
トイレタリー業界の業界研究|就活に役立つ事業構造・将来性・働き方など徹底解説します
人々の生活にとって身近存在であり、知名度が高く、人気があるのがトイレタリー業界です。生活 必需品であることから経営が安定している企業が多く、安定志向の学生から圧倒的な人気を誇り ます。トイレタリー業界の就活において重要なことはトイレタリー業界のビジネスモデルや業界の最新 の動向などについて理解して、その上で自分の強みや頑張ったことを、入社後にどう活かせるか を具体的にイメージし面接官に伝えることです。 この記事ではトイレタリー業界各社の有価証券報告書や公的機関のレポートを参考にしながら、 業界研究を行っています。ぜひ最後まで読んで、業界研究を完成させましょう。
トイレタリー業界とは
この章ではトイレタリー業界の
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
- 最新トレンドについて
解説していきます。
業界構造(Tier1・2や商流やメインビジネス(稼ぎ方)など)
トイレタリー用品と顧客ターゲット
トイレタリー商品とは身体を洗う石鹸やボディソープ、入浴剤などの「バス用品」、ボディクリーム やヘアカラー、肌のコンディションを整えるハンドクリームなどの「ボディケア用品」、洗剤や歯ブラ シ、ひげそりなどの「衛生用品」、子供用・介護用のおむつなどの「サニタリー用品」です。
このようにトイレタリー用品は化粧品や洗面用具などの身体の洗浄や身だしなみを整える目的を持つ商品の総称です。
基本的に身体の手入れをするための商品であり、顧客ターゲットは主に 女性となっています。
特に10代から30代の若い女性が主要な顧客層ですので、ターゲットに合わ せたイメージ戦略が重要となります。
ターゲットが視聴するテレビドラマやバラエティ番組などのテレビのCMを中心に宣伝活動が盛ん に行われます。
広告・宣伝活動を通じてブランド・商品の認知拡大、商品理解、トライアル購入の促進、リーピート購入の促進を図ります。
トイレタリーの製造メーカーは小売業者に直接販売するわけではないので、コンタクトがないように思われますが、実際には小売店で自社製品を置く棚の確保や「売れ筋商品」として視認性の高い場所を確保するために交渉を行います。
伝統的なビジネスモデル
トイレタリー商品は全く同じ商品を大量に生産するビジネスであり、一般的な日用品を販売するビ ジネスモデルが採用されています。
すなわち川上の製造業、川中の卸売業、川下の小売業で構成されています。
トイレタリー商品は流行やトレンドに左右される商品であるため、メーカーがマーケティング活動を行い、消費者ニーズをキャッチします。
収集した消費者ニーズに応じて、自社商品を企画・開発 します。自社商品を開発したら、製造に必要な原材料が特定されるため、商社や卸売業者から 原材料を仕入れます。
また、大手のトイレタリー製造メーカーでは自前で原材料の調達部門を保 有していることも珍しくなく、この場合は調達コストを削減することができます。
国内外から調達し た原材料を用いて自社の工場で量産用のトイレタリー商品を見込み生産します。
メーカーが製造したトイレタリーは卸売業者に販売されます。
卸売業者は製造メーカーと小売店の中間に介在しており、メーカーや小売店と比べると知名度は低いかもしれません。
しかし、卸売 業者は重要な役割を担っています。
仮にメーカーが小売店と直接契約を締結すると、メーカーか ら小売店に直接数千点ものトイレタリー商品を販売する必要があり、莫大なコストと労力が必要になります。
卸売業者は様々なメーカーからまとめてトイレタリー商品を購入して、在庫を確保し、 小売店からの発注に応じて、商品を販売しています。
トイレタリー商品のように種類が豊富で、大 量生産向きの製品の場合は特定のメーカーのトイレタリー商品のみを取り扱っている卸売業者と特定のメーカーの商品のみ扱う卸売業者があります。
また、一方で小売店の側も複数の卸売業者からトイレタリー商品を仕入れて、店頭のラインナップを豊富にして、主要な顧客層である若い 女性の購買意欲を上げる努力をしています。
ただ、近年では卸売業者を通じて、中間マージンが発生し、最終価格が上昇することを嫌ってメーカーと小売店が直接契約を締結する場合もあります。
