
代表取締役が複数の際のメリット・デメリット・注意点とは
代表取締役が複数人いることに疑問を持った方は多いのではないでしょうか。そもそも代表取締役とは何なのか、複数人いることのメリットは何かとお考えの方も多いと思います。そこで、この記事では代表取締役がなぜ複数人いるかについてのお悩みや、代表取締役が複数いる会社がある理由、代表取締役を複数にしたい場合についてなど、詳しくご紹介致します。5分程度で読めますし、会社の仕組みが理解しやすくなるので、ぜひご一読ください!
代表取締役を複数設置することは可能
代表取締役の法律上の定義・権限
まず、複数設置することができるかを解説する前に、法律上の定義を確認しておきます。
代表取締役とは、「株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」者を言います(会社法(以下、条数のみを示します。)349条4項)。
つまり、会社の中で業務執行権限を有する者が代表取締役ということになるのです。
一方で、社長という役職は主に会社内部での呼称として用いられます。
何かプロジェクトを進める際に
- 会社内部での意思決定権は社長
- 外部の取引先と契約や、金額の借り入れが必要な際は代表取締役
が進めます。
取締役会がある会社とない会社での違い
取締役会がある会社とない会社がありますが、これらの間で代表取締役を設置できるか否かに違いがあるかどうかを解説していきます。
取締役会を設置していない会社の場合は、「代表取締役を定めることができる」(349条3項)のに対し、
取締役会設置会社の場合、「代表取締役を選定しなければならない」(362条3項)との記載があり、法律上、代表取締役を選任することを強制されています。
中小企業の場合、取締役会を設置することによって得られるメリットは少ないですが、上場企業や大企業の場合、ほとんどが取締役会を設置しています。
大企業のように人材の豊富なところでは、迅速な意思決定や会社の信用性向上のために設置するというケースが多いようです。
代表取締役を複数置くことは可能
まず、法律上、代表取締役は1人でなければならないという定めはありません。
また、その人員の上限も定められていませんので、会社にとって必要であれば、複数の代表取締役を置くことは可能です。
代表取締役が複数いる会社のメリットとデメリット
多くはないですが、代表取締役を複数設置している会社があるのは、どんなところに理由があるのでしょうか。
代表取締役が複数いるメリットは3つ
代表取締役を複数持つ会社があるのは、当然そのことにメリットがあるからです。
主に下記の3つのメリットがあるとされています。
- 業務執行を迅速化
- 権力の分散
- 分立経営の可否
それぞれ見ていきましょう。
まず、業務執行を迅速化ですが、代表取締役を選任している会社では、代表取締役のみが業務執行権限を持ち、ただの「取締役」はその権限を持ちません。
したがって、書類に印鑑を押す・サインをする場合、複数の代表取締役がいた方が、迅速に処理することができるというメリットがあるのです。
主に海外に事業を展開している企業や、本社が複数ある企業において効力を発揮します。
次に、権力の分散ですが、ベンチャー企業や中小企業などで、例えば2人や3人で会社を立ち上げたときに、全員を同じ権限を持つようにすることがありますが、この場合、共同出資や共同経営する際に効力を発揮します。
こういったケースで1人が権限を持つと、後々トラブルになりやすいですから、同じ地位にして権力の分散を測り、トラブルを未然に防ぐというメリットがあるのです。
最後に、分立経営の可否ですが、ビジネスの変遷が激しい会社で例えると、自分の会社のそれぞれの分野(技術・マーケティング・営業・経営・財務・法務...etc)に特化した人たちが互いに意見を出し合い、ベストアンサーを導きだす際に、この体制にすることもできます。
主に事業を広げようとする際にこの体制を採択する会社もあるようです。
代表取締役が複数いるデメリット
代表取締役を複数置くことには、もちろんデメリットもあります。
対外的には、その会社の代表者が複数いるように見えてしまうことから、誰を窓口にすれば良いのかが分からなくなるおそれがあります。
極端な場合、2人の代表取締役の間で契約をするか否かで方針が食い違っていると、その一方と契約の合意をしたはずが後から他方の代表取締役が出てきて、その契約はなかったことにしてくれ、なんて言われることもあるかもしれません。
