
【退職金の前払いは可能なの?】制度や税金について徹底解説
退職金の前払いは可能なのでしょうか。この記事では退職金の前払いはできるかや、退職金の前払いの利点と欠点などについて詳しくご紹介致します。また退職金の前払いの税金についてや、退職金の前払いと確定拠出年金についても解説致しますので、ぜひ参考にしてください。
退職金の前払いはできる?
退職金の前払いは可能か
退職金は法律での規則がありません。
社員への福祉の一環として企業が独自に実施しているもので、給与のように「○ヶ月以内に支払わなければならない」というたぐいのものではありません。
企業によっては在職中に「前払いも可能」という場合があるようです。
前払いを受け取る方法とは
企業内で「前払いシステムがある場合」には前払い制を選択することができます。
前払いにすると、給与明細上では給与と分けた形で退職金が支給されますが、受け取りシステムとしては給与に上乗せされる形で前払いの退職金を受け取ることになります。
退職金前払い制度について
そもそも、退職金の前払い制度はどのようにして始まったのでしょうか。
また、給与に上乗せした形ではなくまとまった形で受け取ることは可能なのでしょうか。
退職金前払い制度とは
松下電器産業(現在のパナソニック)が1998年から導入を開始したのが退職金前払い制度です。
退職金を給与に上乗せして支払い方法で、実際に退職した後にはまとまったお金は入りません。
退職金は一括でもらえる?
すでに退職届を出して退職が決まっている場合には、企業に相談して退職金を前払いしてもらえる可能性があります。
また、すでに一定期間勤務して退職金のストックがある場合にも、退職金の一部を一括前払いで支払ってもらえる可能性もありますが、前払いしてもらえるかどうかは企業の方針によると考えてよいでしょう。
どのくらいの金額をもらえるのか
勤続年数1年目だと、毎月数千円という場合も少なくありません。
企業への貢献度や勤続年数に合わせて月々の退職金額も増加するため、この金額から増えていきます。
退職金の前払いの利点と欠点
しかしこの退職金前払い制度、従業員側・企業側双方にメリットもあるのですが、大きなデメリットもあるのです。
退職金をどのように受け取るかを選択できる場合は、メリットとデメリットをよく考慮して決める必要があります。
前払いのメリット
従業員側のメリット
- 月に支給される金額が増える
- いつ退職しても、すでに支払われている退職金を返還する必要がない
1つの企業に勤め続けることが難しくなったこの時代、退職金を当てにできなくなってきています。
後払いの退職金システムを採用している企業で自主退職してしまうと退職金額が減額されてしまう場合もありますが、前払いであればそのような心配はありません。
企業側のメリット
- 多額の退職金を一度に用意しなくて済む
- 損金」として計上できるので節税効果がある
1千万円を超える退職金のために積み立てを行うのは大変な苦労です。
そのため、退職金を月々支払っていくことでその管理労力が削減できるのがメリットです。
また会計上節税ができる点もよいですね。
前払いのデメリット
従業員側のデメリット
- 退職金としてではなく給与として課税されるため、支払う税金が増える
- 実際に退職した時の退職金がない
退職金をまとめてもらうと勤務期間が30年を超えた場合、1千万を超える金額でも非課税になります。
一方前払いをすると「給与の一部」として取り扱われますので、住民税や所得税が増えるというデメリットがあります。
また、給与と一緒に支払われた退職金は日々の生活に流れやすく、退職金としての役目を果たさない可能性もあります。
企業側のデメリット
- 貢献度の低い社員にも退職金を支払わなければならない
- 懲戒解雇の場合でも退職金を取り戻せない
企業側としては長年頑張ってくれている従業員にこそ、退職金を支払う意義があると考えている場合も多いでしょう。
退職金を前払いすると、短期間で転職してしまうような貢献度の低い社員にも同様に退職金を支払うことになります。
また、通常であれば「懲戒解雇」になった社員には退職金を支払いません。
しかし前払いしてしまった退職金は懲戒解雇となった社員からでも取り戻すことはできません。
退職金の前払いの税金は?
