
【就活生必見】スポーツ業界の業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
スポーツ好きな学生が数多く志望するのがスポーツ業界です。学生時代にスポーツの経験のある学生やスポーツ観戦が好きな学生に人気があります。しかし、知名度が高い一方でビジネスモデルや業界のトレンド、収益構造などをよく知らない学生も多いのではないでしょうか?この記事ではスポーツ業界の有価証券報告書やシンクタンク、公的機関の各種レポートをもとにスポーツ業界の業界研究を網羅的に行っています。「スポーツ業界に興味があるけど実際何をやっているのかよくわからない」という学生でも理解できるように作成しています。ぜひ最後まで読んで、スポーツ業界の業界研究を仕上げましょう。
スポーツ業界とは
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この章ではスポーツ業界
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
- 最新トレンドについて
解説していきます。
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業界構造
スポーツ業界とは
スポーツ業界にはプロ野球(野球)、Jリーグ(サッカー)、Bリーグ(バスケットボール)などがあります。
プロ野球はスポーツの中でも最も人気があります。セ・リーグ6球団、パ・リーグ6球団が合計70程度のホームゲームを行い、年間に2,500万人程度の観客を動員します。球団によって人気に差があるのも事実で年間で200億円以上の売上を上げている球団があれば、その半分程度の球団もあります。
Jリーグはサッカーチームのリーグであり、プロ野球と並んで根強い人気を誇っています。各地域に根ざしたチームづくりが特徴的です。リーグはJ1・J2・J3に分類され、年間の観客数はJ1が400万人、J2が200万人、J3が50万人程度です。
Bリーグはバスケットボールのリーグです。野球やサッカーと比べると設立から間もないですが、プロ野球やJリーグに次ぐ規模を誇ります。
これらスポーツ業界の収益源を大別すると以下に分けられます。
- チケット収入
- 広告収入
- グッズ販売
- 放映権販売
それぞれについて具体的に見ていきましょう。
チケット収入
最も代表的な収益源は観客の入場によるチケット収入です。観客が顧客ですので、ビジネスモデルとしてはBtoCビジネスとなります。
チームが自分たちのホームスタジアムで試合を行った場合はチケット収入はそのチームの収益となります。従来はチームと観客の間にチケッティング会社が介在し、チケットの販売を行っていましたが、最近ではチームが直接観客に対してチケットを販売するケースが増えています。
チケット収入を分解すると観客数×チケット価格となります。1試合あたりの施設利用料や人件費は変動しないので、より大きな収益を上げるためには、より多くの観客を動員するかチケット価格を上げる必要があります。プレミアムな体験ができるチケットを用意し、チケット価格を上げることは可能ですが、チケット価格を上げすぎると観客数が減少するので、各チームとも観客数を増やして、スタジアムのキャパシティ一杯まで動員する施策を講じています。例えば、個人のみならず法人向けにVIPの席などを販売し、企業が福利厚生の一環として利用できるようにしています。
広告収入
広告収入はスポンサーシップとも呼ばれ、ビジネスモデルとしてBtoBビジネスとなります。
野球選手やサッカー選手が企業の名前やロゴの入ったユニフォームを着用していたり、スタジアムに企業のロゴが貼られていることがあります。スタジアムには多くの観客が訪れますので、ユニフォームやスタジアムに企業の名前やロゴを入れることによって企業の知名度や認知度を高め、大きな広告宣伝効果が期待できます。
スポーツの試合を自社のアピールをする場所として利用する対価としてチームやスポーツを応援してくれる企業がチームに対してスポンサー料を支払います。例としてはインターネット関連企業である楽天とスペインのサッカーチームであるバルセロナのスポンサー契約や、同社とNBAチームのウォーリアーズとのスポンサー契約などがあります。
しかし、最近では広告のトレンドがインターネットに移行していることもあり、スポンサーをする企業は頭打ちとなっており、広告収入も横ばいもしくは減少傾向にあります。
グッズ販売
野球やサッカーなどの人気スポーツでは選手の名前の入ったユニフォームやボール、その他関連グッズを販売しています。チームに人気が出てきて、人気のある選手のユニフォームやグッズを発売することができれば、グッズ販売による収益は大きくなります。また、各チームはスタジアム限定グッズなどを発売することでグッズ販売による収入だけではなく、チケット収入の増加も図っています。
グッズ販売によるビジネスはBtoCもしくはBtoBtoCビジネスです。チームが自社の販売部門や別に販売会社を設立し、グッズをファンに販売したり、チームと観客の間に販売会社を介在させることによって成立しています。最近ではチームの公式ホームページやECサイトなどでの販売を強化しており、様々な工夫を行って、収益の向上を図っています。
放映権収入
放映権収入とはスポーツの試合を放送する権利を放送局やインターネット配信会社に販売して収益を上げるビジネスです。チームにとっては大きな収益源の一つであり、近年では国内のみならず海外にも販売されています。
