
【就活生必見】鉄道の業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
鉄道業界は鉄道好きの学生はもちろんのこと社会インフラやグローバルな事業に携わりたい学生から圧倒的な人気を誇ります。採用人数が多くないので、必然的に競争率は高くなり、内定者の多くは有名私大・旧帝大などの難関大学の学生が占めています。したがって、鉄道業界で内定をもらうためには鉄道業界について正しく理解し、その上で自分の強みや頑張ったことを、鉄道業界でどう活かせるかを具体的にイメージし面接官に伝えることが重要です。この記事では鉄道業界の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、鉄道業界の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、鉄道業界の就活に挑みましょう。
鉄道業界とは
この章では鉄道業界
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
- 最新トレンドについて
解説していきます。
業界構造
在来線ビジネス
在来線ビジネスは鉄道会社の最も基本的なビジネスです。在来線とは新幹線鉄道ではない鉄道や私鉄などの鉄道路線を指します。在来線は通勤・通学、買い物・レジャー、ビジネスなど人々の生活の移動手段として重要なインフラを提供しています。
在来線ビジネスでは一定時間に決まった本数の路線を運行し、鉄道の利用者数・移動距離が長いほど収益性が上がります。したがって、空席をできる限り減らし、より多くの方に利用してもらうことが重要です。また、在来線にはいわゆる各駅と特急があり、特急は各駅や普通車に比べて特急料金が加算されるので、収益効率が高く、普通列車以上に収益が上がります。
在来線ビジネスは鉄道会社の最も基本的なビジネスではありますが、鉄道会社の収益の内約1割程度にしか満たないと言われています。日本全国に路線を走らせ、運行する必要があるので、収益性の良い路線と赤字の路線が混在しており、全体としては在来線ビジネス単体で赤字となっている会社が多いようです。それだけ在来線の運行・維持コストが高いということがわかるでしょう。赤字もしくはほとんど黒字のない会社は在来線ビジネス以外の事業で収益を補完しています。また、鉄道は生活インフラですので、一部国や地方公共団体が支援をしており、なんとか廃業を防いでいる会社もあります。
鉄道事業は人々の生活に必要なインフラであるので、運賃を上げるには鉄道事業法に基づき国土交通大臣の認可を受ける必要があります。しかし、地域によっては独占的な事業であること、生活インフラであること、値上げによって利用者が減少する恐れがあることなどから、実質的には運賃の値上げは難しく、各社とも在来線ビジネスの収益力向上は諦め、他の事業で補完することに注力しているようです。
新幹線ビジネス
新幹線は在来線ビジネス同様に通勤やビジネス、観光など人々の生活になくてはならない社会インフラの役割を担っています。鉄道会社は各社とも在来線ビジネスは赤字の場合がありますが、新幹線ビジネスは好調であり、新幹線を保有しているJR東海、東日本、西日本、九州、北海道の5社は北海道以外は新幹線ビジネスが黒字となっています。今後とも各社は在来線ビジネスを補完する収益源として成長を期待しています。例えば、JR東海は新幹線ビジネスの営業利益率が35.6%となっています。一般的な企業の営業利益率が10%以下であることを考えるとこの数字は新幹線ビジネスの収益性の高さを物語っています。
一方で新幹線ビジネスには弱点がないわけではありません。新幹線は航空会社と競合すると言われており、一般的に所要時間が4時間を超えると航空会社との競争に勝てないと言われています。LCCが普及してきている現代において利便性・価格性の双方において航空会社に押され始めています。また、地域によって人口減少と過疎化の影響を受けており、莫大な運行・維持コストをかけながら毎年収益が悪化している路線もあります。今後は各社とも新幹線ビジネス以外の収益源と見つける必要があるでしょう。
