
【就活生必見】重電の業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
ものづくりに関心のある学生から根強い人気を誇るのが重電業界です。重電業界はものづくりをさらにものづくりの面から支える影の功労者的な存在です。安定かつ高い給与水準も魅力的であり、都内の有名私立大学や旧帝国大学の学生の多くが志望します。
就活に備えて、重電業界のビジネスモデルや業界の動向を理解して、その上で自分が活躍できる理由を面接で思う存分語りましょう。
この記事では重電業界の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、重電業界の業界研究は完了するでしょう。
ぜひ最後まで読んで、重電業界の就活に挑みましょう。
重電業界とは
この章では重電業界の以下について解説していきます。
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
- 最新トレンド
さっそく内容を見ていきましょう。
業界構造
重電の製造・販売
重電とは重電機器の略称であり、電気機械のうち特に大型の機械を意味しています。家電製品などが軽電と呼ばれるのに対して、重電は発電所(火力発電所、原子力発電所、風力発電所、地熱発電所など)、工業施設や商業施設で利用される変圧器、高圧遮断器、スイッチギア、ガス絶縁開閉装置などの大型の機械を製造しています。様々な業界の企業の工業設備や発電所などの製造を担っており、経済・社会インフラとして欠かすことができない存在となっています。
企業によって規模は異なりますが、一般的に重電メーカーは業務用製品をBtoBビジネスで販売しています。工業設備や発電機などを必要とする企業に直接納品されることもありますが、機械の卸売業者(特約店、代理店など)に販売されて、卸売業者が各企業に対する窓口として製品の販売を担っていることが多いようです。
誤解されやすいですが、重電メーカーはすでにある商品を大量生産して、顧客となる企業がカタログから製品を選択するというビジネスモデルは基本的に採用していません。顧客からのヒアリングや市場のマーケティングをもとに求められる製品の開発・設計を行い、製造に必要な部品の調達を行います。試作品を何度もテストして、顧客の要求水準を満たしているかどうかをチェックします。顧客のニーズを満たす製品であると判断された場合には顧客向けに販売、もしくは輸出されます。
重電のメンテナンス
重電メーカーは顧客のニーズに合わせて工業設備などを製造・販売することがメインビジネスですが。製品を納品したらビジネスが完結するわけではなく、丁寧なアフターサービスが必要となります。例えば、重電のメンテナンスや修理事業です。
工業設備や発電所などは消耗品ではないので、一度購入したら長期的に利用し続けることを前提に製造されています。しかし、消耗品ではなくても機械として機能するためには定期的なメンテナンスが必要となります。実際には重電を購入した企業が重電メーカーが納品時に提出したマニュアルに基づいて自社でメンテナンスするセルフメンテナンスが一般的な方法です。
しかし、工業設備や発電所などに故障や不具合が生じた際に重電メーカーから専門家を派遣して、修理する場合もあります。また、重電の専門家が顧客企業に常駐して、日頃からメンテナンスを行う手法もあります。これらのメンテナンス方法の場合は製品の納品後に一定の保証期間が設定されていることが一般的です。保証期間中はメンテナンスは無償で行い、保証期間を経過するとメンテナンスが有償に切り替わる仕組みです。メンテナンスが有償に切り替わり、メンテナンス費用が収益となります。
しかし、現在では、一部ではIoT技術を組み込んだシステムを構築しています。例えば機械を使った分だけ請求し、ユーザーは使った分(稼働時間分)だけ支払うサブスクリプション・モデルも可能になってきました。
重電のリース
重電については顧客企業に対する販売のほかにリース事業も行われています。リース事業は重電メーカーが直接顧客企業に工業設備や発電所をレンタルする場合もありますが、より一般的な手法はリース会社が重電メーカーの製品のリースを行うことです。
リース会社が顧客企業と重電メーカーとの間に入り、荷役機器や制御機器、分析機器、産業用ロボット、電動工具、厨房機器といった工業設備や商業施設で必要となる産業用機械設備を扱い、顧客の要望に応じて、リースします。企業によってニーズは異なりますが、リースを活用することによって、機械のメンテナンスや保有・管理コストを省略することができます。
機械を購入して、長期的に利用することを前提としたコストや機械をリースして、使い続けることのコストを比較して、より経営に資する方法を用います。
重電の輸出
日本の重電メーカーの技術は世界的にも高い評価を受けています。工業施設や商業施設で利用される工業製品が輸出されることもありますし、火力発電所などを現地生産という形で輸出することもあります。一般的な商流としては重電メーカーが工業製品を開発・製造して後に、国内もしくは海外の代理店に販売されます。
この時点で重電メーカーの利益として計上されます。代理店に販売された機械は海外の販売手に販売され、最終的に現地の顧客企業に納品されます。
市場規模・将来性
市場規模
2020年-2021年の重電業界の市場規模(主要対象企業6社の売上高の合計)は4兆8,010億円となっています。
一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)によれば、時期によって多少の変動はありますが、 重電・白物家電機器を合算した電気機器の市場規模は基本的には5兆5000億円程度〜6兆円で推移しています。世界全体では国内市場の約10倍であり、約60兆円の市場規模となっています。
しかし、2020年は新型コロナウイルスの影響を受けました。具体的には中国、米国等の半導体、電子部品産業向けの設備投資は回復したものの、それ以外の産業分野の設備投資は国内、海外ともに低調であり、世界的なCO2排出抑制の動きに伴う石炭火 発電機器市場の縮小による影響もあり、重電機器の国内生産は、3兆576億円、前年度比91.7%と前年度を下回る見込みです。
電気機器の年度別国内生産額推移(億円)
2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | |
