
【就活生必見】食肉加工の業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
食肉加工業界は就活生にとって身近な存在であり、誰もが一度は商品を手にしたことがあると思います。圧倒的な知名度ゆえに志望する学生も多く、倍率も決して低くありません。したがって、内定を獲得することは容易ではなく、食肉加工業界のビジネスモデルや商流、業務内容などについて理解を深めることが必要です。その上で自分の強みや頑張ったことを、食肉加工業界でどう活かせるかを具体的にイメージし面接官に伝えることが重要です。この記事では食肉加工業界の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、食肉加工業界の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、食肉加工業界の就活に挑みましょう。
食肉加工業界とは
この章では食肉加工業界の以下の内容について、解説していきます。
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
- 最新トレンドについて
ぜひ、業界研究の参考にしてみてください。
関連記事
▶︎【業界研究のやり方】効果的な調査方法を詳しく紹介します!
業界構造
食肉の輸入・加工
食肉加工業界のビジネスモデルはBtoBビジネスです。
専門商社や食品卸売業から仕入れた食肉を自社の工場で加工して、スーパーやコンビニエンスストアなどの小売店、レストランなどの外食業者、学校や職場などの給食業者に販売することで収益を上げています。
直接、小売店や外食業者に販売されるわけではなく、食品加工メーカーと販売先との間に食品卸売業者や流通メーカーを介します。
したがって、商流としてはの食肉加工メーカー→食品卸売業者→販売先という流れが一般的な商流であり、販売先から最終的に消費者のもとに届けられます。食品卸売業者を介する場合には中間マージンが発生するため、最終価格が高くなってしまいますが、食肉加工のメーカーが個別の販売先に大量の品種の食肉加工商品を少量で納品するのは非効率であるので、食品卸売業者を介するのです。
一方で、中間マージンを排除して最終価格を下げるために食肉加工のメーカーと販売先との間で直接取引契約を締結する場合もあります。
食肉加工の原材料は言うまでもなく食肉ですが、農林水産省によれば、日本の食肉の自給率は数量べースで51%となっています。
品目別で見ると、牛肉36%、豚肉48%、鶏肉64%です。
カロリーベースではさらに低下し、15.2%です。
したがって、原材料となる食肉の多くを輸入に頼っています。
国産にこだわったブランドもありますが、スーパーやコンビニエンスストアなどで一般的に流通している食肉の多くは海外から輸入され、国内の工場で加工されています。
これらの原材料は自社の調達部門によって行われることもありますが、一般的には専門商社や食品卸売業を通じて仕入れます。
日本の輸入牛肉のシェアの9割はアメリカとオーストラリアが占めていますが、卸売価格は世界の需要動向や天候の状況、為替動向の影響を受けます。
最近では、世界的な異常気象の中で食肉の餌となっている牧草が育たず供給量が減少し、価格が高騰しています。
しかし、原材料のコスト増を販売価格に転嫁すると消費者の心境に悪影響を与え、競合他社との価格差が開くことによって販売数量の減少に直結します。
したがって、原材料である食肉の調達コストが上がって、製造原価が高くなったとしても、販売価格に反映することが難しいという特徴があります。
加工した食肉は食品卸売業者や流通業者に販売されて終わりではありません。
各社はスーパーやコンビニエンスストアなどの小売店への提案営業を行っています。
提案営業とは自社の製品を売れ筋商品として、店舗の見やすい高い棚に大きく、場所を確保し、かつ長期間店頭に置いてもらうための営業活動です。
輸出
