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タイヤ・ゴム 将来性

【就活生必見】タイヤ・ゴムの業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説

自動車業界を志望する学生の併願先として多いのがタイヤ・ゴム業界です。ゴムは自動車のみならずあらゆる産業の原材料となっており、成長性が高く、安定していることから安定志向の学生も多く志望します。その一方で業界のビジネスモデルや業界のトレンドなどについて知っている学生は少なく、「実際に何をやっているのかよくわからない」という学生も多いのではないでしょうか?今回は各社の有価証券報告書やシンクタンク、政府関係機関の各種レポートを参考に業界研究を行いました。その上でES対策や面接対策についても解説していますので、最後まで読むことで業界研究が完成するはずです。

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タイヤ・ゴム業界とは

この章ではタイヤ・ゴム業界の以下の項目について、解説していきます。

  • 業界構造
  • 将来性
  • 業界分類
  • 最新トレンドについて

 

業界構造

タイヤ事業

タイヤ事業の顧客は主に自動車メーカーやディーラーであり、BtoBビジネスです。したがって、タイヤ事業の販売量は自動車業界の生産動向に大きな影響を受けます。

従来、タイヤには木材や金属が使用されていましたが、現在では自動車用ゴム製品が使用されています。自動車用ゴム製品には防振ゴム製品(エンジンマウントなど)、各種ホース類、ゴムブッシュなどがあります。防振ゴム製品の一つであるエンジンマウントは、車体にエンジンを固定する際に使う部品で、インシュレーターと呼ばれるゴムによってエンジンの振動や騒音を遮断する役割を果たします。

タイヤにゴム製品が活用されている理由は以下のとおりです。

  • ゴムは伸縮性に優れ、路面の凹凸によって発生する衝撃を吸収し、乗り心地を良くしたり、車そのものへの衝撃をやわらげる役割を果たす
  • ゴムは空気や水を通しにくく、雨や雪などの天候に強い
  • 摩擦が大きく、すべりにくいため車のエンジンやブレーキのパワーを速やかに路面に伝えることができる

タイヤ製品の技術の進歩や機能向上に不可欠な役割を果たしてきました。自動車用ゴム製品の主な原材料は「天然ゴム」と「合成ゴム」を混合したものです。天然ゴムは国内では生産されないので、100%を海外からの輸入に依存しています。

輸入先は東南アジアが主であり、インドネシアが7割、タイが3割弱、残りがベトナムとなっています。天然ゴムは価格変動が大きく、世界の需給環境に価格が左右されます。合成ゴムは高品質で価格変動は比較的小さくなっていますが、主な原材料であるナフサ(石油)の価格変動によって収益が変動します。

主な販売先は自動車メーカーやディーラーですが、使用用途は多様です。

  • 夏用タイヤ、冬用タイヤなど普通乗用車からトラック・バス用など多くの自動車用タイヤ建設車両用に過酷な環境にある作業現場に対応したタイヤ
  • トラクタ、耕うん機、運搬車、作業機など、農業の現場で活躍される農耕機に対応したタイヤ
  • スピードや耐久性など、各競技で求められる用途に沿って専用開発されたレース用タイヤ

商流としては海外から天然ゴムや合成ゴムの原材料である石油を輸入し、自社工場で加工・製造します。輸入にあたっては自社の調達部門及び商社は資源卸売業者から購入します。自社でタイヤを製造・開発した後に自動車メーカーやディーラーなどの販売先に販売されます。

 

合成ゴムの製造・販売

合成ゴム業界は製造した合成ゴムを顧客企業向けに販売するBtoBビジネスです。ゴム業界では原材料として天然ゴムが主流でしたが、天然ゴムの埋蔵量に制限があるほか、大量生産に向かないという性質があります。

したがって、第二次世界大戦後に主にナフサなどの石油化学原料から品質の一定した合成ゴムを生産する手法が世界で普及しました。日本においても戦後の経済復興期及び1960年代以降の高度経済成長時代に合成ゴムの生産が発展しました。

合成ゴムの供給先としてはその耐熱性や耐油性という特長を活かして、タイヤやエンジン回りの耐熱性ゴム等自動車向けの需要が7~8割を占めますが、自動車業界以外にも多様な業界に供給をしています。大別するとタイヤなどに多量に使われる汎用ゴムと、自動車用部品や工業用部品などに使用され耐油性、耐熱性が向上した特殊ゴムに分類されます。より具体的な合成ゴムの種類と供給先は以下のとおりです。

