
【公害防止管理者について】資格や試験概要、将来性などをご紹介
皆さんは「公害防止管理者」という言葉をご存知でしょうか?この言葉は、公害発生施設または公害防止施設の運転、維持、管理、燃料、原料などの検査を行う仕事のことを指します。今回の記事では、公害防止管理者の資格や試験、将来性などについて解説していきます。ぜひご一読ください。
公害防止管理者の資格について
皆さんは、公害防止管理者という仕事を聞いたことがあるでしょうか。
恐らく多くの人にとって馴染みのない言葉でしょう。
そもそも、公害防止管理者は公害防止管理者制度の発足に伴い生まれた職業です。
日本は戦後、飛躍的な経済成長を果たした一方で各種の公害問題が引き起こされました。
そして昭和45年に、公害問題を克服するためのいわゆる公害国会が開かれ、公害対策基本法の改正をはじめとして、大気汚染防止法や水質汚濁防止法などの複数の法律が改正または制定されました。
しかし当時強化された規制水準の遵守を義務付けられることになった工場の多くは、十分な人的公害防止体制が整えられていませんでした。
そこで昭和46年に、工場内に公害防止に関する専門知識を有する人的組織の設置を義務付けた「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」が定められ、公害防止管理者制度が設けられました。
公害防止組織は大きく分けて次の3者により構成されます。
1.公害防止統括者
工場の公害防止に関する業務を統括・管理する役割を担います。
工場長などの職員にある方が適任で、資格は不要です。
2.公害防止主任管理者
公害防止統括者を補佐し、公害防止管理者を指揮する役割を担います。
部長または課長の植生にある方が想定され、資格が必要です。
3.公害防止管理者
公害発生施設または公害防止施設の運転、維持、管理、燃料、原料などの検査を行います。
施設の直接の責任者に当たる人が適任で、資格が必要です。
さて、こちらの記事では3番目に説明した公害防止管理者について詳しく紹介します。
資格の概要
公害防止管理者の資格を取得するためには、公害防止管理者等国家試験を受験する方法と、公害防止管理者等資格認定講習を受ける方法の2通りがあります。
それぞれの概要を以下に説明します。
公害防止管理者等国家試験
1年に1回、毎年10月ごろに実施されます。
全国主要9都市で実施され、東京、愛知、大阪の場合は複数会場設けられます。
国家試験を受験し、一定の合格基準を満たした者のみ、試験に合格したと見なされます。
公害防止管理者等資格認定講習
12月から3月の時期に全国で述べ30回程度実施されます。
全国主要8都市で開催されます。
資格取得の条件は、以下の3つの条件を全て満たすことです。
・受験資格を満たしていること
・規定の講習時間を聴講すること
・修了試験を受験し、修了基準を満たすこと
資格取得に必要な条件とは
また、それぞれの受験資格としては、公害防止管理者等国家試験の場合は特に定められていません。
一方公害防止管理者等資格認定講習の場合は、講習区分ごとに定められている技術資格または学歴に応じた実務経験年数を有していることが条件とされています。
公害防止管理者の資格はどうすれば取得できる?
資格取得に必要な費用はどれくらい?
