
【役職定年制が導入されている企業例】メリット・デメリットは?
役職定年制は、課長や部長など一定の役職に就く社員に対しての制度で、定められた年齢になると役職を外れなければいけません。多くのメリットがある制度ですがもちろんデメリットもあります。導入を考える場合は、双方を知ったうえで自社に適した内容を考えることが大切です。
役職定年制が導入されている企業
役職定年制は、課長や部長など一定の役職に就く社員に対しての制度で、定められた年齢になると役職を外れなければいけません。
まずは、役職定年制を導入する企業がどれくらい存在しているか、どのような企業で採用されているかについて解説します。
役職定年制の導入率
一部の調査結果では、23.8%の企業が役職定年制を導入していることが分かりました。
役職定年の対象を部長級にする企業は83.7%、課長級は88.3%、双方対象は81.3%です。
制度を実施する企業は減少傾向にあります。
大企業ほど導入比率は高い
役職定年制は、企業規模が大きいところほど導入比率が高くなるのが特徴です。
従業員総数が500人以上の企業の約4割が、役職定年制を導入している調査結果もあります。
企業の規模別に見た役職定年制の導入割合は以下のとおりです。
企業規模(従業員数) |
導入割合 |
50~99人 |
17.1% |
100~499人 |
25.5% |
500人以上 |
36.6% |
役職定年制を導入するメリット
役職定年制を導入する会社が増えていますが、どのようなメリットがあるのでしょうか。
今回は従業員を雇う会社側が役職定年制を導入するメリットを3つ紹介します。
人件費の抑制に繋がる点、組織内の新陳代謝を向上させる効果がある点、若年層の活性化がはかれる点の3つです。
順番に詳しく解説します。
人件費の抑制
会社が役職定年制を導入するメリットの1つ目は、人件費の抑制が実現できることです。
日本的経営は年功序列で給料が高くなる方式を取っています。
そのため、ある程度企業で働いて役職を得た人に対して役職定年制を実施すると、総賃金が抑えられます。組織の硬直化の回避も見込めるので、大企業ほど役職定年制の導入が必要です。
組織内の新陳代謝の効果
役職定年制を導入すると、組織内の人材における新陳代謝がアップします。
ほとんどの企業でピラミッド型の組織構造が取られているため、ポストの数は限られています。
こうした状況下で強制的にポストに就く人員を変えることで、新陳代謝の活性化がはかれることが役職定年制を導入する大きなメリットです。
若年層の活性化
若年層の活性化に繋がる点も、役職定年制を導入するメリットのひとつです。
先に説明したとおり、ポストの新陳代謝がアップするため、その分若くても昇進するチャンスがあります。
仕事を頑張れば役職に就ける状況だと、若年層のモチベーションが高く維持されます。
役職定年制を導入するデメリット
企業が役職定年制を導入するメリットについてお伝えしましたが、続いてはデメリットを紹介します。
導入を検討する企業はメリットだけでなく、デメリットも理解した上で採用することが大切です。必ずチェックしましょう。
モチベーションの低下
役職定年制を導入すると会社で働く従業員のモチベーションが低下する可能性があります。
たしかに、若年層のモチベーションは維持されますが、役職定年をする側は仕事に対する意欲が低下する可能性があります。
役職定年を迎えると、仕事の役割が大きく変わるだけではありません。
勤務時間などは同条件であるのに、役職手当などがつかないため給料が低くなります。
仕事のモチベーションは収入だけではありませんが、やりがいを感じるひとつの要因であることは確かです。
役職定年はさまざまなメリットがある制度ですが、対象の社員のモチベーションを考慮して導入できるか否かがポイントになります。
役職定年後の仕事はどうなるのか?
役職定年後に任される仕事は、制度を実施する企業によって差があります。
ほとんど仕事が変わらなかったり、役職の頃の仕事より格下になったりとさまざまです。
役職定年後の仕事内容を、概ね同格の専門職とする場合、格下となる場合、概ね格下のライン職となる場合の3つに分けてそれぞれの割合で分析します。
概ね同格の専門職とする場合
役職定年後も概ね同格の専門職とする企業の割合は部長級で57.9%、課長級は52.4%です。
役職定年を実施する企業の過半数は、対象者のモチベーションを維持するために同格の専門職にしていることが分かります。
役職定年制のメリットを最大限にいかしながら、デメリットを押さえられています。
格下となる場合
役職定年後に格下になる企業の割合は部長級が37.5%、課長級で43.2%になっています。
同格の専門職となる場合より少ない割合ですが、格下に設定する企業が多いと読み取れます。
また部長級と比べて課長級の方が、役職定年後に格下になる可能性が高いです。
概ね格下のライン職となる場合
概ね格下のライン職となる企業の割合は部長級で8.2%、課長級が10.8%です。
同格の専門職・格下になる場合の割合と比較すると非常に少ないことが分かります。
企業によって制度内容が異なるので一概には言えませんが、役職定年後に格下のライン職になる可能性は低いでしょう。
役職定年制を導入している企業例
最後に、役職定年制を導入している企業を3つ紹介します。
今回紹介するのは、日本水産株式会社、大和ハウス工業、富士通の3社です。
それぞれ順番に導入内容を紹介します。
日本水産株式会社 |
日本水産株式会社では、60歳の定年を迎えた職員を1年間の契約職員として再雇用するシニア職員制度を導入しています。 定年前の職務等級と連動せずに洗い替え方式を採用しているのが特徴です。 |
大和ハウス工業 |
大和ハウス工業は、シニア社員が引き続き会社で活躍できる制度の導入に積極的です。 該当社員は給与が減りますが、定年後も生涯現役で働く機会が与えられます。 高齢社員の出社日数を原則週4日にするなどの工夫が凝らされています。 |
富士通 |
富士通では、役職離任制度という役職定年制が導入されています。 この制度によるモチベーションの低下を防ぐために、シニア人材特区の新会社を設立しました。 役職離任制度の適用後は、富士通で役職名・給与が変更された状態でそのまま働くか、新会社で給与を下げずに働くか選択できます。 |
まとめ
役職定年は、多くのメリットがある制度ですがもちろんデメリットもあります。
導入を考える場合は、双方を知ったうえで自社に適した内容を考えることが大切です。
他社の実施状況を参考に、制度の詳細を決めることをおすすめします。
賢く役職定年制を利用すれば会社に良い影響を与えられるので、検討してみましょう。
あらゆる疑問を匿名で質問できます
約90%の質問に回答が寄せられています。
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