
リモートハラスメントの実態と対策。リモート環境でハラスメントが減少?
Job総研は会社員351人を対象に「2023年 リモハラの実態調査」を実施しました。同調査をもとに、企業が抱えるテレワークの実態と対策を考察していきます。
リモートハラスメントを受けたと認識している方はどのくらいいるのでしょうか。
またどのような時に、リモートハラスメントを受けたと感じるのか調査の中でいただいたコメントもご紹介します。企業に求められるリモートハラスメント対策も含めて解説していきます。
リモートハラスメントとは?
昨今の社会情勢の中でテレワークを導入し、コロナ前のようなフル出社スタイルに戻さずに、テレワークを併用する企業が増えました。
テレワーク率が高いことで新たなハラスメント用語である「リモートハラスメント」「テレワークハラスメント」が注目されています。
リモートハラスメントとは在宅勤務などのオンライン業務における、人権侵害行為(ハラスメント)のことです。
リモートでのハラスメントの内容は、具体的に以下の内容が挙げられています。
- 業務時間外のチャットの強要
- WebカメラのON・OFF
- プライベートの言及
- 室内や生活音をチェックする
- 過度の業務状況の報告・強制など
リモートハラスメントは、周囲の目に行き届かない状況で起こるため、行動がエスカレートしやすい傾向にあります。
「2023年 リモハラの実態調査」の概要
Job総研が実施した「2023年 リモハラの実態調査」をもとに、企業が抱えるテレワークでのハラスメントの課題や対策について考察していきます。
<調査概要>
調査対象者:全国 / 男女 / 20~50代
調査条件:・1年以内~10年以上勤務している社会人
・20人~1000人以上規模の会社に所属
調査期間:2023年3月8日~3月13日
人数 :351人
調査方法:インターネット調査
テレワーク経験者は7割越え
新型コロナの感染症法上の位置づけが変わっていく中、調査結果ではテレワークを経験したことがある方は7割を超えることがわかりました。
リモートワークが定着し多様な働き方が実現していますが、リモートワークでのハラスメント行為に悩まされているといった声も挙がっています。
ハラスメントに対して「対面」と「リモート」ではどちらが気を遣うのでしょうか。
ハラスメントに対して対面の方が気を遣う【8割】
調査結果では、ハラスメントに対して約8割の方が「対面」の方が気を遣うという回答が得られました。
対面でのハラスメントに関しては下記のような事例があります。
- 身体的な攻撃
- 精神的な攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害
参考資料:ハラスメント基本情報|あかるい職場応援団 -職場のハラスメント|厚生労働省
対面でのハラスメントはリモートワークが盛んになる前にも、課題としてはありましたが、リモートワークが定着した現在ではテキストコミュニケーションの難しさや、画面越しの限られた情報の中でのコミュニケーションの難しさがあります。それ故に、上手くコミュニケーションが取れずハラスメントリスクに晒されるなど、対面では起こり得ない課題に対してのマネジメントが求められています。
では実際に、リモートハラスメントを受けたことがあると認識している方はいるのでしょうか。
リモートハラスメントを受けたと認識【2割】
調査結果では、リモートハラスメントを受けたと認識している方は全体の2割ほどでした。
リモハラの増減についてのコメントの一部をご紹介します。
テレワーク導入当時よりも、「リモハラ」に該当する原因が減少したとの声が挙げられていました。
またリモハラを気にしてWeb会議などでカメラオンを強要されることもなくなったそうです。
リモートワークにも慣れてきたことで、多くの企業で当初よりリモートマネジメントは改善の傾向があるようです。
しかしながら、2割の方はリモートハラスメントを受けたと認識していることも事実です。
どのような時にリモートハラスメントを受けたと感じるのでしょうか。
業務時間外のチャットやSNSの連絡を強要するがトップ
調査結果では、リモートハラスメントを受けたと感じるのは、「業務時間外のチャットやSNSを通したやりとり」が41.1%と最も多い結果でした。
次に「WEBカメラを常につなげた状態を強要する」と「極めて短い頻度で業務状況を報告させる」が同票の25.0%という結果になりました。
リモートワークで仕事場が自宅になり、仕事とプライベートの線引きが難しいことが影響していることがわかります。
また業務状況が見えない不安からの監視・強要もハラスメントの対象になっています。
カメラオンの強要はハラスメント?
