
【就活生必見】非鉄の業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
非鉄業界は特に理系学部の学生から根強い人気を誇ります。都内の有名私立大学や旧帝国大学の理系の学生の多くは志望する人気の業界です。非鉄業界は私達の日常生活に身近な業界であり、学生からの知名度が高いという特徴があります。したがって、就活の難易度が比較的高く、内定を獲得することは簡単なことではありません。就活を順調に進めるためには非鉄業界のビジネスモデルや業界動向を理解し、その上で自分の強みや過去の経験を非鉄業界で活かせることをアピールすることが重要です。この記事では非鉄業界の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、非鉄業界の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、非鉄業界の就活に挑みましょう。
非鉄業界とは
この章では非鉄業界の
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
-
最新トレンド
について解説していきます。
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業界構造
非鉄の商流
非鉄(非鉄金属)とは鉄以外の金属素材を指します。
世界では現在約4万程度の金属材料が存在し、毎年1,000種以上の合金が新たに生み出されています。
例えば、アルミニウム、銅、鉛などのベースメタルなどです。
アルミニウムはアルミ缶や自動車の車体、銅は10円玉、亜鉛は乾電池など、ステンレスはやかん、厨房設備などに利用されています。
非鉄金属業界の商流は川上・川中・川下に分けられます。
川上は資源開発を担っており、金属の原料となる鉱石の採掘などを事業として行っています。
非鉄金属の原材料のほとんどは輸入に依存しており、採掘権を取得する必要がありますので、企業の立場は弱くなりがちです。
したがって、製錬マージンは安定せず、海外鉱山の権利取得を積極的に行っています。
川中は金属の製錬を行っており、輸入した鉱石を地金に製錬した際に発生する製錬マージンが主要な利益となります。
川下は電材加工・環境リサイクルを行っており、地金を加工して、電子部品や自動車用製品を製造しています。
非鉄金属のなかでも銅とアルミニウムは比較的大量の消費されており、大手を中心に取り扱っています。
非鉄金属の大量生産モデルは大型の向上や機械などの設備投資が必要ですので、大手は川中から川下まで幅広く手がけるとともに、川上の鉱山進出にも積極的です。
非鉄金属は自動車や土木業界・建設業界など大規模な産業が顧客である場合が多く、顧客企業の業界の業況に影響を受けます。
例えば、自動車産業用の鋼板は、国内の自動車業界が不況になればその影響を当然受けます。
また不況でなくても、自動車生産設備が海外に移転した場合も供給先が減少し、業績にはマイナスです。
また、大規模な産業の顧客とは力関係が偏っており、価格競争力が弱く、コストの増加を販売価格に転嫁することが難しいという面があります。
また、大型の工場や機械で製錬するので、ネルギーや資源を大量に消費する産業であり、環境負荷が高いという特徴があります。
近年では欧米を中心に環境保護意識が高まっており、環境に対する配慮や省エネ設備に対する投資が必要になります。
特に脱炭素社会の実現に向けて、環境対策は企業の社会的な責任を果たす上で益々重要になっています。
また、原材料のほとんどを輸入に頼っているというビジネス構造から世界の需給動向や為替の影響を受けます。
円安になれば原料のコストが上昇し、円高になれば輸出部分は減益になる構造です。
さらに素材を生産するための電力やエネルギーコストにも大きな影響を受けるという特徴もあります。
銅の製造・販売
銅の原材料は鉄鉱石となります。
銅の製造工程は、銅品位1%前後の銅鉱石から、銅品位99.99%以上である電気銅を製造するプロセスです。
鉄鉱石は国内では採掘がほとんど行われていないので、そのほとんどを海外からの輸入に依存しています。
現在はチリなどの南米の海外の銅鉱山での採掘が中心です。
輸入した銅を乾式製錬や湿式製錬という方法で製錬しています。
