
【懲戒処分の手続き】重要なポイントや流れについてしっかり解説
皆さんは「懲戒処分」についてご存知ですか?会社としてどのような懲戒処分の手段を取れるのかを理解することだけでなく、従業員としてどのような流れで処分が下されるのかを理解することは大切です。この記事では、懲戒処分について処分内容や調査の流れについて解説していきます。
懲戒処分について基本的事項を整理しよう
「懲戒処分」は、従業員として果たすべき義務や規律に違反したときの制裁処分です。処分は懲戒免職・停職・減給・戒告になりますが、刑法の規定による刑罰とは異なります。
「懲戒処分」は、事業所の社内ルールである就業規則に記載された手続きに基づいて処分されるようです。例えば「魔がさして会社のお金を横領してしまいました。」の事案が生じると、事業所は本人の弁明を聞き取り、懲罰委員会を設置して処分を科すようです。
これから、事業所が従業員に「懲戒処分」を科す手続きを紹介します。
懲戒処分の種類と処分内容
「懲戒処分」の処分の種類と内容を紹介します。軽い「懲戒処分」から順番に紹介します。
第1に戒告(かいこく)です。戒告は将来を戒める口頭または文書で通告します。始末書の提出はありません。
第2に譴責(けんせき)です。譴責は始末書を提出させて将来を戒めます。
第3に減給(げんきゅう)です。減給は従業員が受け取る賃金から一定額を差し引く処分です。
第4に出勤停止・停職(ていしょく)です。出勤停止は労働契約を継続し就労を禁止する処分です。
第5に懲戒休職です。懲戒休職は出勤停止の期間を数ケ月にする処分で、賞与の支給停止・昇給又は昇格の停止・延期、降格、論旨解雇(退職勧奨)に至ります。
第6は懲戒解雇・懲戒免職です。この処分が最も重い、いわゆる「クビ」です。退職金の支払いもありません。
懲戒処分の7つの原則
「懲戒処分」を行使するときに注意するべき7つの原則を紹介します。
第1に罪刑法定主義の原則です。「懲戒処分」の行使にあたっては、処分の対象となる行為、処分の種類・内容を明らかにする必要があります。そのため「懲戒処分」を行使するときは、就業規則に記載する必要があります。
労働基準法第89条で規定されていて、事業所の主観で処分を行使することはできないようです。
第2に適正手続の原則です。事実関係の充分な調査と本人の弁明の機会を与えて適正な手続きを踏む必要があります。客観的な証拠を収集して充分に調査することが重要であり、事象の証言や先入観で処分を科すことはできません。
また、本人へ弁明の機会を与えて公平な手続きをします。就業規則に懲罰委員会の設置を規定しているケースでは、その手続きも遵守する必要があるようです。
第3に合理性・相当性の原則です。事案の背景や経緯・情状酌量の余地等を考慮して不要な処分や過度な処分であってはいけません。
客観的に合理的な理由を欠くケースや、社会通念上相当でないケースのときは、その権利を濫用したものとして当該懲戒は無効になります。労働契約法第15条で規定されていますので、注意が必要になるようです。
第4に平等取り扱いの原則です。以前に同様の事案があったときは当時の処分との均衡を考慮する必要があります。
成果を挙げている従業員の問題行動を「これくらいいいだろう」と放置していると、あとで他の者が同様の問題行動を起こしたときに処分することが難しくなります。つまり、従業員に対して等しく毅然とした対応をとることが重要です。
第5に個人責任の原則です。個人の行為に対して連帯責任を負わせることはできません。
例えば、飲食店・美容室などで現金不足が生じたとき、原因不明のままにして全員に連帯責任を負わせるような処分はできないようです。
第6に二重処分禁止の原則です。同一の事案には2重の処分を科すことはできません。
事実調査のために無給で自宅待機を命じたときは、それ自体が懲戒と解釈されてその後行使した懲戒解雇が無効となる可能性があるようです。注意が必要になります。
第7に効力不遡及の原則です。新たに処分の対象となる行為を定めたときはその規定は制定後に発生した事案にのみ適用します。問題が発生した後にそれを対象とした処分規定を追加しても遡及して処分の行使はできません。
社会情勢の変化によって「懲戒処分」の対象となる行為は多様化しているので、定期的に懲戒事項を見直すことが肝要になります。
懲戒処分の手続きに必要なポイントとは
事業所が従業員に対して「懲戒処分」を科すときは、就業規則に従い当事者の弁明の機会を与えます。
また、弁明の機会を与えない処分は無効になるケースがあるようです。
懲戒処分の種類と事由が就業規則に記載されているか
「懲戒処分」を行使するためには、就業規則に「懲戒処分」の規定がされていることです。「懲戒処分」は事業所内での「処罰」「刑罰」に準じ、従業員への明示が必要です。
