
【懲戒処分を受けた場合の退職金とは】基準や事例をご紹介
皆さんは「懲戒処分」にいくつかの種類があることをご存知でしょうか?7種類ほどあり、それぞれで処分の量刑が違ってきます。今回の記事では、この懲戒処分を受けた際に退職金は支払われえるのか、退職金のし辛いは何を基準に決定されるのかについて詳しく解説していきます。ぜひ一度、ご覧になってみてはいかがでしょうか?
給料や退職金に影響を及ぼす懲戒処分とは?
懲戒処分とは、服務規程に何らかの違反をした従業員に対して、会社が与える制裁罰です。
懲戒処分には種類があり、懲戒解雇、諭旨解雇(ゆしかいこ)、出勤停止、降格、減給、譴責(けんせき)、戒告(かいこく)などがあります。
・譴責、戒告
懲戒処分の中でも最も軽い処分です。
従業員の将来を戒めるための処分で、口頭注意や文章での通知を行います。
一般的にはこれらの処分を受けることでも、人事考課に不利益が生じます。
・減給
給料を一定額差し引く処分です。
会社の裁量で自由な額を差し引ける訳ではなく、労働基準法にて限度額が定められています。
なお減給には期間がなく、1つの問題行動に対して1回のみ行える処分となっています。
そのため来月の給料が減給となった場合、再来月以降からは再び満額支払われる形になります。
(ただし役員に対しては期間を設けての処分が可能です)
・降格
役職や職位などを引き下げる処分です。
・出勤停止
一定の期間、出勤を禁止する処分です。
出勤が禁止されている期間は無給となり、勤続年数にも含まれません。
懲戒理由によって期間は変わってきますが、1~2週間であることが多いです(より長くなる場合もあります)。
・諭旨解雇(ゆしかいこ)
重大な服務規程違反をした従業員に対する処分で、懲戒解雇に匹敵する理由があるものの、温情などによって、懲戒解雇とせずに解雇する処分で、「諭旨退職」とも呼ばれます。
懲戒解雇に比べて、退職金に関する不利益が少なくなっています。
・懲戒解雇
重大な服務規程違反をした従業員に対して、制裁として強制的に解雇する最も重い処分です。
退職金や退職に関する手当について不利益を受ける他、キャリア上にも大きな悪影響を及ぼします。
退職金の支払いは何を基準に決定されるのか?
懲戒処分時における退職金の支払いについて解説をします。
就業規則や法律による厳しい判断基準が存在
退職金については、司法が以下のような判断を下しています。
・過去の判例から、規則や契約などで支給基準が定められていて、使用者に支払い義務があるものは賃金であるとみなす
・退職金は基本給や勤続年数などを基準にして、支給条件が明確に規定されている
・従って退職金については「後払い的な意味合いが強い賃金」とみなす
・賃金については、余程の理由がない限り使用者に支払い義務がある
・従って退職金を全額不支給とするには、退職までの労務提供による貢献を抹消するほどの重大な背信行為が必要
また退職金だけでなく処分全体を見ても、懲戒解雇は非常に重い処分と言えます。
そのため裁判所は懲戒解雇の有効性についても、かなり厳しく判断する傾向があります。
懲戒処分を受けると退職金は減額?それともゼロ?
仮に退職金を不支給とする就業規則を定めていたとしても、その従業員のそれまでの貢献が帳消しになってしまうような理由が無い限り、会社には退職金を支給する義務があります。
懲戒解雇処分とすることで退職金が不支給となるかについての基準には、違反行為の重大性や損害の大きさ、その従業員のそれまでの功労、過去の処分との比較などがあります。
そのため余程の理由でない限りは、多少の減額はされたとしても、不支給になることはありません。
不祥事を起こした公務員の退職金はどうなる?
公務員が懲戒免職(公務員にとっての懲戒解雇)となった場合の退職金は、法律や条例に基づいて支給制限を受けます。
また起こした問題が国民の信頼を失うほど重大なものであった場合など、事の大きさによっては、退職金の一部不支給や全額不支給の処分を下すことができます。
これは地方公務員も同様です。
なお、懲戒処分や退職金の支給制限などに不服がある場合は、雇用主である行政機関に対して不服申立ができます。
申立が受け入れられなかった際には、一般の会社員と同様に裁判で争うことも可能です。
退職金の支払いをめぐる様々な争い
懲戒処分に伴う退職金の支払いを巡って、裁判で争う例は少なくありません。
無用な争いにならないよう、企業側は懲戒処分を下す前に、退職金を支払うべきケースなのかを確認することが大切になります。
逆に従業員側は、減額や不支給を言い渡されたとしても、その判断が不正である可能性があることを考慮してください。
そのため少しでも処分に疑問を感じたら、弁護士に相談すべきです。
退職金の支払いが妥当と認められやすいケース
退職金の支払いが認められやすいケースとしては、以下のような理由で懲戒処分が下された場合となります。
・一時的な感情の昂ぶりを理由とする、上司への暴言やトラブル
・交通費などの、わずかな金額の不正受給
・同業他社への転職を禁じられている上で、退職後に経験を生かす理由で同業他社へ就職
・退職時に引き継ぎ等を行わなかった
このように、会社への損害が小さい、裏切り度合いが少ないなどのケースは、未払いや減額が無効と判断されやすいといえます。
退職金の未払いや減額が妥当と認められやすいケース
退職金の減額や、不支給が妥当と認められやすいケースとしては、以下のような理由で懲戒処分が下された場合となります。
・会社の財産を横領
・重大な企業秘密の漏洩
・会社の名誉や信用を毀損
・重大な業務命令違反
・上司に対する暴行
このように、犯罪を犯した、会社への損害が大きい、裏切り度合いが大きいなどのケースでは、未払いや減額が妥当であると判断されやすいと言えます。
まとめ
以上、懲戒処分を受けた際の退職金の支払いについてまとめました。
懲戒処分となった場合、退職金を減額、または不支給とすることを就業規則に明記していれば、支払う必要はないと考えている企業が多いようです。
しかしながら実際はこの記事で紹介した通り、退職金は賃金の後払いといった性質が強いと認められています。
そういった事実を知らずにいることは、企業にとっても従業員にとっても不利益と言えます。
懲戒処分とした従業員に対して、退職金を支払うことに抵抗を感じる企業が多いことは理解できます。
しかしながら司法が判断しているように、それが過去の功績を覆すほどの理由によるものなのかを、冷静に考えてみることが必要なのではないでしょうか。
あらゆる疑問を匿名で質問できます
約90%の質問に回答が寄せられています。
あらゆる疑問を匿名で質問できます
約90%の質問に回答が寄せられています。