
金融庁の業界研究|就活に役立つ事業構造・将来性・働き方など徹底解説します
金融庁は旧大蔵省が管轄していた金融行政を担う中央官庁であり、国の経済を政策面から支えています。民間の金融機関や財務省を志望する学生の多くが金融庁を併願しており、結果として就活難易度が上がっています。この記事では金融庁の採用ホームページや白書、金融庁発行のレポート、所管法令をもとに金融庁の任務や金融庁官僚の仕事内容、さらに官庁訪問対策について解説しています。ぜひ最後まで読んで、官庁訪問対策を万全にしてください。
金融庁とは
金融庁ではは金融全般に関する事柄を扱っています。金融制度に関する法律やルールの制定、金融機関の検査・監督、株式取引などの監視が主な仕事内容です。
金融庁の任務については金融庁設置法第三条に規定があります。
金融庁は、我が国の金融の機能の安定を確保し、預金者、保険契約者、有価証券の投資者その他これらに準ずる者の保護を図るとともに、金融の円滑を図ることを任務とする。
金融は変化のスピードが非常に速い分野です。
AIやブロックチェーンといった技術革新を背景にフィンテックと呼ばれる新しい金融サービスが次々に生まれ、金融のあり方を変えつつあります。
さらに少子高齢化の進展や新型コロナウイルス感染症の拡大など世界の不確実性は高まっています。
そんな中であっても金融庁の変わらない使命は経済のインフラである金融システムの安定と発展を通じて、個人・企業・社会全体がより豊かさを享受できる未来をデザインすることです。
金融庁は社会・経済が急激に変化する中で全体を俯瞰しながら、常に金融行政のあるべき姿を考え、政策の企画・立案を行っています。
出典:金融庁 採用案内
金融庁の役割
資金流動性の確保
日銀が2020年9月に発表した資金循環統計によると、2021年6月末時点の個人(家計部門)の金融資産残高は前年同月末比6.3%増の1992兆円となっています。
日本の家計金融資産の過半が現預金であり、資産の伸びも低い水準にとどまっています。
金融庁は資金の流れを最適化して、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図りつつ、家計に収益の果実がもたらされるようなに取り組んでいます。
金融庁では家計の長期資産形成を後押しする「つみたてNISA」、販売会社による「顧客本位の業務運営」、企業のコーポレートガバナンス改革などを通じて多様な主体に働きかけることで企業・経済の持続的な成長と家計の安定的な資産形成を目指しています。
金融デジタライゼーションへの対応
「フィンテック」と呼ばれる情報技術を駆使した新しい金融サービスが次々と生み出されています。
IT企業などの新しいプレーヤーが金融分野に参入し、データの利活用が飛躍的に進展するなかで、金融は変革期を迎えています。
銀行法や金融商品取引法、保険業法などの金融法令を所管する金融庁は日本経済・金融があるべき姿を中長期的な視点から検討して、制度設計を行っています。
技術革新とデータの利活用の進展がこれまでの金融のあり方を大きく変えようとしている中で金融庁は現行法令にとらわれず、新しい金融システムとルールの在り方を常に考えています。
国際金融業務
世界金融危機から10年以上が経過し、危機再発防止のための国際的な規制改革のほとんどの項目が最終化されています。
経済活動や金融取引がグローバルに行われている時代において、金融システムの安定のために国際的な政策協議は非常に重要です。
日本は2019年のG20財務大臣・中央銀行総裁会議の議長国として世界胸中の課題である金融技術革新、高齢化などを金融セクター関連の主要議題として設定し、議論を深めました。
金融庁の仕事内容
海外当局等とのネットワーク強化
金融機関の活動がグローバル化し、海外当局との連携が益々重要 となる中、コロナ禍においてもバーチャルなコミュニケーションにより、関係構築・深化に努めています。
また、アジアを中心とした新興国等に金融インフラ整備支援を行い、各国の金融機能の強化に貢献 することで本邦企業や金融機関の海外におけるビジネスを支えています。
