
【就活生必見】即席麺の業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
誰もが一度は食べたことがあるインスタントラーメン。身近な業界ですので、学生の間でも知名度の高い企業が数多くあります。食品業界を志望する学生の多くが即席麺の業界も選択肢に入れます。圧倒的な知名度に対して、業界全体としての採用人数も多くはないので、就活の倍率も高くなりがちです。内定を獲得することは簡単なことではありません。したがって、即席麺業界のビジネスモデルや求められる人物像などを徹底的にリサーチをして、その上で自分の強みや頑張ったことを、即席麺業界でどう活かせるかを具体的にイメージし面接官に伝えることが重要です。この記事では即席麺業界の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、即席麺業界の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、即席麺業界の就活に挑みましょう。
即席麺業界とは
この章では即席麺業界の
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
-
最新トレンド
について解説していきます。
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業界構造
即席麺の製造・販売
即席麺メーカーにおける一般的なビジネスモデルはBtoBビジネスです。自社の調達部門もしくは商社や食品卸売業者から小麦などの原材料を仕入れて、自社の工場で製造・加工して、完成品を製造します。完成品は直接エンドユーザーのもとに届けられるわけではなく、食品卸売業者などの流通業者を通じて、レストランなどの外食業者やスーパーやコンビニエンスストアなどの小売店などへ販売されます。
即席麺メーカーは流通業者に販売した時点で収益が上がる仕組みとなっています。したがって、基本的な商流としては商社や食品卸売業者→即席麺メーカー→食品卸売業者→外食業者や小売店→消費者という流れになります。中間マージンを省くために食品卸売業者を介さない直接契約を締結する場合もありますが、あくまで例外的です。直接取引の場合は個別の販売先に大量の品種の即席麺を少量で納品するので効率が悪くなってしまうためです。
即席麺を流通業者に納品したらビジネスが完結するわけではありません。流通業者から小売店に販売された後に小売店への提案営業も行っています。提案営業とは自社の製品を売れ筋商品として、店舗の見やすい高い棚に大きく、場所を確保し、かつ長期間を置いてもらうための営業活動です。
麺の主な原材料は小麦粉、米粉、片栗粉などです。このうち米粉と片栗粉は国内で食料自給率をほぼ100%達成していますが、日本の小麦の食料自給率は約12%しかありません。
したがって、即席麺の製造メーカーは国内素材のみで即席麺を製造するなど一部の例外を除いて、原材料である小麦を海外から輸入し、国内の工場で製造・加工しています。小麦の輸入は自社の調達部門で行うこともありますが、食品商社や卸売業者から仕入れることもあります。
小麦を初めとして食品の価格は世界の需要動向や為替動向、天候の状況の影響を受けますので、輸入価格が安定しません。また、最近では中国を中心とするアジア諸国の購買力が向上しているため、小麦の需要が世界的に増加しており、必要な供給量を画するためにコストが増加してしまいます。しかし、食料品は工業製品と比べて単価が安いので、製品によって多少の違いはあっても、消費者は価格の動向に敏感になっています。
原材料のコスト増を販売価格に転嫁すると消費者の心境に悪影響を与え、競合他社との価格差が開くことによって販売数量の減少に直結します。したがって、原材料である小麦の調達コストが上がって、製造原価が高くなったとしても、販売価格に反映することが難しいという特徴があります。
即席麺の輸出販売
2013年に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。これ以前から日本食や日本の食文化は海外で注目を集めています。また、農林水産省を中心に農作物や食品の輸出強化策が打たれていることも即席麺メーカーにとっては追い風です。
実際に、日本の即席麺は海外でも人気が高く、アジアを中心に様々な国へ輸出されています。 沖縄からの輸出は2017 年をピークに減少していましたが、2020 年11 月ではすでに前年の数量・金額を上回り、輸出数量 は4 トン(前年同期比65.1%増)、金額は6 百万円(同2.6 倍)となりました。
即席麺は保存がしやすく利便性が良いので食品でありながら、輸出に適しています。今後も政府の輸出強化策と合わせて、輸出量が伸びることが期待されています。
市場規模・将来性(シンクタンクのレポートなどを)
市場規模
業界動向によれば、2020年から2021年の即席麺を含む冷凍食品業界の市場規模(主要対象企業11社の売上高の合計)は1兆4,338億円となっています。
日本即席食品工業協会調べによると2019年の即席麺類総需要(総生産量)は、56億3020万食で前年(57億7857万食)に比べ1億4837万食減少しました。前年まで4年連続の総需要拡大となっていましたが、5年ぶりのマイナスとなりました。
このうち袋麺が16億9013万食(前年比4.2%減)、カップ麺が39億4013万食(同1.8%減)といずれも減少しました。2018年の出荷金額ベースの総需要は、袋麺が1253億5900万円(同3.7%減)、カップ麺が4682億6300万円(同0.1%減)の合計5936億2500万円(同0.9%減)と、金額ベースでは微減でとどまりました。市場規模6000億円が視野に入ったところでの足踏みとなりました。
