
【就活生必見】精油の業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
精油業界は知名度こそ他の食品業界に劣りますが、石油精製や動物性油の生産など私達の生活に不可欠なものです。食品業界は就活生の人気が高い業界ですが、精油業界は食品業界の穴場的な業界です。精油業界は安定している一方で穴場的な業界ですので、比較的就活のコスパ良い業界です。しかし、甘く見ていて内定がもらえる業界ではないので、しっかりと準備することが重要です。精油業界のビジネスモデルや最新のトレンド、各社の動向などをしっかりと把握しましょう。その上で自分の強みや頑張ったことを、精油業界でどう活かせるかを具体的にイメージし面接官に伝えることが重要です。この記事では精油業界の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、精油業界の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、精油業界の就活に挑みましょう。
精油業界とは
この記事は専門家による詳細な調査記事になっています。
この章では精油業界の
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
-
最新トレンド
について解説していきます。
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業界構造
鉱物性油の生産
精油ビジネスは大きく鉱物性油の生産と動物性油の製造に大別されます。鉱物性油の生産は石油精製とも呼ばれます。これは原油を精製してナフサ、ガソリン、灯油、ジェット燃料、軽油、重油、潤滑油、アスファルト、硫黄、燃料油、石油化学製品など多種多様な製品を製造する工業プロセスのことです。
鉱物性油の原材料は原油です。原油は国内外から穀物専用船、船舶・コンテナ・タンクローリー・ドラム等によって運ばれてきます。納入された原油は精油メーカーの保管タンクに貯蔵されます。
鉱物性油の生産・販売は基本的にBtoBビジネスです。原材料である原油は商社や資源の卸売業者によって輸入されます。
精油メーカーはこれらの企業から原油を購入し、自社の保管タンクに貯蔵します。自社の工場で精製した製品は直接エンドユーザーに届けられるわけではなく、企業向けに販売されます。例えば、以下のとおりです。
- ナフサ→衣料品メーカー
- ガソリン→ガソリンスタンド
- ジェット燃料→航空会社
- 軽油→運送業
- 重油→製造業
- 潤滑油→製造業
-
アスファルト→建設業、ゼネコン
鉱物性油の原材料は原油ですが、日本は資源に恵まれないため、原油の99%以上を輸入に依存しています。したがって、精油メーカーは原油を海外から輸入し、自社の工場で精製し、鉱物性油を生産しています。原油の輸入は商社や資源の卸売業者から仕入れることもありますが、自前で調達することも少なくありません。
原油の価格は様々な要因によって影響を受けます。例としては以下のようなものがあります。
- 世界全体のエネルギー需要
- ドル、ユーロ、円の為替動向
- 一次産業との競合
- 機関投資家によるコモディティ投資の動向
- 地域紛争やテロ
- 中東地域の政治・宗教、民族問題
したがって、原油価格は不安定であり、価格のリスクを抱えています。
動植物性油の製造
精油メーカーは鉱物性油の生産と並んで、動物性油の製造も行っています。これは動植物等の原料から油脂を搾り取ってチョコレートの品質を調整することができるチョコレート用油脂や、安定性に優れたフライ用油脂、風味・食感を改良する乳化油脂など多種多様な製品を製造しています。動物性油の原材料は動植物等です。原料は穀物専用船こよって世界各国から運ばれてきます。
動物性油の製造も鉱物性油と同様にBtoBビジネスです。原材料である動植物等は商社や食品卸売業者から精油メーカーが仕入れています。精油メーカーは仕入れた動植物等を自社の工場で加工・製造します。精製された植物油は、厳しい品質検査と商品テストののち、容器に充填・包装され、製品となります。自社の工場で精製した製品は直接エンドユーザーに届けられるわけではなく、企業向けに販売されます。
