
【マイスター制度とは】メリット・デメリットなどご紹介します
皆さんは「マイスター制度」という制度をご存知でしょうか?聞いたことはあるけど詳しくは知らないという方は少なく無いと思います。そこで今回はマイスター制度の正しい意味やメリット・デメリット、またグゼレとマイスターの違いについてなどもご紹介していきますので是非参考にしてみてはいかがでしょうか?
ドイツ発祥のマイスター制度とは?
マイスター制度は技術者として高い専門的技術と知識を持ち、さらに経営や後輩指導も高いレベルで行える人材であることを証明するための高等職業能力資格認定制度のことです。
マイスターはドイツ語で「巨匠」や「大家」という意味で、プロフェッショナルを指す言葉として日本でも浸透しています。
ドイツマイスター制度は崩壊してる?
ドイツでは94業種の手工業について、マイスター資格を持っていない人は開業や企業設立などが認められていませんでした。
ですが、2003年に欧州裁判所がドイツに対して「ドイツ国内において他国の手工業者にマイスター資格の取得を要求することはEUのサービスの自由に反する」という判決を下しました。
この判決を受けて、ドイツは53業種の手工業についてはマイスター資格の取得義務を免除する法改正を行いました。
この結果、開業を目指す人々の多くはマイスター資格のいらない業種に流れる事態となりました。
しかし、マイスター資格が独立する条件となっていることが疑問視されてはいますが、高い技術力と知識を保有していることを証明してくれることは確かです。
マイスター制度は時代の変化に合わせて少しずつ変化、対応していくと思われます。
マイスターの資格の種類
ドイツのマイスター資格は大きく分けて2種類あります。
1つ目が「手工業マイスター」です。
主にビール醸造や食品加工、製菓、木工家具など94業種あります。
2つ目が「工業マイスター」です。
こちらは昔ながらの手工業に近代の機械化されたものを混ぜ合わせて発展したもので、金属加工や電気整備工、情報技術者など300種類以上あります。
マイスター制度のメリット・デメリット
マイスター制度は技術者や企業の技術力や経営力を高めながら次世代へ受け継がせるための素晴らしい制度ですが、制度にはメリットになる面があれば当然デメリットになる面も存在します。
ここではマイスター制度の3つのメリット・デメリットを紹介いたします。
マイスター制度の3つのメリット
技術が継承しやすい |
技術者たちは試行錯誤を繰り返しながら長い年月をかけて技術を高めてきました。 しかし、1人の人間ではいつまでもプロフェッショナルとして働くことはできません。 マイスター制度なら技術の細かい部分も後継者に詳しく伝えることができ、指導や確認もすぐに行うことができるため、マニュアル化しにくい技術の継承も容易です。 そして、技術とともに技術者としての心構えも後継者に伝えることができます。 |
ブランディングがしやすい |
マイスター制度は独自技術や技術者本人、または企業の認知度を高めることもできます。 商品に対して独自技術によって作られたものと広めることで、この技術者の、企業の商品は品質が良いと認知させることができ、ブランド化を促進させることができます。 |
モチベーションを維持しやすい |
指導してくれた熟練技術者からの評価や試験の合否といった形で、自分の技術が見える化されることで、レベルアップの実感を持たせたり、次のレベルに上がるための課題を見極めやすくしたりすることができます。 また、マンツーマンによる教育により、後継者候補としての自覚を与えることもモチベーションの維持する要因となります。 |
マイスター制度の3つのデメリット
容易に開業できない |
マイスター制度は難しい試験に合格することで高い技術力と、経営や後継者指導などの知識を有した技術者であると証明してくれますが、手工業41業種では開業するうえで取得が義務付けられています。 ですので、ゲザレの技術者がとりあえず開業して、それから経営などの知識やノウハウを得るという方法ができません。 また、マイスター試験は2回不合格になるとマイスターに向いていないとみなされて、それ以上試験を受けることができません。 こちらも開業が容易でない理由となっています。 |
技術革新がしにくい |
技術の継承は貴重な技法を維持し、さらに発展させていくうえで重要なことです。 ですが、技術継承ばかりに目を向けてしまい、時代の変化や新しい需要に対応できず、経営が傾いてしまうケースもあります。 思考停止気味な技術継承ではなく、新しい変化にも対応できるチャレンジ精神も必要です。 |
モチベーションが低下する危険性もある |
マイスター制度は順調に技能を習得している状態ではモチベーションの維持がしやすいです。 しかし、技術指導者から評価が得られなかったり、試験に合格ができなかったりすると自信の喪失や不満からモチベーションが低下するおそれもあります。 こうなると後継者が辞めてしまい、次世代に技術を継承することができません。 マイスター制度を取り入れるのなら、こうしたケースの対応策も考えなくてはなりません |
ゲゼレとマイスターの違いとは?
