
【就活生必見】清涼飲料業界の研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
清涼飲料業界は人々の生活と密接に関わっている業界であり、学生の間でも圧倒的な知名度を誇っています。総合商社やデベロッパーほどの人気はないものの採用人数が決して多くないので、就活の難易度が高くなりがちです。多くの学生のなかから競争に勝って内定をもらうためには清涼飲料業界について正しく理解し、その上で自分の強みや頑張ったことを、清涼飲料業界でどう活かせるかを具体的にイメージし面接官に伝えることが重要です。この記事では清涼飲料業界の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、清涼飲料業界の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、清涼飲料業界の就活に挑みましょう。
清涼飲料業界とは
この章では清涼飲料業界
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
- 最新トレンドについて
解説していきます。
業界構造
飲料の製造・販売
清涼飲料業界でのビジネスモデルとしては簡単に言えば飲料の製造・販売です。ビジネスの出発点は商品開発です。まずは飲料の新商品や既存商品の改善などを企画します。
商品開発が完了すると、原材料を国内外から仕入れます。原材料は自社で仕入れる場合もありますが、商社や卸売業者から調達するのが一般的です。原材料を調達したら、自社の工場で加工し、商品を製造します。
製造された商品は直接消費者のもとに届けられるわけではなく、自社の販売会社や販売部門を経由して食品もしくは飲料の卸売業者に販売されます。飲料の卸売業者はスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店に飲料を販売し、小売店でエンドユーザーである消費者のもとに届けられます。このような飲料の販売ルートを一般的に「手売り」と呼んでいます。
しかし、飲料メーカーは卸売業者に飲料を販売して終わりではありません。自社の商品が小売店で消費者のもとに届けられるかどうかを見届ける必要があります。そこで必要になるのが小売店への提案営業です。ここでいう提案営業とは小売店で自社の商品をより視認性の高い位置の高い棚に置いてもらえるように交渉することです。
価格の提案やPOPなどの店頭販売の促進策も飲料メーカーから提案します。このようにして自社の製品が「売れ筋商品」「イチオシ商品」として店頭で消費者の目が届きやすい位置に置いてもらえるように交渉するのです。
また、外食チェーンや居酒屋などへの販売も大事なビジネスです。販売先としてはファミレスのドリンクバー、ファーストフード店のドリンクメニュー、居酒屋やバー、クラブなどです。これらの販売先に自社製品を扱ってもらえるように交渉をします。具体的には店側に有利な価格の設定や販売のサポートなどを行って、できるだけ自社の製品の割合が大きくなるように交渉するのです。
さらに小売店や外食チェーンなどで自社製品が売れるようにCMなどの広告を売って、知名度を上げて、宣伝活動を行ないます。
清涼飲料水はスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ファストフード店での手売りの他に自動販売機という独特の販売チャネルがあります。飲料総研の調査によると、数量ベースで飲料の35%が自販機で販売されています。
自動販売機での販売にはさらに2つの販売方法があります。1つ目は自社の自動販売機で販売する方法で、自動販売機の設置、商品の補給を自社または自社の子会社が行ないます。2つ目は自動販売機の独立系のオペレーターを通じて販売する方法で、この場合には自動販売機に自社製品以外にも多くの飲料が販売されています。
実際には自社設置の自動販売機の割合が40%程度に上ると言われており、その設置数は約230万台です。自動販売機の台数は微増傾向にありますが、すでに設置場所は飽和しており、多くの飲料メーカーが場所取り競争を繰り広げています。
飲料メーカーにとって、自販機は最も大切な販売チャネルであると言われており、その理由は大きく2つあります。
1つ目は定価販売であり、手売りよりも高い価格で販売できることです。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店での手売りの場合は価格競争の影響を受けて飲料の販売価格が値崩れを起こしています。自動販売機で150円で販売している飲料がスーパーマーケットでは100円未満で売られていることも珍しくありません。
価格の決定権は小売店の側にあり、販売価格がディスカウントされると、飲料メーカーに対して卸値の値下げ圧力がかかります。自社製品の設置場所を確保したい飲料メーカーとしては値下げ交渉に応じるしか無く、値下げの分だけ収益が圧迫されます。
飲料の販売は基本的には薄利多売ですので、数十円の値下げが大きな打撃となります。しかし、自動販売機ではこのようなディ スカウントは行われないので高い粗利率を確保することができ、収益も安定したものになります。
2つ目はマイチャネルであるために販売の主導権を握れるという点です。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店での手売りではいくら広告宣伝費をかけても視認性の高い売り場を確保できなければ商品が売れません。消費者の目が届きやすい高い棚に商品を並べるためには小売店との交渉が必要となりますが、場所の確保のために価格の値下げに応じなければならない場合もあります。