貨物輸送
鉄道会社は全国規模のネットワークを活かして物資の貨物輸送を事業として行っています。例えば、JR東日本では全国に240以上の貨物取扱駅を保有しており、全列車のの走行距離は1日あたりで、地球約5周分に相当する18.9万kmにもなります。トラック輸送が物流の中心になるにしたがって、貨物輸送の需要は減退していますが、それでも長距地・大量輸送といった鉄道会社ならではのメリットを活かして石油、液化天然ガス、紙・パルプ、食料品など暮らしに不可欠な物資を運んでおり、鉄道貨物輸送は、 人々の生活に欠かすことのできない社会インフラと言えます。
非鉄道事業
鉄道会社は鉄道事業以外にも非鉄道事業を営んでいます。事業として運営しているものは多岐に渡り、宅地、マンションの開発・ホテル経営などの不動産関連事業、沿線のエンターテイメント事業、百貨店やショッピングセンターの運営、駅ナカで展開する小売業や外食業、車内の中吊り広告や液晶モニターに映し出される広告事業、駅を媒体とする広告事業、旅行代理店事業、さらにはIC乗車券と連動させたクレジットカードなどの金融事業などがあります。
市場規模・将来性(シンクタンクのレポートなどを)
市場規模
鉄道業界の市場規模は主要対象企業45社の売上高の合計で15兆円となっています。鉄道は人々の生活には欠かせない生活インフラですので、需要は堅調に推移しています。国土交通省が発表している「鉄道輸送統計年報」によると、2019年度の鉄道旅客数は251億9,000万人(前年同期比△0.3%)でした。約251億人の利用者のうち、JR全体の鉄道旅客数は95億0.300万人(前年同期比△0.6%)、私鉄全体の鉄道旅客数は156億8,700万人(前年同期比△0.2%)となりました。さらに私鉄大手16社で104億9,200万人を占めており、100億人越えは5年連続となっています。堅調な鉄道需要の背景には都心における再開発計画や乗り入れの利便性工場による定期券利用者の増加、インバウンド需要の恩恵があります。
近年では各鉄道会社は客単価引き上げを狙った有料サービスを広げており、「通勤時座席指定列車」を相次いで導入しています。主に東武鉄道や西武HD、京王電鉄、京成電鉄などが行っており、通勤ラッシュで悩む利用者のニーズに応えています。
将来性
「鉄道業界=安定」と考える就活生の方も多いようですが、実際には楽観視できる状況ではありません。要因の一つは人口減少と高齢化です。鉄道は固定の移動手段ですから、人k脳減少が収益の悪化に直結します。総務省が発表している「国土の長期展望」によれば、日本の人口は現在、約1億2,630万人ですが、2050年には約9,515万人まで減少すると予想されています。さらに通勤・通学、ビジネスでの鉄道需要がある生産年齢人口は約3,500万人まで減少し、逆に高齢化は約40%に上昇すると言われています。
人口減少・高齢化が進めば、これまで通勤や通学、ビジネスで利用していた人の総数が減少します。また、レジャーや買い物で利用する人も減少するでしょう。高齢者は体力の衰えによって行動範囲が狭まる傾向にあり、鉄道の利用需要は旺盛ではありません。
地方の過疎化も問題です。鉄道会社は社会インフラとして日本全国に沿線を保有する必要がありますが、高齢化・過疎化が続く地域では今でも採算が取れていません。今後、少子高齢化や過疎化が続くとさらにこの傾向が顕著にあり、鉄道会社の収益を圧迫するでしょう。一方で都心では高齢化が進み、これまでのように郊外の団地やマンション、一戸建てに住む人が通勤で利用するという構図も崩れつつあります。
このようななかで各社とも独自のサービスを展開し、利用者の減少に耐えられる収益構造の構築に注力しています。例えば、非鉄道事業である商業施設の運営や不動産関連事業、介護施設の運営などです。これらの事業は単体での成長性も見込めるほか、沿線のまちづくりを進めて、鉄道の利用者の増加も期待できます。
業界の分類
JR
JRは旧国鉄(日本国有鉄道)の民営化によって発足した鉄道会社です。日本国有鉄道から鉄道事業を引き継いだ鉄道会社です。