トイレタリー商品は薄利多売のビジネスです。
また、長引くデフレ経済の中で消費者の低価格志向は強まっており、できるだけ最終価格を下げるために直接契約が普及し始めています。
メーカー→卸売業者と続いて登場するのが小売店です。
トイレタリー商品は大衆消費財ですので、デパートやスーパー、コンビニ、家電量販店など様々な小売店で販売されています。
メーカーが製造したトイレタリー商品は商社は卸売業者を通じて、小売店に販売され、小売店からさらに エンドユーザーである消費者の元に商品が届けられます。
市場規模・将来性(シンクタンクのレポートなど)
市場規模
日本石鹸洗剤工業会の調査レポートによれば、2020年の石鹸・洗剤の国内販売額は9,130億 2,200万円(前年比+2%)となりました。
さらに身体用は皮膚用が2,322億6,500億(同+7%)、頭 髪用が1,867億2,500万円(同△4%)、洗濯用の合成洗剤は1,937億900万円(同△3%)となりました。
さらにトイレタリーメーカー大手花王の調査によれば、2020年の入浴剤市場は約410億円(前 年比+6%)と拡大基調にあります。
さらに各社の有価証券報告書によれば、トイレタリー業界の主要企業(花王、ユニ・チャーム、ライ オン、アース製薬、小林製薬、ピジョン、クラシエホールディングス、サンスターグループ、エス テー、フマキラー)10社の売上高の合計は2兆9,762億円となっています。
シンクタンク矢野経済研究所が国内のトイレタリー用品、主要50品目の市場を調査した「2020年版 トイレタリー用品マーケティング総鑑」によれば、トイレタリー商品の市場規模の推移は以下のとおりになりました。
(単位:百万円)
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 |
1,817,569 | 1,878,361 | 1,928,006 | 1,919,550 | 1,987,703 | 2,097,430 |
2020年のトイレタリー業界の市場規模は増加に転じました。
2020年の業界の市場規模は前年比 105.5%の2兆0,974億円となりました。
商品別には洗濯用洗剤の売上が伸びています。
洗濯用洗剤には液体タイプ、粉末タイプ、個体 タイプといった種類がありますが、市場の8割を液体タイプが占めています。
液体タイプは高温の水を用いなくても汚れを落とすことができるため家庭用に根強い需要があります。
また、高齢者用のおむつの需要も拡大基調にあります。
少子化に伴って子供用のおむつは1年で市場が約15%縮小しましたが、高齢者用のおむつの需要は拡大しており、現在ではおむつ市場の半分を占める勢いがあります。
一方で、主要商品であった子供用のおむつの需要が減退し、市場は前年比8.8%減の3,461億円となりました。
殺虫剤の市場は縮小したようです。
2020年は例年に比べて暑い天候が続き、蚊の発生が抑制されたことが影響しました。
最も影響を受けたのが家庭用マスクや手指消毒・除菌系商材などの衛生用品です。
新型コロナ ウイルス感染症の影響で、日用品の消費が進んだほか、衛生用品を求めて、消費者がスーパー・ドラッグストア、コンビニエンスストア等小売り店舗に殺到しました。
市場全体の傾向としては、国内人口が少子高齢化による自然減へとシフトし、量的販売から質を 高めた高付加価値・高単価製品の販売を強化することで、数量ベースの伸び悩みを購入単価 アップでカバーする収益確保の戦略にシフトしています。
将来性
国内では人口減少によって顧客ターゲットは減少の一途を辿っています。
トイレタリー商品の主な顧客ターゲットは10~30代の女性ですが、高齢化によって人口は減少しています。
近年では訪日外国人観光客が増加したことでドラッグストアなどでインバウンド需要が高まって いました。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で渡航制限が発動され、インバウンド需要が消滅したことで国内需要の大幅な増加は見込めません。
一方で国内市場において商品に香りのバリエーションや、除菌効果、コンパクト性などの機能性 を追加して高付加価値商品を開発することで新しい市場を開拓しようという動きも見られます。
