売するわけではなく、スーパーやコンビニなどの食品小売店や、居酒屋などの飲食店へ販売されます。
全国の消費者はこれらの食品小売店や飲食店を通じてビールを購入することになります。消費者への広告宣伝活動として、テレビCM を中心としてブランド及び商品の認知度の拡大に努めます。
小売店への提案営業
ビールメーカーは小売店や飲食店にビールを販売するだけではありません。もちろん、飲食店や居酒屋などへの売り込み活動も重要ですが、大事なのはこれら小売店や飲食店でビールが購入されることです。そのため、小売店においては「売れ筋商品」「おすすめ商品」として目の届きやすい高い棚の大きなスペースを長期間確保することが必要です。
取引先へ自社の商品を売り込み、棚を確保するための交渉を行ない、実際に売り場に赴いて、売場づくりの提案を行ないます。特に有力店で自社商品を扱ってもらうことの広告宣伝効果が高いため、小売店側に有利な価格交渉や丁寧なサポートを行って、自社商品を扱ってもらえるように営業をかけます。
具体的には店舗での商品の宣伝方法のアドバイスや飲食店でのドリンクの組み合わせや飲み方の提案などきめ細かく、地に足のついて営業活動を実施します。
市場規模・将来性(シンクタンクのレポートなどを)
市場規模
2019年のビール業界の市場規模(主要対象企業4社の売上高の合計)は3兆2,565億円となりました。これはピーク時の1994年の約7割程度となっており、ビール業界は縮小傾向にあります。
ビールの出荷量ベースでもピーク時の1994年の5億7,200万ケースと比較すると現在は約4億ケースと徐々に減少しており、出荷量は14年連続で過去最低を記録しています。ビール業界の市場規模は1990年半ばをピークに横ばい状態となり、2000年代には縮小に転じ、その後継続して市場が縮小しています。
「ビール離れ」が指摘されて久しいですが、まさにそれを裏付けるデータになっています。ビール業界の市場規模が縮小する背景にはいくつかの要因があります。
1つ目は若者のビール離れです。ビール消費量はこれまで若者が牽引してきましたが、近年では「とりあえずビール」という発想が薄れつつあります。また、企業を取り巻くコンプライアンスが厳しくなり、飲み会の席でも個人を尊重しようという動きが広がり、ビールの消費量は低下しています。
2つ目は消費者の節約志向です。日本経済はバブル崩壊以降、一貫してデフレ不況にあり、消費者の間には節約志向が強くなっています。特にビール需要の高い40代、50代が増税や社会保険料負担の増加、老後生活への不安を背景として消費を抑制し、ビールより低価格の缶チューハイなどに購買が移行しています。
2000年以降はデフレを反映して、ビールより価格が安い「発泡酒」が販売を伸ばし、2003年にはより低価格の「第3のビール」が登場しました。
3つ目は消費者の嗜好の多様化です。以前は「お酒と言えばビール」という風潮がありましたが、ビール以外にもワインやリキュールなども台頭しています。キリンの調査によれば、2014年以降、ワインの国内消費量は3年連続で増加傾向にあります。特に2012年頃から低価格輸入ワインの市場が拡大しており、20世紀末以来のワインブームが起きていると言われています。
業界の将来性
ビール業界は若者のビール離れ、消費者の節約志向・嗜好の多様化によって、需要が低迷しているのが現状です。したがって、国内のビール需要の急激な回復は望めず今後も徐々に縮小することが予想されます。
しかし、2026年に酒税法が改正される予定となっており、これまで酒類の区分によってばらつきのあった酒税が一本化されます。これによってビール価格が実質的に値下げされます。また、ビールメーカーを中心とした大型のM&Aなどビール業界は新たな動きが活発になっています。
確かにビール業界は縮小傾向にありますが、決算では各社とも順調に成長しており、今後はビールや他の酒類とともにビールメーカーは成長していくことが予想されます。
業界の分類
大手5社
日本国内のビール業界では、大手のビールメーカー上位4社が市場シェアのほとんどを握っています。一般的にこの4社とはアサヒ、キリン、サントリー、サッポロを指します。また、オリオンビールを加えて大手5社と呼ぶこともあります。
地ビールメーカー
日本ではそれまで酒税法によりビールの生産及び販売は大手メーカーにのみ事実上認められていました。しかし、1994年に酒税法が改正され、小規模事業者であってもビール事業に参入できるようになりました。この規制緩和により、全国各地に誕生した少量生産のビールメーカーが「地ビール」です。
日本全国に何百という会社が地ビールを製造しています。代表的なメーカーとしては新潟県のエチゴビール、茨城県の木内酒造、岩手県のベアレン醸造所などがあります。
トレンド
海外展開
人口減少やビール離れの影響を受けて、国内のビール消費量の低迷が続く中で大手ビールメーカーは海外に新たな市場を求めています。特に人口増加や経済成長の著しい東南アジアへ進出を図っており、各社とも海外販売は堅調に推移しています。
大手メーカーの動きを見てみるとアサヒグループは2016~2017年の間にイギリスやチェコ、中央・東ヨーロッパなど5カ国の現地企業を買収しています。また、2020年6月にはオーストラリアのビール最大手であるカールトン&ユナイテッドブリュワリーズ(CUB)の買収完了しました。
キリンは東南アジアやオセアニア地域を中心に海外展開を進めています。2015年にはミャンマーのビール最大手ミャンマー・ブルワリーを買収し、今後も東南アジアで攻勢をかけることが予想されます。また、ヨーロッパへも進出し、クラフトビール市場の強化を図っています。
サントリーはアジア及び北米を中心に海外展開を進め、現在では海外売上高の約8割をアメリカ、台湾、香港が占めています。
サッポロビールは欧米、アジア、アフリカ、オセアニア地域と幅広く展開しており、進出している国は45に上ります。
新型コロナウイルスの影響
新型コロナウイルスの影響を受けた外出規制により宅飲み需要が増加し、ビール業界には追い風となっています。しかし、一方でこれまでビールを販売していた飲食店の多くが倒産に追い込まれ、多くのイベントも中止に追い込まれました。
結果として、飲食店で提供される業務用ビールやイベントで用いられる業務用ビールを販売することができず、大きく売上を落とすこととなりました。
今後も飲食店の倒産件数は増加することが予想され、これまでビールメーカーの取引先であった飲食店の倒産はビール業界にとって長期的な収益ダウンになる可能性があります。