
【マトリックス組織とは?】メリット・デメリットや採用例をご紹介
「マトリックス組織」というものをご存知ですか?企業において、職種別の所属(営業部等)に加えエリア別の所属(大阪本部等)にも同時に所属する状態を言います。人事異動せずに済む、部門の垣根を超えてコミュニケーションの幅が広がるといったメリットも含め、本記事で詳しくご紹介していきます。ぜひご覧ください。
マトリックス組織とは
労働人口減少が社会問題になる中、企業ではいかに限られた人材で生産力を上げていくかを課題とし、あらゆる組織改革に取り組んでいます。
その流れの中、「マトリックス組織」が導入されるケースも多くあります。
今回は、「マトリックス組織」の意味、メリット・デメリット、導入実例についてご紹介します。
マトリックス組織の意味
「マトリックス組織」とは、職種・職務といった単一の従来の指揮命令系統ではなく、その上に事業部・エリアといった別の系列の所属を持たせ、複数の目標を同時に達成するために構成された組織形態を指します。
マトリックス組織をわかりやすく言うと
具体的な例を挙げると、営業部・広報部といった職種別の所属に加えて、東京本部・大阪本部といったエリア別の所属にも同時に所属する状態を「マトリックス組織」と表します。
2つの異なる系列を縦・横に組み合わせた網の目のような状態の組織形態ということです。
マトリックス組織の英語表現
「マトリックス組織」は、英語の「matrix」と「組織」を組み合わせた言葉です。
英語の「matrix」には、「母体・基盤・行列」という意味があり、「行と列で構成された表」のようなものを指しており、あらゆる情報が行列を成し基盤を作っているような状態をいいます。
この「マトリックス」の状態の組織、ということで、日本だけではなく海外で取り入れられている組織形態です。
マトリックス組織のメリット
ここでは、「マトリックス組織」のメリットを社員側・企業側それぞれの観点から確認してみましょう。
社員からみたメリットとは
社員側からみた「マトリックス組織」のメリットとして、複数の部門に所属することで、部門ごとの垣根のようなものがなくなり、全体の状況を俯瞰的に確認しながら業務を進めることができるので、部署・部門を越えた社員同士でコミュニケーションをとりながら効率化を目指せることが挙げられます。
企業側のメリットとは
企業側としては、まず新規プロジェクトを立ち上げる際に、大きな人事異動なしに、プロジェクトに必要な人材を選任し、新たな「マトリックス」の軸を作ることが可能になり、自社の人材の最大限に有効化することができます。
また、国内外など規模の大きいプロジェクトの場合でも、あらゆる軸での管理が同時並行に集約して行うことができ、ひとつのプロジェクトにおける改良・成長の幅を広げることも見込めます。
状況によって様々なマトリックス組織が作れる?
「マトリックス組織」には、プロジェクトマネージャーの選出方法によって大きく3つの種類に分けられます。
・ウィーク型
・ストロング型
・バランス型
プロジェクトマネージャーを選出しない「ウィーク型」、プロジェクトマネジメント専門の部門を組織内に設定する「ストロング型」、プロジェクトチームの中からマネージャーを選出する「バランス型」と、プロジェクトの規模や複雑さによってあらゆる「マトリックス組織」を作ることができます。
マトリックス組織のデメリット
ここでは、「マトリックス組織」のデメリットについて確認してみましょう。
社員からみたデメリットとは
「マトリックス組織」におけるデメリットとして大きな課題となっているのが、指示系統が複雑化するために、責任者間のコミュニケーション不足などにより指示内容にズレが生じ、社員としてはどの指示に従えばいいのか不明となり作業効率が大幅に落ちる可能性がある点です。
企業側のデメリットとは
企業側のデメリットとして、従業員それぞれが複数の指示系統下にあり、組織としては複雑化することで、問題が発生していても全体として共有されるまでに時間がかかり状況が悪化する可能性があるということが挙げられます。
マトリックス組織の課題とは
一部の従業員に業務量の負荷がかかっていたり、指示のズレが生じたままプロジェクトが進んでいたり、といった問題点は、日頃から社員同士がコミュニケーションをとり情報共有できる環境を作ることで早急な対処ができます。
いかに情報共有がしやすい環境を構築していくかは「マトリックス組織」を導入する上で常に意識すべき課題のひとつです。
マトリックス組織を採用する大企業例
ここでは、実際に「マトリックス組織」を採用している大企業の実例をご紹介します。
村田製作所の三次元マトリックス組織とは
日本でも有数の優良企業である村田製作所では、「三次元マトリックス組織」という理念を採用しています。
これは、同社の「two-boss system」という運営上の「マトリックス組織」を指しているのではなく、関係各社を含む各拠点と本社の緊密で効率的な連携を目指すための組織理念を指しており、製造といった各拠点独自の機能と本社のもつ全拠点を統括してサポートする機能を三次元的にひとつの組織として連携させる考え方です。
花王の研究開発部門とマトリックス運営
日本有数の大手化学メーカー花王株式会社の研究開発部門では、「マトリックス運営」を取り入れ、商品開発と基盤技術研究が共同して研究を推進する形式を採用しているので、社内における生産・品質保証が一括して管理されるようになり、また社外との交流も推進することで多角的なマトリックス運営が促進され、研究開発の大幅なスピードアップを実現しています。
トヨタのマトリックス組織とは
日本を代表とする大手自動車メーカートヨタ自動車は、世界中でビジネスを展開しており、全世界で30万人を超える社員を有しています。
この規模になると、責任組織を一点に集約させることは物理的に不可能で、逆に不効率さを招く可能性があります。
そこで、トヨタ自動車では、業務機能別と地域別の組織を組み合わせた「マトリックス組織」を導入することで、複数の責任組織を介入させることができ、組織全体の運営の円滑化と効率化を目指しています。
マトリックス組織を導入するには
これから「マトリックス組織」を導入するにはどのような点を留意すべきなのでしょうか。
ここでは、「マトリックス組織」導入の効果と成功のコツについて確認してみましょう。
マトリックス組織の最大の効果とは
「マトリックス組織」導入の最大の効果は、成長する企業規模に対して有効な経営戦略となることです。
企業規模が拡大し、より生産力を上げていく上で求められる、市場変動に対する柔軟性や高い管理力を実現するために有効なのが「マトリックス組織」といえます。
マトリックス組織成功のコツとは
「マトリックス組織」導入を成功させるために最も重要なコツは、組織の方向性を明確に理解し全体との情報共有が密にとれる管理者を育成することです。
複数の指示系統が発生する「マトリックス組織」では、それぞれの管理者が組織の要となりそれぞれの管理者が同じ意識・同じ目標のもとに指示・判断できるかどうかで、大きく左右されることは明白です。
経営学とマトリックス組織の考察
経営学では、「命令系統の一元化」が基本原則となっているという点で、「マトリックス組織」はその原則に反していると考えられます。
しかし、基準が一元化することで起きうる組織の欠点を排除する「マトリックス組織」のメリットを活かすことは大企業だけではなく、中小企業においても有効な経営手法のひとつであるという見方もあります。
まとめ
ビジネスのグローバル化や、限られた人材を有効活用を目指し、さまざまな経営手法が注目されるようになりました。
「マトリックス組織」のような形式で、多角的な視点でひとつのプロジェクトを推進することは、多様性がより求められうるこれからの時代において、重要なスキルになると考えられます。
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約90%の質問に回答が寄せられています。
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