ゲゼレとは「職人」という意味にあたります。マイスターが日本でいう学士号と考えるならばゲゼレは高等学校卒業レベルといったイメージでしょうか。
学校と実地研修にて実務スキルを学び、国家試験に合格することでゲゼレとして、即戦力として働ける技術者であるとして認められます。
そこから数年実務で技術を高めて、さらに経営学や教育学、法学を学び、国家試験に合格するとマイスターと呼ばれるようになります。
ドイツマイスターの資格取得の留学費用
ドイツに留学してマイスター資格取得を目指すのなら、滞在中の家賃や研修先の場所にもよりますが、400万円程度あれば、問題なく生活を送ることができます。
研修中は手当も出ますが、平均600ユーロ程度なので、生活ができる金額とは言えません。
オーストラリアのマイスター資格とは?
ドイツのマイスター資格はドイツ資格フレームワークにおいて、レベル6となっています。フレームワークとは、職業教育や高等教育などの資格を1つの枠組みにまとめて比較できるようにした規格で、レベル6は学士号レベルと同等となっています。
オーストラリアを含めた他の国々にもディプロマと呼ばれる証明書があり、これを取得している技術者は一定レベルの技術力を保有していると証明されるのです。
オーストラリアの上級ディプロマは豪州資格フレームワークにおいてレベル6となっており、マイスターと同等となっています。
建設業におけるマイスター制度とは?
日本の建設業にもマイスター制度があります。
高い技術力と指導力のある技術者にマイスターや職長といった役職を与えて企業内の重要な技術の向上と継承に力を入れ、優秀な人材を集める努力をしています。
職長手当とは
職長やマイスターに任命されると、その活躍や責任に応じて追加の賃金を得られることがほとんどです。
これを職長手当といいます。
企業によって日当や月収に追加するタイプ、一時金として支給するタイプなどがありますが、これにより職長は実力に見合った給料を得られることでモチベーションの維持ができ、若い技術者はこれを目指して技術の研鑽をかさねるのです。
東急建設マイスター制度の内容
東急建設株式会社ではマイスターに認定されると、一時金として10万円が支給される上に、毎年30万円を上限として一時金が支給されます。
さらにマイスター認定書とマイスター専用ヘルメットが支給されます。
これにより優秀な技術者であると周囲に認知され、マイスターとしての自覚をもって仕事に打ち込むことができます。
竹中工務店マイスター制度の内容
株式会社竹中工務店は一定以上の日数を勤務した職長をマイスターに、さらに一定以上の日数を勤務して、審査や選考をクリアした職長をシニアマイスターに認定して、稼働日数に応じた一時金が支給されます。
また、ヘルメットに貼る専用ステッカーが支給されます。
ステッカーも東急建設のヘルメット同様の効果が期待されます。
ものづくりマイスターになるにはどうすればいいの?
ものづくりマイスター制度とは厚生労働省が主導している若年技術者に対して実技指導や講習を行う人材育成事業です。
ものづくりマイスターとして認定されて若年技能術者を指導する立場になるためには3つの認定条件があります。
1つ目は実務経験が1年以上あること。
2つ目は技能検定の特級、一級、単一等級に合格した人、もしくは技能五輪全国大会で3位以内の成績を収めた人であること。
3つ目は技術の継承や後継者の育成に意欲をもって活動する意思や能力があることです。
ちなみに、対象職種は全部で112種類あります。
ものづくりマイスターのメリット・デメリット
ものづくりマイスターに認定されることは熟練技術者といえども登録のハードルが高く、より良い指導者がなかなか増えません。
ですが、ハードルの高さは技術者自らの技術研鑽や自己啓発につながります。
また、高いハードルをクリアしたものづくりマイスターの指導によって優秀な技術者が育ち、新たなものづくりマイスターとなることで次々と技術者が増えていくことでしょう。
ものづくりマイスターの給料や報酬額
ものづくりマイスターは本業の給料とは別に、企業や学校から依頼されて技術指導を行います。
依頼料は指導内容によって左右されますが1時間当たり4,000円前後が相場の様です。
ものづくりマイスターの紹介制度
ものづくりマイスターになりますと、県のホームページ上で紹介されるとともに、ものづくりマイスター名簿に登録されて、県内企業や団体に配布されます。
このように県が広報をしてくれるので、ものづくりマイスターとして周囲に認知されやすくなります。
まとめ
ドイツやオーストラリア、そして日本国内のマイスター制度について紹介しました。
マイスター制度は技術者の技術力の証明や技術の継承、技術者の給与アップやモチベーション維持に役立っています。
マイスター制度を正しく活用することで技術者や企業を長くより良く発展させることができるのです。
あらゆる疑問を匿名で質問できます
約90%の質問に回答が寄せられています。
あらゆる疑問を匿名で質問できます
約90%の質問に回答が寄せられています。