
ドラッグストア業界の業界研究|就活に役立つ事業構造・将来性・働き方など徹底解説します
成長産業である医療分野に位置するドラッグストアは多くの学生が志望します。国内経済が縮小 する中で堅調な成長を続けており、数少ない成長産業と言えるでしょう。 ドラッグストアの総合職として内定を獲得するためにはドラッグストアや医薬品のビジネスモデル や商流、業界の最新の動向について理解し、その上で自分の強みや頑張ったことを、入社後に どう活かせるかを具体的にイメージし面接官に伝えることが重要です。 この記事ではドラッグストアについて各社の有価証券報告書や民間団体、公的機関のレポートを 参考にして、詳しく業界研究を行っています。ぜひ最後まで読んで、業界研究を完成させましょう。
ドラッグストア業界とは
この章ではドラッグストア業界の
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
- 最新トレンド
について 解説していきます。
業界構造
ドラッグストアの定義
ドラッグストアとは医薬品、化粧品、食料品(生鮮食品を除く)、生活雑貨(日用家庭品、文房具、フィルム)、健康食品など健康や美容にかかわる分野を中心に幅広い商品を卸売業者から仕入れ、消費者に販売している小売店を指します。
「ドラッグ」ストアという名称から医薬品のみを扱っ ているとイメージされやすいですが、日用品や食品、ペットケア用品など多岐に渡る商品を取り扱っています。
実際に当初はドラッグストアという名称の通り、医薬品を中心に扱う小売店の業態の店舗のみをドラッグストアと呼んでいましたが、ビジネスモデルが変化したことによって、現在では医薬品以外の生活用品を広く取り扱っています。
最近では、医療の分業が進んでいることもあり、医療用医薬品(処方薬)を扱う許可を得て、薬剤師を配置した調剤窓口を併設する店舗も多く、病院が発行する処方箋をもとに調剤を行い、代金の一部を患者から、残りを審査支払機関から受け取っています。
主に医師が処方する医療用医薬品に対して、ドラッグストアで取り扱っている医薬品はOTC医薬品と呼ばれ、副作用リスクの低い医薬品であり、法律上では、市販薬、一般用医薬品とも呼ばれています。OTC医薬品の分類は以下のとおりです。
種類 | 対応する専門家 販売者から お客様から インターネット、郵便等での販売 お客様への説明 相談への対応 |
|
第1類医薬品 | 副作用、相互 作用などの 項目で安全 性上、特に注 意を要するもの。 | 薬剤師 書面での情報提供(義務) 義務可 |
第2類医薬品 | 副作用、相互作用などの項目で安全性上、注意を要するもの。 | 薬剤師または登録販売者 努力義務 義務可 |
第3類医薬品 | 第1類医薬品 や第2類医薬品に相当するもの以外 | 薬剤師または登録販売者 法律上の規定なし 義務可 |
ドラッグストアではスーパーや量販店と比べて、生活雑貨や日用品、化粧品、食品が低価格で販売されており、低価格志向の強い消費者を惹きつけています。
これは粗利益率の高い一般用医 薬品(大衆薬)で稼いだ利益を原資として医薬品以外の商品の低価格化を実現しているためです。
また、処方薬には公定価格(薬価)があるため、価格の下落がなく、ドラッグストアの利益を支えています。
このように日用品や化粧品が低価格が手に入ることから顧客ターゲット層は女性となります。
小売店ビジネス
最も一般的な小売店のビジネスモデルはメーカーや卸売業者、商社から仕入れた商品を最終消費者に販売する形態です。
私達消費者の最も身近な存在であり、おなじみの業界です。
ドラッグストアも小売店に含まれます。
ただし、ドラッグストアで販売している商品は商流によって医薬品 とそれ以外の日用品、食料品、化粧品などに分けられます。
医薬品の場合は医薬品メーカーが製造を行っていますが、医師から処方される医療用の医薬品は医薬品卸売業者に販売され、さらに調剤薬局に販売されます。
