
【懲戒処分と降格】具体的な内容や裁判の事例から詳しく解説
懲戒処分が下される時、様々な処分内容があります。その中で「降格」という処分を下されることがあります。組織の統廃合での降格という場合もありますが、懲戒処分での降格はどのようなものになるのでしょうか。この記事では、懲戒処分の降格について、裁判事例も含めて解説していきます。
降格には懲戒処分含め3種類ある
会社に入ると、多くの方が昇格して上の地位に就くことを目指すと思います。また、3月に入ると4月の人事異動と昇格発表が気になって、仕事より人事の噂に敏感になる人もいます。
それほど人事に関することはビジネスマンにとっては重要なことです。
しかし人の異動は昇格に伴うものだけではなく、懲戒処分による降格もあります。
今回の記事では、まず降格全体について説明したあとに、懲戒処分による降格の説明、懲戒処分無効の判例の紹介、そして最後にもし懲戒処分を実施するときの注意事項についてご説明いたします。
それでは最初に降格について、懲戒処分による降格と人事異動による降格が2種類の合計3種類の降格があることについてご説明してまいります。
懲戒処分としての降格とは
会社規則に明らかに反する行為を行った、例えば購買課長が取引先と癒着し不正な取引を行った、といった場合に懲戒処分が下されます。
処分はもっとも軽いもので「戒告(かいこく)」や「譴責(けんせき)」と呼ばれる処分で、基本的に管理責任者から問題を起こした社員へ再発しないよう注意することです。
また、最も重いものが「免職」です。たまにテレビで、犯罪を起こした人が「懲戒免職になった」というニュースを聞くことがあると思いますが、懲戒免職を簡単に言うと、社員を強制退職させることです。
そしてやや重い処分として「降格」があります。これは例えば人事部門より本部長から課長へ降格人事発令が下されることです。
一般的には、突然降格人事発令を受けることはありません。降格対象者は発令前に人事部門や上司に呼び出され、事実確認などが行われたあとに発令されます。
そのため、本人も周囲の社員も極端に驚くことはないと思われます。
人事異動による降格は2種類あります。
- ポストが消滅したことによる降格
- 基本給の減給に伴う降格
以下で詳しく見ていきます。
ポストが消滅したことによる降格
一つは、組織変更で本部や部門が統廃合することにより、ポストが消滅したことによる降格です。
例えば、海外営業本部が営業本部の中に吸収されたため、海外営業本部長が営業本部へ部長に降格し就任することは、変化の激しい今の社会では珍しくありません。
この場合、職務手当の減給は発生するかもしれませんが、基本給には影響ありません。
基本給の減給に伴う降格
もう一つは、基本給の減給に伴う降格です。
基本給が変わらない降格は人事判断だけで実施できますが、基本給の減給に伴う降格は一方的には実施できません。
会社規則に減給について記載があれば可能ですが、記載がない場合は、通常、上司、人事と本人が話し合って相互理解をした上で減給を実施します。
例えば、設計部門で業務を行っていた社員が体調を崩して設計業務の継続ができなくなり、製品修理部門へ基本給減給降格を納得して異動するなどの例が考えられます。
懲戒処分としての降格は地位を下げること
会社規則に反したために懲戒処分を受けるということは、他人から見て「制裁」を受けたことが分かることが必要と考えられます。
そのために懲戒処分対象者の地位を下げることが一般的に実施されているようです。
降格として下がるもの
給料は
- 基本給
- 職務手当
- 扶養手当など
の3つで構成されております。
降格した場合、職務手当が下げられます。
給料には直接影響を与えませんが、出張時の日当費用の減額のほか、新幹線や飛行機の席のグレード(グリーン席から指定席など)が下がるなどの影響も出てくると思われます。
降格に伴う減給の考え方
基本給は生活給であるため前項にも説明しましたが、会社規則に減給について記載がない限り、たとえ懲戒職分による降格でも基本給は勝手に下げることはできません。
基本給を下げるということは、等級を下げることになるため、本人の合意が必要となります。
