
【停職と退職金】処分の制度による違いについて事例付きで解説
懲戒処分を受けてしまった時、お金に関することはその後の生活にも大きく関わるため、とても気になる点です。そこで今回は、停職処分になった際の「退職金」の有無について解説していきます。これは民間企業か公務員かどうかで全く異なってきます。事例も含めて見ていきますので、参考にして頂ければ幸いです。
公務員が停職処分を受けるとどうなる?
みなさんは、停職処分という言葉をご存知でしょうか。テレビや新聞などで耳にしたことがあるという方も多いと思います。
この記事では、停職処分と退職金について詳しくご紹介します。
そもそも停職処分とは「職員としての身分は保有させながら、一定期間職務に従事させないこと」を意味します。
そもそも懲戒処分とは、組織における服務規程や職務上の義務に違反したものに対する制裁や懲罰という意味を持ちます。
懲戒処分は本人に反省を促すといった役割を持ち、厳重注意のみで済まされるものから、減給や一定期間の出勤停止を命じるもの、さらには解雇処分まで様々な種類があります。
具体的な懲戒処分は以下の7種類に分類することができます。
- 戒告
口頭での注意によって将来を戒めるものです。しかし実務上では、懲戒処分ではない事実上の注意も多用されています。
- 譴責
始末書を提出させて将来を戒めるもので、同様の行為を行わないよう、従業員自らの言葉によって誓約させます。
- 減給
本来であれば支給されるべき賃金の一部を差し引くことで将来を戒めます。差し引く金額は労働基準法第91条によって限度が決められています。
労働基準法第91条:1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない
- 出勤停止、停職
一定期間の出勤を禁止するものです。停止期間が長すぎるものは処分無効となる可能性もあります。
- 降格
役職や職位、職能資格を引き下げるものです。
- 論旨(ゆし)解雇
企業と労働者が話し合い、納得した上で解雇処分を進めることです。ちなみに諭旨とは趣旨をさとし告げるという意味を持ちます。
- 懲戒解雇
懲戒処分として最も重いもので、企業側が、従業員との労働契約を一方的に解消することです。これは就業規則などに定められている懲戒処分ないように基づいて行われます。
停職処分は、公務員に対する処分の一種ですが、民間企業においては「出勤停止」がそれに該当します。
停職期間の給料や停職明けの実情
基本的に停職処分を下された場合、職務時間は自宅で謹慎することになり、外出をすることは許されません。当然、その間の給料も支払われません。定められた停職期間を過ぎれば、職場に戻ることができます。
しかし、停職処分に当たる問題を起こしてしまえば同僚や上司との関係性が悪化したり、周囲からの目線が気になったりして十分に仕事ができないでしょう。
また、公務員の昇進制度は減点方式なので、一度懲戒処分を下されると出世や給与はかなり不利になると考えられます。
なぜ公務員は停職よりも依願退職を選ぶのか?
自己都合退職扱いで退職金も受け取れる
それでは一度停職処分を受けてしまった場合、どのように対応するのが良いのでしょうか。
恐らく新聞やテレビなどのニュースを通して依願退職という言葉を耳にしたことのある方は多いかと思います。公務員は停職を受けることがわかった場合、依願退職を選ぶ人が多いとされています。
そもそも退職は、その原因が従業員側にあるか会社側にあるかによって、「自己都合退職」と「会社都合退職」に分けられます。
依願退職は自己都合退職の一つであるため、退職金や失業保険においても自己都合退職として扱われます。また、転職で会社を退職したり、結婚や出産を機に退職したりした場合も依願退職であると言えます。
すなわち、たとえ懲戒処分を受けることがわかった上で依願退職をしたとしても、退職金を受け取ることができるのです。
国家公務員法で決められた公務員の退職金
退職金を決定する要因とは?
それでは、公務員の退職金はどのように決定されるのでしょうか。
退職手当は、職員が継続勤務して退職する場合の勤続・功労報償によって定められ、国家公務員退職手当法にて詳しく規定されています。
ただし、次のいずれかに該当する場合には、退職手当の全部又は一部が支給されないか、支給後であっても返納が求められます。
- 懲戒免職等処分を受けて退職した場合(退手法第12条第1項第1号)
- 失職した場合(成年被後見人又は被保佐人に該当することによる失職を除く。)(同法第12条第1項第2号)
- 在職期間中の非違行為に係る刑事事件に関し、退職後に禁固以上の刑に処せられた場合(同法第14条、第15条及び第17条)
- 退職後に、在職期間中の非違行為が発覚し、それが懲戒免職等処分相当の行為であると認められた場合(同法第14条から第17条まで)
また、職員が死亡した場合で次に該当する遺族は、退職手当を受け取ることができません。
ア:職員を故意に死亡させた遺族(同法第2条の2)
イ:職員の死亡によって退職手当の支給を受けることができる先順位、又は同順位の遺族となるべき者を故意に死亡させた遺族(同法第2条の2)
退職金の算定方法とは?
退職手当は次のように計算されます。
退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続年数別支給割合)+調整額
退職理由に関しては、退職金を算定するにあたり、自己都合、定年・応募認定・死亡または傷病などに区分されています。
死亡、傷病による退職については、公務上と公務外に、さらに公務外の傷病による退職については、通勤によるものと私傷病によるものとに区分されています。
また、勤続期間の計算は、職員としての引き続いた在職期間により計算されます。ただし、次の場合はその期間の全てまたは一部を在職期間から除いたものが勤続期間として計算されます。
その1/2の期間を除算するもの
- 私傷病または刑事休職および研究休職
- 懲戒処分としての停職期間
- 育児休業の期間
その全てを除算するもの
- 職員団体専従休職の期間
- 自己啓発休職の期間
- 配偶者同行休業の期間
自衛官の退職金はどのくらいなのか?
最後に、公務員の一例として自衛官の退職金がどれくらいなのかを紹介します。公務員の中でも自衛官の依願退職は多くあるとされています。
自衛官の依願退職のきっかけは、訓練や特別勤務が辛い、組織に馴染めない、上司や同僚とのコミュニケーションがうまくいかないなど様々なものがあります。
階級や勤続年数で大きな差がつく
そこで気になる退職金ですが、自衛官の場合は階級と年俸、勤続年数に大きく左右されるとされています。
仮に定年退職をした場合は、
(退職時の俸給 × 支給倍率)+(調整月額 × 60)
とされています。ここで支給倍率は勤続年数により定められています。
一方、定年退職ではなく依願退職をした場合、上記の勤続年数により変化する支給倍率がより低く設定されます。
よって、自衛官の退職金は退職時の階級や勤続年数、さらに定年退職か依願退職かということに大きく左右されるのです。
まとめ
以上、停職処分と退職金について説明しました。
懲戒処分の一つの停職処分を下されると、停職期間の給料が支払われず、復職後の出世や給料に影響が出るだけでなく、退職金にも影響が出ることが分かって頂けたでしょうか。
懲戒処分を受けないような行いをするのはもちろんですが、働くにあたってはどのような行為が懲戒処分に該当するのか、確認しておく必要があります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
あらゆる疑問を匿名で質問できます
約90%の質問に回答が寄せられています。
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