【マイスター制度の意味とは？】メリットやデメリットなどご紹介します

マイスター制度とは、ドイツ発祥の制度であり、貴重な技能も後世に伝えるための技能検定制度のことを指します。

マイスター制度の発祥はドイツですが、モノづくりに深く関連した制度であるため、モノづくり大国である日本をはじめオーストリアやスイスでも普及しています。

日本でのマイスター制度は、さまざまな分野における技能を評価し、現代の優れた技術を後世に残すための検定として活躍しています。

特に優秀な技術を持つと判断された人には表彰も用意するなど、モノづくりの技術を受け継ぐためにさまざまな制度の整備がなされています。

今回は、そのマイスター制度について、メリットやデメリット、またさまざまな分野のマイスター制度の特徴を紹介します。

マイスター制度には、現代の優れた技術を後世に残すうえで重要な役割を果たしています。

まずは、マイスター制度の特徴として代表的な3つのメリットを説明します。
 

後継者候補を育成できる

マイスター制度を利用すれば、熟練者から直接技術に関する指導を受けることができ、より簡単に卓越した技術を身に付けることが可能です。

熟練者にとっても、現代では後継者問題などで悩む場面も多いですが、マイスター制度により意識の高い後継者候補を育てやすい環境づくりが可能となっています。
 

マニュアル化しにくいことを継承できる

マイスター制度では熟練者が後継者候補に直接指導をするため、マニュアル化しにくい細かな技術や作業のコツなどを伝授しやすいというメリットがあります。

これにより、本来は一連の作業手順をマニュアル化して伝えていたため失われがちだった微細なテクニックやコツ、さらには作業に向かうときの精神やビジョン、課題解決方法を後世に残すことができ、伝統的な卓越した技術をそのまま次の世代に受け継ぐことができるのです。
 

モチベーションアップできる

マイスター制度という枠組みの中で熟練者から指導を受けることで、検定の合格という明確な目標に向かって技術を磨くことができます。

そのため、モチベーションを維持することができ、さらにはマイスター制度によって整えられた環境もモチベーションアップを後押しします。

また、マイスター制度の中で努力している後継者候補の姿を見ることで、組織全体のモチベーションを上げるという副次効果も見れらるかもしれません。

高度な技術の継承において大きな役割を果たしているマイスター制度ですが、デメリットもいくつか存在します。

代表的なデメリットの3つについて説明しましょう。
 

技能の選別が必要

マイスター制度はその特性上さまざまな分野に適用することが可能です。

しかし、だからといって手あたり次第にマイスター制度を適用してしまうと、管理業務が増えすぎてしまうなどのデメリットがあります。

他には、組織にそれほど利益を与えない技能であったり、希少価値があまり高くない技能であったりすると、わざわざマイスター制度として導入する意義は小さく、無駄なコストを払うことになってしまいかねません。
 

イノベーションが生まれにくいこともある

マイスター制度は希少な技術の継承に重きを置いていますが、それゆえ技術自体は何も変わらず継承されただけで終わってしまうケースが珍しくありません。

この特性から、技術者たちの中にさらなる技術の進歩を目指すという気持ちが薄らいでしまう傾向にあります。
 

モチベーションが低下する可能性がある

マイスター制度はモチベーションアップの助けになると上では述べましたが、モチベーション低下につながってしまうケースも存在します。

例えば、後継者候補になってしまったがために自身の未来に他の可能性を見出せなくなってしまった場合や、他の業務に避ける時間が少なくなってしまった場合がそれに当てはまります。

マイスター制度という枠組みとそれに参加する人の気持ちが一致していないと、多くの場合モチベーションの低下につながってしまう傾向にあります。

続いて、マイスター制度の具体的な例として、まずは建築業のマイスター制度について説明しましょう。

建築の現場での作業において優れた技術を有し、さらには後継者の指導においても実績を残している人を表彰する制度もあります。
 

建設業がマイスター制度を導入するメリット

上述したメリットのように、建築現場でのノウハウを後継者に受け継ぐことはもちろん、マイスター制度の認定証を持っているだけで享受することのできるメリットもあります。

入札積算という、工事の発注者による工事費用の見積もりにおいて、マイスター制度の認定証を持つ作業者がいると、優秀な作業者ということで一定の点数を見積価格に上乗せしてくれるのです。

直接売り上げに関わるポイントであるだけに、マイスター制度の貢献度は大きいといえるでしょう。
 

建設業がマイスター制度を導入するデメリット

一方、大きなデメリットとして建築業界にあまり浸透していないという点が挙げられます。

その性質上大手の建築業者に需要が大きく、今後の制度の普及が期待されるところです。

次に、介護業界におけるマイスター制度、通称ケアマイスターについて紹介します。

ケアマイスターは介護技術の優秀さによって5段階で評価されます。
 

ケアマイスターの実技試験の難易度

ケアマイスターの試験は筆記試験と実技試験からなり、5段階のレベルによって難易度は異なります。

筆記試験では、介護に関する問題の他、一般教養に関する問題も出題されます。
 

ケアマイスターの合格率

ケアマイスターの合格率はレベルにもよりますが、一番簡単なブロンズレベルでも合格率は50％程度です。

一方、最難関のマイスターレベルの合格率も50％程度と差はありませんが、そもそもマイスターレベルを受験するにはケアマネージャーを取得するなど数々の条件が必要であることから受験資格を持っている人が少ないです。
 

ケアマイスターの勉強方法

ケアマイスターの試験対策としてメジャーなものはあまりありませんが、各所の介護センターで勉強会を行っているケースがあり、それに参加するとよいでしょう。

特に、ケアマイスターの検定では筆記試験の他に実技試験があり、他の人の練習の様子を見たり、逆に他の人に自分の練習の様子を見てもらってアドバイスを貰えるので、仲間とともに勉強をするのがおすすめだといえます。

これまでで紹介したマイスターの他に、ゲゼレというものもあります。

ゲゼレとは、マイスターになる前段階であり、マイスターの認定を受ける前にゲゼレとして修業をるまなければなりません。
 

ドイツマイスター制度は崩壊してるの？

実は、マイスター制度発祥の地ドイツではマイスター制度が崩壊の危機に瀕しています。

というのも、ドイツではもともとマイスター制度の認定証がなければ開業できないケースが多く、職人に対しとても厳しい風潮がありました。

また、認定証の取得にも高額の費用が掛かるため、そのこともマイスター制度にとって向かい風となっています。

これらのことから、ドイツにおけるマイスター制度は徐々に衰退しているのが現状です。

しかし、現在は開業に関する規制を緩和するなど、解決に向けた施策を施し、立て直しを図っています。
 

ゲゼレを取得するための留学費用

ゲセレを取得するには一般的に350万程度の留学費用が必要だといわれています。

この額は研修先の場所や手当ての量によっても変わります。

さらにマイスターの取得をする場合は、追加で70万程度の費用がかかるといわれています。

以上がマイスター制度の解説となります。

現代の貴重な技術を守るうえで非常に重要な役割を果たしているマイスター制度ですが、利用する際は、自分の将来を左右する制度であり、また費用も多くかかることから、よく考えることが必要です。

しかし、技術を身に付け、熟練した職人になるためには非常に良い制度ですので、積極的に利用していきたいところです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

関連記事
▶︎マーケティングミックスの意味とは？4P・4C分析についても解説します