調剤薬局からエンドユーザー に商品が届けられ、調剤薬局は消費者と審査支払機関から代金を受け取っています。
近年では 調剤薬局を併設するドラッグストアも増加していますので、全く同じ商流を持つドラッグストアもあります。
ただし、メインの商流は上記のものではありません。
医薬品に関しては医薬品メーカーが製造し た医薬品のうち一般用医薬品、いわゆるOTC医薬品だけが通常の卸売業者に販売されます。
これらの卸売業者は化粧品メーカーや食料品メーカーなどから幅広く商品を仕入れています。
そして、それらの商品をまとめて、ドラッグストアに販売しているのです。
そして、ドラッグストアからエ ンドユーザーに商品が販売されます。ドラッグストアの商流としてこちらのほうが主流となっています。
事業特性
ドラッグストアは小売店ですが、通常の小売店と異なる特殊な事業特性があります。
ドラッグストアではスーパーや化粧品店など他の小売店と比較して低価格帯で日用品や化粧品、食料品が 販売されていることからデフレ化で低価格志向が強まっている消費者の人気を集めています。
このような低価格攻勢を行えるのは、ナショナルブランド(全国的に知れわたっているメーカーブランド)の商品を低価格で販売し、集客を行い、粗利率の高い医薬品を販売しているからです。
利益を上げる商品と集客のための商品の役割分担がされていると言えるでしょう。
ドラッグストアがメインの商品として扱う医薬品は人々の健康や生活に影響を与えるものですので、取り扱いについて薬事法で詳細に規定されています。
薬事法は政府の医療・福祉政策の変更によって改正されることがあるため、改正の内容によっては業績に大きな影響を与えます。
規制産業であることから、国の政策を強く受ける業界であると言えるでしょう。
立地や商圏の影響が非常に強く、店舗の業績は、立地条件や商圏に大きく依存する為、出店戦 略が業績を左右する点は他の小売店と対して変わりませんが、独特の多店舗展開「ドミナント」 が形成されることがしばしばあります。
これはある特定の地域にドラッグストアの店舗を大量に出 店することで、各店舗の商圏のすき間を埋め、その地域における圧倒的なシェアの獲得を狙います。
特定の地域は「ドミナント」と呼ばれ、ドミナント内において消費者から圧倒的な知名度を獲得することで競合他社が入る隙きを与えず、独占的な地位を確立します。
ほとんど一強体制を構築した後は広告宣伝費にコストをかける必要もなくなり、配送センターの運用も効率化されます。
また、ドミナントを形成し、特定の地域において圧倒的なシェアを持つことで規模のメリットを働かせ、医薬品卸売業者に対して交渉において優位に立てます。
仕入れ単価やその他の仕入れ条件について有利な条件を引き出すことが可能になり、さらなるコスト削減効果が期待できます。
また、規模の大きなドラッグストアは自社でのプライベートブランドの開発・提供が可能であり、粗利率の向上が期待できます。
市場規模・将来性
市場規模
ドラッグストア業界の主要企業23社(ウエルシアHD、ツルハHD、コスモス薬品、サンドラッグ、マ ツモトキヨシ、スギ薬局、ココカラファイン、クリエイトSDHD、クスリのアオキHD、アインHDなど)の有価証券報告書によれば、これら企業の売上高の合計は2020年末時点で6兆8,674億円となっ ています。
ドラッグストアは高い粗利率を誇る医薬品と化粧品の利益を原資として、食料品や日用品で低価 格攻勢を強めており、コンビニエンスストアやスーパーから顧客を獲得してきました。
さらなる収益を確保するために調剤薬局部門を強化する動きが広がっています。
この結果、ドラッグストア の市場規模は毎年拡大しており、日本チェーンドラッグストア協会が取りまとめた『2020年度版 業界推計 日本のドラッグストア実態調査(速報版)』によると、2020年度のドラッグストアの全国 売上高(推定値)は対前年度比4.6%増の8兆363億円となり、全国売上高(推定値)がとうとう8兆円を超えました。