また、成約して、視認性の高い場所を獲得しても3ヶ月程度で売上が伸びなければ商品カットされ、新商品の棚から消えていきます。一方で自動販売機であれば、飲料メーカーが自由に売り場を作り上げることができます。
たとえ、最初の3ヶ月間の売上が低迷していても商品カットはないので、気長に新商品を育成することができます。実際に缶コーヒーなど自販機から生まれたヒット商品も数多くあります。
市場規模・将来性
市場規模
2019年から2020年にかけての清涼飲料業界の市場規模は主要対象企業14社の売上高の合計ベースで4兆6,574億円となっています。また、富士経済の調査によれば数量ベースでの清涼飲料業界の市場規模は2019年は2,594万キロリットル(前年比△0.8%)、2020年は2,484万キロリットル(前年比△4.2%)と2年連続減少しました。さらに株式会社矢野経済研究所の調査によれば、清涼飲料業界の出荷金額ベースで5兆1,000億円(前年比△1.5%)と5年振りに前年度実績を下回りました。
市場規模の縮小の要因は2つあると考えらています。1つ目は春先から夏にかけて、物流費や包装材の値上げによって清涼飲料メーカーが大容量PET容器製品の廉価販売是正のために実施した価格の改定によって消費者マインドが悪化したことです。2つ目は2018年が記録的な猛暑となったのに対して、2019年は2018年の反動減及び冷夏となったことで飲料需要が低下したことです。
さらに品目別の需要の増減について見ていくと果実・野菜飲料4484憶円(前年比△114億円)、炭酸飲料5512憶円(前年比△125憶円)、乳性飲料1兆1262憶円(前年比△81億円)、コーヒー飲料8547億円(前年比△128憶円)、茶系飲料1兆1033億円(前年比+405億円)、ミネラルウォータ類3527憶円(前年比△94億円)と対前年比で売上が減少した品目が圧倒的に多い中で、エナジードリンクなどの機能性飲料が6406億円(前年比+169億円)となりました。
2020年の見込みとしては無糖炭酸飲料と野菜系飲料が一転して前年比でプラスになると予想されています。野菜系飲料は、家庭内需要の伸びに加え、新型コロナウイルスの感染が拡がるなか「健康飲料」としての需要が増えているためで、無糖炭酸飲料は、好調を続ける「ウィルキンソン」(アサヒ飲料)」が牽引しているためです。
将来性
清涼飲料業界は季節や天候の要因によって売上が増減しますが、毎年売上は比較的安定しており、将来性のある業界のようにも思えます。しかし、一方で将来性についての不安要素もあります。それが人口減少と少子高齢化です。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、日本の総人口は2008年をピークに減少に転じており、2010年に約1億2800万人だった日本の人口は、2030年には1億1600万人、2050年には日本の総人口は1億人を下回ることが予測されています。国全体として胃袋が縮小するので、国内市場の縮小は避けられない状況となっています。
また、コンビニエンスストアのコーヒーが普及したことで缶コーヒーの売上も減少しているほか、消費者の健康志向が強くなりコーラやサイダーなど従来は人気を誇っていた炭酸飲料の消費量も減少しています。
このような状況の中で各社が注力しているのが新商品の開発と海外進出です。しかし、新商品の開発については清涼飲料業界は既に成熟産業であり、多くの新商品が毎年発売されているほか、古くから人気を集めてきた定番商品も多く、新商品が消費者から人気を得るのはなかなか難しい現状があります。
したがって、実際に残された選択肢は海外進出となります。特に人口増加や経済成長の著しいアジアにおいて活路を見出そうと海外メーカーと業務提携をしたり、M&Aによる事業拡大を図るケースもあります。今後も清涼飲料メーカーが積極的にグローバルビジネスに乗り出していく構図は変わらないものと見られています。
業界の分類
ビール系飲料メーカー
ビール系飲料メーカーはビール等のアルコール類の販売を主要事業としています。清涼飲料の販売も行っており、例としてアサヒ、サントリー、キリンなどがあります。
海外ミネラルウォーター
海外ミネラルウォーターは外資系の清涼飲料メーカーであり、主にミネラルウォーターの販売を行っています。例として、ボルビックやエビアン、フィジーウォーターなどがあります。
清涼飲料メーカー
こちらはお茶などの清涼飲料を主力事業としている清涼飲料メーカーです。例として、伊藤園、ヤクルト、日本コカ・コーラなどがあります。
最新のトレンド
5年ぶりに市場縮小
株式会社矢野経済研究所の調査によれば、清涼飲料業界の出荷金額の合計は前年比マイナス1.5%、金額にして約20億円のマイナスである5兆1,000億円と5年振りに前年度実績を下回りました。清涼飲料業界の主要企業の販売額の合計や数量ベースでみても前年比マイナスとなっています。
2018年には記録的な猛暑と成ったことにより、清涼飲料業界の販売学が過去最高を記録し、特に「お茶類」や「ミネラルウォーター」、「スポーツドリンク」などの売上は大幅に増加していました。2019年はその反動減もありますが、冷夏となったほか廉価販売是正のために大型ペットボトルの値上げが行われ、販売金額・生産量が減少しましした。
清涼飲料の品目別に生産販売量を見てみると、お茶類が最も大きいウエイトを占め、全体の約30%に相当します。次いで、「炭酸飲料」、「ミネラルウォーター類」、「コーヒー飲料等」、「果実飲料等」となっています。このうち、炭酸飲料は消費者の健康志向が強くなり消費量も減少していますが、紅茶飲料やエナジードリンクなどは大きく伸びています。
新型コロナウイルスによる需要の変化
2020年に入り新型コロナウイルスの感染拡大が本格化して、人々の生活様式に変化が見られましたが、清涼飲料業界にはどのような影響があったのでしょうか?
