
スポーツ庁の業界研究|就活に役立つ事業構造・将来性・働き方など徹底解説します
スポーツ庁は国内で唯一スポーツ行政を担当する省庁です。比較的若い省庁ですが、東京オリンピックやスポーツツーリズムなどスポーツの重要性が増す中でスポーツ庁の役割も増大しています。国家公務員を志望する学生の中でも知的好奇心のあふれる学生から注目を集めています。この記事ではスポーツ庁への入庁を目指す学生に向けて、スポーツ庁の採用ホームページやスポーツ白書、文部科学省の所管法令などをもとにスポーツ庁の役割、スポーツ庁職員の仕事内容についてまとめています。また、スポーツ庁及び文部科学省の官庁訪問について対策を解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
スポーツ庁とは
スポーツ庁は文部科学省の外局であり、スポーツのよる心身の健康増進、地域・経済の活性化、国際交流などを所掌事務としています。
スポーツ庁が設置されたのは2015年ですが、その理念は2011年に制定されたスポーツ基本法にあり、同法第二条では以下のように規定しています。
スポーツを通じて「国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む」ことができる社会の実現を目指す
具体的には全ての国民のスポーツ機会の確保、健康長寿社会の実現、スポーツを通じた地域活性化、経済活性化などが目的となっており、これらの目的を達成するために設置されたのがスポーツ庁です。
スポーツ庁が設置されるまではスポーツに関連する行政は様々な省庁がバラバラに実施しており、整合性のあるスポーツ行政の障害となっていました。
例えば、スポーツ振興は文部科学省、スポーツ施設建設は国土交通省、障害者スポーツは厚生労働省、スポーツビジネスは経済産業省、スポーツツーリズムは観光庁といった具合です。
省庁間のスポーツ政策を統合して一元化する組織の必要性が高まり、スポーツ庁が設置されたのです。
スポーツ庁の任務についてはスポーツ庁を所管する文部科学省設置法第一五条に以下のように規定されています。
スポーツ庁は、スポーツの振興その他のスポーツに関する施策の総合的な推進を図ることを任務とする。
スポーツは競技だけでなく、健康や仲間との交流など多様な目的で行われており、楽しみ、喜び、感動や共感など様々な価値を生んでいます。
スポーツ庁ではスポーツ施策の総合的な推進をするとともに、このような「スポーツの価値」を国民に届ける役割を担っています。
スポーツ庁の役割
スポーツ行政の推進
スポーツ審議会や日本スポーツ振興センターの運営、スポーツ基本計画の策定、武道など日本の伝統的な競技の振興、国内外の動向調査、戦略的広報など政策の企画・立案によってスポーツ行政を推進しています。
国際大会及びスポーツを通じた国際交流
東京オリンピックなど国際大会の招致、スポーツを通じた国際交流、国内外の大会におけるドーピング対策、スポーツを通じた国際貢献、世界のスポーツ界への積極的関与(人材育成・派遣等)などが挙げられます。
スポーツガバナンス
スポーツ団体のガバナンス改善、地域スポーツクラブ・スポーツ人材・指導者の育成、スポーツ選手のキャリア形成支援、 障害者スポーツの振興、産業界との連携促進などを実施しています。
スポーツ庁の仕事内容
地域・経済の活性化
現在、日本のスポーツ市場規模はスポーツ先進国とされる欧米諸国と比べると非常に小さいと言われている反面、市場の成長可能性が高いと言われています。
スポーツはヘルスケア、観光など様々な分野とタッグを組んで新しい商品・サービスを生み出していくポテンシャルを持っています。
例えば、スポーツ庁では経済活性化策としてスタジアム・アリーナ改革に取り組んでいます。
単にスポーツを見るためだけの施設としてではなく、地域におけるスポーツイベントの開催や、まちづくり構想と一体化した多目的 の施設としてスタジアム・アリーナを位置付けることで、 施設周辺の交流人口が増え、にぎわいを生み、地域経済の活性化に大きくつながります。
民間事業者のマッチング
最近では新型コロナウイルスが猛威をふるい、スポーツ界でも、多くのイベントが中止や無観客での開催を迫られました。
その一方で、IT技術等を活用した、ウィズコロナ / アフターコロナ時代の新しいスポーツの楽しみ方のアイディアが生まれつつあります。
このように、スポーツが他の産業分野や最新のテクノ ロジー、地域等と融合し、成長していくにはそのための機運の醸成やマッチングの場が不可欠です。
