
【安全配慮義務と残業】働く上で知っておきたいことと注意すべきこと
会社には「安全配慮義務」があることをご存知ですか?従業員を守るために、会社は法律によって縛られています。しかし従業員だからといって、これを知っておくには様々なメリットがありますし、結局は自分の体を守ることにつながります。今回は、そのような安全配慮義務について見ていきます。
安全配慮義務とは
働き方改革により、働き方が変わった方もいるかと思います。
改革によって残業が少なくなり働きやすくなった方、そうでない方もいらっしゃるでしょう。働く上で労働環境は非常に重要になります。
そこで注目しておきたいのが「安全配慮義務」という言葉です。以下で詳しく見ていきたいと思います。
安全配慮義務とは何か
安全配慮義務とは、従業員が安全で健康に仕事ができるように、会社が配慮する義務のことです。
この義務は、会社側がいきすぎた長時間労働や劣悪な環境での労働を、従業員にさせないためのものです。
残業も安全配慮義務の対象
多くの会社で残業があるかと思います。むしろあるのが普通だという認識が大半かもしれません。
残業も安全配慮義務の対象となっています。多少の残業であれば問題ないかもしれません。
しかし、長時間の残業は従業員の健康を脅かすよう要因になるので、会社側は配慮することが必要です。長時間残業が慢性化しているのであれば、被害が出る前に見直す必要があるでしょう。
職場におけるパワハラやセクハラも安全配慮義務の対象
パワハラやセクハラも安全配慮義務の対象になります。
パワハラやセクハラは、従業員の個人的な関係で起こったトラブルであり、会社に責任はないと考えていらっしゃるかもしれません。
しかし、安全配慮義務は職場環境も関係するので、被害にあった従業員が、仕事しづらい状況にしてはいけません。環境の悪化から精神的苦痛を与えたという判断になり、会社側に責任があるという考えになります。
個人間の問題はよく起こることです。相談できるような環境を整えるようにしましょう。
残業に関わる安全配慮義務について
残業と安全配慮義務について少し触れましたが、残業には「労働基準監督署への届け出」や「残業できる時間の限度」があります。
さらに詳しく見ていきましょう。
残業の労使間取決めの労働基準監督署への届け出
残業が必要な会社は、労働基準監督署へ届け出なくてはいけません。
「36(サブロク)協定届」と言われる届出のことで、残業や法定休日出勤を行なう会社に提出義務があります。36協定とは労働基準法第36条から来ていて、「労働者は法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を超えて労働を行う場合、休日労働を行なう場合はあらかじめ労働組合と使用者で書面による協定を結ばなければいけない」と定められています。
月の残業時間の限度とその延長の限度
月の残業時間には限度があり、1か月45時間、1年間360時間が限度とされています。
しかし、職業や繁忙期によっては残業時間では足りない場合があるかと思います。その場合労使協議を経て、1か月80時間、1年間630時間に延長することができます。
厚生労働省の残業による健康障害防止のための総合対策
厚生労働省は残業による健康障害を防止するために以下のような対策をしています。
- 時間外・休日労働時間の削減
- 年次有給休暇の取得促進
- 労働時間の設定の改善
- 労働者の健康管理に係る措置の徹底
- 過重労働による業務上の疾病を発生させた場合の措置
・時間外・休日労働時間の削減
残業時間は1か月45時間とされていますが、これは「45時間以下になるように企業が努力しましょう。」というものです。また、残業時間の延長は可能ですが、これも出来るだけ小さくなるように企業努力が求められています。
・年次有給休暇の取得促進
有給休暇が取りやすいように、会社側は環境づくりをしなくてはいけません。
・労働時間の設定の改善
従業員が健康でいるために、労働時間設定の見直しを行わなければいけません。
・労働者の健康管理に係る措置の徹底
健康管理体制の整備と健康診断の実施が求められます。また、長時間労働者には医師による面談を実施するよう促す必要があります。
