
【固定残業代と深夜手当】計算方法についてなど解説していきます
コスト削減と人件費のより的確な把握のために、固定残業代を導入する企業が増加傾向にあります。深夜労働や深夜残業をした場合は、深夜手当という名目の手当が付くことは一般的に知られています。ですが、固定残業代制を取り入れた企業の深夜勤務・深夜残業の際は、深夜手当は支給されるものなのでしょうか。今回はこのことについてご紹介していきますので是非参考にしてみてください。
固定残業代と深夜手当
コスト削減と人件費のより的確な把握のために、固定残業代を導入する企業が増加傾向にあります。
深夜労働や深夜残業をした場合は、深夜手当という名目の手当が付くことは一般的に知られています。
ですが、固定残業代制を取り入れた企業の深夜勤務・深夜残業の際は、深夜手当は支給されるものなのでしょうか。
また、深夜に働いた時は普段より給与の支給額が多いことには気づいていても、深夜労働や深夜残業の賃金がいくら割り増しされているか、細かく計算したことがない方もいらっしゃるかもしれません。
今回は深夜手当が適用される時間帯や、深夜に働いた場合の賃金の割増率などについて詳しく解説します。
さらに、残業や深夜残業の割増賃金の計算方法や、深夜残業が多いと言われる業界の特徴などもあわせてご紹介します。
固定残業代について
固定残業代とは、残業時間の長さに応じた残業代ではなく、1か月の残業時間をあらかじめ見込んだ残業代を給与に組み込む賃金制度です。
固定残業代を採用すると残業代は毎月一定額となりますが、固定残業代の算出に用いる1か月当たりの残業時間数を超過した場合は、その超過時間分の賃金は別途支払う必要があります。
深夜手当について
深夜手当とは、深夜労働時間中の通常勤務や残業に対して支払われる手当です。
深夜手当は本来、固定残業代には含まれていません。
なぜなら、月々の固定残業代を算出する際、深夜残業による割増賃金率を想定していないことが多いからです。
そのため、深夜手当は固定残業代とは別に、手当として支給されます。
深夜手当について詳しく解説
ここまで、固定残業代と深夜手当について簡単にご紹介しました。
深夜手当についてもっと詳しく知りたい方のために、深夜手当の支給の対象となる時間帯や、深夜労働中の賃金の割増率を徹底解説します。
深夜手当は何時から支払われる?
深夜手当は、深夜労働時間とされる午後10時から翌朝5時までの労働に対して支払われる手当です。
また、残業時間が上記の深夜労働時間にかかる場合は、通常の残業代の割増率に加えて、深夜の割増率が加算されます。
深夜手当のどれくらい割り増しされる?
では、深夜手当はどのくらい割り増しされるのでしょうか。
まず、月給を所定労働時間で割って算出した基礎時給をもとに、割増率を確認してみましょう。
午後10時から午前5時の深夜労働時間に勤務した場合は、割増率25%が深夜手当として上乗せされ、基礎時給の1.25倍となります。
次にご紹介するのは、残業時間が深夜労働時間にかかる場合の割増率です。
午後10時までに当日の所定労働時間が8時間を超えている場合、午後10時以降の残業に対しては、通常の時間外労働の割増率25%に深夜手当25%が加算されます。
つまり割増率は150%となり、基礎時給の1.5倍となります。
給料に固定残業代が入っていても深夜手当はもらえる?