また、経済産業省の商業動態統計によれば、2020年のドラッグストアの売上高 は前年比6.6%増加しました。
新型コロナウイルス感染症によって緊急事態宣言が発令され、「巣ごもり需要」が発生したことを背景として「食品」は12.4%増、「家庭用品・日用消耗品・ペット用 品」は11.6%の増加となりました。
日本チェーンドラッグストア協会によれば、ドラッグストア業界の市場規模の成長率は15年度は1.1%増、16年度は5.9%増、17年度は5.5%増、18年度は 6.2%増、19年度は5.7%増であり、16年度から5年連続で4%超の成長を続けています。
日本チェーンドラッグストア協会によれば、商品別売上高構成比は以下のとおりです。
調剤・ヘルスケア | ビューティケア | ホームケアフーズ | その他 | |
売上高 | 2兆5338億円 | 1兆5603億円 | 1兆7454億円 | 2兆1963億円 |
成長率 | 31.50% | 19.40% | 21.70% | 27.30% |
割合 | +5.7% | +0.4% | +7.9% | +4.4% |
このようにドラッグストア業界は急成長を続けている業界です。
背景には大手ドラッグストアを中 心に低価格攻勢の強化、営業時間の拡大などの施策が打たれており、利便性が大きく向上したことがあります。
ただし、今後は従来のフォーマットだけでなく、人口減少や超高齢社会といった 社会構造の変化を見据え、地域包括ケアシステムに対応した新たなビジネスモデルの構築が必要となってくると予想されます。
将来性
日本チェーンドラッグストア協会は「2025年にドラッグストア業界を10兆円産業にする」ことを目標に掲げています。
協会の会長である池野氏によれば、新規出店数を増やすことやネット販売を加速させることによって10兆円だけではなく、20兆円の市場規模を見込めるとしています。
日本では高齢化が深刻化しており、増大する医療費対策として市販薬やセルフチェッカーを核にしながら、日常生活のなかで病気の予防を行う「セルフメディケーション」の取組が推進されています。
政府は「セルフメディケーション」推進のためにセルフメディケーション税制の期限延長と拡 充を決め、さらに厚生労働省は「セルフメディケーション推進に関する有識者検討会」を立ち上げました。
このような中で家計の医薬品支出は増加傾向に有り、官民挙げてドラッグストアの主要製品である医薬品の市場が拡大すると見られています。
また、新型コロナウイルス感染症が落ち 着き、渡航制限が解除されれば、インバウンド需要が回復すると見られており、ドラッグストアに とってはプラスです。
ドラッグストアの側もさらなる収益拡大のために大手流通企業や、大手チェーングループに参加・ 統合し、プライベートブランドの共同開発、共同仕入れを行うことにより、ナショナル・ブランドに代 えて収益率の高いプライベートブランド商品を取り扱うことにより、高い収益率を確保し、更なる 新規出店を可能とする動きが強まっています。
業界の分類
大手6社
2021年5月までの1年間に迎えた決算期での連結売上高でみると、業界最大手はウエルシア ホールディングス(HD)で、2位はツルハホールディングス(HD)となっています。
これにコスモス 薬品、スギホールディングス(HD)、マツモトキヨシホールディングス(HD)、バローホールディング ス(HD)の順で続いています。
これら6社で業界の市場規模の半分を占めます。
中堅・準大手
スギホールディングス、ココカラファイン、富士薬品、クリエイトSDホールディングスなど中堅・準大手に当たります。
これらの企業で業界シェアの20%程度を占めます。
小規模事業者
ドラッグストア業界には多数の小規模事業者が乱立しています。
これらの企業で全体の25%程度のシェアを占めています。
最新のトレンド
医薬品、化粧品、家庭雑貨、食品いずれも市場が拡大