和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことによって、世界中で日本食や日本の食事文化が人気を集めています。
このことを食肉加工業界にとってもプラスです。
農林水産省は2030年の食肉輸出目標を牛肉3,600億円、豚肉60億円、鶏肉100億円としていますが、目標達成のために食肉だけではなく、輸出の伸びが見込める食肉加工品の輸出を推進していく必要があるとしています。
このために農林水産省に「食肉加工品輸出部会」が設立され、オールジャパンで戦略的に食肉加工品の輸出拡大に取り組んでいます。
市場規模・将来性
市場規模
業界動向リサーチによれば、2020年-2021年の食肉業界の市場規模(主要対象企業9社の売上高の合計)は3兆4,382億円となっています。
「日経業界分析レポート」によれば、食肉加工品は弁当・簡便商材としての需要が安定しています。
また、牛肉などの代替品として、今後も一定の需要が予想されます。
日本ハム・ソーセージ工業協同組合によると、2020年の食肉加工品の国内生産量は前年比0.2%減の54万9,823トンとなり、内訳はソーセージ類が前年比0.4%増の31万8,239トン、ハム類(プレスハム類除く)は0.2%減の11万2,340トン、ベーコン類は1.2%増の9万8,137トン、プレスハム類は13.3%減の2万1,107トンでした。
働く女性が増え手軽に使える素材としての需要や、個食の広がりによる“家飲み”のおつまみ需要が下支えしていますが、最近では頭打ち傾向にあります。
長期的には人口減少の影響を受け、ハム・ソーセージ市場は縮小しています。
主力商品の競争が激化し、物流コストや人件費などの負担も大きいです。
食肉、調味料、羊腸など原料や飼料も高騰し、メーカーの収益は圧迫されています。
大手が利益を削ってもシェア拡大を目指す中、中小各社は苦境に立たされています。
続いて、原材料である食肉の市場規模について見ていきましょう。
農林水産省の食糧需給表によると、2019年度の肉類生産量(枝肉ベース)は前年度比1.0%増の340万トンで、内訳は牛肉が1.1%減の47万トン、豚肉が0.6%増の129万トン、鶏肉が2.1%増の163万トンとなっています。
牛肉生産量は20年前と比べ10%程度減少しました。
繁殖用の雌牛を育てる農家は小規模で高齢化が進んで減少し、JAは増産対策として農家の規模拡大を進めています。
2019年の輸入量は牛肉が前年比1.3%増の62万トン、豚肉が3.7%増の96万トン、鶏肉が0.5%増の56万トンとなりました。
牛肉輸入はオーストラリアと米国で全体の88%を占めています。
豚肉輸入は米国とカナダで5割を占めましたが、ブランド豚のイベリコ豚の人気が高まりスペイン産が伸びていいます。
鶏肉はブラジルの大規模ストライキの影響で輸入が伸び悩んでいます。
2020年の鶏卵生産量は前年比0.3%減の263万トンでした。
鶏卵は価格上昇→供給増→価格下落→供給減という数年周期のサイクルになっています。
鶏卵の殻を割って中身を取り出したのが液卵で、外食業界の需要が拡大していいます。
液卵生産大手のイフジ産業の推定では液卵の市場規模は年間約45万トンです。
続いて輸出について見ていきましょう。
財務省の貿易統計によると、2020年の輸出額は牛肉が前年比2.7%減の289億円、豚肉は55.0%増の18億円、鶏肉は6.3%増の21億円でした。
鶏卵は2.1倍の46億円に急増しています。
輸出先の9割強を占める香港では、コロナ禍による外出制限や中国の「香港国家安全維持法」への反対デモの影響で閉じた飲食店が多く、内食需要が高まりました。
衛生面で安全性の高い日本産の卵の生食も消費者に普及しました。
政府は2020年12月に決定した輸出拡大実行戦略で、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵を重点品目に位置づけ、輸出産地の育成や加工・流通施設の整備などが必要としています。
2025年に牛肉は2019年比5.4倍、鶏卵は2.7倍の輸出を目標としています。
将来性