  • フッ素ゴム…プラントや化学工場などのパッキンやダイヤフラム・ポンプ部品
  • シリコンゴム…防振ゴムの電気絶縁や耐寒・耐熱、その他テレビやラジオ、電子レンジなどの家電の部品
  • クロロプレンゴム…Oリングやコンベアベルト、ゴムベルト、ゴムホース、窓わく、防振ゴムといった一般工業用品
  • ニトリルゴム…Oリングヤオイルホース、オイルシールなどの自動車部品、その他パッキンや耐油ホース、印刷ロール
  • ブチルゴム…窓枠ゴムやタイヤチューブ、スチームホース、人工芝のアンダーパット

合成ゴムの原材料はナフサであり、ナフサを分解した上でエチレン、プロピレン、ブタジエンなどの石油化学基礎製品から加工・製造されます。ナフサは国内の石油化学工場で生成して製造されるほか、石油から加工されたナフサを海外から輸入する場合があります。石油化学工業協会によれば、2018年時点で輸入量は全体の6割を占めます。

 

市場規模・将来性(シンクタンクのレポートなどを)

市場規模

業界動向リサーチによれば、2020年-2021年のゴム・タイヤ業界の市場規模(主要対象企業19社の売上高の合計)は5兆6,851億円となっています。

中小企業庁の「平成30年度中小企業実態基本調査」によれば、2019年のゴム製品製造業の市場規模(上場企業19社、非上場企業3,195社の総売上高)は7兆917億円となっています。ゴム製品別の出荷額は以下のとおりです。

タイヤ
52.9%

工業用ゴム製品
31.4%

ゴムベルト・ホース
9.2%

その他ゴム製品
6.6%



また、経産省・生産動態統計によれば、2020年の工業用ゴム製品(自動車用タイヤを含む)の出荷額は1兆9,322億円(前年比△16.0%)となりました。ゴム製品別の出荷額は以下のとおりです。

 

ゴムホース
1,249億円(前年比△12.3%)

工業用ゴム製品
6,266億円(前年比△13.2%)

ゴムベルト
582億円(前年比△14.3%)

医療用品
416億円(前年比△7.4%)

運動用品
119億円(前年比14.0%)

ゴム底布靴
262億円(前年比17.3%)

さらに日本ゴム工業会によれば、2020年のゴム製品別の輸出額は以下のとおりです。

ゴムベルト
297億円(前年比△19.1%)

ゴムホース
356億円(前年比△21.4%)

ガスケット類
726億円(前年比△10.6%)

ゴム板・ストリップ類
98億円(前年比△13.5%)

履物類
67億円(前年比+20.1%)

日本自動車タイヤ協会によれば、2021年の国内のタイヤ需要(二輪や特殊車両向けを除く)は1億407万本(前年比+5%)となる見込みです。前年の2020年(9912万本)は新型コロナウイルス感染症の影響で自動車生産台数が落ち込んだことから減少していました。2021年は2020年の反動増となり、増加しましたが、2019年比では9%減となり、本格的な需要の回復にはまだ時間がかかりそうです。

また、日本自動車部品工業会によれば、タイヤ以外の自動車用ゴム製品(防振ゴム製品、各種ホース類、ゴムブッシュなど)の2019年度の合計出荷額は2,529億円(前年比17.4%)となりました。しかし、2020年度以降は新型コロナウイルス感染症の影響で自動車生産台数が落ち込んでおり、自動車用ゴム製品の出荷額も落ち込む見込みです。

経産省・生産動態統計によれば、2020年の合成ゴムの出荷額は4,042億円(前年比△18.3%)となり、そのうち最も代表的な合成ゴムであるスチレン・ブタジエンゴは1153億円(前年比△25.8%)となりました。スチレン・ブタジエンゴの原材料はスチレンと 1,3-ブタジエンですが、ブタジエンは世界的に供給不足となっています。

 

将来性

ゴム業界の最大の供給先は自動車業界です。タイヤや防振ゴム製品(エンジンマウントなど)、各種ホース類、ゴムブッシュなどには合成ゴムが活用されています。したがって、ゴム業界の市場は自動車業界の市場動向に大きく左右されます。

アジアを中心とする新興国では経済発展に伴い自動車が普及しており、それに伴ってタイヤの需要も増加すると見られています。また、国内においても成長産業である介護業界において作業の効率化・自動化に活用される工業用ゴム製品の需要が高まっており、今後も一定の需要は継続すると見られています。

一方で国内のゴム製品の市場は頭打ち状態です。日本では少子高齢化が進み、市場が縮小しているほか、若者自動車離れが深刻化しており、最大の供給先である自動車業界の生産台数が鈍化しています。したがって、日本国内におけるタイヤや工業用ゴム製品の需要の拡大は期待できません。

