
【就活生必見】建設機械の業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
日本のものづくりを支えているのが建設機械業界です。社会・経済インフラを支えたいという思いで多くの学生が志望します。安定性と高い給与水準も魅力的な業界です。建設機械業界から内定を獲得するためにビジネスモデルや商流、最近のトレンドをしっかりと押さえて、その中で自分がどのように活躍して、会社に貢献できるのかを面接で丁寧に伝えることが重要です。この記事では建設機械業界の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、建設機械業界の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、建設機械業界の就活に挑みましょう。
建設機械業界とは
業界構造
建設機械の製造・販売
建設機械とはトラクター、ブルドーザー、油圧ショベル、建設用クレーン、道路機械など建設現場で利用される機械であり、多種多様な種類があります。これらの機械を活用して、高層ビルやマンションなどの住宅、ダム、高速道路などあらゆる建造物を建築することができます。
建設機械は基本的にはBtoBビジネスであり、建設機械メーカーが開発・設計し、製造した建造機械を建築業者やゼネコンなどの企業が購入し、建設現場で実際に使用されています。使用される建設現場によって建造機械のニーズは異なるので、単に自社で製品を製造して、カタログのなかから顧客企業が該当機械を選んで、顧客に納品するという形のビジネスではありません。顧客企業のニーズを満たすために、必要とされる建設機械を設計します。
設計された建造機械の商品化が決定すると、必要なパーツや部品を自社で製造また、下請け企業に外注し、部品を供給してもらい、自社の工場で組み立てて製品化します。製品化した後は要求水準を満たしているかを確認するためのテストを繰り返します。
テストを合格したら、実際に製造工程に進みますが、製造された製品のうち約4割がメーカー直販や代理店経由で販売されます。残りの6割は、レンタル・リース会社経由で、建築機械ユーザーである、ゼネコンや工事業者にレンタルされ、現場で使用されるというのが一般的なビジネスモデルになります。機械の納品後も機械のメンテナンスやシステムの更新などを行って顧客とは長期的な関係を築きます。
製造工程をみればわかるように。全く同じ建設機械を大量生産して、不特定多数の消費者に販売する消費財ではないので、個別の顧客企業のニーズに一つ一つ真摯に応えていくことが求められます。消費財の様に流行やトレンドにも左右されることはほとんどなく、自社の技術や経験、ノウハウを蓄積していって顧客企業にソリューションを提供し、その後も長い関係を構築してメンテナンスサービスでも収益を稼いでいくという特徴があります。
ちなみにメーカによる開発や製造ですが、近年は、大手メーカによりICT技術を駆使した建設機械も多数開発されるなど、新技術の実用化が進んでいます。
建設機械のレンタル
製造された建設機械のうち4割程度は顧客企業に納品されますが。残りの6割についてはゼネコンや建設会社にレンタルされます。ゼネコンや建設会社の行う建築現場では多くの多種多様な建設機械が使用されていますが、それらすべてを建設機械メーカーから購入して、保有するとコストが高くなってしまいます。建設工事によって得られるマージンよりも建設機械のコストが高くなってしまうことになりかねません。特に、大手ゼネコンは経費削減の一環として、建設機械レンタルを積極的に利用する流れが主流となっていることから、レンタル業界の需要が伸びています。
したがって、建設現場ごとに必要な建設機械をレンタルして、工事を行うのが一般的です。
例えば、建設機械レンタル大手のアクティオやカナモトなどは、東日本大震災の復興需要や大都市近郊の都市再開発需要の高まりを追い風として、建設機械レンタルのニーズが増加しており、業績が好調に推移しています。
建設機械のメンテナンス
建設機械のビジネスの一つにメンテナンスがあります。建設機械を製造・販売した場合に購入する企業は長期的に機械を使用するつもりでいますので、定期的なメンテナンスは欠かせません。建設機械メーカーが作成したマニュアルに沿って顧客企業がメンテナンスするセルフメンテナンスも行われていますが、建設機械メーカーによる有償でのメンテナンスも実施されます。
具体的には機械に不具合が起きた場合や故障があった場合に建設機械メーカーから専門家を派遣して、修理する方法や、建設機械の専門家がゼネコンや建設会社に常駐して、日頃からメンテナンスを行う手法があります。一般的に機械の販売から一定期間は保証期間が設けられており、その間は無償でメンテナンスを行い、保証期間が終了すると、メンテナンスが有償に切り替わり、メンテナンス費用が収益となります。
