
冷凍食品業界について|市場規模や将来性などの就活に役立つ情報をご紹介
冷凍食品業界は就活生にとって身近な食品を扱っており、根強い人気を誇っています。志望する学生も多く、倍率も高めです。内定を獲るために必要なこととして、まず冷凍食品のビジネスモデルや将来性について理解を深めることです。この記事では冷凍食品の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しており、冷凍食品の業界研究に役立つでしょう。ぜひ最後まで読んで、冷凍食品の就活に挑みましょう。
冷凍食品業界とは
この記事は専門家による詳細な調査記事になっています。
この章では冷凍食品業界について、以下の点から解説していきます。
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
- 最新トレンドについて
関連記事
▶︎業界研究のやり方・記事一覧はこちら
冷凍食品業界の業界構造
冷凍食品の製造・販売
冷凍食品メーカーは基本的にはBtoBビジネスです。
自社の工場で製造した冷凍食品を食品卸売業者などの流通業者に販売することで収益を上げています。
自社でマーケティングを行い消費者のニーズを捕捉し、商品を開発します。
冷凍食品の原材料の多くは海外からの輸入に頼っています。
原材料を主に海外から輸入し、国内の自社工場で製造し、流通業者に販売します。原材料は自社の調達部門が担うこともありますが、基本的には食品商社や卸売業者から仕入れています。
冷凍食品のメーカー→食品卸売業者→外食業者や小売店などの販売先という流れが一般的な商流であり、販売先から最終的に消費者のもとに届けられます。
食品卸売業者を介する場合には中間マージンが発生するため、最終価格が高くなってしまいますが、冷凍食品のメーカーが個別の販売先に大量の品種の商品を少量で納品するのは非効率であるので、食品卸売業者を介するのです。
冷凍食品の販売数量を向上させるために冷凍食品のメーカー各社は冷凍食品の製造・販売だけではなく、原材料や商品の研究開発を行っている他、小売店への提案営業も行っています。
提案営業とは自社の冷凍食品製品を売れ筋商品として、店舗の見やすい高い棚に大きく、場所を確保し、かつ長期間冷凍食品を置いてもらうための営業活動です。
輸出販売
最近では冷凍食品の輸出販売も増えています。
ユネスコの無形文化遺産に和食が登録されたこともあって、日本食や日本の食事文化が海外で人気を集めていることが追い風になっています。
また、最近では訪日外国人観光客が増加しており、帰国後に日本文化の体験したいという需要を取り込むために輸出や現地販売に注力しています。
農林水産省の食料産業局の統計によれば、食品の輸出先はアジアが中心です。
輸出先(国・地域)別に見ると、1位が香港、2位が中国、3位がアメリカとなり、伸び率で見るとベトナム(同5位)が18.3%、台湾(同4位)が8.0%と、近隣アジア諸国への輸出が伸びています。
平成29年度の食品の輸出額を品目別でみると、水産物が34%、加工食品が33%を占めています。
冷凍食品業界の市場規模・将来性
市場規模
業界動向によれば、2020年-2021年の冷凍食品業界の市場規模(主要対象企業11社の売上高の合計)は1兆4,338億円となっています。
日本冷凍食品協会によると、コロナ禍の影響がさまざまにあった2020年の冷凍食品の国内生産額(工場出荷額)は前年比0.7%増の7,028億円と3年ぶりに増加しました。
内訳は業務用が14.1%減の3,279億円、家庭用が18.5%増の3,749億円となりました。
輸入品を含めた国内消費額は1.6%減の1兆463億円でした。
総人口で割った国民1人当たりの消費量は22.6キログラムと前年比3.4%減少しました。
工場数は前年比0.9%増の442工場、企業数は1.6%増の370社となりました。
トン数の推移で見ると2020年の冷凍食品国内生産量は、前年比98.9%~100.2%と概ね前年並の158~160万トンになる見通しです。
家庭用はコロナ禍による巣ごもり消費などあって全般的に好調でしたが、外出自粛などの影響から業務用が苦戦し、合計すると前年並から若干減となる見込みです。
消費者の冷凍食品への支出の推移を見ると、過去20年間で70%増加しています。
冷凍食品の支出額は右肩上がりで伸びており、2000年を100%としたときの「冷凍調理食品」の支出額は2018年には対00年比で170.5%まで達しました。
2000年代に入ると、「本格炒め炒飯」などが発売され米飯類が大きく伸長し、2010年代は調理時に水も油もいらない冷凍餃子が話題を集め、同時にラーメンやパスタなどの麺類でヒット商品が相次ぎ、冷凍食品市場の競争環境が激化しました。
また、2011年の東日本大震災発生直後は一時的に、今日のような外食自粛ムードとともに内食化の流れが発生し、メーカー各社はラインアップを見直すきっかけともなりました。
さらにこうした冷凍食品の拡大の背景には、家庭用冷凍室の大型化やハイパワーの電子レンジの普及など、ハード面の寄与があったことも一面としてあります。
また、海外市場に目を向けると、株式会社グローバルインフォメーションの市場調査レポートである「冷凍食品の世界市場:製品別 (果物・野菜、乳製品、食肉・魚介類)・種類別 (原材料、半調理品)・消費先別・流通チャネル別・地域別 (北米、欧州、アジア太平洋地域、南米、中東・アフリカ) の将来予測 (2025年まで)」によれば、冷凍食品の市場規模は、2020年の2443億米ドルから2025年には3123億米ドルに達し、CAGR5.0%で成長すると予測されています。