先進的な取組に光を当てるコンテストやスポーツと他産業との出会いの場づくり、新しく生み出されたアイディアを育てるための支援などを通じて、スポーツの成長産業化の土壌づくりをしていくことがスポーツ庁の重要な役割です。
その他関連業務
トップアスリートの練習環境の整備、運動が苦手な人でも楽しくできる運動メニューの発信、部活動の顧問を担う教員の働き方改革、スポーツ団体のガバナンスの強化などスポーツ庁の所掌事務は多岐に渡ります。
最新のトレンド
東京オリンピック・パラリンピックに向けた取組
東京2020大会に向け、スポーツ庁では国際競技力の向上に向けた環境整備やドーピング防止体制を推進しています。
具体的には日本スポーツ振興センター(JSC)に設置されたハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)に公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)、日本パラリンピ ク委員会(JPC)を含めた協働チームを設置し、競技団体の強化戦略プランの各段階で多面的にコンサルテーション・モニタリングを実施するとともに、そこで得た知見を各種事業の資金配分に関する競技団体評価等に活用することとしています。
また、大会の安全・安心な開催に向け、各種新型コロナウイルス感染症対策に取り組むと同時に新型コロナウイルス感染症の影響により強化活動に支障が生じないよ う、競技団体を支援する競技力向上事業助成金の助成率の嵩上げや、トップアスリート等が競技活動に専念した選手生活を継続するための個人給付の増額など、追加的な支援も実施しています。
Sport for Tomorrowの推進
「Sport for Tomorrow(SFT)」プログラムは、東京2020大会に向けて、世界のより良い未来のため、開発途上国をはじめとする世界のあらゆる世代の人々に、スポーツの価値とオリンピック・パラリンピック・ムーブメントを広げて行くことを目指しています。
もともとは2013年のオリンピック・パラリンピック競技大会の東京招致に際し、当時の安倍総理が100か国・1,000万人以上の人々にスポーツの悦びを届けると宣言したことをきっかけに始まりました。
これを受けて、2014年にはスポーツ庁や外務省、さらにはJSC、JOC、 JPCといったスポーツ統括団体等から成る運営委員会とSFTの趣旨に賛同し、スポーツを通じた国際協力・交流に携わる団体(企業、地方公共団体、NGO・NPO、大学等)で構成されたSFTコンソーシアム(官民協働体)が設立されました。
SFTコンソーシアムは①スポーツを通じた国際協力及び交流、②国際スポーツ人材育成拠点の構築、③国際的なアンチ・ ドーピング推進体制の強化支援に取り組んでおり、100か国・1,000万人以上の目標を予定よりも早く達成しています。
アスリートへの写真・動画による性的ハラスメントの防止に向けた取組
スポーツの大会等において、競技用ユニフォームを着用したアスリートが性的意図をもって写真・動画を撮影されたり、アスリートの写真・動画がインターネット上に性的意図を持って掲載されたりする事案が、以前から複数の競技で問題になってきました。
2021年5月にはテレビ番組に映った女性アスリートの競技画像39点をアダルトサイトに無断転載したとして、サイト運営者の男が著作権法違反疑いで警視庁に逮捕されました。
こうしたアスリートへの性的ハラスメントは競技への集中が妨げられるばかりでなく、精神的な苦痛から引退を考える人もいるため、深刻な問題となっています。
しかし、SNS等のツールの発達に伴い、写真・動画の悪用が多様化していること、また盗撮行為は刑法では規定されておらず、都道府県ごとに迷惑防止条例で取り締まっているのが現状であり、ユニホーム姿の選手を盗撮すること自体を罪に問うのは難しい、との見方もあることからアスリートが泣き寝入りせざるを得ない状況となっています。
スポーツ庁はスポーツ関係団体(JOC、JSPO、JPSA、一般社団法人大学スポーツ協会、公益財団法人全国高等学校体育連盟、公益財団法人日本中学校体育連盟、JSC) と協力し、相談窓口の設置などを実施しています。
今後はさらなる対処が予想されており、「盗撮罪」の法整備やネット事業者に画像の削除要請手続きが簡略化できる被害者救済の仕組みなどが議論の対象になりそうです。