退職金を前払いした際の社員側のデメリットとして、退職金としてではなく給与として所得税の課税対象となるため、住民税や所得税が上がってしまうことをご紹介しました。
では社会保険料などはどうなのでしょうか。
また、退職時に退職金を受け取る場合と前払いでは、どのくらいの差が生まれるのでしょうか。
社会保険料はどうなるのか
厚生労働省から、前払い退職金に関する社会保険料の取り扱い通達がされており、「労働の対償としての性格が明確であり、原則として健康保険法に定める報酬または賞与に該当するものである」と記載されています。
会保険料とは健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険を指し、この保険料は給与・賞与ベースで金額が異なります。
そのため、退職金前払い制度を利用して月額の支給額が上がると「給与が上がった」とみなされるため、社会保険料の計算方法の基準になる「標準報酬月額」が上がってしまい、社会保険料が上がってしまいます。
退職時と比べると
退職時に一括で退職金を受け取る場合には、税制面で優遇されます。
「退職控除」というのですが、20年未満の勤務では「40万円×勤続年数」、20年以上の勤務期間があると800万円+70万円×(勤続年数-20年)という金額になります。
この金額を受け取った退職金から差し引いた金額が「所得」としてみなされます。
具体的な金額では、14年間勤務した場合に540万円、40年勤務すると2200万円までは非課税ということになります。
40年勤務して2000万円の退職金を受け取った場合、2200万円の控除がありますので、退職金のすべてに対して所得税や住民税、社会保険料も徴収されません。
それと比較して退職金を退職金前払い制度で受け取ると月々の税金と保険料が上がります。
年収が400万円程度だと所得税率が5%、住民税は10%、社会保険料は給与の15%程度ですから1万円収入が増えると3000円程度、税金を多く納めることになります。
退職金の前払いと確定拠出年金
退職金の前払いをしない代わりに確定拠出型年金を導入する企業も増えています。
確定拠出年金とは、アメリカの内国歳入法401Kを日本版にアレンジしたものです。
では、確定拠出年金の内容と、退職金との違いについてご紹介します。
退職金と確定拠出年金の違い
確定拠出年金は「従来の公的年金に上乗せする」という年金制度です。
「企業型」「個人型」に分かれており、企業又は個人が掛け金を支払い、それらのお金を株式や保険などの投資商品に投資し、運用していくというものです。
ですから、同じ金額を企業から受け取っていたとしても、運用方法が個人により異なるため、60歳受け取り時の金額は人によって異なります。
運用がまずいと元金を割ってしまうことすらあります。
そしてこの掛け金は、基本的に60歳になるまでは引き出しができません。
一方退職金は企業が従業員のために積み立てを行います。
「退職金をいくら払うか」というのは企業の采配によるものであり「業績が悪化した」「懲戒免職になり退職金が出なかった或いは減額された」などの理由でなければ、「退職金が減ってしまった」ということはほとんどないでしょう。
どちらを選ぶのが正解か
確定拠出年金は掛け金の全額が所得控除の対象となり、さらに利息・配当・運用益も非課税になります。退職後に受け取る退職金と同様の扱いです。
退職金の前払いは税金面で損をします。
しかしながら、その年金を将来の大きなリターンのために当てられるというメリットがあります。
どちらを選ぶかは個人のライフスタイルによるところが大きく「なるべく節税したい」「お金の管理が苦手」「老後が不安」という場合は確定拠出年金を、どうしても若いうちに自分自身に投資したいという場合は退職金の前払い制度を利用するのがセオリーです。
まとめ
一昔前は1つの企業で勤め上げることが一般的でした。
しかし現在は転職しながらスキルアップをしていくということが一般的です。
それと共に「退職金のありかた」も変化しており、自分のライフスタイルと将来の目標によっては退職金の前払い制度を利用するという人も増えていますので、自分の勤めている企業が選択性の場合には、検討してみる価値はありそうです。
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