
【交通費は社会保険料の対象なの?】扶養や年収についてなどご紹介
会社から支給される交通費の社会保険上の扱いを知らない人は意外と多いかもしれません。交通費と社会保険料、所得税の関係について紹介します。社会保険上の扶養に入りたい場合、交通費は年収に含まれるかどうかも解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
交通費と社会保険料の関係
まず、意外と知られていない交通費と社会保険料の関係について見ていきましょう。
交通費は「標準報酬月額」算出のための所得対象
結論から言うと、交通費に社会保険料はかかります。社会保険料の金額は、標準報酬月額という計算方法が基準となります。所定の等級に応じて保険料が決まり、会社と従業員で折半になる仕組みです。
ちなみに、報酬は昇進などで変更されるため、毎年4月・5月・6月に標準報酬月額の見直しをします。標準報酬の対象となる報酬は以下の通りです。
- 基本給役付手当
- 勤務地手当
- 家族手当
- 通勤手当
- 住宅手当
- 残業手当等
- 労働の対償として事業所から現金又は現物で支給されるもの
- 賞与
ここでいう「通勤手当」が交通費となるわけです。
参照:全国健康保険協会「標準報酬月額・標準賞与額とは?」/「標準報酬月額の決め方」
所得税法上は条件付きで非課税になる
社会保険料にはかかる交通費ですが、所得税は条件付きで非課税となります。平成28年度の税制改正により、公共交通機関の利用であれば1ヶ月あたり15万円まで非課税です。社会保険料と所得税との扱いが異なることを覚えておきましょう。
交通費の一括支給や実費精算の場合は?
交通費の支給方法は、会社によってさまざまです。給与と一緒に毎月支給する会社もあれば、3ヶ月分、6ヶ月分などをまとめて支給する会社もあります。
この場合、まとまった交通費が標準報酬月額の時期に支給されたら、社会保険料は多額になってしまうでしょうか。また、交通費を実費精算した場合も社会保険料の対象になるのでしょうか。
支払う社会保険料に影響してくる部分ですので、仕組みを知っておきましょう。
交通費がまとめて支給される場合の社会保険料は?
社会保険料の計算方法である標準報酬月額のことを考えると、まとまった交通費が4月から6月の間に支給された場合、「受け取る報酬が多くなるので社会保険料も上がってしまうのではないか」と心配する人もいるでしょう。
しかし、まとまって支払われた交通費は、1ヶ月分ごと給与に換算されて計算されます。一括で交通費が支給されたからといって、社会保険料が大幅に上がることはないので安心してください。
また、通勤でバスと電車を併用していて、バスは3ヶ月分の定期代、電車は6ヶ月分の定期代がまとめて支給されるという場合でも、1ヶ月分ごとに給与計算されます。
交通費が実費精算の場合の社会保険料は?
交通費は、6ヶ月分の定期代を購入したあと、あるいはガソリンを車に入れたのちに支給されたりする場合が多いです。その場合、実費精算していることになります。この場合も通勤のために利用した交通費とみなされるため、社会保険料の対象に含まれます。
ただし、出張による旅費や、クライアントへ出向く営業のための交通費などを実費精算した場合は、社会保険料の対象に含まれません。少し複雑ではありますが、違いを把握しておきましょう。
社会保険の扶養と年収ライン
社会保険に含まれる健康保険には、「扶養」という考え方があります。被保険者の配偶者や子どもが扶養に入る条件を満たした場合、届け出により健康保険の支払う保険料が被保険者1人分だけで済むという仕組みです。
扶養に入るには被扶養者の年収による要件がありますので、誰でもなれるわけではありません。被扶養者の年収要件と、その年収に交通費が含まれるのかを確認してみましょう。
社会保険上の扶養に入る条件
下記の要件を満たした場合、扶養家族の認定を受けられます。
被保険者と被扶養者が同居 | 被保険者と被扶養者が別居 |
・被扶養者の年収が130万円未満 ・被扶養者の年収が被保険者の収入の2分の1未満 |
・被扶養者の年収が130万円未満 ・被扶養者の年収が被保険者からの仕送り額より少額 |
この年収要件が、いわゆる130万円の壁というものです。被扶養者になれる範囲にも要件があるため、確認したうえで扶養家族の認定を届け出るようにしましょう。
130万円の壁の年収に交通費は含まれる?
社会保険上の扶養要件のひとつである「年収」に、交通費は含まれます。
被扶養者は年収130万円を超えると、扶養から外されてしまいます。そのため、交通費も含めて年収の計算をすることが必要です。扶養内で働きたい人は、うっかり超えないように確認しておきましょう。
交通費は課税対象になる?
基本的に交通費は非課税です。しかし交通費といっても、徒歩、自転車、自動車、電車やバスなどの公共交通機関など、通勤手段はさまざま。ここでは交通費と税金の関係を解説します。
交通費は基本的に非課税
交通費(通勤手当)は、1ヶ月あたり15万円を超えなければ基本的に所得税法上非課税です。ただし、非課税の対象になるのは「最も経済的かつ合理的な経路及び方法で通勤した場合」に限られます。
そのため、本当は自転車通勤なのに電車通勤だと虚偽の申告をしたり、わざと遠回りした通勤経路を申告したりすると課税対象となる可能性があります。
通勤手段ごとの非課税限度額
月額15万円の交通費まで非課税と前述しましたが、これは交通機関や有料道路を利用している人の場合です。ここでは通勤手段ごとの非課税限度額を見ていきましょう。
①公共交通機関(バスや電車など)や有料道路を利用している場合
平成28年度の税制改正により、1ヶ月の運賃の限度額が10万円から15万円に引き上げられました。
②自転車や自動車などの交通用具を使用している場合
片道の通勤距離 | 1ヶ月の非課税限度額 |
2km未満 | 0円 |
2km以上10km未満 | 4,200円 |
10km以上15km未満 | 7,100円 |
15km以上25km未満 | 12,900円 |
25km以上35km未満 | 18,700円 |
35km以上45km未満 | 24,400円 |
45km以上55km未満 | 28,000円 |
55km以上 |
31,600円 |
③自転車や自動車と公共交通機関を合わせて通勤している場合
①と②の合計額が非課税となります。ただし、限度額は15万円です。
まとめ
社会保険料と交通費の関係について紹介しました。交通費は社会保険料の課税対象となりますが、所得税では非課税になります。また、社会保険上の扶養に入りたい場合、交通費が年収に含まれる点は注意が必要です。
少し複雑ではありますが、この記事を参考に、それぞれの違いや仕組みを把握しておくと良いでしょう。
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