消費者の多忙なライフスタイルに起因する利便性へのニーズや可処分所得の増加が冷凍食品の需要を間接的に後押ししています。
一方で、一部の消費者にとって、冷凍食品は生鮮食品の代替品と考えられており、同市場の大きな抑制要因といえます。
将来性
国内加工食品市場の調査結果を総括・分析した報告書『2019年食品マーケティング便覧 総市場分析篇』によれば、2023年に、国内加工食品市場は、22兆9422億円(17年比1.4%増)、うち冷凍食品市場は、1兆7298億円(同7.3%増)と、堅調な伸びが予想されるとしています。
この報告書は、総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済が2018年8月より6回に分けて行ってきた27カテゴリー414品目を調査した結界になります。
しかし、短期的には米中貿易摩擦、新型コロナウイルスの感染拡大やそれに関連して訪日外国人観光客の需要がどの程度回復するかによって左右されます。
新型コロナウイルスの感染拡大が収束すれば業務用の冷凍食品の需要は回復すると見られています。
一方で感染拡大が長引くようでされば、外出自粛やリモートワークの継続によって家庭用の冷凍食品の需要は今後も伸びると予想されます。
長期的には単身世帯や2人世帯の増加といった社会構造の変化によって冷凍食品の需要は伸びるという予想もありますが、人口減少社会において数量ベースでの増加は期待できないでしょう。
このためメーカーは「個食需要」に対応した小容量タイプのラインナップの拡充、商品の容器形状の変更、付加価値を訴求した商品の導入、ユーザーの利便性や簡便性向上を図り単価アップに取り組んでおり、市場は微増での推移が予想されます。
冷凍食品業界の分類
大手の冷凍食品メーカーに明確に定義はありませんが、一般的に大手の冷凍食品という場合はマルハニチロ、ニチレイ、テーブルマーク、味の素冷凍食品、日本水産などが挙げられます。
最新のトレンド
家族構成の変化による家庭用冷凍食品の需要増加
冷凍食品業界の市場規模の推移を見てみると、2014年から2018年にかけ増加傾向、19年は横ばいで推移しています。
2019年の家庭用冷凍食品の出荷額は3,160億円と前年比1.0%減の3年ぶりのマイナスとなりましたが、生産数量は69万tの前年比1.0%増と5年連続で増加しました。
冷凍食品業界はスーパーなどでセール品の対象となるなど低価格競争が激化していましたが、時短や簡便を求める共働き世帯や単身世帯、高齢世帯の増加に伴い高価格でも家事の負担軽減につながる便利な商品へのニーズが高まり、高価格帯の商品の販売が好調です。
セブンーイレブン・ジャパンでは『冷凍食品』の売上がこの10年で約5倍に拡大しています。
品目別で伸びが良かったのは、ハンバーグ+8.0%、うどん+11.1%、卵製品+11.4%、ハンバーグ+20.5%で、今まで需要が高かった炒飯は±0%と横ばいでした。また、ここ数年はお弁当の利用よりも、食卓への利用が増え、「簡単かつ美味しい」といった高品質な商品が開発されています。
販売ルートは、スーパーの安価なプライベート商品が増え、ドラッグストアでは種類も豊富に置くようになってきています。
さらに、近年ではコンビニ業界や無印良品でも冷凍食品を開発するなど、他業界でも冷凍食品への期待が高まっています。
巣ごもり需要
新型コロナウイルスの感染拡大の影響は冷凍食品の市場にも及んでいます。
一般社団法人日本冷凍食品協会の「令和3年 “冷凍食品の利用状況”実態調査」によれば2020年に入り新型コロナウイルスの感染拡大によって、冷凍食品の新規利用者が大幅に増加していることや、在宅勤務の普及によって自宅で過ごす時間が増加し冷凍食品の利用頻度が増加していることが明らかになりました。
冷凍食品の中でも時短・簡便に食べられる商品の需要が高まっています。
特に器を必要としないトレー付きや袋のまま食べられる麺類や炒飯、おかずと御飯がセットになった冷凍食品が注目されています。
一方、外食需要は下火のため、業務用冷凍食品の需要は減少しています。
海外展開の進展
国内では人口減少や少子高齢化が問題視される中、共働き、単身、高齢世帯の増加に伴い、冷凍食品需要は今後も底堅いと見られています。
また、飲食を提供する企業や店舗では、調理工程の短縮や負担軽減につながるため、冷凍食品の利用が人手不足解消の一つとなり、業務用冷凍食品の需要も伸びるとみられています。
課題はコストの増加で、2019年3~4月に業務用冷凍食品の値上げが実施されました。
家庭用は値上げの動きは本格化していませんが、いずれ価格に転嫁される可能性があります。
さらに冷凍食品は冷凍状態を維持するため常温の食品以上に物流費の比率が大きいのも欠点です。
配送ルートや共同配送といった物流の効率化が問われています。
さらに、原材料や人手不足、梱包資材などのコストアップも大きく影響しています。
少子高齢化や人口減少の影響により、国内の冷凍食品市場は縮小が避けられないため、冷凍食品会社は海外市場に期待を寄せています。
米国や欧州、カナダなど海外では冷凍食品の需要が多く、さらに今後は成長著しい東南アジアで冷凍食品の需要の拡大が期待できます。
こうした動向を受け、業界大手のニチレイは冷凍食品需要の高い北米やアジアで展開、さらに、米国ではアジアン系テイストの冷凍食品が好調で、今後は現地に合わせたスタイルを展開する予定です。