スポーツ業界の主なビジネスはBtoCですが、放映権ビジネスはBtoBビジネスとなります。多くの放送局や配信会社が購入したくなるようなコンテンツにするためにはチームの魅力を高めることが求められます。
市場規模・将来性(シンクタンクのレポートなどを)
市場規模
まず国内の野球の市場規模について確認しましょう。一般社団法人日本野球機構(NPB)によれば、国内の野球の市場規模(営業収益)は約1,800億円です。同機構によれば、プロ野球の観客数は以下のとおりです。
年度別入場者数(単位:万人)
2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | |
セ・リーグ | 1,230 | 1,179 | 1,179 | 1,220 | 1,261 |
パ・リーグ | 983 | 977 | 957 | 984 | 1,024 |
合計 | 2,214 | 2,156 | 2,136 | 2,204 | 2,285 |
2015 | 2016 | 2017 | 2018 | ||
セ・リーグ | 1,351 | 1,384 | 1,402 | 1,423 | |
パ・リーグ | 1,072 | 1,113 | 1,111 | 1,131 | |
合計 | 2,423 | 2,498 | 2,513 | 2,555 |
実力のパ・リーグ、人気のセ・リーグと言われている通り、セ・リーグが観客数で上回る形となりました。スポーツ人口の減少が懸念されていますが、観客数は右肩上がりで増えており、2018年には2,500万人を突破しています。2020年以降は新型コロナウイルス感染症の影響で観客数が減少していますが、コロナ禍が終われば、堅調に推移すると予測されています。
野球チーム個別の売上規模については各社とも野球事業のほかに複数の事業を運営している他、巨人や中日は非上場であり、決算非公表の為詳細はわかりませんが、「プロ野球ビジネスどこへ – 日本/プロ野球 – 朝日新聞GLOBE」によれば、日本の全12球団の売上高は計1400億円前後と推定されています。
一方で海外に目を向ければ、アメリカの大リーグ機構(MLB)は2018年の野球の市場規模について103億ドル、日本円に換算して約1兆1,500億円と推定されています。日本のプロ野球の市場規模が1,800億円であると仮定すると、約6倍の差があることが分かります。
続いてサッカーについて見ていきましょう。公益社団法人日本プロサッカーリーグクラブ経営本部クラブライセンス事務局が発表した「2020年度 クラブ経営情報開示資料」によれば、2019年から2020年の各リーグの売上推移は以下のようになりました。
(単位:百万円)
J1合計 | J2合計 | J3合計 | J1+J2+J3 | |
2019 | 82,601 | 33,265 | 6,960 | 122,826 |
2020 | 62,238 | 30,137 | 7,412 | 99,787 |
2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で市場が縮小していますが、2019年はJ1で820億円、J1〜J3合計で1,200億円となりました。プロ野球の1,400億円には及びませんが、大きな市場であることが分かります。Jリーグは2017年は1,106億円、2018年は1,257億円、2019年は1,228億円と市場は拡大傾向にあります。さらに海外のサッカー市場を見てみると、2019年の世界のサッカー市場規模は18億8360万ドルとなりました。これは日本円で2,000億円以上の市場規模となっています。
また、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社によれば、スポーツのスタジアム観戦市場は8,464 億円となっています。さらに野村総合研究所によれば、日本のスポーツ産業は2002年に約7兆円、2012年に約5.5兆円と縮小しています。ただし、この数字にはスポーツ用品などスポーツ関連産業が含まれていることに注意が必要です。
将来性
野球業界の将来性について解説します。一般社団法人日本野球機構(NPB)によれば、国内の野球の市場規模は拡大しています。しかし、現在の状況を手放しで喜べるわけではなさそうです。野球業界は主にBtoCビジネスですので、野球ファンの動向に大きく左右されます。
調査会社のマクロミルとシンクタンクの三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った調査「スポーツマーケティング基礎調査」によれば、2006年のプロ野球のファンは約4,100万人でしたが、2011年では約3,700万人、2016年には約2,800万人と減少傾向にあります。また、「日本中学校体育連盟」によれば、軟式野球部に所属する生徒数は2011年時点で約27万人、2016年時点で約18万人と30%以上の減少が見られます。
野球ファンの減少には人口減少や娯楽の多様化、ライフスタイルの変化などが挙げられ、今後もこの傾向は続きそうです。野球ファンの減少に伴い、球団にとって貴重な収益源である放映権収入も減少しています。
ビデオリサーチによれば、巨人戦のナイター中継は1975年から1990年まで20%以上で推移していおり、放映権収入は1試合につき1億円以上と言われていましたが、2006年には10%を割りました。