ドラッグストアは医薬品をメインとしながらも化粧品や日用品、食料品などを取り扱っています。
化粧品や日用品などを低価格で販売し、集客し、粗利の高い医薬品を販売するビジネスモデルです。
ウエルシアHD、ツルハHD、コスモス薬品、サンドラッグ、マツモトキヨシなど業界大手の有 価証券報告書によれば、医薬品、化粧品、日用品、食料品などいずれの分野でも売上高が増加 しています。
特に食料品は売上高の増加が顕著であり、売上高に占めるシェアも最大になっています。収益構造からも食料品で集客し、医薬品で稼ぐというドラッグストアのビジネスモデルが明確です。
ドラッグストア各社の有価証券報告書によれば、売上高に占める各商品の構成比は異なり、各社ともそれぞれの強みを活かした戦略をとっています。
例えば、食料品の割合が高いコスモス薬品は食料品を集客ツールとしてだけではなく、メインの収益源として育成しています。
医薬品の割合が高いウエルシアHDはウェブ上で処方箋の予約ができるシステムを導入し、さらなる市場拡大を図っています。
新型コロナウイルス感染症が与えた影響も分野によって異なります。
新型コロナウイルス感染症 以前はドラッグストア業界はインバウンド需要の恩恵を受けていましたが、渡航制限が発令され たことでインバウンド需要は消滅しました。
これによって外国人観光客から根強い人気のあった化粧品は売上が激減する一方で、感染症対策としてマスクや消毒液、ハンドソープなどの衛生用品は好調に推移しています。
業界再編の動き
2021年10月にドラッグストア業界6位のマツモトキヨシHDと業界7位のココカラファインが経営統合し、マツキヨココカラ&カンパニーが誕生する予定です。
これによって統合後の売上規模は1兆円となり、業界最大手となります。
マツモトキヨシHDの子会社であるマツモトキヨシの松本貴志社長は、「2026年3月期をメドにグループ売上高1.5兆円、営業利益率7%を目指す」と宣言するなど業界に与える影響は大きくなりそうです。
都市型店舗の先駆けであるマツモトキヨシはココカラ ファインとのM&Aのみならず、2019年11月にはベトナムでの事業展開に向け、ロータス・フード・ グループ会社と合弁事業契約を結びました。
先駆けて進出しているタイや台湾地域を含めさらな る海外事業の拡大に動いています。
ドラッグストア業界では中堅企業を中心に大手ドラッグストアの傘下に入って、事業再生を行う傾向が強まっていました。大手企業グループに参加することで、プライベート商品の共同開発や共 同仕入れによる収益力の向上と、人材経営資源と経営手法の共有による事業基盤の長期的な 成長性の拡大を狙っています。
また、大手ドラッグストアとしてもM&Aによって新しい販売エリア を獲得したいという思惑があります。
ドラッグストア業界は順調に成長を続けていますが、自社単独での新規出店には限界があるほか、新型コロナウイルスの影響で駅前繁華街店舗の客数が 減少するなど状況は一変しており、こうした業界再編の動きは各社の将来への危機感の表れで もあります。
ドラッグストア業界の主要会社を比較
ここではドラッグストアの中から
- ウエルシアホールディングス
- ツルハホールディングス
- スギ薬局
を取り上げて解説していきます。
それぞれの企業の強みなどが明確にわかるようになります。
それぞれの企業での面接アピールポイントの参考にしてみてください。
ウエルシアホールディングス(HD)
ウエルシアホールディングスは調剤併設型ドラッグストアチェーンであるウエルシア薬局の持株会社です。
コア企業であるウエルシア薬局は1959年に創業した十字薬局に起源を持ち、その後 一の割薬局と池野ドラッと統合する形で2002年に誕生しました。
グループ傘下にはウエルシア薬局のほかにシミズ薬品株式会社、株式会社丸大サクラヰ薬局、 金光薬品株式会社、株式会社よどや、株式会社クスリのマルエなどがあります。