・過重労働による業務上の疾病を発生させた場合の措置
過重労働による疾病を発生させた場合、産業医師の受け原因の究明をし、再発防止に臨む必要があります。
残業に関わる安全配慮義務違反について
残業に関わる安全配慮義務違反について見ていきましょう。
残業する際、限度時間を守ればいいというわけでは必ずしもありません。違反すると多額の賠償金を払わないといけない場合があるので注意が必要です。
過労死が労働災害認定される残業時間
過労死に限らず労働災害は業務が原因で起こった負傷や疾病で認定されます。
36協定内の残業であろうが、過労死であろうが業務にあたるので労災認定されます。
安全配慮義務違反となる残業時間
「過労死ライン」と言われる2~6か月のいずれかの平均労働時間が80時間、また1か月100時間の基準があります。
この「過労死ライン」を超える労働時間をさせ過労死、自殺(過労が原因)が起こった場合、安全配慮義務違反となり処罰されます。
安全配慮義務違反と民法に基づく判例
判例を見てみましょう。
・川義事件
宿直勤務中の従業員が、盗賊に殺害された事例で安全配慮義務違反とされ、損害賠償責任があるとされました。
使用者は、労働者の命や身体等を危険から保護するように。慮すべき義務があると解するのが妥当だと判決が下されました。細心の注意を払い、労働環境を整える必要があるということが読み取れると思います。
安全配慮義務違反となるポイントは
安全配慮義務違反となるポイントは「予見可能性は在ったか、結果回避性は在ったか、残業時間の基準を超えてはいないか」になります。
違反になる前に怪しいと思うことがあれば今一度見直しましょう。事故を防ぐことにつながります。
予見可能性は在ったか
予見可能性とは「危険なことが起こる可能性がなかったか予測する」ことです。
今回の場合は「残業時間が多く、身体に影響か出ないかどうか予測していますか」ということです。
結果回避性は在ったか
結果回避性とは「予測できる危険を回避することができたか」ということです。
今回の場合は「残業で身体に悪影響が出ないように、回避することができましたか」ということになります。
残業時間の超えてはならない基準
先ほども簡易的に述べたように残業時間には超えてはいけない基準があります。
1か月45時間、1年間360時間が超えてはいけない基準になります。自分の残業時間がどのくらいか気になる方は1度調べてみるといいでしょう。
労働災害における事業者の法的責任
労働災害が起きてからでは遅いので経営側も働く側も理解が必要です。
ここでは刑事責任、民事責任、行政処分の3つの点をあげています。労働災害における事業者の法的責任について見ていきましょう。
罰則のある規定に関する刑事責任
刑事責任には罰則のあるもの無いものがあります。今回は刑事責任のあるものを見ていきましょう。
・刑法第211条業務上過失致死傷罪
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
・労働安全衛生法第120条衛生管理者選任義務違反ほか
50万円以下の罰金
不十分な安全配慮に関する民事責任
不十分な安全配慮による民事責任も賠償責任があるので注意が必要です。
・債務不履行責任(民法第415条)
安全配慮義務債務者がその債務の本旨に従って履行をしないときは、債権者はこれによって生じた損害の賠償を請求することができる。
事業者に課される行政処分
労働災害になる前の警告の段階であれば重い処罰はないと思います。
しかし、過労死などの労働災害の場合は業務の停止や許認可の取り消し処分が下されます。災害が起こる前に働き方を見直す必要があるでしょう。
まとめ
安全配慮義務は職場の環境を整えることで守ることができます。残業の上限時間を守らないと安全配慮義務違反になる場合があるので注意が必要です。
また、パワハラやセクハラなど個人間のトラブルも対象になってしますので、相談窓口やカウンセラーを用意し風通しの良い社内環境を作るようにしましょう。
労働環境をゼロベースで見直し、被害を出さないように心がけることが必要です。
あらゆる疑問を匿名で質問できます
約90%の質問に回答が寄せられています。
あらゆる疑問を匿名で質問できます
約90%の質問に回答が寄せられています。