リモートワークの際にどのようなことが監視されている、不快に感じるのか、調査で得たコメントを一部ご紹介します。
カメラオンの強要や出勤圧力など業務が見えない不安から、モラルの欠けた行動に変化していると考えられます。
リモートワークでは報連相を適度な頻度で行うことで、周囲を安心させることも重要です。
リモートワークをポジティブなものにするには、フル出社時代よりもチームでの連携強化、自己管理などの意識が必要と言えるでしょう。
ハラスメントで相談したい人は上司がトップ
調査結果では、リモートハラスメントがあった際に相談したい人のトップは上司の28.2%でした。
次に人事が18.5%、同僚が18.2%でした。
相談したい理由について、一部のコメントをご紹介します。
相談したい理由について、「話しやすい」「頼りにしている」など信頼できる人にまず相談するという声が挙がっていました。
ハラスメント相談窓口を設けている企業は適切な対応が期待できます。
いずれにしても、相談窓口があることは従業員にとって安心して働ける一つの要素になるでしょう。
リモハラ防止対策「不満足」が最多で71.5%
職場でのリモハラ防止策の満足度は、不満足の回答が71.5%でした。
また職場でのリモハラ防止対策の有無について、「対策をしていない」「有無を知らない」という回答が合わせて85.8%と過半数を越える結果となりました。
防止対策ができていない企業はリモートワークでのルールや対策が不透明であり、それが不満足の原因に繋がっている可能性があります。
社内でリモートワークにおけるルールを作り、積極的な実態の把握などリモートハラスメントと向き合っていくことが、改善の近道になるのではないでしょうか。
企業に求められるリモハラ防止策
リモートハラスメントを防ぐには、仕事とプライベートの境界線を意識することが大切です。
また「リモートハラスメントとは何か?」を社内全員に周知することも重要といえます。
リモハラ防止策としては以下が挙げられます。
- リモハラ防止研修の実施
- 社内ルールやマナーを具体的に明示する
- 相談窓口の設置
- リモートワークの技術的な改善
- 定期的に「報告・連絡・相談」を行い、コミュニケーションをとる
- リモートワークに応じたマネジメント方法を習得
社内でリモートハラスメントに対する共通理解を周知するために、研修や相談窓口の設置などハラスメント防止策を浸透させることが重要です。
研修ではケーススタディを用いて認識を共有させることを徹底しましょう。
- どのような行為がリモートハラスメントに該当するのか
- なぜ問題なのか?
- どうするべきなのか?
会社や職場にふさわしいルールやマナーを一人ひとり考えることが大切です。
またリモートハラスメントを事前に回避するために、Webカメラでプライベートな空間が映らないように「バーチャル背景などの使用を許可する」といった対応も効果的です。
近年では、会社の福利厚生を利用し指向性の強いマイクやヘッドセットを用意するなど、従業員がリモート環境の構築に必要な補助金制度を導入する事例もあります。
テキストコミュニケーション術を磨く
リモートワークでは音声通話やビデオ通話でのコミュニケーションよりも、テキストでのコミュニケーションが多いです。
オフィスで同じ空間にいた時は「ちょっと聞きたい」という時にすぐに相談ができましたが、リモートワークでは難しいという課題があります。
そのことで、意思疎通が難しい場面に遭遇した経験もあるのではないでしょうか。
リモートワークにおいて仕事のあらゆる場面ではまず「テキスト」コミュニケーションが重要です。
そのためテキスト内での相手への配慮も、ハラスメントを防ぐポイントといえます。
テキストでは相手の表情や空気感もわからないためシンプルに伝えたつもりが、冷たい印象を持たれる可能性もあります。
【テキストコミュニケーションで気をつけること】
- 優しさ、相手への配慮
- 結論ファースト
テキストコミュニケーションの際は相手への気配りが信頼関係を構築し、業務を円滑にします。
そしてリモートハラスメント防止策の一つになるといえるでしょう。
まとめ
リモートワークによって新たに働き方の選択肢が増えました。
そのなかでリモートワークの社内ルールを策定し、運用することはリモートハラスメントに対して有効です。
リモートワークを導入する企業は、研修や相談体制の整備などハラスメント防止対策を強化することが肝要です。
リモートワーク制度を整えることが、企業成長や大きな災害時に役立つ要素にもなります。
そしてあらゆるライフステージの方がより良い働き方を見つけられ、個が活躍する社会に繋げられるといいなと思っています。
あらゆる疑問を匿名で質問できます
約90%の質問に回答が寄せられています。
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