しかし現在では、一部ではIoT技術を組み込んだシステムを構築しています。例えば機械を使った分だけ請求し、ユーザーは使った分(稼働時間分)だけ支払うサブスクリプション・モデルも可能になってきました。
市場規模・将来性
市場規模
業界動向リサーチによれば、2020年-2021年の建設機械業界の市場規模(主要対象企業27社の売上高の合計)は8兆2,829億円となっています。
日本建設機械工業会(建機工)によると、2019年の建設機械出荷金額(補給部品を含む総額)は、前年比4.6%減の2兆6,329億円と、過去最高となった2018年に次ぐ水準でした。輸出は10.2%減の1兆6,132億円と3年ぶりに減少しました。要因としては販売額の多くを占める東南アジアなどで公共投資が停滞し、中国でも中国メーカーがシェアを伸ばしたことにあります。国内向けは5.8%増の1兆196億円と過去20年で最高水準でした。2019年10月の消費増税を控えた駆け込み需要も底上げしたもようです。
しかし、2020年は同17.7%減の2兆1,659億円で2019年に引き続き、2年連続の減少となりました。内需は2.4%減の9,955億円、外需は27.4%の減の1兆1,704億円となりました。新型コロナウイルスの影響で、世界各国で建設投資が滞ったことが影響したようです。経済産業省生産動態統計年報(機械統計)によると、2019年の土木建設機械の出荷台数は35万9,396台(前年比1.4%減)でした。
三井住友銀行の建設機械の業界レポート「国内建機業界の動向」によれば、建設投資は、1992年度の84兆円をピークに、バブル経済崩壊や政府の財政構造改革を背景として減少が続き、2010年度には42兆円に半減しました。また、世界的にも2009年のアメリカのサブプライムローン問題やリーマンショックの影響を受けて、欧米を中心に住宅着工件数が激減シたことで、業績が落ち込んでいました。
このように一時は市場の急激な縮小が懸念されていた建設機械業界ですが、その後政権交代に伴う公共投資の増加や東日本大震災の復興による内需の拡大により反転し、2016年度は52兆円となっています。これに伴って国内建機出荷額はリーマン・ショックを受けて落ち込んだ後、震災復興関連の需要増に伴い回復しましたが、13年をピークに緩やかな減少に転じています。
一方、補給部品の出荷額は保有台数増加により安定的に推移しており、今後は整備・補修ビジネスの重要性が高まってくるとみられます。
国内の建機市場は油圧ショベルを中心として、クレーンやトラクタ、ミニショベル等から構成されていますが、このうち油圧ショベルの市場シェアを見れば、大手5社(コマツ、日立建機、キャタピラー、コベルコ建機、住友建機)で9割程度を占めています。建機レンタル市場は復興需要拡大に伴い拡大していきましたが、足元ではペースが緩やかになっています。このような環境下、大手事業者はスケールメリット獲得やカバー地域・ラインナップ拡充を狙ったM&Aを行っています。
将来性
三井住友銀行の建設機械の業界レポート「国内建機業界の動向」によれば、東京五輪開催に向けた直接的な建設需要は6,800億円と見込まれていますが、関連する交通インフラ整備、施設や選手村の後利用に 必要な環境整備、バリアフリー対策や水素ステーション整備等への投資を含めれば、需要は全体で3兆円に上るとみられます。また、高度経済成長期の建設ブーム時に建造された大量の社会インフラが寿命を迎え、維持修繕関連の完成工事高は増加傾向にあります。国土交通省の推計によれば、今後も維持管理・更新費が増加すると予想されています。
但し、その後は人手不足等に伴う工事の後ろ倒しや老朽インフラの更新需要拡大等がありつつも、縮小が避けられないとする見方が大勢を占めています 。
続いて、世界の建設機械の市場予測について見ていきましょう。2021年4月21日にREPORTOCEANが発行した新しいレポートによると、世界の建設機械市場は2019年に約1273.0億米ドルと評価され、2020年から2027年の予測期間にわたって、世界中で建設プロジェクトが増加しているため、4.30%以上の健全な成長率で成長すると予想されています。
世界の建設2030年報告書によると、2030年までに、建設生産高は世界で85%、15.5兆米ドル増加すると予測されており、中国が成長をリードし、米国とインドがそれに続きます。業界の平均成長率は2030年までに3.9%と推定されています。米国の建設業界は、年率5%の速いペースで成長すると予想されています。
