
転職後の年末調整ケース別の方法|流れ・必要書類なども合わせて解説
転職後の年末調整は、どのように行われるかご存知でしょうか。初めての転職の場合だと、年末調整でどのような手続きを踏めばいいか分からないという方も多いのではないでしょうか。本記事では、転職した場合の年末調整の方法や必要書類などを解説します。また、転職後に前職の源泉徴収票がない場合の手続きについても解説致しますので、是非ご参考ください。
転職した時の年末調整|ケース別の対応
転職した後の年末調整でも、状況によっては対応方法が異なります。
本章では、転職した後の年末調整についてケースごとに解説します。
年内12月末まで働いた場合は今の会社で年末調整
12月末まで働き、1年間の給料が確定している場合は今の会社で年末調整を行うことが可能です。
もし12月まで働いていても、1年間の給料が確定しない場合は自身で確定申告が行う必要があります。
年内中に転職した場合は転職先にしてもらう
年末調整は、年末調整の時期に所属している会社で行うこととされています。
もし年末調整が行われる12月以前に転職した場合は、転職先で年末調整をすることになります。
この場合、1年間の総所得額を算出する必要があるので、転職前の会社と転職先の会社での所得証明が必要になります。
そのため、前職の会社を退職する際に、「給与所得の源泉徴収票」を経理担当者に用意してもらいましょう。
源泉徴収票が前職での所得を証明するものとして使用され、転職先の会社での年末調整手続きが可能になります。
年内中に退職して1月以降の入社の場合は確定申告
年末調整は、12月末時点で所属する会社で行われます。
しかし、12月以前で退職しており、かつ1月以降の転職先への入社の場合は、前職の会社でも転職先での会社でも年末調整をすることができません。
また12月に転職先に入社した場合でも、前職における「給与所得の源泉徴収票」が提出できないと、年末調整の手続きを進めることができないということを理解しておきましょう。
年末調整ができないからといって、そのまま放置すると正しい所得税が算出できず、納税額にも影響します。
年末調整ができない場合は、自分で確定申告をする必要があります。
確定申告とは、年末調整とは異なり、その年の所得額を申告し支払うべきだった税金を納めるための手続きです。
退職の際に入手した「給与所得の源泉徴収票」が確定申告の手続きで必要になるので、必ず用意しておきましょう。
年末調整とは
年末調整とは、その年の1月から12月までの事業所得、つまり企業などから源泉徴収として給与や賞与から天引きされている概算の所得税と、実質のその年の所得額の合計額と控除額などを確認した上で、最終的な所得税を算出するための精算を行う仕組みです。
転職など勤務状況が変わるときに、年末調整の手続きの概要をしっかりと知っておく必要があります。
本章では、年末調整の概要について解説していきます。
参照:国税庁 年末調整とは
所得税の差額を調整
毎月会社から支払われている給料は、所得税がマイナスされた状態で従業員に支払われています。
しかし毎月支払われている所得税は、昨年時点での概算の金額が所得税として引かれている状態です。
例えば今年中に給料の額が変更されたとしても、その金額で必要な所得税ではなく昨年度の給料の実績で所得税が引かれていることになっています。
正確に税率を計算するためには、今年(1月〜12月)の給料の実績が必要になります。
その実績を反映させた上で、支払うべき所得税と差額が生まれた場合、差額分返金される場合や、また反対に追加で払わなければならない場合が発生するのです。
控除の申告
年末調整では、控除の申告を行う必要があります。
例えば扶養家族がいる場合や、住宅ローンを支払っている場合、また生命保険を自身で払っている場合はその金額分控除されるということです。
企業側で給与所得が計算されると、そこで従業員側からの控除申告をもとに「所得控除」が算出されます。
所得控除には「人的控除」と「物的控除」があり、「人的控除」はその個人の生活状況に応じて認められる控除で扶養控除・障害者控除・寡婦(寡夫)控除などがあります。
「物的控除」は、保険料の支払いなどを考慮した控除で、生命保険控除・地震保険控除・社会保険控除などがあります。
それぞれ、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」「給与所得者の配偶者控除等申告書」「給与所得者の保険料控除申告書」という書類を提出することで申告することができます。
また、年末調整では、2年目以降の住宅ローンも控除対象になるので、住宅ローンを組んでいる場合は、「住宅借入金等特別控除申告書」の提出が必要です。
12月の年末調整を行う対象者
年末調整を行わなければならない人は、会社に1年以上勤務している人、また12月以前に転職しており給料が支払われている従業員が対象となっています。
また、年末調整を行う必要がない人もいます。
年末調整を行う必要がない人の要件は、以下の通りです。
- 1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人