加えて、新興国当局等の職員を研究員として日本に招聘し、 研修プログラムを提供していた金融連携センター(GLOPAC)を、コロナ禍でもバーチャルで開催し、さらなる“知日派”の育成に努めています。
金融制度の創設
銀行法や保険業法、金融商品取引法といった金融機関の業務を律する法律は金融機関の業務の適切性を確保することで金融サービスの利用者の保護を図るものであり、検査・監督を含 む金融庁業務の根幹を成すものです。同様に金融市場の機能や魅力の向上も重要です。
例えば、企業情報開示の充実等を含むコーポレートガバナンス改革や企業の持続的な成長を促す証券市場構造の改革も企画部門の主要な政策課題です。
また、フィンテック事業者によるモバイル送金の普及や多様な金融サービスをスマホでワンストップで提供する動きなどに対応した規制の新設・見直しや人口減少・少子高齢化に直面する地域の課題解決に貢献する役割が求められる地銀に対し、業務の選択肢を幅広く用意するため銀行の業務範囲規制の見直しなどの法整備にも取り組んでいます。
金融機関のモニタリング
金融庁は法律に基づき金融機関の免許の付与、登録を行うほか、継続的に金融機関の情報を収集・分析し、金融機関の業務・財務の健全性が確保されているかモニタリングしています。
また、仮に問題の兆候が見られた場合、予防的な対応を含め金融機関と対話をして対応を促すとともに必要に応じて行政指導や業務改善命令などの是正措置を講じ、問題が深刻化する前に早期対応しています。
このようなモニタリング等を通じ、金融機関と最前線で向き合い、対話や是正措置も駆使しつつ、金融システムの安定/金融仲介機能の発揮や、利用者保護/利用者利便等に貢献していく部門です。
なお、その対象となる業態は設立100年を超える銀行から、保険会社、証券会社、更には暗号資産交換業者等の新たな業態まで幅広く、様々な情報に触れて、経験を積むことができることも魅力の一つです。
出典:
部門紹介|はじめに|新卒採用情報|金融庁
金融庁 採用案内 2022
金融庁 採用案内 2022-2023
最新のトレンド
新型コロナウイルス感染症への対応
コロナ禍の影響により、事業者が厳しい資金繰り状況に直面する中、金融庁は、関係省庁と連携しつつ、金融機関による業者への迅速かつ適切な資金繰り支援等が実施されるよう様々な取組みを進めています。
具体的には金融機関に累次の要請を行うほか、民間金融機関による「実質無利子・無担保融資」の整備や官民金融機関の連携強化、金融機関との取引に係る相談を受け付ける相談窓口の開設などに取り組んでいます。
金融庁の要請に応じて、金融機関は既往債務の条件変更や新規融資の実施など資金繰り支援に取り組んでおり、その結果、貸出金も足元で大幅に増加しています。
また、新型コロナウイルス感染症の影響拡大に伴い、保険契約者との対面での保険契約の手続が困難な事案が生じた場合、保険料の払込及び保険契約の更新について猶予期間を設ける等適宜の措置を講じるよう保険契約者保護の観点から要請を実施しています。
また、金融庁は新型コロナウイルス感染症に係る金融機関等の業務継続体制について、金融機関等に対し、累次の要請を実施しています。
緊急事態宣言が発出された2020 年4月7日には、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大による緊急事態宣言を踏まえた金融システム・金融資本市場の機能維持について」(麻生金融担当大臣談話)において、金融機能の維持や顧客保護の観点から、金融機関等 に対し「緊急事態宣言の対象地域における金融機関の対顧客業務の継続に係る基本的な考え方」に基づき、必要業務の継続について適切な対応に努めることを要請しています。
家計の安定的な資産形成への取組
近年、「貯蓄から投資へ」という機運が高まっており、投資を始める人が増えていますが、この流れを推進している官庁こそ金融庁です。
投資を始める場合は証券会社に証券口座を開設することになりますが、証券会社を含む金融機関の利益優先的な対応によって、消費者に不利益が生じる事例が続発しています。
金融機関に消費者目線での投資勧誘を促すために金融庁は全ての金融事業者が顧客本位の業務運営を行うことが重要であるとの認識の下、2017年3月に「顧客本位の業務運営に関する原則」を策定・公表しました。