最終品は業務用と家庭用の動物性の油があります。両方とも製造後に食品卸売業者などの流通業者に販売され、レストランなどの外食業者やコンビニエンスストアやスーパーなどの小売店、給食業者に販売されます。
市場規模・将来性(シンクタンクのレポートなどを参照)
市場規模
業界動向リサーチによれば、2020年-2021年の製油業界の市場規模(主要対象企業7社の売上高の合計)は8,135億円となっています。
内訳としてまずは石油精製の市場動向について見ていきましょう。日本では戦後の復興期や高度経済成長時代に石炭から石油へとエネルギー転換が進展し、石油の需要は増加していきました。日本の石油製品需要は、2度にわたる石油危機の後、1980年代には産業用燃料・原料である重油とナフサを中心に減少したものの、その他の油種は1990年代まで増加を続けてきました。
しかし、2000年代に入り、石油製品需要は全体として減少傾向に転じています。IEAによれば、日本の石油製品需要は、2000年の5.1百万バレル/日から2015年には3.9百万バレル/日まで減少し、今後2030年までには、さらに2.6百万バレル/日まで減少することが見込まれています。近年では国内の石油製品市場は少子化による人口減少などで需要が年1~2%ずつ減少しています。
また、激しい価格競争で元売り各社の低収益体質が続いていることから、経済産業省は2009年に石油精製や石油化学の効率化を進めるためエネルギー供給構造高度化法を制定しています。
続いて、動植物油の生産について見ていきましょう。食品産業新聞社によれば、家庭用の食用油市場が好調で、2020年度は史上初の1,600億円規模に到達しました。用途は加工用が5割、業務用が3割、家庭用が2割となっています。前年度までは主に、オリーブ油をはじめ、アマニ油やえごま油といったオメガ3系の付加価値油の伸長が好調をけん引してきました。
しかし、2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大を契機とした内食率の高まりで、それまで減少傾向にあった汎用油のキャノーラ油の価値が見直されはじめました。また、外出自粛によって家族で外食に行けなくなる中、こってりした味を簡単に作れる「味変」需要もあって、ごま油の需要が急激に高まり、それまでも拡大はしていたが、使用量や購入世帯がより一層増加する結果となりました。
農林水産省の油糧生産実績調査では、2020年の食用植物油の原油生産量は国産原料が前年比3.3%増の7万170トン、輸入原料が5.0%減の156万221トンの合計で4.7%減の163万391トンとなりました。最多の原料は菜種で97万5,799トン。
次いで、大豆、トウモロコシ、米ぬか、ゴマとなりました。家庭用食用油全体の需要は横ばいでしたが、健康に良いとされるオリーブ油やアマニ油、ゴマ油などの消費は拡大しました。
不飽和脂肪酸を多く含むオリーブ油は大容量の輸入品の勢いが強まり、2019年の輸入量が前年比22.3%増の7万2,842トンと急増しました。
将来性
まずは鉱物性油の将来性について見ていきましょう。IEAの予測では現在、3,9百バレル/日の石油精製需要は今後2030年までには、さらに2.6百万バレル/日まで減少することが見込まれています。石油の需要が減少すると見られている背景には3つの要因があります。
1つ目は地球温暖化防止のために脱炭素化が進んでいることです。地球温暖化による世界的な海面の上昇や気候変動によって地球温暖化につながる温室効果ガスの排出量を制限する動きがあります。石炭や石油を含む化石燃料は二酸化炭素を排出するため、太陽光発電やバイオマス、風力発電など再生エネルギーへの転換が進んでいます。
2つ目は電気自動車の普及です。2021年7月に欧州連合は2035年までにガソリン車やディーゼル車などの販売を事実上禁止する方針を打ち出しました。世界最大の自動車販売市場である中国でも2035年までにガソリン車の新車販売を禁止する方針です。石油を消費するガソリン車の利用が減少すれば、それに伴って石油の需要も減退します。
3つ目は人口減少です。これは石油産業に限った話ではありませんが、日本では人口減少に伴って、石油の需要が減少しています。2000年の5.1百万バレル/日から2015年には3.9百万バレル/日まで減少し、今後2030年までには、さらに2.6百万バレル/日まで減少することが見込まれています。