まず影響を受けたのは自動販売機での販売チャネルです。外出自粛や在宅勤務の広がりによって、自動販売機での販売量が減少しました。自動販売機はスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店と異なり、清涼飲料メーカーが自由に価格や商品構成を決定できるので、粗利率が高く大きな収益源となってきました。
自動販売機での売上高は従来、各社のアルコールを除いた飲料事業の営業利益の6~7割を占めるとされています。自動販売機の飲料販売はコンビニエンスストアに利用者が流れるという構図があっただけに追い打ちをかける形で苦しんでいます。飲料総研の調査によれば、2020年6月の清涼飲料メーカーの自動販売機での飲料の販売額は前年同期比△13%と過去最大の落ち幅を記録しました。
また、自動販売機だけではなく、コンビニエンスストアでの飲料の販売も落ち込みました。外出自粛によって、人々がスーパーマーケットで買いだめをするようになり、手軽に足を運べるコンビニエンスストアの利用者が減少したことで飲料の販売も落ち込みました。
一方で売上を伸ばしているのが、ネット通販です。緊急事態宣言発令後に買い物のための外出を控える動きが広がったほか、小売店が時短営業や営業自粛に踏み切ったことでネット通販の需要が増大しました。
総務省の「家計消費状況調査」によれば、2020年5月には、ネットショッピング利用世帯が2002年の調査開始以来初めて、全体の50%を突破しました。さらに2020年10月には前年同月比8.8ポイント増の50.9%に達しています。飲料の通販需要も増えており、今後は主要なチャネルに可能性を秘めています。
さらに外出自粛や在宅勤務で自宅で過ごす時間が増えたことで、単価の高い小型ペットボトルの販売量が減少し、家庭内需要の増加によって大型ペットボトルの販売量が増えています。
業界再編の動き
国内の清涼飲料業界ではコカ・コーラ、サントリー、キリン、ボルビック、エビアンなど多くの清涼飲料メーカーが激しい競争を繰り広げています。このような競合他社との経営競争や少子高齢化などで市場の成長が見込めない中で経営基盤の強化を目的に統合や合併の動きが出ています。
2015年7月にサントリー食品インターナショナルが日本たばこ産業(JT)の自動販売機事業を買収すると発表しました。同時に缶コーヒー「ルーツ」と清涼飲料「桃の天然水」のブランドも買収し、買収額は約1,500億円に上ります。現在、自動販売機の保有台数では日本コカ・コーラグループが約83万台でトップですが、今回の買収によってサントリーの自動販売機は約63万台となり、販売チャネルが強化されると同時にJTの自動販売機事業が持つロケーションの開拓力や機材調達能力を吸収することが期待されています。
さらに2017年4月にコカ・コーライーストジャパンとコカ・コーラウエストが経営統合し、売上高1兆円規模で世界でも第3位の巨大コカ・コーラボトラーとなる「コカ・コーラボトラーズジャパン」が発足しました。これによって国内最大の清涼飲料会社が誕生します。
この統合によって、同社はコスト競争力の強化、業務プロセスの効率化、人材配置の最適化を図り、2020年までに200億円のコスト削減を見込んでいます。同時に同社は1都2府35県という広範囲をカバーし、争が激化する国内清涼飲料水業界でのシェア拡大を目指します。