
【懲戒処分が無効になる】懲戒権の濫用?二重処罰?詳しくご紹介
皆さん、懲戒処分が無効になるケースについてご存知でしょうか。この記事では、懲戒処分の意味や、懲戒処分が無効になるケースなどご紹介致します。また、懲戒処分の種類や、民間企業・公務員の懲戒処分についてもそれぞれ解説致しますので是非参考にしてみてください。
そもそも懲戒処分の意味とは
「懲戒処分」という言葉は、企業における不正など相当な問題が起きた場合の対処としてメディアで取り上げられることがあります。
その言葉を一見すればわかるように、これは制裁処分のひとつであり、事業主が使用者である労働者に対して課すものです。
今回は、この「懲戒処分」の詳細や、無効となるケースなどについて、まとめてご紹介していきます。
まず、「懲戒処分」は民間企業と公務員のもので、その概要が異なります。
それぞれについて確認しておきましょう。
民間企業の懲戒処分
民間企業における懲戒処分は、就業規則で定められており、法的拘束力は存在しません。
就業規則が定めるということから、各企業の裁量に判断が委ねられることから、懲戒処分を行うための法的根拠がどこにあるのか、という問題が議論されることがあります。
民間企業には、企業秩序定立権が認められており、「企業秩序を維持確保するため、これに必要な諸事項を規則に定め、具体的に労働者に指示、命令することができ、企業秩序に違反する行為があった場合には、違反者に対し制裁として懲戒処分を行うため、事実関係の調査をすることができる。」という判例により、就業規則をもとに、使用者である労働者に指示・命令・懲戒処分を行うことができるということです。
公務員の懲戒処分
公務員の懲戒処分は、民間企業の労働者が法的拘束力のない各企業の就業規則によってその詳細が定められている一方で、国家公務員法と地方公務員法により、法律として定められています。
公務員に何か問題ある行為があった場合は、上記の法律に基づいて、該当する懲戒処分が下されるということです。
法律として定められていることからもわかるように、処分の実行は民間企業よりも細かく規定のもとに行われ、企業でいう人事部にあたる人事院が、処分決定やその指針など、あらゆる点について細かく整備されています。
懲戒処分は6種類ある
ここでは、懲戒処分の種類とその詳細についてそれぞれ確認していきましょう。
1. 戒告・譴責
懲戒処分の中で、最も軽い処分とされるのが、この「戒告・譴責」です。
これは、労働者に対して反省を求めるという主旨のもので、一般的に「戒告」が口頭による反省、「譴責」が書面による反省という違いがあります。
つまり、「戒告」が最も軽い処分ということになります。
「譴責」の例として、「始末書」を書かせることで、非違行為に対する謝罪・反省と、今後同様のことがないことを誓約させるというものが一般的といえるでしょう。
ここで注意したいのは、非違行為の経緯や顛末を報告させる書面として「始末書」という題名を使用すると、この段階で「譴責」処分が下されたと捉えられる可能性があるので、報告としての書面は「顛末書」などとすることで、明確に区別をする必要があります。
2. 減給
次に重い処分が「減給」です。
この「減給」処分に関しては、労働基準法により一定の制限が定められていることに注意が必要となります。
制限としては、
・1回の減給額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない
・数件の懲戒事案について減給処分を科す場合、その総額が一賃金支払い期において現実に支払われる賃金の総額の10分の1を超えてはならない。
つまり、複数事案での減給処分の場合は、減給額総額が月払い制であれば月給として支払われる金額の10分の1を超えないという規制があるということです。
3. 出勤停止
懲戒処分の次の段階にあたるのが、「出勤停止」です。
これは、労働契約を継続しつつ、非違行為に対する制裁として一定期間就労を禁止することを指します。当然、出勤停止処分中は賃金が支給されず、その期間は勤続年数として換算しないというのが通常のケースとされています。
機関としては、1週間から1ヶ月程度とすることが多く、法的にその上限は定められておらず、各企業の裁量に委ねられています。
4. 降格
「降格」処分は、労働者の役職や職位など、その企業における人事制度上の等級を引き下げる処分を指します。
「降格」処分によって、賃金などの待遇が大きく変動し減額することも想定されますが、先述の「減給」のように労働基準法による減額される額面に制限はありません。
「降格」により職務そのものが変わることから、それに伴い給与額が下がることは当然の結果として考えられます。
5. 諭旨解雇
さらに処分が重くなると、「諭旨解雇」という処分があります。
これは、非違行為を行なった労働者に対し、退職届の提出を勧告することで、依願退職扱いとするというもので、企業によっては退職金が全額支給される場合もあります。
依願退職を勧告するという、企業サイドからの温情措置ともいえる処分とも考えられます。勧告を受けてから、定められた期間内に退職届を提出しない場合は、懲戒解雇処分を受けることになります。
6. 懲戒解雇
「懲戒解雇」は、懲戒処分のなかでも最も重い処分で、制裁として解雇を言い渡すというものです。
この場合、一般的に退職金の支給はなくなります。原則として、30日前までの解雇予告もしくは解雇予告手当として「平均賃金の30日分以上」を支払うことが必要となり、これを履行しないと労働基準法違反となることがポイントです。
ただし、「解雇予告除外認定」を受けている企業に関しては、即時解雇が可能になります。
懲戒処分が無効になるもの
ここでは、懲戒処分が無効になるケースについて確認しておきましょう。
懲戒権の濫用
就業規則で懲戒処分についての取り決めがしてあるからといって、必ずしも事業主である企業が自由に処分を行使できるわけではありません。
労働基準法により、「使用者が、労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とする」とあり、該当する非違行為の程度や該当する労働者の情状を一切酌量することなく処分しようとするのは、「懲戒権の濫用」とされ、その処分は無効となります。
二重処罰
懲戒処分が無効になるケースとしてもうひとつ挙げられるのが、二重処罰です。
これは、日本国憲法によって定められている「一事不再理」の原則に則っており、ひとつの事案に対して一度処分内容が決定し行使されたら、二度とその件について別の処分を下すことはできないということを意味します。
重すぎるもの
先述の「懲戒権の濫用」にもつながることですが、非違行為の種類や程度、そして該当労働者の情状酌量をふまえた上で、懲戒処分の「相当性」が重要なポイントになります。
つまり、その非違行為と懲戒処分のバランスが著しく取れていない、重すぎる処分については、「懲戒権の濫用」と判断され、それは無効となる可能性があります。
まとめ
社会人として勤務し、生活を送る上で、どのような理由であれ非違行為は許されるべきではありませんが、万一のケースを考え、労働者としてどのような規則のもとで勤務しているのかを事前に確認しておくことは重要なことです。
また、不当な懲戒処分を受けるようなことがあれば、労働基準法により労働者は守られている存在なので、労働基準監督署にすぐに相談する、という相談先を把握しておくこともポイントといえるでしょう。
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