
【就活生必見】通販・ECの業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
学生からの注目度が急上昇しているのがEC業界です。Amazonや楽天市場など多くの学生の身近な存在であり、知名度も高いという特徴があります。採用人数に比べて、志望する学生も多いので、倍率も高くなります。内定を獲得することは簡単なことではありません。EC業界のビジネスモデルや業界動向について正しく理解し、自分の強みや過去の経験をEC業界で活かせることを存分にアピールしましょう。この記事ではEC業界の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、EC業界の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、EC業界の就活に挑みましょう。
EC業界とは
この章ではEC業界の
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
-
最新トレンド
について解説していきます。
業界構造
ECサイトの運営
EC業界の最も代表的なビジネスモデルがECサイトの運営です。有名なところでは「Amazon」や「楽天市場」などが挙げられます。ECサイトは典型的なBtoC(Business to Consumer)モデルであり、企業が一般消費者に商品やサービスなどを提供する最も身近な形態です。
Amazonで本を購入したり、ZOZOTOWNで衣服を購入するといった取引がECのBtoCビジネスです。業種としては書籍から食品、ファッション、雑貨など複数の商品を扱う総合デパートのようなECサイトから特定のジャンルの商品のみを扱う専門店があります。
収益を上げるためには顧客のリピート率を向上させたり、よい高価な商品を購入してもらうためにサイト回遊率を高めるサイト構造を構築することが重要です。
Amazonや楽天市場などの総合ECサイトは出品者から商品を仕入れ、自社の物流倉庫で商品を保管、顧客から注文があるとECサイトから物流に連携がされ、発送手続きがされます。発送自体は郵送事業者が行い、ECサイト運営者は集客、商品の仕入れ、発送までを行います。また、ニトリや無印良品などの自社型のECサイトの場合は外部から商品を仕入れるのではなく、自社製品を専門にECサイトで販売を行っています。
ECサイトを運営するメリットは全国や海外まで販売網を広げることができる点です。実店舗を構える必要がないので、コストを最低限に抑えながら、手軽にビジネスを開始して、利益を上げることができます。したがって、実店舗販売と比べて利益率が高くなります。
一方で、知名度のあるECサイト以外は集客を行うための広告宣伝費やWEBマーケティングのノウハウが必要になります。
実店舗とECサイトの運営
ECサイトのみ運営するのではなく、実店舗の運営とECサイトの運営を並行して行うビジネスモデルがあります。これは自社のECサイトと実店舗を合わせて運営することで実店舗での販売で既に知名度やブランディングがある場合は実店舗の販売網を一気に全国規模に拡大することで売上を飛躍的に伸ばすことができます。例えば、地方の銘菓や名物で有名な商品などの実店舗とECサイトの融合の例があります。
一方で、このビジネスモデルの場合は「カニバリズム」の可能性があります。カニバリズムとは一般的には自社の商品や店舗が競合してしまい、共食い状態になってしまうことです。このビジネスモデルの場合はECサイトを立ち上げて、売上が上昇することで逆に実店舗の売上が減少してしまう現象があります。
オムニチャネル
オムニチャネルとは多大なコストをかけて、大規模なシステムを構築し、実店舗やECサイト、アプリなどに保管されている顧客情報、在庫情報、ポイントなどのデータベースを統合し、オンライン・オフラインの垣根を完全になくして、企業体験をユーザーに提供し、リピーターに販売を促進するビジネスモデルです。
オムニチャネルではECサイトやアプリ上で購入する場合も実店舗で購入する場合でも同じIDやパスワードを利用して、購入することができます。IDの連携が行われることで以下のようなことが可能になります。
- ECサイトやアプリで購入した商品を実店舗に来店した際に受け取る
- 実店舗に商品の在庫がない場合にアプリやECサイトで購入して、自宅に郵送してもらう
-
実店舗で買った商品を、オンラインや電話から返品処理する
つまり、オムニチャネルとは購入場所・受け取り場所、返品の自由なビジネスモデルであり、ユーザーの利便性が高く、顧客満足度が高まり、リピート率あげて、売上が伸ばします。
例としてはセブン&アイホールディングスの『オムニ7』や、良品計画の『MUJI passport』などがあります。
越境EC
越境ECとは、ECサイトを多元化対応にして、日本のみならず世界中の人に商品を販売するビジネスモデルです。いわば通常の商品や販売のEC版輸出のようなイメージです。越境ECを運営することで世界中の人が潜在顧客となり、国内消費の動向に関わらず、世界中を市場にすることができますので、利益の拡大やリスクヘッジにつながります。
一方で、以下のような越境ECならではの課題やハードルもあります。
- 言語が違うことによりコミュニケーション不足
- 国や地域によって普及している決済方法が異なる
- 配送方法が限定される
- 為替動向によって価格が変動する
- 海外に適した集客を行う必要がある
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国や地域によって訴求方法が異なる
例えば、越境ECで最もポピュラーなのは中国ですが、中国ではGoogleが利用できません。したがって、日本で蓄積したSEOのノウハウを活用することができません。また、クレジットカード決済が普及していないので、中国で普及している決済方法を他に用意する必要があります。
市場規模・将来性
市場規模
業界動向リサーチによれば、2019年-2020年のEC業界の市場規模(主要対象企業16社の売上高の合計)は1兆4,602億円となっています。GMOによれば、Amazon、楽天市場などのECモールやネットショップに代表されるBtoC-EC市場の拡大傾向は9年連続し、その成長率も年々増加しています。市場規模は19兆3,609億円であり、年7.65%で成長しています。