また、金融庁は日本における株式や投資信託の投資金における売却益と配当への税率を一定の制限の元で非課税とする制度である「NISA制度」を創設しています。
しかし、NISA利用者は成人人口の1割程度にとどまるほか、資産形成のための投資の必要性は感じているものの、十分な知識・経験がなかったり、資産が少額であるとして、実際に投資をはじめるための一歩を踏み出せない人も存在しています。
したがって、こうした人々が少額からの長期・積立・分散投資を始め、適切なポートフォ リオを構築していくことを支援することが重要です。
金融庁としては現役世代に対し、投資を開始するきっかけを身近な場で得られるような環境を整える観点から職場を通じた情報提供が拡大されるよう金融庁・財務局の職員が講師となり、全国各地で地方公共団体等向けのつみたてNISAセミナーを行っています。
また、財務局とも連携し、都道府県庁、市役所、商工議所等に対し、つみたてNISA説明会実施等の働きかけを行っています。
金融庁の年収
金融庁単体での職員の年収は非公表ですが、人事局が公表している「国家公務員の業務状況等の報告」を基にすると、国家総合職採用の職員は1年目で300~400万円程度、30代で600~700万円程度、40代から50代で1000万円を超えてくるイメージです。
また、国家一般職については国家公務員25万3132人のうち、一般職にあたる行政職は14万2236人であり、給与は全職員の平均給与は41万6203円で、行政職に限ると40万8868円となっています。
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金融庁で求められる人物像・スキル
金融庁はどのような人物を求めているのでしょうか?詳しく解説していきます。
採用実績大学
金融庁単体での職員の出身大学は非公表となっています。
しかし、人事局が公表している「採用昇任等基本方針に基づく任用の状況」によれば、国家公務員の出身大学は東京大学、京都大学、東京大学大学院、早稲田大学の順番になっています。
志向性やスキル
金融庁採用ホームページによれば、金融庁では「金融行政のプロフェッショナルとなるポテンシャル・意欲のある方」を求めています。
これらをさらに分解すると以下の4つに大別されます。
・金融だけではなく、経済・産業や社会全体に対してアンテナを張り巡らす「視野の広さ」「好奇心」
・法律、経済、会計、語学、金融工学など幅広い分野の知識を吸収する「向上心」
・自由な発想で最適な政策を立案する「柔軟なアタマ」
・自らの手で日本を良くし、国民の幸せに貢献したいという「気概」「志」
金融庁のES・面接対策
最後に金融庁の就活対策を解説していきます。
ここが最も重要なところなので、ぜひ参考にしてみてください。
ES対策
志望動機
金融庁の採用ホームページで紹介されている内定者の志望動機について見てみましょう。
大学時代は物流について研究するゼミに所属していました。
物の流れを勉強していくなかでお金の流れ、金融にも興味を持ち始めたのがきっかけです。
クレジットカードによる決済やPASMO(電子マネー)など、私たちの身の回りには様々な金融サービスがあふれています。
これらを人々が安心して利用できる環境づくりに貢献したいと思い、志望しました。
私は金融業界を志望しております。
金融というものを扱う仕事は金融庁だけではなく、銀行や信用金庫など他にも多くあり、むしろ従事している人間は金融庁以外の人間の方が多くいるように思われます。
ですが、その中で金融庁というのは唯一無二の存在であり、日本の金融制度を作っていく審判であり最も中立な存在です。
だからこそ私は金融庁であれば最も公平な視点で日本経済を見渡す事出来る上に、多くの意見を聞く事が出来るので見識を広められると考えました。
そして中立であるからこそ持つ事の出来る広い視野こそ私の求めている事です。
なので金融業の中でも一番に金融庁を志望しています。
金融庁を志望する学生の多くは国家公務員志望というよりは金融業界志望の学生が多いようです。