このような動きを受けて国内から海外の市場に目を向ける動きが加速しています。例えば、アジアでは石油の需要が増加しており、今後も原油の精製や輸出、小売などの事業の参画には可能性があります。石油精製の最大手の出光興産は2018年よりベトナムでの給油所事業に参入し、本格的に海外事業を展開し始めました。
続いて動物性油の製造・販売の将来性について見ていきましょう。動物性油の市場は堅調に推移しています。特に家庭用油市場は、食用油各社の販促施策が奏功したことや、植物油への健康評価のさらなる高まりなどにより、オリーブ油やアマニ油、えごま油、米油といった多様な油種がけん引する形で、金額規模で前年度比7~8%増と大幅に拡大し、1400億円を大きく突破する見通しとなっています。
業界の分類
大手植物用製油メーカー
明確な定義はありませんが、一般的に植物性油の製油メーカーで「大手」と呼ばれるメーカーは日清オイリオ、J-オイルミルズ、不二製油グループ、昭和産業などがあります。
石油精製メーカー
こちらも明確な定義はありませんが、一般的に石油精製メーカーで「大手」というと、出光興産、ENEOS、コスモエネルギーなどが挙げられます。
最新のトレンド
食用油の需要は減少
製油業界の過去7年間の業界規模の推移を見てみると、横ばいで推移しています。
農林水産省の油糧生産実績調査によると、2019年の食用油の生産量は前年比9.8%減の87,711トンでした。
食用油の内訳を見ると、なたね油が前年比2.6%減の22,569トン、大豆油が13.1%減の19,212トン、パーム油は13.1%減の16,453トンでした。
食用油の生産量はここ数年、横ばいで推移していましたが、2019年には若干の減少に転じています。食用油は「菜種」や「大豆」などの植物から搾油・精製してつくられます。近年では「菜種(なたね)」を原料とする生産が最も多く、大豆、パーム、とうもろこし、ごま、ひまし等が原料として使われます。
2020年の製油業界は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けています。食用油の需要は2020年に入ってから減少傾向にあります。非常事態宣言や外出自粛の影響によって、リモートワークが普及し、消費者が家にいる時間増えて、家庭用製油の需要が高まりました。
一方で、外出自粛によって外食などの業務用製油の需要は落ち込みました。トータルでは家庭用製油の需要の増加を業務用製油の若干の減少が上回る形で微減となっています。
主要原料の相場は、コロナによる穀物需要の減少懸念がありましたが、ほぼ前年並みで推移しています。為替相場も2月後半から3月にかけて荒い値動きでしたが、年央からは円高傾向にあり、安定した水準で推移しています。
「高付加価値」商品の育成が進む
現在、製油業界が抱えている課題として、低い成長率と利益率が挙げられます。近年の製油業界は横ばいで推移していますが、今後は人口減少の影響により、市場が縮小してゆく可能性があります。また、利益率が低いことも成長を妨げる要因となります。
こうした課題に対処するため、製油メーカー各社は「高付加価値」商品の育成に取り組んでいます。既存の商品に付加価値を加えることで、売上増と利益率の改善に期待を寄せます。
業界首位の日清オイリオは、健康を意識した層をターゲットに「健康オイル」の販売に力を入れています。中鎖脂肪酸の働きにより脂肪がつきにくい「ヘルシーリセッタ」や血中コレステロールを下げる「こめ油プラス」などの食用油を展開しています。
2020年9月日清オイリオは「日清 有機えごま油」の販売を開始。限定農園で有機栽培された「えごま」のみを使用し、小さじ1杯で1日分のオメガ3(αリノレン酸)が摂取できる点が特徴です。
業界2位のJ-オイルミルズは、「さらさらキャノーラ油」や「さらさらキャノーラ油健康プラス」などのベーシックオイルを展開。こちらも健康を意識した商品の展開に注力しています。
各社それぞれ、「脂肪がつきやすい」というイメージを「健康」を意識したイメージに切り替える戦略をとっています。高齢化が進む国内市場にとって、「健康」を意識した商品は、消費者に受け入れられやすいでしょう。消費者にうまく訴求できれば、大きなヒットにつながる可能性もあります。