
【経歴詐称は罪になるのか】典型的なケースなどを解説
経歴詐称とは、就職や転職などの際に自身の経歴を偽ることです。経歴詐称はバレることが少ないから罪にならないと安易に考え、経歴を詐称してしまうのは絶対にしてはいけません。経歴詐称は罪になる場合もあります。学歴や職歴を偽る経歴詐称が罪になる場合とはどのような場合なのでしょうか。また、経歴詐称によって生じる問題とはどのようなものなのでしょうか。今回は経歴詐称と罪について解説します。
経歴詐称は罪になるのか
まずは経歴詐称を犯罪に関してを説明いたします。
学歴詐称
結論としては私文書偽造という罪に問われ、三ヶ月以上五年以下の懲役刑を受ける可能性があります。
私文書とは、権利義務に関する文書、事実証明に関する文書のことを指し、これに虚偽の事実を記載した場合は罪に問われるというものです。
履歴書は転職希望者の経歴という事実証明に利用されることになりますから学歴を詐称したら私文書偽造に該当する可能性があると言えます。
高卒の方が大卒と履歴書に記載することで採用可能性が高くなりますし、出身大学名を有名大学名にしたら、更に採用面接において有利に進められます。
また、大卒の方が高卒と詐称することで、高卒採用枠での公務員試験を受けることが可能になるため、大卒の方でも敢えて高卒と詐称するケースがあります。
いずれの場合においても犯罪になる可能性があるため、決して学歴詐称を行ってはなりません。
職歴詐称
職歴詐称とは以下の点について偽り、履歴書や職務経歴書に記載することです。
- 雇用形態
- 職務内容
- 在職期間
- 転職回数
- 保有者資格
- 職位
職歴詐称においても経歴詐称同様に私文書偽造に当たる可能性があります。
一方で職務経歴書に正確な記載をすることは非常に難しいことです。
特に職務経歴書だと限られたスペースの中に記載をしなければならないので、100%正確な記載をしないと詐称だと言われるという訳ではありません。
加えて、精神疾患などで休職した場合など、センシティブな理由は必ず明示しなくても問題ないものなのでどこまでが経歴詐称なのかという線引きは難しいところです。
ここで経歴詐称が問われるのは採用側に対し、明らかに自身の経歴を欺く意図があった場合です。
転職回数を少なく見せるために在籍した企業と在籍期間をごまかし、職務経歴書に反映させた場合など明らかに自身の職務経歴を良く見せようと場合、私文書偽造の罪が問われる可能性があるとお考えください。
職歴詐称がバレる典型的なケースとは
では、どんな場合職歴詐称とはバレるのかについてご紹介いたします。
採用前にバレる理由
以下の場合だと採用前に職歴詐称がバレるケースがあります。
- 面接で話が噛み合わない、明らかに虚偽の説明がある
面接では履歴書や職務経歴書に記載されている内容について質問することになります。そして、面接官の一人には募集する部門の所属長や担当上司になる方ががでてくるのが一般的で、当然作成書類を見ながら1つ1つ経験したことを確認していくことになります。その中で、話が噛み合わない、明らかに記載している内容を業務で行っていない、専門的な話が何一つできていないとなった場合、経歴の詐称を疑われます。
- リファレンスチェックをする
一部の外資系や金融系企業においては、内定を出す直前にその対象となる候補者が以前に所属していた会社の担当上司や同僚にインタビューを行うことがあり、それをリファレンスチェックといいます。リファレンスチェックは、個人情報保護の観点から最近だとその候補者の同意を得て、インタビューワーを候補者自身から紹介してもらい実施することになるケースが大半です。そのため、あまりここから経歴詐称が分かることはありませんが、それでも色々掘り返してみると、経歴の偽りがあったなどということが分かってくるケースもあります。
採用後にバレる理由
実は経歴詐称については面接時より、内定後に発覚するケースがほとんどです。
具体的には以下のような時に発覚します。
- 雇用保険被保険者証の提出時
正社員の場合、転職先に雇用保険被保険者証という書類を提出することになります。被保険者証には前職の在籍企業名や退職日などの情報が記載されています。前々職以前ははともかくとして、前職の企業名、在籍期間に偽りがあった場合はすぐ経歴詐称が発覚してしまいます。