例えば、該当の事業所の処分の規定が①戒告、②減給、⑤懲戒解雇の3類型の「懲戒解雇」のときは、「出勤停止」「停職」に関する「懲戒処分」は行使できません。
就業規則に問題行動に該当する事由が記載されているか
就業規則に「懲戒処分」に該当する懲戒事由を明記してことが前提です。そのため、いくら酷い行動でも懲戒事由に該当しないときは「懲戒処分」を行使できません。
さらに、理由をこじつけた「懲戒処分」は無効です。「懲戒処分」が有効であるためには、処分に「客観的に合理的な理由」があることが必要と労働契約法第15条に規定されています。
懲戒処分内容が重すぎないか
「懲戒処分」は、処分理由が「当該行為の性質・態様その他の事情に照らして社会通念上相当なものと認められない場合」は無効になると、労働契約法第15条で規定されています。
これが「懲戒処分」の相当性の原則です。仮に懲戒事由があるとしたときに、その行為内容や勤務歴に照合し、過重な処分を選択すると無効になるケースもあります。
本人にきちんとヒアリングしているか
当事者の弁明の機会を与えヒアリングをすることが重要です。就業規則で「懲戒処分」を科す前に懲戒委員会を開く規定があれば懲戒委員会の開催が必要です。
そうした規定がないとき、当事者の言い分をしっかり聞くプロセスは不可欠です。事情聴取が無いと懲戒事由の該当性の判断自体ができないケースもあります。
懲戒処分を行うための手続きはこのステップを踏もう
「懲戒処分」を行使するときは
- 事実関係の調査・確認
- 就業規則との照合
- 委員会設置
- 処分決定と当事者への告知と手続き
以上の4つがあります。これから手続きの行程を紹介していきます。
事実関係の調査
第1のステップは事実関係の調査です。当事者へ「懲戒処分」を行使するときは事前に事実確認を十分に行います。
確認後は就業規則へ抵触するのかを、当事者へ説明しましょう。
就業規則との照らし合わせと処分内容の検討
第2にステップは就業規則と照合して「懲戒処分」内容を検討します。就業規則へ抵触する行為が処分対象の量刑の度数を検討します。
当事者の将来を左右させる処分ですので、慎重に検討する必要があるようです。
懲罰委員会の諮問などの手続き
第3のステップは懲罰委員会を設置して諮問することです。複雑な事案のケースは専門家や弁護士に介入してもらい、処分決定を支援してもらうこともあるようです。
処分内容の決定と本人への通知
第4のステップは処分内容の決定と当事者への告知をすることです。「懲戒処分」が行使される当事者への告知は慎重にする必要があるようです。
「懲戒解雇」「懲戒免職」処分が科されると将来に影響するので、慎重に行使することが大切なようです。
懲戒処分の手続きに含まれる事実関係の調査とは
「懲戒処分」の手続きに含まれる事実関係の調査は、以下の流れです。
- 関係者への聞きとり
- 証拠品の扱い
- 周囲への聞きとり
- 当事者への聞きとり
以下で行程を紹介していきます。
通報者や被害者など直接の関係者へのヒアリング
第1に通報者や被害者など直接の関係者への聞きとりをします。従業員の不祥事には事実認定を行うために、通報者・被害者の事案に直接関係する方への聞きとり調査は不可欠な要素になります。
事実認定を実施せずに特定の当事者への処分行使は、非常に危険といえます。調査方法については、懲戒当事者や被害者の性格や事案の性質のほか、事態の重さを勘案する必要があるようです。
証拠品の収集
第2に証拠品の扱いがあります。
証拠品になりうるのは、以下の通りです。
- 文書
- 証拠となる写真・動画・音声データなど
その後、証拠品の作成者・作成日付などを確認して、事案と証拠品が整合していることを確認します。
事情を知る非直接的な関係者へのヒアリング
第3に事情を知る非直接的な関係者・周囲への聞きとりをします。
当事者以外で、事情を知る可能性がある関係者から聞き取りをします。例えば、非行行為の目撃者などから聞きとりをして事実関係を確認していきます。
また、事案において憶測が無いことを確認していきます。
問題行動の当事者へのヒアリング
第4に当事者への聞きとりをします。当事者への聞きとりは、聞きとり行為が強要でないことを伝えます。
また、聞きとりを拒否したときには、処分の判断材料になることを伝えます。当事者への聞きとりをするときは先入観が持たない配慮が必要なようです。
まとめ
非行行為を行った従業員への「懲戒処分」は憶測・先入観で判断することが厳禁です。
周囲への聞きとり・当事者への聞きとり・委員会に諮問する行程を経て公正な処分を科すことが重要であるといえるでしょう。
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