内訳は物販系分野が10兆515億円、サービス系分野が7兆1,672億円、デジタル系分野が2兆1,422億円となっています。物販系分野の内訳は「衣類・服装雑貨等」(1兆9,100億円)、「食品、飲料、酒類」(1兆8,233億円)、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(1兆8,239億円)が大きな割合を占めています。
サービス系分野の市場規模の内訳をみると、「旅行サービス」(3兆8,971億円)が大きな割合を占めています。デジタル系分野の市場規模の内訳をみると、「オンラインゲーム」(1兆3,914億円)が大きな割合を占めています。
物販系分野だけを見てもEC市場はすでに百貨店の市場規模の約6.3兆円やドラッグストアの市場規模の約6.8兆円を超えており、コンビニの市場規模約12.2兆円に迫る勢いとなっています。EC市場の直近5年間の成長率は6.40~10.56%増で推移しており、日本のGDP成長率が年率換算でマイナスに落ち込むことも珍しくない近年では、指折りの成長産業と言えます。
経済産業省が行った電子商取引に関する調査では令和元年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、19.4兆円(前年18.0兆円、前年比7.65%増)に拡大しています。また、令和元年の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は353.0兆円(前年344.2兆円、前年比2.5%増)に拡大しています。
続いて越境EC市場について見てみましょう。2018年時点で日本からの越境EC市場規模は313兆円であり、昨年比にして実に123.3%と急成長を遂げています。なかでもアジア太平洋地域の占める割合が多く、全体の61%である190兆円を占めています。国別ランキングでは中国が3兆6,652億円、アメリカが1兆5,570億円となっています。特に中国はEC市場で占める割合はなんと約52%になります。
将来性
将来的にEC業界はさらに拡大すると予測されています。野村総合研究所が2019年に発表した『ITナビゲーター2020年版』によれば、2025年のEC市場は27.8兆円になると予測されています。さらに、実店舗も含んだオムニチャネル市場に関しては、2018年時点で54.4兆円の市場規模を誇っていたのが、2025年には80.6兆円にまで拡大すると予測されています。
EC業界の拡大の背景にはスマートフォンの普及やSNSの発達があります。ECサイトとスマホの相性は良く、スマホのECアプリでショッピングを楽しむ人が増えています。スマホを経由したECでの売上規模は2019年時点で4兆2,618億円となりました。同市場は毎年5~6,000億円増加の推移で拡大しており、スマホ経由の比率も増加しています。現在ではECで買い物をする消費者のうち約4割がスマホ経由でECを利用しています。
また、SNSの発達もEC業界にとっては追い風です。FacebookやTwitter、InstagramなどのSNSはECサイトへの重要な誘導ツールであり、現在は若者だけではなく、幅広い年代に利用されています。さらに直近では新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛と巣ごもり需要によってさらなる市場の拡大が予測されています。
最近、普及し始めている音声識別機能もEC業界にとってはプラスの要因があります。アメリカのECサイトでは音声識別機能を利用したボイス検索機能が導入されています。今ではGoogle Homeでebayを開いて、ショッピングを楽しむことができます。Amazonは2020年までにアレクサなどのボイス検索機能を経由したECでの買い物は1億2,800万台、売上にして1兆円になると予測しています。
また、アメリカの調査会社のGARTNERによると、2020年までにすべての検索の30%は音声検索のみになると言われています。
業界の分類
通販大手
明確な定義はありませんが、通販の大手会社としてアスクル、大塚商会、ベルーナ、MonotaRo、コクヨなどが挙げられます。
IT系プラットフォーマー
ITを起源とする通販会社です。Amazonや楽天市場、Yahooショッピングなどが挙げられます。
最新のトレンド
EC市場は安定的に拡大
EC業界の市場規模の過去の推移を見てみましょう。2009年から2012年にかけては市場は縮小傾向にありましたが、2012年以降は再び拡大しています。
2009年頃までEC業界は順調に拡大していましたが、2009年のアメリカのサブプライムローン問題やリーマンショックによって実体経済が大きな打撃をうけます。世界的な金融危機が起こり、日本経済の成長率は大きな低下しました。経済動向の悪化によって個人消費が大きく低迷します。消費者の節約志向・価格重視姿勢が強まり、EC業界に限らずほぼすべての業界で消費が一気に落ち込みました。
しかし、2012年以降は政府の経済政策や日銀の金融緩和によって国内景気は回復し、個人消費も伸びました。また、スマートフォンの普及に伴ってインターネットでの通販市場が拡大し、業績が拡大しています。また、テレビ通販も順調に伸びています。一方で、同じ通販でもカタログ通販はインターネット通販の成長をうまく取り込めていないようで、成長に陰りが見られます。
2020年に入ると新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けました。学校の一斉休校やリモートワークの普及によって机や椅子の需要が拡大しました。また、外出自粛によって多くの消費者が自宅で過ごす時間が増え、インテリ用品や健康器具などの販売も好調に推移しました。
インターネット経由のEC販売が主流へ
EC業界の中でも成長著しいのがインターネット経由でのEC市場です。背景にはスマートフォンの普及や新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要の高まりがあります。
従来、通販といえばカタログ通販が主流でしたが、徐々にインターネット経由での販売がメインになっています。しかし、カタログ通販の企業はインターネット通販の普及の恩恵を受けておらず、成長を取り込めていません。その一方でAmazonや楽天市場などのIT系プラットフォーマーにユーザーが集中しています。
このような状況を受けて、千趣会やニッセンHDはスマートフォン向けアプリを開発しました。他の通販会社の多くもインターネットやスマートフォン経由でのEC市場に参入していますが、いまいち成長を取り込めていません。今後もネット通販業界は拡大するものと見られ、各社対応を迫られています。