ウエルシア薬局は地域のお客様の豊かな社会生活と健康な暮らしを提供するために地域の医療機関や介護施 設との連携を深め、専門性を追求し、介護や地域医療を意識した調剤併設型ドラッグストアを目指しています。
ウエルシア薬局は北は岩手から南は広島・島根まで、東北・関東・北陸・甲信越・東海・関西・中国の広域をカバーし、現在、店舗数は1,800店舗に達しています。
「超高齢社会のインフラとして のドラッグストア」を目指しており、コンビニ並みに多様なサービスを提供し、ほとんどの店舗で深夜営業を行っています。
また、多様な顧客ニーズに応えるよう「かかりつけ薬局」のコンセプトに 基づき、「調剤併設」、「カウンセリング営業」、「深夜営業」、「介護」を軸としたビジネスモデルを 構築しています。
ポジショニング/強み/特徴
ウエルシアホールディングスの強みはなんと行っても知名度の高さです。
同社の中核企業である ウエルシア薬局は業界最大手であり、全国的な知名度は抜群です。
成長分野への投資を積極的に行っています。
「超高齢社会のインフラとしてのドラッグストア」を 謳っており、介護領域に進出しています。
グループ傘下のウエルシア介護サービス株式会社では訪問入浴介護、居宅介護支援、訪問介護、福祉用具の販売・レンタルの他ドラッグストア併設型のデイサービス、グループホーム事業などの在宅介護サービス事業に加え、有料老人ホー ム・サービス付高齢者向け住宅の運営を行っています。
ドラッグストアという領域に留まらず、医 薬品販売に依存しないビジネスモデルを構築しつつあります。
ウエルシアホールディングスは現在、「調剤併設」、「カウンセリング営業」、「深夜営業」、「介護」 の4つの事業領域を持ちますが、このうちカウンセリング営業では薬剤師、登録販売者、管理栄養士などの専門家が「未病」「予防」「介護」などの観点から、消費者の相談にのり、その人にとっ て最適のファンデーションやTPOに沿った化粧品の使い方、患者の体格や体調に合った介護用 おむつなどを紹介します。接客×カウンセリングという新しい営業のあり方によって顧客の商品購 入を促進しています。
また、海外市場を成長分野と位置づけて投資を行っています。
2017年にはシンガポールで百貨 店と総合小売業を展開するBHGホールディングスと合弁会社Welcia-BHG(Singapore)Pte. Ltd.を設立しています。
収益の柱
2021年2月期有価証券報告書によれば、「ドラッグストア」を基本として、医薬品・衛生介護品・ベ ビー用品・健康食品、調剤、化粧品、家庭用雑貨及び食品等の販売を主たる事業とする小売業 を主な事業としています。
当社グループは、医薬品・調剤・化粧品等を中心とした小売事業の単一セグメントです。
業績動向
2021年2月期有価証券報告書によれば、テ レワーク等による化粧品需要の減少等の影響がありましたが、感染症予防対策商品や食品等の需要増により売上高は好調に推移しました。
調剤については、薬価改定の影響に加えて、受診抑制による処方箋枚数の減少、長期処方の増加による処方箋単価の上昇等の影響もありましたが、ウエルシアモデルを推進し調剤併設数は 1,643店舗となりました。
その結果、売上高は949,652百万円、営業利益は42,974百万円、経常利益は45,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は27,999百万円となりました。
ツルハホールディングス(HD)
ツルハホールディングスはドラッグストア大手の株式会社ツルハ、株式会社レデイ薬局、株式会 社くすりの福太郎などを傘下に持ちます。
コア企業であるツルハでは北海道・東北・関東・甲信 越・中部・関西・四国およびタイに1,253店舗を持ち、グループ全体では2,357店舗を持ちます。
1929年に北海道旭川にツルハ薬師堂を創業したことに起源を持ち、老舗のドラッグストアとして 高い信頼を獲得しています。