乾式製錬とは銅鉱石を段階的に燃焼し純度を高め、最終的に電解精製して製造する方法であり、湿式製錬とは銅鉱石に硫酸をかけて銅を抽出し、銅を溶かした溶液から電気を用いて製造する方法です。
銅は世界的な需給バランスによって市場価格が常に変動しています。
近年では銅の最大の需要国である中国の需要が上昇し、2003年頃からコモディティ価格が上昇しました。
しかし、中国の成長減速による電気銅消費量の減少により先行きの不透明感が強まっています。
また、世界的に資源ナショナリズムの動きや銅鉱石の低品位化がみられ、製錬会社の操業コストは上昇傾向にあります。
このような中で外部要因に左右されやすい川中の製錬マージンよりも、各社が進める鉱石採掘・リサイクル・環境などの川上ビジネスや、電子材料・加工品などの生産が注目されています。
アルミニウムの製造・販売
アルミニウムはアルミ缶や自動車の車体などに利用されています。
アルミニウムも銅同様に原材料のほとんどは海外からの輸入に依存しています。
主な輸入先はオーストラリア、UAE(アラブ首長国連邦)、ロシア、ニュージーランド、サウジアラビア、インドなどとなっています。
輸入したアルミニウムをアルミナの抽出・アルミニウム地金の製造・製品素材の成形といった方法で製造しています。
アルミナの抽出とはアルミニウムの原料であるボーキサイトを苛性ソーダ液で溶かしてアルミン酸ソーダ液を作り、そこからアルミナ分を抽出する工程です。
アルミニウム地金の製造とはアルミナを溶融氷晶石の中で電気分解することによりアルミニウム地金を製造する方法です。
製品素材の成形とは地金を原材料として圧延・押出・鍛造・鋳造などの加工を行い、いろいろな形の製品素材に成形する工程です。
アルミニウムの製造は世界のアルミニウム需給に左右されます。
特に2000年以降は中国経済の成長と減速が非鉄業界の業績に大きな影響を与えています。
したがって、可能な限り需給に左右されないように素材に付加価値を付けるなど、高い技術力を生かした成長を目指しています。
しかし、国内では市場が成熟しており、海外同業他社の低価格攻勢による販売価格の下落、供給先企業の海外移転といった厳しい経営環境が続いています。
将来性(シンクタンクのレポートなどを)
市場規模
業界動向リサーチによれば、2020年-2021年の非鉄金属業界の市場規模(主要対象企業40社の売上高の合計)は12兆7,849億円となっています。
みずほ銀行の業界レポート「日本産業の中期見通し(非鉄金属)」によれば、2019年の「伸銅品(しんどうひん)」出荷数量は831千トンと、前年比1.1%の増加を見込んでいます。
特に車載用コネクタや半導体用途の製造・販売が堅調に推移しており、2023年の出荷数量は854千トンと、2018年以降は年率0.5%の増加を予想し、増加基調を持続するとみています。
経済産業省の公表した2018年実績の工業統計によると、事業所の数及び出荷額は以下の通りです。
事業者数 | 出荷額 | |
銅1次精錬業者 | 7事業所 | 1兆4,023億円 |
亜鉛1次精錬業者 | 4事業所 | 866億円 |
その他の非鉄金属1次精錬業者 | 36事業所 | 1兆11億円 |
鉛2次精錬業者 | 36事業所 | 1,607億円 |
アルミニウム2次精錬業者 | 141事業所 | 6,567億円 |
その他の非鉄金属2次精錬業者 | 148事業所 | 6,354億円 |
品目別には以下のようになりました。
品目 | 事業所 | 出荷額 |
亜鉛地金 | 4事業所 | 451億円 |
鉛地金 | 3事業所 | 376億円 |
金地金 | 7事業所 | 5,250億円 |
銀地金 | 6事業所 | 540億円 |
その他の非鉄金属・同関連製品 | 56事業所 | 4,990億円 |
将来性
また、財務省の法人企業統計調査によれば、非鉄金属業界の総売上高が15 兆 179 億円、上場企業数31 社、非上場企業数3,288 社となっています。
みずほ銀行の業界レポート「日本産業の中期見通し(非鉄金属)」によれば、2018年の「銅電線(どうでんせん)」出荷数量が692千トンで前年比0.2%増を見込んだのに対し、2023年には657千トンと、2018年水準から年率1.0%の減少を予想しています。
非鉄業界の懸念材料としては製錬マージンの不安定さが挙げられます。
非鉄業界のなかでも川上の資源開発を行っている企業は原材料を製錬する際の加工料が利益となります。