- 源泉徴収票の提出時
一般的に、従業員の年末調整は会社側がまとめておこないます。中途入社の場合は次の年末調整のために源泉徴収を提出しなければなりません。この際に、明らかに年収の記載と事前に聞いていた年収情報に解離があった場合、前職の在籍期間を偽っていたとして経歴詐称が発覚するケースも少なくありません。
- 人のつながり
特に同業界の転職の場合、取引先の繋がりから個人の情報が分かるというケースがあります。その結果、経歴詐称が分かったというケースもあります。
結局のところ、職務経歴を詐称したところでそれがわかる方法はたくさんあります。
何より職務経歴の詐称は入社を目的に行っていることとなりますが、大事なことは、入社して会社からもとめられる仕事を日々やりきることです。
それができない会社に入ったところで長期的に活躍できないどころか、転職回数をいたずらに増やし、経歴を汚してしまい、また経歴詐称をしてしまうというスパイラルにはいってしまいます。
結果的には経歴詐称を行うことは長期的にはメリットのないことだと言えるのです。
経歴詐称が法的に罪になるケースもある
さて、上述でもお伝えしましたが経歴詐称は私文書偽造という罪状で犯罪になりうるとお伝えしました。
しかし、現実的には経歴詐称した履歴書は・職務経歴書を持参した求職者や実際に入社した従業員を通報するということは一般的ではありません。
そのため、経歴詐称をしたから即逮捕ということは現実的にはあまりないと言えます。
ただ、それでも犯罪は犯罪ですので法的に罪に問われるケースを理解していただきたいです。
ではどんなケースが罪に問われる可能性があるのかというと以下の通りです。
- 資格の必要な仕事
弁護士や公認会計士など資格の必要な仕事、もしくは有資格であることを売りに仕事をしている場合、採用企業側に対し、私文書偽造どころか、詐欺罪に問われる可能性があります。また、資格証明の書類の提出が採用企業に求められた際、偽の資格証明を作成したら早速公文書偽造の罪にも問われる可能性が高くなります。
- 官公職の経験を詐称した場合
警察など公務員の経験がないの職名を語ったり転職をした場合、軽犯罪法違反になる可能性があります。つまり、履歴書、職務経歴書で経歴詐称をすることそのものは、私文書偽造になりうるものの、それそのものが、犯罪につながるケースはほんの少数です。しかし、職務経歴を詐称することで私文書偽造以外の犯罪につながるものは、私文書偽造としても摘発される可能性が高まるのです。
経歴詐称の法律外で発生する問題とは
信用問題
経歴詐称をしているという事実が分かった場合、当たり前ですが周囲からの信用を失います。
仕事も人間関係もその根本には信用があるから成立しています。そして、嘘つきは当たり前ですが信用をされません。
社会人として仕事を成立させるために必要な信用を失うことは非常に重大な損失であると言えます。
会社からの重い処分
企業などの職場の就業規則や服務規程などに、経歴詐称をしたことに対しての規定があれば、懲戒処分をされる可能性があります。
懲戒処分にはさまざまありますが、経歴詐称の場合、大抵は一番重い懲戒解雇か次に重い諭旨解雇の序文が規定されているのが一般的です。
経歴詐称からの入社はかなり雇用のリスクが高いということが言えます。
損害賠償請求
あまり事例は多くはありませんが、経歴詐称を行った結果、会社に損失を与えた場合は損害賠償に発展する可能性は否定できません。
また、少し余談になりますが、転職エージェント経由で転職を果たし、一定期間以内に経歴詐称による解雇が決まった場合、転職エージェントは採用企業に支払ってもらった手数料の一部を返金をしなければならないという規定もあります。
経歴詐称を行うことにより、人に迷惑をかけることになるという認識を持ちましょう。
まとめ
経歴詐称を行ったから犯罪者として罰せられる可能性というのはあまりないでしょう。
しかし、経歴詐称を行うことで、自分自身の信用を失い、継続的なキャリアを形成できなくなる可能性が高まり、また色々な人に迷惑をかけることにもなります。
以上のことからも経歴詐称はしてはならないということを認識し、正直に真っ当に自身のキャリア形成を行いましょう。
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