同じく日本即席食品工業協会調べによると2020の即席麺総需要は前年比6.2%増の6,307億1,400万円、数量ベースでは6.1%増の59億7,434.8万食と、ともに過去最高を更新しました。出荷額ベースで6,000億円台に到達しました。新型コロナウイルスの影響による巣ごもり需要で、袋麺の需要が大きく拡大したようです。金額ベースで20.0%増の1,503億8,900万円、数量ベースで17.4%増の19億8,474.4万食となったりました。カップ麺は出荷額ベースで2.6%増の4,803億2,400万円、数量ベースで39億8,960.4万食となりました。
総務省の家計調査によれば、2020年の1世帯(2人以上)あたりの年間支出金額は即席麺が前年比21.1%増の2,231円、カップ麺が11.1%増の5,250円と大幅に伸びました。株式会社富士経済によれば、2020年の袋麺の市場規模を前年比9.4%増の1.,275億円と見込み、2021年は特需の反動で1.2%減の1,260億円になると予測しています。
さらに世界の総需要を見てみると、World Instant Noodles Associationの調査によれば、日本は約59億食で世界第5位の需要でした。1位は中国で463億食、2位はインドネシアで126億食、3位はベトナムで70億食、4位はインドで67億食でした。
将来性
短期的には新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛によって巣ごもり需要が増加しており、即席麺業界にとっては追い風です。また、即席麺含む食品は生活必需品ですので、景気に左右されにくいという特徴があります。株式会社富士経済によれば、2020年の袋麺の市場規模を前年比9.4%増の1.,275億円と見込み、2021年は特需の反動で1.2%減の1,260億円になると予測しています。
長期的には食品業界のグローバル化が追い風になります。2018年12月に発効したTPP(環太平洋パートナーシップ協定)は多岐にわたる産品の関税撤廃・削減を定めています。また、アメリカとの間でも貿易協定で大筋合意しています。外国の関税の壁が取り払われれば、日本のインスタントラーメンを低関税で輸出できるため即席麺業界にとっては追い風です。
一方で、米中貿易摩擦や新型コロナウイルスによるサプライチェーンの混乱や天候不良などの影響を受けるという懸念もあります。さらに主要な原材料である小麦については、中国を中心とするアジア諸国の購買力が向上しているため、小麦の需要が世界的に増加しており、必要な供給量を確保するためにコストが増加する傾向にあります。
業界の分類
明確な定義は有りませんが、大手の即席麺メーカーとして日清食品、東洋水産、サンヨー食品、エースコックが挙げられます。即席麺業界は日清食品、東洋水産、サンヨー食品、エースコックの上位4社の寡占状態にある業界です。
最新のトレンド
新型コロナウイルスの影響
2020年に入ってから新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、外出自粛やリモートワークの普及、学校の一斉休校などで自宅で過ごす時間が増え、保存食の需要が高まっています。
日本即席食品工業協会によれば、新型コロナウィルスの影響で発生した巣ごもり需要により、袋麺の需要が大きく拡大しました。数量ベースで20億1,909.5万食(17.7%増)、金額ベースで1,538億8,500万円(20.3%増)に達しています。袋麺が20億食を突破するのは2007年度以来のことです。
袋麺の他にも時短・簡便のニーズの高まりによって、器を必要としないトレー付きや袋のまま食べられる麺類や炒飯、おかずと御飯がセットになった冷凍食品が注目されています。
POSデータサービスを運営するマーチャンダイジング・オンは、全国のスーパー、コンビニ、ドラッグストア4500店舗から店頭の売り上げデータを収集しています。同社がまとめた8月3~9日における「RDSスーパー全国データの食品の前年比上位20位カテゴリー」によれば、「インスタント袋麺」は6位(134%)、「スパゲティ」が19位(121%)でした。
即席ラーメンなどの袋麺や、スパゲティといった乾麺の売り上げが高い水準で伸びているようです。一方で、外食需要は下火のため、業務用冷凍食品の需要は減少しています。
家族形態の変化
近年では、共働き世帯や単身世帯、高齢者世帯の増加によって、食品に時短や簡便を求めるニーズが高まっています。スーパーやコンビニエンスストアで冷凍食品や即席麺のコーナーが拡充されているのが目立ちます。
日本即席食品工業協会の調査によれば、品目別で伸びが良かったのは、ハンバーグ+8.0%、うどん+11.1%、卵製品+11.4%、ハンバーグ+20.5%で、今まで需要が高かった炒飯は±0%と横ばいでした。
女性の社会進出が進む中で家庭での調理に時間をかけられない世帯が増加し、時短ニーズや簡便ニーズの広まりから、即席麺の需要も増加しそうです。
長期的には市場が縮小
即席麺に限らず、食品動向は長期的には市場の縮小が懸念されています。最も大きな要因は経済情勢と人口減少です。日本では不景気が長引いており、家計の余裕がなくなっています。
また、人口減少によって国内の消費のパイは縮小しており、長期的には食品業界全体が縮小すると見られています。現在では食品業界の市場規模に大きな変化は見られませんが、今後、踊り場にさしかかる可能性があります。
各社の海外進出
経済成長の鈍化や人口減少社会の到来によって、国内の即席麺業界の縮小は長期的には避けられないと見られています。したがって、即席麺メーカーは海外に活路を見出し、グローバル展開を進めています。アメリカやヨーロッパでは冷凍食品の需要が高いほか、アジアでは即席麺の消費量が日本を上回る国も多数あります。
このような中で業界トップの日清食品はBRICsと呼ばれるブラジル・ロシア・インド・中国に販売拠点を置いています。海外売上高の占める比率は23.5%に達しており、中期経営計画では今後さらに成長させる分野に指定しています。
また、東洋水産は米国・メキシコなど南北アメリカを重要な販売拠点としており、海外売上の割合は22.5%と、海外戦略が経営戦略上の重要な位置を占めていることがわかります。
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