- 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税および復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人
また会社に所属していない人は、自身で12月以降に確定申告を行う必要があります。
年末調整の流れ
本章では、年末調整を行う流れや時期について解説します。
年末調整に必要な申告書の提出(11月下旬)
年末調整に必要な書類を、11月下旬までに提出しましょう。
年末調整をする上で必ず提出しなければならない書類は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」とは、扶養家族についての控除の有無について申告するための書類です。
控除には配偶者控除、扶養控除、寡婦控除があり必要に応じて申告することで、家庭の事情を考慮して控除を受けられます。
また必要に応じて、生命保険料控除や地震保険料控除などを申告し、それぞれに合わせて控除を受けることができるため、必要な書類を用意して会社へ提出しましょう。
年末調整の計算(12月下旬)
11月下旬に提出を受けた書類を元に、今年支払う税金の金額を計算します。
計算は、以下の手順で行われます。
- 課税給与所得金額の計算
- 年調所得税額の計算
- 年調年税額の計算
上記の計算を行う上で必要な書類が、「源泉徴収票」です。
そのため、転職先で年末調整を行う際は、前職の源泉徴収票が必要になります。
12月だと前職からの手配が遅れてしまう場合があるため、早い段階で前職の経理担当者に連絡して送ってもらうようにしましょう。
転職先に年末調整してもらう際に必要な書類
本章では、転職先で年末調整をしてもらう際に必要な書類について解説します。
給与所得者の扶養控除等(異動)申請書
先ほども説明した通り、年末調整を行う上では必ず「給与所得者の扶養控除等(異動)申請書」が必要になります。
そのため、転職先で年末調整を行う際は「給与所得者の扶養控除等(異動)申請書」を忘れず用意しておきましょう。
源泉徴収票
今年支払う税金の金額を確定させるためには、前職の給料の「源泉徴収票」が必要になります。
「源泉徴収票」は、前職の経理担当者に連絡すると、今年度中に在籍していた分を送ってもらうことが可能です。
「源泉徴収票」の提出が12月中に間に合わない場合は、自身で確定申告をしなければならないため、前職への連絡から発送までのタイムラインをきちんと組んでおくことが重要になります。
所得控除を受けるための書類
年末調整では、必要に応じて所得の控除を受けることができます。
扶養家族関連以外での所得控除の種類例は、以下の通りです。
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 社会保険料控除
- 寄附金控除
- 医療費控除
- 雑損控除
それぞれの各種申告書や記載例は、国税庁のホームページにて掲載されているためご確認ください。
転職後に前職の源泉徴収票がない場合
ここでは、転職した後に、前職の源泉徴収票が手元にない場合の手続きについて確認しておきましょう。
前の会社に再発行を依頼する
「給与所得の源泉徴収票」は、転職先の会社での年末調整手続きでも、自分で確定申告を行う場合でも、どちらにせよ必ず必要になる書類です。
退職の際に依頼するのを失念した場合は、すぐに経理担当者へ連絡して、発行を依頼しましょう。
また、紛失したなどの理由で手元に見当たらない場合は、再発行を依頼して、早めに入手するようにすることが大切です。
間に合わない場合は確定申告
退職後に源泉徴収票の発行もしくは再発行を依頼したが、年内の年末調整手続き期間までに何らかの理由で入手できなかった場合は、自身で確定申告の手続きを行う必要があります。
この確定申告でも、もちろん源泉徴収票は必要になるので、確実に発行してもらい手元で保管するようにしましょう。
また、退職のタイミングによっては、前職の経理の繁忙期、例えば年末調整の時期に当たるなどしてすぐに対応してもらえないことも想定されます。
そのため、できるだけ早めに発行依頼することが重要です。
万一、不当な理由で発行対応をしてもらえないようなことがあれば、税務署にすぐに相談して何らかの対処をする必要があります。
11月以降年内の転職を予定している方は、可能な限り早めに手続きを進めることをおすすめします。
転職する際には源泉徴収を忘れず貰おう
転職活動は、新しい就職先を探すという労力だけではなく、現職の引き継ぎなどを含む円滑な退職手続きにあらゆる注意を払う必要がある作業になります。
そのなかで忘れやすいのが、年末調整に関連する準備がそのひとつです。
納税に関連する重要な手続きなので、これ以上の労力を自分自身にかけないためにも、事前に年末調整手続きの時期を踏まえたスケジュール設定をすることが重要ということがわかります。
万一、必要手続きを失念していまい、源泉徴収票が手元になくても、そのような場合にどうすればいいのか、という流れを知っておくだけで安心です。
社会人として、前職そして新しい就職先の企業との信頼関係を保つためにも、必ず発生する必要手続きは何かを事前に把握し、それぞれに対しての準備ややるべきことをリストにして漏れがないように対処するようにしましょう。
あらゆる疑問を匿名で質問できます
約90%の質問に回答が寄せられています。