このように国内市場では長期的に市場の縮小が予想されていますが、海外では中国・アメリカ・インドの市場が拡大する見込みです。日本の建設機械は品質の高さに定評があり、顧客企業の様々なニーズに柔軟に対応できる技術力が評価されています。技術力を活かして、海外に進出することで成長を取り込んでいくことは十分可能であると考えられます。
業界の分類
明確な定義はありませんが、一般的に建設機械で大手という場合には上位5社を指す場合が多いです。具体的にはコマツ、クボタ、豊田自動車織機、日立建機、三菱ロジスネクストの5社です。
最新のトレンド
米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの影響
建設業界の過去の市場規模の推移について見ていきましょう。日本の建設機械メーカーの業績の特徴として、輸出や海外の現地生産の割合が多いので、世界経済の動向に大きく左右されるというポイントがあります。2008年頃までは堅調に市場が拡大していましたが、2009年になるとアメリカのサブプライムローン問題やリーマンショックの影響を受けて、欧米を中心に住宅着工件数が激減したことで、市場が縮小しました。
しかしその後は、公共投資の増加や東日本大震災の復興による内需の拡大により反転し、2011年には建設機械の販売台数281,584台、販売金額1兆4,327億円、2014年には建設機械の販売台数367,888台、販売金額1兆6,921億円まで増加します。その後も2018年まで堅調に推移しました。
背景としては中国や欧州における住宅着工件数が増加したことやインフラ需要が拡大したことにあります。その結果、欧州やアジア向けの建設機械の輸出が堅調に推移し、2018年度の建設機械出荷額は前年比8.2%増の2兆8,072億円と2年連続で増加し、過去最高を記録しました。
しかし、2019年から2020年頃にかけて建設機械業界を取り巻く経営環境が変化します。一つには米中貿易摩擦の影響があります。当時のトランプ大統領がアメリカの貿易赤字の要因を中国の不当な貿易政策にあると指摘し、中国の工業製品に高い関税を課したことが発端でした。米中の関税の掛け合いとなり、結果としては世界のサプライチェーンが混乱しました。そこに追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスの感染拡大です。
建設機械の工場の閉鎖や稼働停止によって生産量が後退したことや世界的な景気後退によって需要が減退しました。経済産業省の生産動態統計によると、2020年の土木建設機械の販売台数は、前年比6.0%減の337,822台、販売金額は前年比17.8%減の1兆4,340億円でした。また、建設機械は鉱山で多く使用されるため、資源価格の動向も影響してきます。今後もこうした経済や資源の動向次第で、業界の動向が変わることが予想されます。
日本の建設機械メーカーは世界で高いシェアを獲得
建設機械業界ではトラクター、ブルドーザー、油圧ショベル、建設用クレーン、道路機械など建設現場で利用される機械を製造しています。日本の建設機械業界の高い技術力や顧客のにニーズに対する柔軟な対応は世界的にも高く評価されています。
例えば、国内の建設機械業界で売上高トップのコマツはアメリカのキャタピラーに次いで世界売上ランキング第2位となっています。また、豊田自動織機はフォークリフトで世界売上第1位となっており、タダノはクレーンで世界売上第2位、クボタはミニショベルで世界シェアのトップを誇っています。
また、近年では他の産業同様に建設機械業界でもICTの活用が進んでいます。ICTの自動制御により、施工品質の向上、作業の軽減や効率化が図れ、熟練オペレータ頼みだった施工が非熟練オペレータでも容易に作業できるようになりました。
2018年にはコマツが幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2018」において、建設現場の無人化を可能にする自律運転建機を展示しました。これによって建設機械を無人で稼働させたり、遠隔から操作することが可能になります。
さらにAIの専門知識や技術を教育する研修プログラムを開始し、産業機械などから収集するデータを有効に使える人材を社内に確保し、新製品や新サービス、新機能の早期創出を目指しています。同社は5年間で約100人を育成する予定です。
AIやICT導入のメリットは作業面、コスト面、管理面で大きく、この市場はさらに拡大すると見込まれます。大手各社もICT建機導入に力を入れており、今後の拡大に期待したいところです。
あらゆる疑問を匿名で質問できます
約90%の質問に回答が寄せられています。