会社が固定残業代制を採用していて、毎月の給与にあらかじめ一定の残業代が含まれているとします。
その場合に深夜の勤務や深夜残業が発生したら、深夜手当は支給されるものなのか、素朴な疑問を抱く方も多いかもしれません。
結論から言って、深夜手当は固定残業代とは別に支払われる必要があります。
ここからは、深夜手当が固定残業代とは分けて支給される理由や、深夜手当の計算方法などを詳しくご紹介します。
深夜手当は別途支払われる必要がある
深夜手当は固定残業代とは別に支払われなければいけません。午前5時から午後10時までの残業で、会社が定めている時間数内であれば、支給されるのは固定残業代のみです。一方、午後10時以降は深夜労働時間のため、別途深夜手当が支給されます。
また、就業規則や雇用契約書などに「固定残業代に○○円の深夜残業代(もしくは残業手当)を含む」と記載されている場合でも、何時間分の深夜労働に対する手当なのかが明記されていない限り、違法とみなされる可能性があります。
固定残業代と深夜手当の計算方法について
次に、基本的な残業代および深夜手当の算出方法をご紹介します。
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時給の算出
基礎時給=月給÷1か月の平均所定労働時間(※)
(※)1か月平均所定労働時間の算出方法
(365日-年間休日日数)×1日の所定労働時間÷12か月
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残業代・深夜手当の計算
残業代=①で算出した基礎時給×割増率×残業時間
なお、残業する時間帯によって割増率は下記を適用します。
・通常の残業(午前5時~午後10時まで):1.25倍
・深夜残業(午後10時~午前5時まで):1.5倍
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固定残業代の計算
固定残業代の計算については、便利なツールが公開されています。
本来は固定残業代が適正な額であるかを判断するためのものですが、自身の基本給や固定残業代が最低賃金を上回るか、あるいは下回るかを測る目安になります。
詳しくは下記サイトよりご確認ください。
(固定残業代の計算 - 高精度計算サイト – CASIO)
深夜手当が支払われない会社も存在する
原則として深夜手当は固定残業代とは別に支払われなければならない、ということは先ほどご説明しました。
ただし、「固定残業代には深夜残業代も含まれる」と就業規則などに記載されていると、深夜手当が支払われないケースもあります。
この場合、「深夜労働の割増賃金に当たる○円(○時間分)が、固定残業時間として給与もしくは時間外手当に含まれる」など、深夜残業の時間数が明確に定義されていない限り、合法とは言い難いです。
深夜残業が多い業界とは?
ところで、深夜残業が多い業界と聞かれて、読者の皆さんはどのような業界をイメージしますか?
深夜残業が多い業界に共通するのは、長時間労働が日常的に行われている点です。
ここでは、長時間労働や深夜残業が多いと言われるIT業界、広告業界、そしてマスメディアを取り上げて、それぞれの業界でなぜ深夜残業が多いかを考えてみましょう。
IT業界の深夜残業について
IT業界は人手不足に悩むベンチャー・中小企業が多いですが、そもそも慢性的に人材が不足している業界です。
1人当たりの業務負荷が多いため、超過勤務になりやすいだけでなく、障害などのトラブル対応で深夜残業も多くなる傾向にあります。
転職情報サイトのdodaが実施した調査では、インターネット関連(EC・ASP・ポータル)は残業時間の多い業種第3位に、そして業種の大分類上ではITに区分される、コンサルティングファーム・シンクタンクも第6位にランクインしています。
出典:
残業の多い職業・少ない職業は?全80業種、95職種別の残業時間調査! |転職ならdoda(デューダ)
(https://doda.jp/guide/ranking/073.html)
広告業界の深夜残業について
広告業界はも労働時間が長いことで有名です。
背景にあるのは、長時間労働や残業を美徳とする、独特の業界文化であると言われています。
未だに根強く残る古い価値観が深夜残業の多さの要因となっている一方で、クライアントからの無理な要求・要望に応えるために、深夜や土日を問わず稼働せざるを得ない、といった実情もあります。
dodaの調査でも、広告業界は残業時間が多い業種の第1位でした。
出典:
残業の多い職業・少ない職業は?全80業種、95職種別の残業時間調査! |転職ならdoda(デューダ)
(https://doda.jp/guide/ranking/073.html)
マスメディア業界の深夜残業について
マスメディア業界は主に新聞業界、そしてテレビなどの放送業界によって構成されます。
24時間体制でニュースにあたることから、深夜に稼働するのが当たり前となっています。長時間残業や深夜残業が発生することも珍しくありません。
dodaの調査では、新聞業界は残業の多い業種で、広告に続いて第2位に入っています。
また、放送業界も同ランキングで48位に付けています。
出典:
残業の多い職業・少ない職業は?全80業種、95職種別の残業時間調査! |転職ならdoda(デューダ)
(https://doda.jp/guide/ranking/073.html)
まとめ
ここまで、深夜手当と固定残業代について詳しく解説しました。
勤務先が固定残業代を導入していても、深夜労働時間(午後10時~午前5時)に働いた分の割増賃金は、固定残業代とは別に支給されなければならない、という点はご理解いただけたでしょうか。
また、今回ご紹介した基本的な残業代の計算方法を使えば、残業代や深夜残業代が比較的簡単に計算できることもわかりました。
計算式や計算用ツールを使って、今受け取っている深夜手当や固定残業代が適正な額であるかどうか、是非一度確認してみてください。
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