
【通勤手当の不正受給について】内容や返還要求、防止策などをご紹介
通勤手当の支給を受ける際には、適正な通勤手当申請書を提出することが必要です。虚偽の内容の通勤手当申請書を提出して通勤手当を不正受給すると、処罰の対象になることがあります。この記事では、通勤手当の不正受給や返還方法、防止策などを解説します。ぜひ一度、ご覧になってみてはいかがでしょうか?
通勤手当の不正受給について
従業員が通勤手当を不正受給していたことが発覚した場合には、不正受給分の返還を従業員に要求することは可能なのでしょうか。ここでは、通勤手当の不正受給分の返還要求について解説します。
通勤手当の不正受給とは
通勤手当の不正受給とは、虚偽の通勤距離や通勤経路を申告するなどの方法で、不正に通勤手当を受領する行為をいいます。バス通勤をするという申告をしていて、実際は自転車で通勤するような行為も通勤手当の不正受給に該当します。
通勤手当の不正受給は故意と過失があり、意図的に嘘の申告をして通勤手当を受領するケースが故意による不正受給に該当し、不注意で虚偽の申告をして通勤手当を受領するケースが過失による不正受給に該当します。
通勤手当の不正受給分の返還要求
通勤手当の不正受給が発覚した場合には、会社は従業員に対して、通勤手当の不正受給分の返還要求をすることができます。
通勤手当の不正受給分の返還方法は、賃金から通勤手当の不正受給分を差し引くという方法が一般的です。この返還方法を合意相殺といい、合意相殺をするには労使協定を締結のうえ、本人の合意を得ることが必要になります。
本人に予告のうえ、通勤手当の不正受給分を2~3ヶ月後に支払われる賃金から差し引く調整的相殺でも不正受給分の返還は可能です。
通勤手当の不正受給内容
通勤手当の不正受給は、故意と過失によって処分の内容などが違ってきます。ここでは、不正受給の故意と過失の判断基準を解説し、不正受給分の返還方法についても言及します。
不正受給の故意と過失の判断は?
通勤手当の不正受給が発覚した場合、故意か過失のどちらであるのかを判断することが必要になります。
故意による不正受給を簡単に説明すると、嘘をついて通勤手当を不正に受給する行為のことです。例えば、実際は自転車で通勤しているのに、電車通勤をしていると嘘をついて定期代に相当する金銭を不正に受領するケースなどが故意による通勤手当の不正受給に該当します。
不注意で事実とは異なる虚偽の申請をしてしまい、結果的に通勤手当を不正受給してしまったような場合が、過失による通勤手当の不正受給になります。例えば、通勤距離の計測の方法を不注意で間違えてしまったような場合が過失による不正受給に該当します。
故意と過失を比べると、故意による不正受給の方が悪質ですので、故意による不正受給は懲戒免職処分なども視野に入れて厳正に処罰することが必要です。過失の場合は、厳重注意処分など軽い処罰にとどめておきます。
不正受給の返還方法は?
故意と過失に関係なく、通勤手当の不正受給分は返還を要求できます。不正受給分の返還方法は先に説明したように、合意相殺や調整的相殺で賃金から控除するケースが一般的です。
不正受給した通勤手当は民法の不当利得に該当するため、不当利得返還請求をすることで合法的に返還を請求できます。
通勤手当の不正受給への対応
通勤手当の不正受給が発覚した場合は、企業は厳正に対処しなければなりません。ここでは、通勤手当の不正受給が発覚した時の企業の対応について説明します。
通勤手当の不正受給内容確認
通勤手当の不正受給が発覚した場合は、不正受給の内容を明確にすることが必要です。例えば、通勤手当申請書には電車通勤をする旨が記載されているのに、実際は自転車通勤をしているような場合は、証拠を示しながら不正受給の内容を書面にまとめるようにします。
不正受給の内容を記載した書面を不正受給を行っている従業員に提示し、従業員がその内容を事実と認めた場合は、従業員に対して何らかの処分を行うことになります。
不正受給内容による処分
通勤手当の不正受給を行っていた従業員に対する処分は、厳重注意処分や懲戒免職処分などがあり、不正受給の内容に応じてどのような処分を下すのかを決定します。
故意で通勤手当の不正受給を行っていた従業員に対しては厳罰に処することが望ましく、最も重い懲戒免職処分を下しても問題ありません。不正受給の内容が過失であった場合は懲戒免職処分は重すぎますので、厳重注意処分程度にとどめておくとよいでしょう。
なお、不正受給の内容が故意と過失のどちらであっても、従業員に対して不正受給分の返還を求めることができます。不正受給分の返還方法は賃金から相殺する方法が一般的です。
通勤手当不正受給の防止策
企業は通勤手当の不正受給を防止するには、どのようにすればよいのでしょうか。ここでは、通勤手当の不正受給を防止するための対策について説明します。
通勤手当と就業規則
通勤手当については法的に定められた規定はなく、通勤手当の規定は企業が自由に決めることができます。通勤手当の規定を定めたら、規定の内容を就業規則に明記し、従業員に周知させることが必要です。
従業員は就業規則を確認すると、企業が定めた通勤手当の支給のルールがわかりますので、通勤手当の不正受給の防止につながります。
入社時には、従業員は誓約書を兼ねた通勤手当申請書に必要事項を記載して提出することを求め、経理担当者は通勤手当申請書に書かれた内容を入念にチェックすることも不正受給を防ぐことに役立ちます。
また、支給された通勤手当で購入した定期券のコピーを提出させることも、通勤手当の不正受給の防止策として有効です。
通勤手当の就業規則の見直し
就業規則に通勤手当の規定を記載していない場合は、早急に就業規則に記載することが必要です。就業規則に記載しないと従業員は通勤手当の規定がわからず、過失で不正受給を行ってしまうことの原因になります。
就業規則を見直した時には、必ず全ての従業員に対して周知を行い、通勤手当の規定を確認してもらうようにします。通勤手当の不正受給を防ぐには、通勤手当の規定を就業規則に記載することが最も大切です。
まとめ
通勤手当の不正受給が発覚した場合は、故意か過失のどちらに該当するのかを判断のうえ、悪質な場合は懲戒免職処分にすることも可能です。
不正受給した通勤手当は民法上の不当利得に該当するため、従業員に対して返還請求を行うことができます。
通勤手当の不正受給を防止するには、通勤手当の規定を就業規則に記載したうえで、従業員に周知させることが大切です。
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