また、新興国においては自動車及び自動車用ゴム製品の需要が高まっていますが、高品質なゴム製品よりも価格競争力が重視される新興国市場において韓国のハンコックタイヤや中国の中策ゴムといった海外メーカーがシェアを拡大しており、日本国内のメーカーは苦戦を強いられています。

さらに100年に1度と言われる変化が起きている自動車業界ではCASEと言われる変革が起きています。CASEとはコネクテッド、自動運転、シェアリング、電気自動車の頭文字をとった造語ですが、ガソリン車から電気自動車にシフトするなかでガソリン車で活用されていた燃料系ホースや自動車用防振ゴムは電気自動車では不要になります。自動車業界に依存していたゴム供給会社は転換を迫られています。

 

業界の分類

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明確な定義はありませんが、一般的にタイヤ・ゴム業界の大手としては住友理工、TOYO TIRE、ブリヂストン、横浜ゴム、住友ゴム工業が挙げられます。

 

最新のトレンド

新型コロナウイルス感染症の影響 タイヤの生産量は自動車の需要動向に大きな影響を受けます。近年は国内においては円安傾向や消費の拡大、海外では安定成長が続くアメリカ市場や、新興国も資源価格の回復等により、概ね堅調に推移しました。

2008
タイヤ生産量
1,348千トン
自動車生産台数
11,576千台

2009
タイヤ生産量
986千トン
自動車生産台数
7,934千台

2010
タイヤ生産量
1,196千トン
自動車生産台数
9,629千台

2011
タイヤ生産量
1,212千トン
自動車生産台数
8,399千台

2012
タイヤ生産量
1,147千トン
自動車生産台数
9,943千台

2013
タイヤ生産量
1,128千トン
自動車生産台数
9,630千台

2014
タイヤ生産量
1,121千トン
自動車生産台数
9,775千台

2015
タイヤ生産量
1,058千トン
自動車生産台数
9,278千台

2016
タイヤ生産量
1,020千トン
自動車生産台数
9,205千台

2017
タイヤ生産量
1,026千トン
自動車生産台数
9,691千台


しかし、2020年に入ると状況は一転します。JATMA(日本自動車タイヤ協会)によれば、2020年の四輪車用タイヤ販売本数(新車用+市販用)は9,932万9,000本と前年比で13.2%の減少となりました。背景には自動車販売台数の減少があります。日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽自協)がまとめた調査結果によれば、2020年は外出自粛によって全国的に新車の購入を控える動きが広がり、新型コロナウイルス感染症拡大前と比べて28.6%の落ち込みとなりました。

また、全国的な暖冬と降雪不足を受けて冬タイヤの不振も重なり、自動車用タイヤの販売も減少し、1年間で約1,500万本のタイヤ需要が消失しました。特に緊急事態宣言が発令された4月から6月にかけて落ち込みが大きく、この3カ月累計は前年同期と比べて市販用が23%減、新車用は48%減と記録的なマイナス幅となりました。

ただし、自動車業界は新型コロナウイルス感染症による打撃からいち早く立ち直りつつあり、2021年に入って自動車メーカー各社は業績予想を上方修正しています。依然として油断はできない状況ですが、タイヤ業界も堅調に推移すると予想されています。
国内は縮小するも海外市場は堅調に推移
国内のタイヤ及び自動車用ゴムの需要は減少しています。国内では少子高齢化や車離れが深刻化しており、自動車市場の縮小に伴いタイヤ市場も縮小しています。また、長引く不況によって消費者の価格目線が厳しくなっており、メーカーの価格競争が激しくなっており、収益性の確保が課題となっています。

一方で海外市場ではタイヤの販売本数は堅調に推移しています。世界のタイヤ需要を牽引している最大の要因としては中国や東南アジアなどの新興国における自動車市場の拡大です。
例えば、中国自動車工業協会によれば、中国における自動車販売数は増加傾向にあります。

2010
1,806万台

2011
1,851万台

2012
1,931万台

2013
2,198万台

2014
2,349万台

2015
2,460万台

2016
2,803万台

2017
2,888万台

2018
2,808万台

2019
2,577万台


このように新興国市場の自動車販売台数が増加していることがタイヤ業界の堅調な推移の要因となっています。また、北米エリアでも需要回復が見られるなど、各社とも低燃費タイヤなど機能性に優れたタイヤを次々と投入し、シェア拡大に向け動き出しています。

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