ツルハは「お客様第一主義」をモットーに「かかりつけドラッグストア」を目指し、店舗ネットワーク を活かしてさらに充実した地域密着型ドラッグストアを推進しています。
店舗数を急激に増やしており、北海道・東北地区ではシェアNO.1と、東日本を代表するドラッグストア・調剤薬局チェーン へと成長しています。
ポジショニング/強み/特徴
ツルハホールディングスは「いつも身近にあるドラッグストア」を目指しており、地域集中出店によるシェア拡大を早期に図るドミナント戦略を推進しています。
いくつかの地域で圧倒的なシェアを 獲得しており、規模のメリットを働かせています。
ドミナント戦略を推進しているため、医薬品卸売 業者に対する交渉力があるほか配送センターの運用を効率化しており、コスト削減ができていま す。
ツルハの傘下の薬局は調剤薬局とドラッグストア併設店舗です。
したがって、新型コロナウイルスの影響や薬価の改定があって業績が悪化してもドラッグストアの売上で補完することができるという特徴があります。
ツルハといえば、プライベートブランドというイメージがある人もいるかもしれません。
プライベート ブランドが多く安価な医薬品やツルハでしか購入できない商品が多数あり、集客効果が高いです。
したがって、営業利益率が高く、収益性が高いことが強みとなっています。
ツルハは新しい取組にも積極的であり、ネット販売の強化しています。
オンラインショップ「e-shop 」は「ツルハグループ」の公式通販サイトであり、医薬品、化粧品、日用品、サプリメント等3万点以上の品揃えがあります。
その他、電話やFAX受注による通信販売も行っており、店舗販売で培ったノウハウを活用し、店舗展開地域以外のお客様も含め、全国に商品を供給するための販 売チャネルを拡充しています。
収益の柱
2021年5月期有価証券報告書によれば、商品別の報告セグメントは以下のとおりです。
- 医薬品
- 化粧品
- 雑貨
- 食品
- その他
医薬品
売上高:193,783百万円
化粧品
売上高:133,348百万円
雑貨
売上高:260,232百万円
食品
売上高:212,803百万円
その他
売上高:115,281百万円
業績動向
2021年5月期有価証券報告書によれば、新型コロナウイルス感染拡大の影響については、感染予防関連商材の需要増、緊急事態宣言等による外出自粛に伴う日用品、消耗品、食品等の需要増があったものの、インバウンド需要の剥落や化粧品等の需要減、さらに下期においてはかぜ薬を中心とした季節品の売上不振などの成長阻害要因が見られました。
しかし、ドミナント戦略に基づく地域集中出店および既存店舗のスクラップアンドビルドを推進したことにより当連結会計年度における業績は、売上高9,193億3百万円(前年同期比9.3%増)、営業利益483億77百万円(同7.5%増)、経常利益476億88百万円(同3.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益262億83百万円(同5.8%減)となりました。
スギ薬局
スギ薬局は1976年に愛知県西尾市下町に、医薬品・健康食品・化粧品・日用品の販売および処方せん調剤などのサービスの提供を目的として創業されました。
創業以来、一貫して地域密着で調剤併設を行ってきました。
スギ薬局は「かかりつけドラッグストア」というコンセプトの下、東・中部・関西・北陸で約1,400店舗を展開しています。
経営ビジョンは「私たちは、地域の“健康・キレ イ・快適・安心”を支える、身近で、気軽に、頼れる存在になります」であり、処方せん調剤、予防 未病、在宅医療まで幅広く対応しています。
薬剤師、医薬品登録販売者、管理栄養士、ビューティアドバイザーによる親切なカウンセリングを中心に、地域のセルフメディケーションの実現、健 康社会の実現を目指しています。
スギ薬局は他のドラッグストアと同じ用に医薬品だけではなく、化粧品・日用品・食品・アルコール 飲料なども取り扱っています。