調査会社の360マーケットアップデーツによると、2021年の食肉加工業界の市場規模は3590億ドルであり、2026年にかけて年平均3.4%での成長が見込まれます。
調査会社のフォーチュンビジネスインサイトによると、2019年の同市場規模は5194億ドルです。
矢野経済研究所によれば、2020年度については、コロナ禍により好調なカテゴリーもあるものの、市場全体で見ると経済面の不安もあり、微減で推移するとみられています。
特に、外出自粛により外食産業向けの業務用食品は需要が大きく落ち込んでいます。
また、在宅勤務が進みオフィスワーカーの行動が変わったことで、コンビニエンスストアは苦戦を強いられており、コンビニエンスストアにおける販売がメインの商材(ポケット菓子、ガム、錠菓など)は不調になる等の動きがあります。
中長期的にみれば、高齢化社会の進行や少人数世帯の増加により、健康食品市場や高齢者対応食品市場が拡大し、個食タイプの商品群が伸長し、調理の簡便化志向が強まる中で調理食品市場などが堅調に推移する見通しです。
同研究所は2024年度の国内加工食品市場は、メーカー出荷金額ベースで30兆1,653億円になると予測しています。
業界の分類
明確な定義はありませんが、食肉加工業界を代表する企業としては伊藤ハム米久ホールディングス、日本ハム、プリマハム、丸大食品などが挙げられます。
特にハム・ソーセージについては、この4社で市場の7割を占めています。
最新のトレンド
堅調な肉類消費量
食肉業界の過去11年間の推移を見てみると、2007年から13年までは横ばい、2013年から19年にかけて増加に転じています。
近年は比較的安定した増加傾向にあります。
農林水産省の食料需給表によると、2019年の肉類の国内消費仕向量は前年比0.1%増の655.3万トンでした。
近年は増加傾向にありましたが、2019年は横ばいで推移しています。
品目別では、牛肉が前年比0.6%増の133.9万トン、豚肉が0.8%減の262.3万トン、鶏肉が1.0%増の253.7万トンでした。
現在、豚肉の消費量がトップですが、最近では鶏肉の消費量が伸びており、近いうちに逆転する可能性も出ています。
鶏肉が伸びている背景としては、消費者の健康志向が挙げられます。
とくに「鶏むね肉」の人気が高く、コンビニ大手のセブン-イレブンから発売された「サラダチキン」は大ヒットを記録しました。
業界内に目を向けると、総合大手の日本ハムは食肉が強く、2位となる伊東ハム米久HDは加工品となるハム・ソーセージで首位を誇ります。
食肉業界においては、若者のみならず高齢者も食肉に慣れ浸しんできた世代であるため、需要は堅調に推移しています。
新型コロナウイルスの影響
新型コロナウイルスの影響は食肉加工業界にも及んでいます。
ネガティブな影響としては緊急事態宣言の発令や外出自粛によって外食の機会が減少し、業務用の加工食品の需要が低迷しています。
一方で、巣ごもり需要の増加によって家庭用の加工食品の需要は伸びています。
2021年もこのトレンドは継続すると見られています。
高齢者や共働き世帯の需要が堅調
国内の食肉需要はしばらく続くと見られています。
少子高齢化や人口減少傾向ではありますが、最近の高齢者は「肉に慣れ親しんだ時代」。
食肉の需要はしばらくは堅調と見られています。
肉単体の需要も増加傾向にありますが、近年注目を浴びているのが「惣菜分野」。
共働き世帯や単身世帯の増加で「食の簡便化」が求められており、簡単に食べられる惣菜のニーズが伸びてきています。
また、近年の健康志向の高まりにより、減塩や糖質ゼロのハムやソーセージ、ベーコン、サラダチキンなどのニーズも高まっています。
食肉各社もこうした需要をとらえるべく、機能性を重視した商品の開発に力を入れています。
一方で、ハムやソーセージは、原材料費や人件費、物流費などのコストの増加が収益を圧迫しています。
また、こうしたコストを各社価格に転嫁できずにいる状態です。
今後さらなるコストの増加や消費税増税によって、値上げは必須になると予想されます。