それでは具体的に公害防止管理者の資格に必要な費用はどれくらいなのでしょうか。
受験料としては、公害防止管理者等国家試験の場合、試験区分によりますが8700円または8200円とされています。
勉強にかかる費用としては、予備校などに通わずに独学で準備することが可能なので、それほどかからないと言えるでしょう。
資格取得試験の実施概要について
また、資格取得試験の実施概要として、区分ごとの試験内容を以下に紹介します。
●大気関係第1種公害防止管理者(75問)
① 公害総論
② 大気概論
③ 大気特論
④ ばいじん・粉じん特論
⑤ 大気有害物質特論
⑥ 大規模大気特論
●大気関係第2種公害防止管理者(65問)
① 公害総論
② 大気概論
③ 大気特論
④ ばいじん・粉じん特論
⑤ 大気有害物質特論
●大気関係第3種公害防止管理者(65問)
① 公害総論
② 大気概論
③ 大気特論
④ ばいじん・粉じん特論
⑤ 大気中のばい煙の拡散
⑥ 大規模大気特論
●大気関係第4種公害防止管理者(55問)
① 公害総論
② 大気概論
③ 大気特論
④ ばいじん・粉じん特論
●水質関係第1種公害防止管理者(75問)
① 公害総論
② 水質概論
③ 汚水処理特論
④ 水質有害物質特論
⑤ 大規模水質特論
●水質関係第2種公害防止管理者(65問)
① 公害総論
② 水質概論
③ 汚水処理特論
④ 水質有害物質特論
●水質関係第3種公害防止管理者(60問)
① 公害総論
② 水質概論
③ 汚水処理特論
④ 大規模水質特論
●水質関係第4種公害防止管理者(50問)
① 公害総論
② 水質概論
③ 汚水処理特論
●騒音・振動関係公害防止管理者(70問)
① 公害総論
② 騒音・振動概論
③ 騒音・振動特論
●公害防止主任管理者(65問)
① 公害総論
② 大気・水質概論
③ 大気関係技術特論
④ 水質関係技術特論
●特定粉塵公害防止管理者(40問)
① 公害総論
② 大気概論
③ ばいじん・粉じん特論
●一般粉塵公害防止管理者(35問)
① 公害総論
② 大気概論
③ ばいじん・粉じん特論
●ダイオキシン類関係公害防止管理者(55問)
① 公害総論
② ダイオキシン類概論
③ ダイオキシン類特論
また、合格基準としては、各試験区分の各科目において、満点の60%以上の正答率で合格とされます。
どんなスキルが必要?試験内容、難易度について
さて、説明したように、一言に公害防止管理者と言っても様々な区分があり、それぞれ必要な知識は異なります。
以上の試験内容を参考にご自身に必要なスキルを確認してみてください。
また、難易度としては、合格率は全体で19.8%ほどとされています。
区分ごとには、
大気関係第1種:19.5%、大気関係第2種:20.3%、大気関係第3種:13.5%、
大気関係第4種:10.6%、水質関係第1種:30.8%、水質関係第2種:19.2%、
水質関係第3種:27.1%、水質関係第4種:23.0%、騒音・振動関係:30.3%、
特定粉じん関係:19.5%、一般粉じん関係:12.3%、ダイオキシン関係:41.9%、
主任管理者:33.7%
であり、きちんとした対策をすれば合格できる資格とされています。
公害防止管理者の資格取得後、仕事を見つける方法
公害防止管理者の仕事はどこで募集している?
公害防止管理者の仕事は各工場で探すことになるでしょう。
ただし、公害防止管理者がいなければ仕事ができないという訳ではないので、必ずしも全ての工場で求人があるとは限りません。
また、設置が義務付けられている工場では、社員に補助を出して資格を取得させるケースも多いでしょう。
未経験者でも仕事はすぐに見つかる?
上記の通り、資格を保有していたからと言って仕事をすぐに見つけられるとは言えない状況です。
ただ、資格を持っていない人よりは有利になるでしょう。
また、公害防止管理者の資格取得者を優遇するという会社も多いので、取れるのであれば取っておくのが良いでしょう。
公害防止管理者のキャリアパスや将来性について
公害防止管理者の収入や将来性
最後に、公害防止管理者の収入や将来性について説明します。
公害防止管理者は特定の工場で選任が義務付けられているため、資格を取得していると資格手当がつくことも多いでしょう。
また、資格を取得することで公害防止部署で責任者になれることもあります。
その場合には役職に応じた給料をもらえるでしょう。
よって、会社の規模や仕事内容によりますが、だいたい400~700万円程度の収入が見込めるでしょう。
どんなキャリアパスがある?具体的な事例を紹介
また、キャリアパスとしては、資格を取得することで、公害関係の部署で部長職を手に入れられる可能性があります。
資格を持たずに入った会社で、公害防止管理者の資格を取得し、その部署で管理職を得るというのが一つのキャリアパスと言えそうですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
以上、公害防止管理者の資格や資格取得後のキャリアパス、将来性について紹介しました。
公害防止管理者という言葉が身近ではなかった方も理解していただけたのではないでしょうか。
今後、技術者としてキャリアアップを臨まれている方は、資格取得を考慮に入れても良いかもしれませんね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
あらゆる疑問を匿名で質問できます
約90%の質問に回答が寄せられています。