「スギ薬局」「スギドラッグ」「ドラッグスギ」「ジャパン」の店舗ブランド名で展開しており、調剤を行っている店舗は「スギ薬局」、調剤を行っていない店舗は「スギドラッグ「ドラッグスギ」となっています。
ポジショニング/強み/特徴
スギ薬局の経営戦略の軸はドミナント戦略と核店舗です。
特定の地域で地域集中出店による シェア拡大を早期に図っており、いくつかの地域では圧倒的なシェアを占めています。
また、スギ薬局の独自的な店舗である問題解決型の店舗「核店舗」の展開を推進しています。
核店舗とは セルフの健康測定コーナーをはじめ、健康相談、保健指導、調剤、医療機関併設、福祉用具貸 与・販売、在宅医療などの機能を付加し、さらにコミュニティスペースを設け、管理栄養士・薬剤師によるイベント開催を定期的に行うことで、ドラッグストアとしての健康サポート機能を強化した店舗です。
また、ドラッグストア事業だけではなく、医療・介護分野へ本格的に進出しています。
処方箋調剤や、店頭でのお薬に関するご相談対応、医薬品販売と必要に応じた受診推奨、電話やFAXを用 いたオンラインでの服薬指導及びお薬の配達を行っています。
店頭には薬剤師や管理栄養士、BAがいるため、専門的な提案ができるのも特徴です。
薬剤師や看護師、リハビリ専門職、介護 支援専門員など、スギ薬局グループのコメディカルが、地域の多職種と連携して提供する在宅訪問サービスも行っています。
スギ薬局店舗を“地域 の高齢者の通いの場”と位置づけ、自治体と 連携した介護予防体操や健康測定など高齢者向け予防プログラムを店舗内のスペースで定期的に実施しています。
社会問題の解決にも積極的に取り組んでおり大きな社会課題となっている高齢者を中心とした買い物難民を支援すべく、当社のみならず高齢者に接点を持つ介護事業者と連携しながら、日用品・医療用品等高齢者に必要な商品をお届けする新しいサービスモデルを展開しています。
健全な財務体質を誇っていることでも定評があります。
無借金経営であり、財務基盤が盤石であ り、コロナのように事業環境が悪化しても堅調に売上を伸ばしています。
そのため、「コロナ禍で も多く採用する企業ランキング1位」に選ばれており、経営難で採用数を削減している企業が多い中、会社の成長性、安定性でもトップクラスです。
収益の柱
2021年2月期有価証券報告書によれば、子会社別の報告セグメントは以下のとおりです。
- 株式会社スギ薬局
- スギメディカル株式会社
株式会社スギ薬局
売上高:117,597百万円
事業内容は以下のとおりです。
トータルヘルスケア戦略に基づき、医薬品・健康食品・化粧品・日用品を販売するとともに、処方 せん調剤や地域の医療関係者と連携した在宅医療に取り組む『地域医療対応型ドラッグストア』の経営ほか、お客様の健康維持・予防までを一貫してサポートするための各種サービスを提供し ています。
スギメディカル株式会社
売上高:479,828百万円
事業内容は以下のとおりです。
看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問看護サービスならびに地域の訪問看 護、訪問介護、通所介護等サービス提供機関との連携による終末期医療を含めた専門性の高 いサービスを提供しております。
業績動向
2021年2月期有価証券報告書によれば、売上高は6,025億10百万円(前年同期比11.2%増、 605億46百万円増)、売上総利益は1,812億91百万円(同11.8%増、191億9百万円増)、販売費及び一般管理費は1,475億90百万円(同11.5%増、151億69百万円増)、営業利益は337億1百万円(同13.2%増、39億39百万円増)、経常利益は353億33百万円(同12.3%増、38億60百万円増)、これに伴い、親会社株主に帰属する当期純利益は211億20百万円(同1.6%増、3億38百万円増)となりました。