現在、JRはJR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州、JR貨物の7社です。
大手私鉄
大手私鉄とは民営の鉄道会社のなかでも経営規模の大きい会社を指します。特に国土交通省鉄道局が統計資料を公表する際に用いている名称です。主な大手私鉄には東武鉄道、西武鉄道、京王電鉄、小田原電鉄、東急電鉄などがあります。
準大手私鉄
準大手私鉄とは民営の鉄道会社のなかでも経営規模の小さい会社を指します。私鉄でありながら沿線地域の発展に伴って輸送規模が増大し、保有車両数や列車運転頻度などが大手私鉄に匹敵する鉄道会社のことを「準大手私鉄」と呼び慣わしてきた経緯があります。主な準大手私鉄には新京成電鉄、北大阪急行電鉄、泉北高速鉄道、山陽電気鉄道、神戸高速鉄道などがあります。
最新のトレンド
新型コロナウイルスの影響
2000年代は在来線の利用者は横ばいが続いていましたが、相次ぐ都市再開発事業や訪日外国人観光客の増加によって鉄道の需要は増加傾向にありました。しかし、2019年までの好調であった鉄道需要が新型コロンウイルスの影響を受けて状況が一転してしまいます。2021年3月期の連結決算における運輸事業の収入は以下のようになりました。
- JR東日本…前期比△43.9%の1兆1,677億円
- JR東海…前期比△62,.8%減の5,330億円
- JR西日本…前期比48.9%減の4,768億円
新型コロナウイルスの影響で、インバウンド需要が消滅し訪日外国人観光客の鉄道利用がほとんどなくなったことが原因です。また、政府や地方公共団体の外出自粛要請やそれに伴う企業のテレワークの普及によって鉄道の利用率が激減しました。緊急事態宣言の解除や政府による『 GoToトラベル』キャンペーンで、一時的に利用客は回復の兆しが見られましたが、GoToキャンペーンの打ち切りによって先行きは不透明となっています。
非鉄道事業への注力
鉄道需要の減少に伴い国内の鉄道会社が推進しているのがいわゆる非鉄道事業です。非鉄道事業と言っても多岐にわたり、宅地、マンションの開発・ホテル経営などの不動産関連事業、沿線のエンターテイメント事業、百貨店やショッピングセンターの運営、駅ナカで展開する小売業や外食業、車内の中吊り広告や液晶モニターに映し出される広告事業、駅を媒体とする広告事業、旅行代理店事業、さらにはIC乗車券と連動させたクレジットカードなどの金融事業などがあります。
非鉄道事業に注力することで駅周辺の価値を高め、鉄道の利用者が増えるので、鉄道事業の成長にも効果があります。また、鉄道の利便性を高め、利用者を増やす取り組みとして競合会社との相互乗り入れや相互直通も始まっています。最近では渋谷駅再開発の一つである東急スクランブルスクエアの商業施設を東急電鉄、JR東日本、東京メトロが共同で開発しました。
MaaSによる沿線活性化
MaaSとは”Mobility as a Service”の略で次世代型の移動サービスです。より具体的には鉄道、バス、タクシー、ライドシェア、航空、マイカーなどあらゆす交通移動手段をITを活用してシームレスに結びつけてスマートフォン一台で情報提供・予約・決済までを一元化できるサービスです。すでにヨーロッパでは本格的な取り組みがスタートし、日本でも鉄道会社や自動車会社などが中心となって研究が始まっています。
例えば、首都圏の自宅から東北に観光で行くことを想定してみましょう。最初に乗車するのは最寄り駅までのバスです。そこからJR在来線に乗り換え、さらに新幹線か飛行機を乗り継いで、東北に到着します。その後、JR在来線、私鉄、バスに乗り換えて最終目的地に到着します。
MaaSに鉄道会社が参入することによって採算の取れない過疎地において他の移動手段と組み合わせることによって鉄道の運用効率が上がり、採算の向上につながるほか、利用者の利便性が向上、鉄道会社の沿線の活性化にもなります。
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