
【懲戒処分と戒告】処分の重さやその後の転職への影響について解説
「懲戒処分」という言葉は聞いたことがあっても、実際にその内容について詳しい方はあまりいらっしゃいません。しかし懲戒処分を受けてしまうと、転職の際に不利な状況に陥ってしまいます。もちろん、公務員でも例外になりません。今回は、懲戒処分の中でも戒告について解説していきます。
懲戒処分の一つ戒告処分とは?
さて、こちらの記事では懲戒処分のうちの一つの戒告処分について紹介します。
そもそも懲戒処分とは、組織における服務規程や職務上の義務に違反したものに対する制裁や懲罰という意味を持ちます。
懲戒処分によって本人に反省を促すといった役割を持ち、厳重注意のみで済まされるものから、減給や一定期間の出勤停止を命じるもの、解雇処分まで様々な種類があります。
このように、懲戒処分は労働者に大きな影響を及ぼすため、使用者側にはその根拠となる法律や社内規定が求められます。
戒告処分とはどういうものか?
戒告処分とはどのようなものなのでしょうか。
そもそも戒告には
- 過失や失態、非行などを強く戒めること
- 公務員への処分
- 行政庁の代執行通知
といった3つの意味があります。
こちらの記事で扱う懲戒処分の戒告とは、2つ目の「公務員への処分」を意味します。
戒告処分については国家公務員法第82条にて定められています。
国家公務員法第82条:
職員が、次のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として免職、停職、減給または戒告の処分をすることができる。
- この法律もしくは国家公務員倫理法またはこれらの法律に基づく命令に違反
- 職務上の義務に違反し、または職務を怠った
- 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行があった
こちらの法律を読むと、戒告は国家公務員のみに適用されるように感じられますが、戒告は一般企業でも就業規則において定められています。
ただし、法律として定められてはおらず、企業ごとの就業規則に則って定められています。そのため、企業ごとにないようは少々異なりますが、公務員とほとんど同じ内容と言えます。
戒告処分が下された際には戒告処分通知書というものが渡され、そこには戒告処分となった理由や注意事項が書かれています。
戒告処分の対象となるのはどんな行為?
さて、戒告処分の対象となるのはどのような行為でしょうか。
今までの事例としては、福井県家庭裁判所の男性が事務処理を1年間怠ったため、戒告処分を受けたというものがあります。
また、新潟県の消防士が警察への虚偽の通報によって逮捕され、その後偽計業務妨害容疑で起訴されたというものもあります。
このように、職務を遂行できなかったり法律に抵触する行為を行なった場合には戒告処分となる可能性があります。
懲戒処分を受けた公務員はもう出世できない?将来の影響は?
昨年度、誤った報告を上司に行い戒告処分を受けました。
もう出世はできないですよね?
定年までミスないように…続きを見る
公務員にとって訓告の戒告とは
さて、こちらの章では公務員に対する懲戒処分の一つとして戒告について紹介します。
戒告とは、過失や失態などを戒めることを指し、国家公務員の懲戒処分の一つです。戒告に似た意味を持つ言葉の一つに訓告というものがあります。
訓告とは、教え告げるという意味を持ち、国家公務員の懲戒処分よりも下の段階の、法律上の処罰の対象とならない軽い処分のことを指します。
具体的には、職員の義務違反に対して責任の確認と将来を戒める行為を言い、主に高騰や文書で注意を促します。
訓告の場合は給与などに影響しないことが多いとされますが、訓告が3回累積すると戒告一回分相当と計算されます。
公務員の戒告の事例とは
公務員に対する懲戒処分は法律によって規定されています。国家公務員は国家公務員法第82条によって、免職、停職、減給、戒告の処分が定められており、地方公務員は地方公務員法第29条によって、同様の処分が定められています。
また、自衛隊のように別に法律が定められている業種もあります。さらに人事院により処分の決定に関する指針や、処分を行なった場合の公表方針なども明確に整理されています。
具体的にどのような職務違反をしたら戒告になるのか、人事院の指針で定められた基準例を以下に紹介します。
- 正当な理由なく10日以内欠勤する
- 遅刻や早退を繰り返す
- 嘘をついて休暇を申請する
- 勤務態度不良
- 暴言により職場の秩序を乱す
- 事実の捏造や虚偽の報告
- 違法なストライキなどの団体活動
- 誤って情報漏洩をしてしまう
- 政治的目的を持つ文書を配布する
- 公務員として認められていない兼業をする
- 猥褻な言動
- 抗菌や官物の紛失や損壊
- 暴行、器物損壊、遺失物の横領、賭博
- 飲酒運転に同乗するなどの関与をする
- 指導監督員として不適格
懲戒処分の種類とそれに伴う処分の重さは?