野球ファンの減少及び収益基盤の不安定化によって多くの球団が赤字経営に陥ってます。球団の多くは親会社を持ち、単体での決算を公開していませんので、実情はわかりませんが、巨人や阪神などの人気チームを除けば、親会社から補填を受けないと経営が成り立たないと言われています。
野球ファンのさらなる減少を防ぐためにもプロ野球全体のレベルを底上げし、プロ野球を目指す熱意と実力のある若者を増やすことが肝心です。
Jリーグについても同様で、人口減少や娯楽の多様化によってファンの減少が続いています。公益社団法人日本プロサッカーリーグクラブ経営本部クラブライセンス事務局が発表した「2020年度 クラブ経営情報開示資料」によれば、2020年単年度赤字クラブは34クラブ(約6割)、債務超過に陥るクラブは10クラブ(約2割) でした。これは新型コロナウイルス感染症感染症による入場料収入の減少も要因としてありますが、それ以外にもスポンサー収入の減少が著しくなっています。
業界の分類
野球
プロ野球球団はセ・リーグが読売ジャイアンツ、東京ヤクルトスワローズ、横浜DeNAベイスターズ、中日ドラゴンズ、阪神タイガース、広島東洋カープの6球団、パ・リーグが北海道日本ハムファイターズ、東北楽天ゴールデンイーグルス、埼玉西武ライオンズ、千葉ロッテマリーンズ、オリックス・バファローズ、福岡ソフトバンクホークスの6球団です。
サッカー
JリーグはJ1が北海道コンサドーレ札幌、浦和レッズ、柏レイソルなど20チーム、J2がブラウブリッツ秋田、栃木SC、ジェフユナイテッド千葉など22チーム、J3がヴァンラーレ八戸FC、いわてグルージャ盛岡、カターレ富山など15チームです。
バスケットボール
BリーグにはB1が青森ワッツ、岩手ビッグブルズ、秋田ノーザンハピネッツなど12チーム、B2が金沢武士団、滋賀レイクスターズ、京都ハンナリーズなど12チームです。
最新のトレンド
新型コロナウイルス感染症の影響
新型コロナウイルス感染症がスポーツ観戦に与えた影響について見ていきましょう。プロ野球は2019年には約2,500万人の観客数を記録し、過去最多を記録しました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年以来は広島、楽天、日本ハムがスタジアムの定員の50%に制限し、他の9球団も観客数の上限を1万人に制限しました。入場制限によって収益の柱であるチケット収入やスタジアムでのグッズ販売など来場者関連の収入が激減しています。
また、スタジアムへの体温測定機器の設置や消毒液の手配によって支出は増大しています。例えば、DeNAは2020年第3四半期決算においてスポーツ事業の売上が前年比42.2%減の108億円となりました。また、セ・リーグでは1試合平均のチケット収入が昨年の約1億円から80%以上減の1,500万円にまで減少しています。
DeNAだけではなく、ほとんどすべての企業が利益が赤字になる可能性があります。ワクチンの普及によって観客数制限が撤廃されても感染リスクによる応援のルール変更などで観客数が正常に戻るのは来年以降になると予想されています。
続いてサッカーです。Jリーグによれば、J1からJ3までの全チーム56クラブの営業収益は前年比230億円減の1,095億円となりました。なかでも観客数制限によるチケット収入の減少の影響が大きく、チケット収入は前年比123億円減の79億円となりました。また、スポンサー企業の経営不振も重なり、スポンサー収入が531億円で前年度から57億円減となるなど、大きな減少が目立ちました。
さらに国際的な監査法人デロイトが発表したデータによると、2020年1月から6月に国内プロスポーツ界の受けた経済的損失は約1,270億円にも上ると推定されています。
AIを活用したダイナミックプライシングの導入
ダイナミックプライシングとはAIを活用して、株式の取引のように需要と供給に合わせて頻繁に価格を設定する仕組みです。野球でもサッカーでも従来はチケット料金は同一価格で販売されており、人気チームとの対戦や優勝を決める試合であっても価格設定に変動はありません。
しかし、実際には雨天の試合や人気のないチームとの対戦には需要がなく、逆に晴天の試合や重要な試合になると需要は高まります。需要の少ない試合ではチケットの料金を安くして、需要の高い試合ではチケットの料金を高く設定するなどチケットの価値を価格に適正に反映させるのがダイナミックプライシングです。ダイナミックプライシングによって利用者は適正な価格でチケットを購入し、企業は収益と観客数を最大化するとともに混雑を緩和することができます。
このダイナミックプライシングはアメリカのスポーツ試合で導入が始まりました。2009年にMLBのサンフランシスコ・ジャイアンツが導入したことが発端となり、現在ではMLB、NBA、NFLといった大きなリーグのほとんどの試合で導入されています。
日本においてもプロ野球やJリーグで導入実績があります。例えば、プロ野球では福岡ソフトバンクホークスや千葉ロッテマリーンズが、Jリーグでは横浜Fマリノスや名古屋グランパスエイトなどが活用しています。近年ではスポーツのみならず歌手のライブなどでも活用が進んでおり、AI技術の活用は様々なエンターテイメントで進みそうです。
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