重機 | 46,472 | 51,630 | 50,255 | 50,667 | 55,057 | 53,248 |
2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | |
重機 | 53,545 | 56,676 | 56,641 | 53,131 | 49,294 | 49,231 |
OECD(経済協力開発機構)によれば、世界の電力設備投資は2035年までに1,300兆円規模に達し、このうち約750兆円は発電所の新設に振り向けられる見通しです。パリ協定の発効や再生可能エネルギーの普及を背景に「脱炭素」に向けた動きが加速すると予測されています。国際エネルギー機関(IEA)は世界の発電量に占める石炭火力の割合は2014年の41%から2021年に36%に下がると予測しています。
製造産業局の「重機機器産業について」によれば、海外需要比率は3割~4割にのぼるものの、産業機械業界の中では外需依存度が比較的低い業界に分類されます。外需を国・地域別の輸出額は中国24.5%、米国14.3%、韓国8.9%、インドネシア6.2%、台 湾6.0%、タイ4.7%が上位となっており、アジア向け輸出が5割を超えています。
将来性
一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)によれば、2021年は前年度と同様に中国、米国等の半導体、電子部品産業向けの設備投資が期待され、その他の産業分野の設備投資も国内、海外ともに緩やかに回復に向かうと見ており、重電機器の国内生産は、3兆1,035億円、前年度比101.5%と前年度を上回る見通しです。
2020年 | 2021年度見通し | |
重機機器 |
さらに内訳を見てみましょう。
発電用原動機は3,236 億円、前年度比89.6%と減少する見通しです。 ガスタービンは国内向けを中心に前年度を上回りますが、ボイラ、蒸気タービンは国内、輸出共に前年度を下回る見通しです。石炭火力発電向け機器市場縮小の影響により、低調な水準となりま す。
回転電気機械は8,279 億円、前年度比104.8%と増加する見通しです。交流電動機は、国内設備投資が回復し、前年度を上回る見込みです。また、サーボモータは、前年度に引き続き輸出を中心に電子部品、半導体産業向けの拡大が継続、その他の産業分野の設備投資も回復し、前年度を上回る見通しです。
静止電気機械器具は5,899 億円、前年度比101.8%と増加する見通しです。 変圧器は国内電力向けが減少し、前年度を下回る見通しです。また、電力変換装置は、国内向けの太陽光発電用パワーコンディショナの回復に加え、サーボアンプがサーボモータと同様に、前 年度を上回る見通しです。
開閉制御装置・開閉機器は1兆 3,620 億円、前年度比 102.6%と増加する見通しです。閉鎖形配電装置は、前年度の首都圏再開発による需要が一段落することにより、前年度を下回る見通しです。一方、監視制御装置は、国内製造業向けが回復し、低圧開閉器・制御機器は、中国を中心とするア ジア設備投資の回復により、共に前年度を上回る見通しです。
製造産業局の「重機機器産業について」によれば、2011年~2021年の10年間における世界の送配電機器市場は、新興国の新設需要や先進国の高経年機器の更新需要により、年率7%超の高い伸びが予測されています。また、2008年~2030年までの間、発電部門と送配電部門を併せた電力分野では、総額約14兆ドル、毎年平均約6,000 億ドルの投資が行われる見込みです。
内訳としては発電部門が3千億ドル、送配電部門2兆ドル、配電部門が4.5兆ドルとなっています。世界的には、中国・インドを始めとする新興国の旺盛な需要や、欧米の高経年設備の更新需要による市場の拡大が見込まれます。
国内市場は、高効率機器への置き換えや高経年設備の更新等により、今後も一定の需要が見込まれています。重電業界の受注の外需比率が3割~4割程度に留まっていることを考えると、海外市場は重要なビジネスチャンスであり、またその開拓・獲得が重要な課題となっています。
業界の分類
明確な定義はありませんが、大手の重電として日立製作所、東芝、三菱電機、富士電機HDなどが挙げられます。
最新のトレンド
近年の市場規模は横ばい推移
重電業界の市場規模の過去の推移について見てみましょう。2007年までは増加傾向にありましたが、2008-2009年以降は減少、2012年から2017年までは増加傾向にありましたが、2018年以降は減少と横ばいを繰り返しています。
2007年までは中国やASEAN地域のインフラ需要に支えられて、重電の輸出が堅調に推移したことで市場が拡大しました。
しかし、2008年以降はアメリカのサブプライムローン問題やリーマンショックによって世界的な金融危機が起こりました。これによって、海外のインフラ需要が減退したほか、安全資産と言われる円の価値が上昇し、円高となりました。その影響で、為替損失が大きくなりました。
しかし、2012年以降は政権交代による国内の公共投資の増加や景気の拡大によって国内の重電の需要が拡大しました。また、大胆な金融政策によって円安も進行し、今度は一転して為替益が大きくなりました
海外展開が加速
長期的に見て国内の重機の市場規模は緩やかな縮小を続けています。国内では大きな需要の伸びが期待できない中で各社は海外展開を加速させています。
各社の海外展開の動きは以下のとおりです。
2006 | 東芝が英国のウエスチングハウスを買収(経営破綻し、2018年にカナダファンドに売却) |
2006 | 三菱重工業がフランスのアレバと発電プラントで提携 |
2006 | 日立製作所がアメリカのGEと業務提携 |
2007 | 東芝がアメリカのレジェンコ エルエルシーの出資持ち分の過半数を取得 |
2013 | 三菱電機がインドの重電メーカーを買収 |
2013 | IHIIがインドでLNG貯蔵タンク建設を受注 |
2014 | 東芝と三菱電機の出資会社である東芝三菱電機産業システムがインドの重電メーカーを買収 |
2014 | 三菱重工と日立が火力発電インフラ事業を発足 |
2017 | 三菱重工業がフランス原子力機器・システムの設計製造事業会社であるFramatome社への出資を完了 |
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