軽い処分で済むものやクビになるものまである?
そもそも、懲戒処分の種類にはどのようなものがあり、それによる処分の重さはどの程度なのでしょうか。
懲戒処分の種類は7つあります。軽いものから順に説明していきます。
- 戒告
口頭での注意によって将来を戒めるものであり、実務上では、懲戒処分ではない事実上の注意も多用されています。
- 譴責
始末書を提出させて将来を戒めるもので、同様の行為を行わないよう、従業員自らの言葉によって誓約させます。
- 減給
本来であれば支給されるべき賃金の一部を差し引くことで将来を戒めます。差し引く金額は労働基準法第91条によって限度が決められています。
労働基準法第91条:1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない
- 出勤停止
一定期間の出勤を禁止するものです。停止期間が長すぎるものは処分無効となる可能性もあります。
- 降格
役職や職位、職能資格を引き下げるものです。
- 論旨(ゆし)解雇
企業と労働者が話し合い、納得した上で解雇処分を進めることです。ちなみに諭旨とは、趣旨をさとし告げるという意味を持ちます。
- 懲戒解雇
懲戒処分として最も重いもので、企業側が、従業員との労働契約を一方的に解消することです。これは就業規則などに定められている懲戒処分ないように基づいて行われます。
公務員にとって戒告処分が意味するものとは?
国家公務員法による法的処罰の影響
それでは、実際に戒告処分を受けてしまった場合、今後のキャリアにどのような影響があるのでしょうか。
戒告は口頭または文書で与えられる注意でありますが、実は公務員の場合、戒告処分を受ければさらに形を伴った罰が下りる可能性があります。
どのような罰が下るかは法律によって定められていませんが、次のような影響があると考えられます。
- 出世への影響
当然、戒告処分を受けてしまうと出世の可能性は低くなります。
特に戒告処分はそれほど重くない罰ですが、一度受けると上司からの印象は確実に悪くなりますので、気をつけなくてはなりません。
- 給与への影響
戒告処分は減給を伴いませんが、ボーナスの査定などに影響する恐れがあります。
公務員のボーナスは勤務態度などを反映して金額が決められるため、戒告処分が原因でボーナスが減額されることは大いに考えられます。
- 退職金への影響
国家公務員退職手当法において「当該退職をした者が占めていた職の職務及び責任、当該退職をした者が行つた非違の内容及び程度、当該非違が公務に対する国民の信頼に及ぼす影響その他の政令で定める事情を勘案して、当該一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができる」と定められています。
すなわち、戒告を受けただけであっても退職金減額の対象となってしまう可能性があるのです。
- 転職への影響
懲戒処分を受けた場合、履歴書の賞罰欄にそれを記入する必要があります。
これは戒告処分の場合も同様で、仮に履歴書に虚偽の内容を記入すればのちに不利な事態になることも考えられます。
よって一度懲戒処分を受けてしまうと、のちの転職の際に影響があるかもしれません。
懲戒処分に関する履歴書への記載義務
転職活動の際に注意
以上のように、懲戒処分を受けるとその時点で何らかの処罰を受けるのとは別に、多くの影響があることがわかりました。そのうちの一つに履歴書への記載義務があります。
先ほど説明した通り、履歴書には虚偽の内容を書くことが許されていません。よって履歴書の賞罰欄には戒告処分であってもそれを記入しなくてはならないのです。
ただし、賞罰については面接時に聞かれたら答える、もしくは履歴書に賞罰欄があった時にのみ答える必要がありますが、自発的に言及する必要はありません。
仮に一度懲戒処分を受けたことがあり、転職を考えている方は注意しましょう。
まとめ
以上、懲戒処分と戒告についてご紹介しました。
懲戒処分とはどのようなもので、中にはどのような種類の処分があるのか、ご理解いただけたのではないでしょうか。
また、特に公務員の場合は法律によって懲戒処分の内容が詳しく規定されており、後のキャリアに響く可能性があることが分かったと思います。
懲戒処分とはどのようなものなのか正しく理解し、今後のキャリアを積んでいくことのできるよう注意しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
あらゆる疑問を匿名で質問できます
約90%の質問に回答が寄せられています。