減給処分の影響は降格対象者の生活全体に及ぼしますので、十分考慮して処分を検討されるほうがよいと思われます。
懲戒処分の降格は無効とされる場合もある
組織変更による降格人事はともかく、懲戒処分による降格は本人によって非常に不名誉なことです。
懲戒処分で降格が有効になる場合と、無効になった場合の裁判事例について紹介いたします。
懲戒処分としての降格が有効とされる条件
まず、会社規則に懲戒処分について具体的に定義されていることが必要です。
たとえ会社規則に記載されてあっても、その制裁が世間一般的に見て妥当であることも重要です。
最近ではインターネットで一気に情報が世間に広まります。あまりにも非常識な罰則であれば、懲戒処分対象者によりインターネットに処分の詳細情報が流されてしまい、逆に会社が世間から攻められてしまう恐れがあります。
無効とされた場合の裁判事例
前項で懲戒処分が有効になる条件を記載しましたが、会社規則に懲戒処分内容が定義されていたとしても無効になった判例はあります。
古い事例ですが、「日本鋼管事件最高裁 (S49.3.15)」を例にとって説明します。
従業員は警察に逮捕されたため、会社側は懲戒規則の「不名誉な行為をして会社の体面を著しく汚したとき」に該当するとして、工員を懲戒処分にしたところ、工員が処分を無効として訴えました。
最高裁判決として、企業は大企業で逮捕された従業員は単なる工員であり、犯した犯罪は比較的軽微な刑であったため、会社へ与えた不名誉性はさほど強度でないとして懲戒処分には当たらないと判断しました。
会社規則には懲戒規則は記載しておりますが、やはり定義内容はどうしても抽象的な書き方になってしまいます。
懲戒処分を下すときは、会社内だけでなく第三者の意見を取り入れて判断するほうがよいと思われます。
懲戒処分としての降格を実施する際の注意点
降格を実施する際は、懲戒処分による降格にするのか人事異動による降格にするのかか決める必要があります。
また懲戒による降格を実施する場合は、「制裁」であることを周知させるため公表するかどうかを判断する必要はあります。
それでは懲戒処分で降格を行う場合の注意点についてまとめて説明いたします。
人事異動か懲戒処分かをはっきりさせる
降格を人事異動で行う場合と、懲戒処分で行う場合の影響度は全く違います。本人が納得しないで懲戒処分で行った場合は、社員から訴えられる危険性があります。
懲戒処分で降格させる場合は、第三者の専門家の意見も取り入れて懲戒処分を判断した上で、人事部門や上司も意識を合わせて、考え方がぶれないようにしておく必要があります。
就業規則に記載し共通理解を持っておく
人事部門、上司側の考えを一致させた上で、人事発令前に処分対象者と、どこの就業規則に反したために懲戒処分に相当することを対象者に納得してもらうことが重要です。
公表するかどうか及び内容の取り扱いは慎重に
再発防止のために、規則に反した内容と降格処分内容を公表する考えもありますが、実施は慎重に進めたほうがよいと思います。
本人にとっては不名誉なことで、十分に反省をした上で降格を受け入れれば会社側としては、懲戒の目的を達成しております。
公表するにしても本人の同意を取って実施したほうがよいと思います。本人には不名誉なことですので、懲戒処分も納得しない状況で公表した場合は、社員から訴訟されるリスクがあります。
まとめ
今回の記事では、まず3種類の降格について説明したあとに、懲戒処分無効の判例の紹介、そして最後に懲戒処分を実施するときの注意事項についてご説明してまいりました。
懲戒処分の相手に与える影響は非常に大きく、社員から訴えられたり、ネットで内容を公表されたりするリスクがありますので、懲戒処分は慎重に検討を進めてください。
もし、ご本人や親族、友人が人事部門の方で、社員の懲戒処分で悩んでいる方がいるならば参考にしてみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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