志望動機を記載する際には金融業界に関心を持った理由、民間企業の金融業界ではなく、金融庁を志望する理由を明確にする必要があります。
関心のある事項、最近興味を持った出来事
金融庁のエントリーシートには「関心のある事項、最近興味を持った出来事」について記載する欄があります。
テーマについては限定されていませんが、金融庁のエントリーシートであるので、金融関連の出来事について記載するべきでしょう。
特に金融行政や金融庁に関連するテーマについて記載するために金融庁が開催している説明会に参加したり、金融庁が出版している白書などを読んで、関心のあるテーマを決めましょう。
テーマについては感想ではなく、明確な自分の意見を持っている必要があります。
面接対策
志望度
内定者の体験談によれば、金融庁の面接では志望順位について何度か確認されるようです。
金融庁は財務省、地方公務員、民間の金融機関など学生の併願先が多い官庁ですので、志望度が重要になります。
面接では「金融庁が第一である」旨を伝えることが重要です。
第二志望や第三志望の中央省庁について選考状況を聞かれることもありますが、「もし金融庁に内々定いただけたら辞退するつもりです」と答えるようにしましょう。
原課面接
金融庁では人事面談の他にも原課面接と呼ばれる職員面接があります。
金融庁で実際に働いている職員の方との面接であり、形式は金融庁の政策に関するディスカッション形式や職員からの政策の質問と学生の逆質問、エントリーシートに関する面接など職員によって多種多様です。
原課面接では学生の対応力や論理的思考能力、頭の回転の速さが採点されています。
また、職員の方から政策について説明がありますが、事前知識があったほうがスムーズに逆質問やディスカッションに入れます。
したがって、金融庁の採用パンフレットや発行している白書などを読み込んで、金融行政に関する知識を習得しておきましょう。
よくある質問
法律系や理工系など、大学(大学院)で金融・経済を学んでこなかった学生でも採用されますか?
金融庁の採用データによれば、金融・経済系の学生以外にも法律系や理工系の学生も多く採用されています。
金融行政には、金融・経済、法律はもちろん、ほかにも多くの分野の知識が必要です。
そのため、金融・ 経済系や法律系のほか、理工系など多様な専攻分野を持つ方を採用しています。
また、官庁訪問に臨むにあたり、金融・経済の専門知識は必要ありませんが、興味・関心は必要です。
業務に必要な金融・経済の専門知識 は入庁後に実務を通じて身につけることが可能です。
しかし、入庁後にこうした専門知識を学ぶ上では金融・経済に対する興味・関心と課題のある現状を変えようという想いを持っていることは必要です。
出典:
金融庁 採用案内
採用・セミナー情報 : 金融庁
業務において英語力は要求されますか?
金融はいまも昔もグローバルですから、もちろん、入庁後の業務においては英語力が要求されることがあります。
官庁訪問時、金融庁は英語力によって足切りを設けていませんが、英語力向上に向けた意欲は最低限必要です。
なお、金融庁は職員の英語力向上をサポートすべく、充実した海外留学制度や語学研修を有していますので、入庁後継続的に英語力を高めていくことが可能です。
出典:採用・セミナー情報 : 金融庁
採用人数を教えて下さい
事務系の総合職及び一般職の採用人数は以下のとおりです。
年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 |
総合職 | 11 | 15 | 13 | 13 | 15 |
一般職 | 25 | 18 | 26 | 22 | 24 |
まとめ
金融庁は国の経済の血液である金融を行政面から支えており、やりがいのある仕事ができます。
金融業界に興味のある学生の多くも金融庁を志望ししており、官庁訪問では金融庁の就活難易度は高めです。
ぜひこの記事を読み直して、金融庁の官庁訪問対策を万全にしてください。
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約90%の質問に回答が寄せられています。
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