権限の範囲をあらかじめ決めておけば良いのではないかと思われるかもしれませんが、実はそれでは上記のようなトラブルは防げません。
会社法が349条5項で代表取締役の「権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない」としているからです(※ここでの「善意」は法律用語で、ここでは「権限の制限について事情を知らない」という意味)。
したがって、複数の代表取締役を置く際には、こういったトラブルを引き起こす可能性があることは、十分認識しておく必要があります。
代表取締役が複数いる場合の実務上の例3選
代表取締役を複数置いた場合、実務上どう運用されるのかを見ていきましょう。
印鑑は複数作れるか
そもそも、代表取締役は、印鑑を登記所に登録する必要があります。
そこで、複数作れるかは複数の登録ができるかにかかってくるのですが、法律上、1人だけが登録しても、別々の印鑑を作ってそれぞれ登録しても構わないことになっています。
したがって、会社の印鑑を複数作ることはできます。
その場合、会社の実印は2つあるということになり、任意に会社としての契約を行うことができるようになるので情報のすり合わせ等はしっかりしなければいけません。
1人で契約書を有効にできるか
なんとなく連名で全員の署名・押印がなければ有効にならないような気もしますが、1人でも代表取締役が契約書にサインすれば、有効になります。
代表取締役は、それぞれ会社の業務執行権限を持ち、対外的には代表権を有するので、1人だけで充分なのです。
これを内部的に制限してもそれを対抗できない可能性が高いことは、前述した通りです(349条5項)。
会社が融資を受けたいときは
融資を受けるときも、契約と同様です。単独で融資を受ける契約(金銭消費貸借契約等)を結ぶことができます。
ただし、多額の借財(362条4項2号)に該当する場合には、取締役会決議が必要となるため、注意が必要です。
代表取締役を複数にする時の手続き注意点
では、代表取締役を複数にしたいとき、どのような手続を経ればよいのでしょうか。
定款の変更が必要になる
定款とは、会社を設立する際に必要になる会社の規則のことです。
主に取締役会が設置されている会社が対象となりますが、例えば、定款に代表取締役の人員について1名と定める規定がある場合、2名以上にすれば定款違反になってしまうため、定款変更をする必要があります。
実際に設置する予定の代表取締役の数を規定しても良いのですが、今後また増やしたり減らしたりするときに不便です。
そこで、「当会社の代表取締役は、1名以上とする。」というような定め方をしておくと、柔軟に対応できるため、おすすめです。
第〇〇章
第〇〇条
1 取締役会は,その決議により取締役の中から代表取締役社長1名以上と定め,他に代表取締役を定めることができる。
2 代表取締役社長は,会社を代表し,会社の業務を執行する。
3 取締役会は,その決議により取締役の中から取締役会長1名,取締役副会長,専 務取締役及び常務取締役各若干名を定めることができる。 (取締役会の招集権者及び議長)
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法務局への登記が必要になる
次に、登記の面での手続について触れていきます。
代表取締役は、ヒラの取締役と異なり、氏名だけでなく住所も登記簿への記載が必要となります(911条3項14号)。
したがって、変更登記の手続をとって、これを登記簿に記載する必要があります。
印鑑を複数にする場合は印鑑登録も必要になる
代表取締役の印鑑を複数登録できることは前述した通りですので、当然その手続もする必要があります。
ここで注意すべき事項としては、同じ印鑑を登録することはできないということです。
同じ印鑑を用いるのであれば、登録の手続をする必要はありません。
まとめ
今回は、代表取締役を複数置くことができるかどうか、複数置くことのメリット・デメリット、そしてその手続などについて解説してきました。
一般的な認識と法律の規定には少し隔たりがあることがご理解いただけたと思います。
この記事を熟読して、あなたの会社に複数の代表取締役を置くことが適切かどうかを検討してみてはいかがでしょうか。
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私自身、カタカナのビジネス用語に詳しくないのですが、転職先でそういった用語を使う人がとても多いです。
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