
乳製品業界の業界研究|市場規模や現状など就活に役立つ情報をご紹介
乳製品は学生にとっても身近な存在であり、知名度の高い企業が多いのが特徴です。食品業界の就活ランキングでは上位に君臨している企業も多く、食品業界を志望する学生の多くが乳製品業界を選択肢に入れます。この記事では乳製品業界の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、乳製品業界の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、乳製品業界の就活に挑みましょう。
乳製品業界とは
この章では乳製品業界について、
- 乳製品業界の業界構造
- 乳製品業界の将来性
- 乳製品業界の業界分類
- 乳製品業界の最新トレンド
の4つについて解説していきます。
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乳製品業界の業界構造
乳製品の製造・販売
乳製品の商流及びビジネスモデルは基本的にはBtoBビジネスです。
自社の調達部門または専門商社や食品卸売業者から乳製品の原材料を仕入れて、自社の工場で製造・加工して完成品を製造します。
完成品は直接、エンドユーザーのもとに届けられるわけではなく、食品卸売業者などの流通業者を通じて、外食業者や小売店、給食業者へ販売されます。
乳製品メーカーは流通業者に販売して時点で売上を計上します。
販売先と特別な直接取引契約を締結して、納品するケースもありますが、基本的には乳製品メーカー→食品卸売業者→販売先という流れが一般的な商流であり、販売先から最終的に消費者のもとに届けられます。
食品卸売業者を通す場合には、中間マージンが発生するため、最終価格が割高になってしまいます。
しかし、乳製品のメーカーが個別の販売先に大量の品種の乳製品を少量で納品するのは非効率であるので、食品卸売業者を介するのです。
乳製品のうち牛乳は国産が大半を占めていますので、国産の牛乳を原材料として製品を加工・製造する場合は海外の影響を受けずに済みます。
一方で、輸入の場合には様々な要因に左右されます。
乳製品の販売数量を向上させるために乳製品のメーカー各社は乳製品の製造・販売だけではなく、原材料や商品の研究開発を行っている他、小売店への提案営業も行っています。
提案営業とは自社の乳製品を売れ筋商品として、店舗の見やすい高い棚に大きく、場所を確保し、かつ長期間乳製品を置いてもらうための営業活動です。
乳製品の輸入・販売
牛乳に関しては国産が大半を占めるものの他の乳製品に関しては多くを海外からの輸入に頼っています。
例えば、チーズに関しては日本は2014~2019年まで5年連続で輸入量世界一位となっています。
2019年のチーズの輸入量は30万2,612トンでした。
他にも全粉乳、脱脂粉乳、飲用乳、ヨーグルトの輸入が増加しています。
これら輸入製品は専門商社や食品卸売業が海外から仕入れ、外食業者や小売店、給食業者に販売しています。
輸入製品の価格は海外の需要動向や為替の影響を受けるほか、乳製品の特徴として生産国の天候状況に生産量が左右されます。
また、最近では中国を中心とするアジア諸国の購買力が向上しているため、乳製品の需要が世界的に増加しており、必要な供給量を確保するためにコストが増加してしまいます。
乳製品は消費者の購入頻度が高く、他の食料品や工業製品と比べて単価が安いので、製品によって多少の違いはあっても、消費者は価格の動向に敏感になっています。
乳製品の輸入コスト増を販売価格に転嫁すると消費者の心境に悪影響を与え、競合他社との価格差が開くことによって販売数量の減少に直結します。
乳製品業界のビジネスモデルの特徴として、一個あたりの単価が低く、利益率が低いので、大量に生産し、できるだけ価格を抑えて、販売数量を稼ぐというポイントがあります。
したがって、輸入コストが上がって、製造原価が高くなったとしても、販売価格に反映することが難しいという特徴があります。
乳製品業界の市場規模・将来性
市場規模
業界動向リサーチによれば、2020年から2021年の乳製品業界の市場規模(主要対象企業6社の売上高の合計)は1兆8,557億円となっています。
経済産業省「工業統計調査」によれば、国内乳業業界の市場規模は2兆7,734億円となっています。
農林水産省の食品産業動態調査によると、2019年の乳製品類生産量は41.9万トンで、うちバターは6.2万トン、チーズは15.5万トンでした。
農水省の牛乳乳製品統計によると、2020年末の牛乳処理場・乳製品工場数は、廃業や生産中止で前年から4工場減り559工場となりました。
製造種別では牛乳処理場が7工場減の361工場、乳製品工場が1工場減138工場でした。
続いて、世界の乳製品の市場規模について見ていきましょう。
調査会社のアイマークによれば、2019年の同業界の市場規模は7,189億ドルです。
調査会社のメティキュラスマーケットリサーチによれば、2019年から年平均5.2%の成長率で2025年までに乳製品業界の市場規模は6458億ドルになると予測されており、逆算すると2019年の市場規模は4768億ドルとなります。このように乳製品業界は世界で巨大産業となっていることがわかります。
将来性
短期的には新型コロナウイルスの感染拡大による学校の休校などで給食用の需要が低迷しており、乳製品の需要は旺盛とは言えません。
また、チーズやバターなど輸入の多い製品については新型コロナウイルスによるサプライチェーンの混乱や天候不良などの影響を受けるという懸念もあります。
一方で、乳製品を含む食品は生活必需品ですので、景気に左右されにくいという特徴があります。
したがって、市場が縮小するとしても極端に縮小することはないと見られています。
長期的には食品業界のグローバル化が追い風になります。2018年12月に発効したTPP(環太平洋パートナーシップ協定)は多岐にわたる産品の関税撤廃・削減を定めています。
また、アメリカとの間でも貿易協定で大筋合意しています。
外国の関税の壁が取り払われれば、バターやチーズなどの輸入製品を安く仕入れることができるため、乳製品を取り扱う専門商社や食品卸売業者にとっては追い風です。
短期的な見通しについて酪農生産者団体や乳業メーカーで構成するJミルクは、2021年度需給見通しについて生乳生産量を前年度比1.2%増の752万トンとしました。
春先の生産が好調だったため、1月発表の0.9%増をさらに上方修正した形です。
地域別では酪農規模の拡大が続く北海道で2.1%増の425万トン、後継者不足の都府県で0.1%増の328万トンとなる見通しです。
生乳の生産増に伴いバターの生産量は4.4%増の7万トンの見込みであり、農林水産省は2021年度のバターの輸入枠を5月も6,400トンに据え置きました。
乳製品業界の分類
明確な定義があるわけではありませんが、大手の乳製品メーカーといえば、明治、森永乳業、雪印メグミルクを指すことが多いです。
明治、森永乳業、雪印メグミルクの大手3社で過半のシェアを握っています。
乳製品業界の最新のトレンド
新型コロナウイルスの影響
新型コロナウイルス感染拡大の影響は乳製品業界にも及んでいます。
主要な販売先であった外食やホテル、観光、土産、オフィス向けの業務用乳製品の需要が約3割ほど減少しました。
夏ごろには復調するものの、冬には再びマイナス影響が拡大しています。
一方で、コロナによる巣ごもりや家庭にいる機会が増加したことから、ヨーグルトやアイス、チーズなどの家庭向け乳製品が伸長しました。
中でもヨーグルトは健康需要も重なり、年間を通して大きな伸びを見せました。
2020年は、業務用の減少を家庭用で補う構図となり、全体としてはほぼ横ばいとなっています。
新型コロナウイルスの影響は今後も続くと見られており、業務用乳製品の低迷と家庭用乳製品の増加という構図が続きそうです。