しかし、原材料のほとんどを輸入に依存しているため、原材料の産出国の規制の動向や他の採掘企業の方針によって仕入れ価格が上昇すれば、加工料は下落してしまいます。
原材料の価格はドル建てですが、円高が進むと価格が低下して利益を確保することがさらに難しくなります。
一方で近年では円安傾向があり、原材料の輸入コストがかさんでいます。
このように為替の動向によって製錬マージンが不安定になってしまいます。
一方で非鉄業界の需要は今後もなくなることはないと考えられます。
以前はリーマンショックによる世界的な金融危機や中国など新興国の景気後退と供給過剰によって、原材料の価格は下落していました。
しかし、過去の反省を活かして、現在では採掘量や非鉄金属の生産量の調整を行っており、需給バランスが安定しています。
その結果、原材料の下落幅も縮小しており、製錬マージンも徐々に安定しています。
また、そもそも非鉄金属は様々な産業において不可欠ですので、需要がなくなることはなく、経営基盤も安定しています。
家電製品やパソコン・スマートフォン、自動車、ロケットなど工業製品のほとんどには非鉄金属が利用されています。
工業製品に欠かせない原料や部品を生産している非鉄金属の需要は景気の動向で多少の増減はあるものの、決してなくなることはないでしょう。
また、非鉄金属各社は経営基盤の安定のために様々な施策を行っています。
その一つが海外進出です。
海外進出によって加工コストの削減を図っています。
海外進出によって新しい市場を開拓するというよりは、海外の方が国内よりも製造コストが安くすむので積極的に海外進出しています。
業界の分類
非鉄金属大手3社
売上高上位3社として住友電気工業、三菱マテリアル、ENEOS HDが挙げらます。非鉄金属業界は寡占化が進んでおり、3社の地位は確固たるものになっています。
非鉄金属大手
明確な定義はありませんが、一般的な大手企業としては昭和電工、住友金属鉱山、古川電気工業、フジクラ、DOWAホールディングスなどが挙げられます。
最新のトレンド
世界的な景気拡大の影響を受けて、堅調に推移
非鉄金属業界の過去の市場規模の推移を見てみましょう。
2007年から2009年までは市場が縮小しました。
特に2009年には米国のサブプライムローン問題や世界的な金融危機がマイナス要因となりました。
2009年から2016年までは市場の拡大・縮小を繰り返しました。
この時期は欧州や中国などの非鉄金属の需要が減少した一方で、海外市場の自動車関連の需要が増大していました。
2016年以降は銅や亜鉛、アルミ価格の上昇、世界経済の拡大などの恩恵を受け、再び市場は拡大傾向にあります。
経済産業省の工業統計調査によると、2019年の非鉄金属製造業の出荷額は、前年比5.9%減の9.6兆円でした。
2019年の市場規模はやや市場は縮小しましたが、大きなマイナス要素はありませんでした。
非鉄業界では世界経済の成長を取り込むために海外の大型鉱山の開発に注目が集まっています。
例えば、2019年3月には住友金属鉱山がチリの鉱山の権益を取得しています。
新型コロナウイルスの影響
新型コロナウイルスの感染拡大の影響は非鉄業界にも及んでいます。
まず、欧州を中心に実体経済の後退により、特に自動車関連事業の非鉄金属の需要が後退しています。
また、消費者は非鉄金属の供給が止まることを警戒して、備蓄量を増加するケースが散見されます。
また、海外の一部の銅鉱山の開発が中断しています。
このような不透明な状況のなかで非鉄金属各社はリサイクル事業を推進しています。
リサイクル事業とは例えば、携帯電話や自動車の部品から主要金属を取り出す事業であり、安定した収益が見込めます。
不安定要素
非鉄金属の供給先は自動車関連産業や建設・土木関連産業、電子機器などの大型産業向けが多く、これらの業界の市況の影響を強く受けます。
近年では世界的な自動車関連産業や住宅需要の好調な推移によって非鉄金属の需要は増大しました。
一方で国内の非鉄金属業界は銅や亜鉛などの非鉄金属のほとんどを海外からの輸入に頼っています。
したがって、為替の動向や原料原産国の施策や海外の大手非鉄金属各社の指針の影響を強く受けます。
したがって、原材料価格が安定せず、非鉄金属各社にとっては不安定要素となっています。
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