また、女性の社会進出やライフスタイルの変化によってECサイトの需要が高まっており、トイレタリー商品をECサイトで販売する動きが加速しています。
特に新型コロナウイルス感染症の拡大以降は店頭の有人店舗販売における対人接触や三密をさけるための生活雑貨品の購入法としてECサイトにシフトする動きが顕著です。
メーカー各社は自社オンラインサイト構築のほか、外 部インターネットモールへの出店を進めています。
このようにメーカーとしても様々な取組によって国内市場を開拓しようとしていますが、やはり国 内市場の急激な拡大は見込めず、将来の業績を左右するのは海外事業となります。
特に中国や東南アジアなど経済成長及び人口増加の著しい地域ではトイレタリー商品など日用品の需要は高まっています。
現地で消費者のニーズを捉え、商品ブランドを構築してシェアを伸ばすことがで きるかどうかが今後の鍵となりそうです。
業界の分類
国内メーカー大手
国内メーカー大手としては国内トイレタリー市場で首位に立つのが花王です。
ライオンが次点となっており、ほかにもユニ・チャーム、アース製薬、小林製薬、ピジョン、クラシエホールディングス、サンスターグループ、エステー、フマキラーなどが名を連ねます。
外資系メーカー
外資系のトイレタリーメーカーも日本市場に参入しています。
現在ではプロクター・アンド・ギャン ブル(P&G)ジャパンやユニリーバ・ジャパンといった外資系も主要プレーヤーとなっています。
最新のトレンド
鍵を握る中国需要
近年、外国人観光客が増加しており、ドラッグストアなどに外国人を列をなす光景も見られました。
特に多いのが中国人です。
中国人観光客が爆買いをして、中国に帰国してからも日本のEC 業者からトイレタリー商品を購入するリピーターもたくさんいました。
しかし、中国では2019年1月に「代購」と呼ばれる個人ブローカーを取り締まり、越境ECを推進す る目的で「中国電子商取引法(中国EC法)」をが施行されました。
同法によってこれまで課税を逃 れていたEC業者が日本国内の量販店や免税品店での購入をしなくなりました。
これによって大口顧客である中国人バイヤーが減少し、日本の美容機器や化粧品メーカーの国内店頭売り上げが軒並み減少しました。
一方でメーカー側は「中国市場に本腰を入れて取り組む機会」と前向きに受け止めており、現地 消費者向けの販売を強化しています。
例えば、中国大手ECサイト「アリババ」をはじめとする主 要ECサイトに出店し、越境ECによって日本製トイレタリー製品の現地消費者向け販売強化に取り組む企業が増加しています。
ただし、中国は香港やウイグルなどの人権問題を抱えている他、アメリカとの間で貿易戦争も加熱しており、中国での日本製トイレタリー用品の販売拡大には常に不確定要素があります。
大手メーカーを中心に海外進出が加速
国内市場は人口減少の影響で縮小しており、頼みの綱であったインバウンド需要も消滅したこと から各社は戦略の転換を迫られています。
各社が進めているのが海外進出です。
特に中国やASEAN地域などの人口増加と経済成長の著しい地域では日用品の需要が高まっており、各社は輸出体制や現地生産体制の強化を図ってい ます。
特に中国では日本製のおむつが人気を誇っています。
各社は子供用のおむつ商品の開発・販 売に注力しています。
一方で中国の現地メーカーも急速に技術力を向上させており、紙おむつの 質が向上しています。
これにより日本メーカーは苦戦を強いられており、各社は現地のニーズに 合わせた商品開発を急務としています。
トイレタリーメーカー業界最大手の花王は中国を中心に海外進出を推進しています。
2021年に 約60億円を投じて、中国の安徽省合肥市にある花王(合肥)有限公司の工場内に新棟を竣工しました。
サニタリー製品の現地生産体制を増強することで、中国消費者のニーズに対応し、いちはやく消費者に届けることを目的としています。
花王は中国のみならず東南アジア諸国に7つのブランドを展開し、アジアでの販売網拡大を狙っています。
また、衛生用品大手のユニ・チャームはインドネシアなどアジアを中心に、中東、ロシア等でも事業を展開しています。
ベビーケア、フェミニンケア商品を中核とし、こちらも海外事業の展開を加速しています。