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シンクタンク 業界研究

シンクタンク業界の業界研究|就活に役立つ事業構造・将来性・働き方など徹底解説します

頭脳明晰なエリート集団という印象が強いシンクタンク。国家公務員やコンサルティングファームを志望する学生の併願先としても有名です。そのため、志望する学生のレベルも高くなり、有名私大・旧帝大の学生が集まります。就活を有利に進めるためにもシンクタンクのビジネスモデルや業界の動向を正確に理解しましょう。特に混同されがちなコンサルティングファームとの違いは明確に理解する必要があります。この記事では各社の有価証券報告書やシンクタンク、公的機関の各種レポートを参考にして業界研究を詳細に行っています。最後まで読むことで業界のことが網羅的に理解できますので、ぜひ熟読してください。

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シンクタンク業界とは

この章ではシンクタンク業界の

  • 業界構造
  • 将来性
  • 業界分類
  • 最新トレンドについて

    解説していきます。

業界構造

官公庁を中心とした顧客からの受託収入

シンクタンクとは政治・経済・社会などの様々な領域の専門家を集めた研究機関を指します。
シンクタンク(think-tank)を直訳すると「頭脳集団」であり、研究機関として幅広い分野について、調査・研究、政策立案・提言を行い、その対価として受託報酬を受け取ります。
現在、日本国内には100以上のシンクタンクが存在すると言われており、政策研究、社会問題や国際情勢、経済、最新技術、環境問題など幅広い分野をカバーしています。

主な顧客は官公庁や地方公共団体、業界団体であり、社会開発や政策決定に資する形で様々な調査・分析をもとに問題解決や将来予測などの提言を行います。
「国民が政治に何を求めているのか」「国民の現政権に対する態度はどうか」など消費者や国民の意向・動向を知りたい官公庁の依頼を受けて、情報収集及び調査サービスを提供します。
また、民間企業向けに経営戦略支援を行う場合もあります。
日本では顧客から受託報酬を受け取りますが、欧米では主に寄付金を資金源として非営利団体が運営するのが一般的となっています。

顧客から案件を受注するという受託型のビジネスだけでなく、自主研究型のビジネスも行っています。
例えば、ニュースや新聞などで「〇〇経済研究所の調査によれば」といった調査結果が引用されることがありますが、このようなシンクタンクが独自に行った調査が自主研究です。
自主研究型の場合は政治や経済などの専門分野における専門性をアピールし、顧客からの受注を目的とすると同時に調査結果を有料コンテンツとして販売したり、引用するメディアから掲載料を受け取っています。
 

シンクタンクとコンサルティングファームの違い

シンクタンクはその役割やビジネスモデルがコンサルティングファームと混同されることが多い業界です。
しかし、シンクタンクとコンサルティングファームには多くの違いがあります。

シンクタンクの主な顧客は官公庁や地方公共団体であるのに対して、コンサルティングファームのクライアントは民間企業が中心です。
シンクタンクは受注した案件に関する調査レポートを提出し、対価として契約金を頂くというのがビジネスモデルです。
官公庁が発注する場合は案件の公示があり、シンクタンクによる入札が行われます。
最も低い金額を提示したシンクタンクが案件を受注することで、官公庁の予算管理が行われています。
一方でコンサルティングファームの場合は顧客からファームに対して、直接依頼があります。

また、シンクタンクは受注した案件について研究内容や調査・分析した結果をレポートとしてまとめることが目的であり、成果物はレポートです。
官公庁や地方公共団体の要請に基づいて政策提言を行いますが、実際に政策が実施されるまでのサポートは行っていません。

一方で、コンサルティングファームはクライアントの経営戦略支援を行い、ファームが策定した計画を実行するところまでサポートを行います。
ただし、民間企業から案件を受注するシンクタンクの場合はコンサルティングファーム同様にコンサルティング業務及び計画実施支援を行っている場合があります。

  コンサルティングファーム シンクタンク
商材 情報
ビジネスモデル 人月商売 単体案件・単体報酬
メイン顧客 民間企業 官公庁
戦略実施サポート

このようにシンクタンクとコンサルティングファームは商材、報酬形態、顧客層、戦略実施サポートの有無において異なります。
 

非営利団体としてシンクタンク

政府系シンクタンクの中には非営利団体が存在します。
これらのシンクタンクは官公庁や地方公共団体向けに調査レポートの提供や政策提言などを行うと同時に国内経済や世界情勢に関する調査結果をインターネットに公開することで社会貢献活動を行っています。

利益は度外視されているので、政府の出資や公益法人として経営されている場合が多いようです。
 

コンサル系シンクタンク

シンクタンクとコンサルティングファームには商材、報酬形態、顧客層、戦略実施サポートの有無において違いがありますが、コンサルティング業務に強みを持つ「コンサル系シンクタンク」も存在します。
コンサル系シンクタンクの強みは高い専門性と調査力を生かした、質の高いコンサルティングです。

近年では、金融やITなど特定の業界に強みを持つシンクタンクも多く、受託収入だけではなく、コンサルティング業務に注力するシンクタンクも増えています。
 

市場規模・将来性(シンクタンクのレポート)

市場規模

市場調査会社 International Data Corporationの日本法人IDCジャパンが発表した「国内コンサルティングサービス市場予測」によれば、2020年のシンクタンクの国内市場規模は7,659億円(前年比+6.4%)となりました。
同レポートによれば、シンクタンクの市場は2020年から2023年に年間平均成長率5.4%で成長し、2023年には9,969億円に拡大すると予測しています。

また、NIRA総合研究開発機構が毎年国内のシンクタンクの動向について調査レポートを発表しています。
2014年3月に公表した「シンクタンク情報2014」を最後に研究及び公表を終了しましたので、その後の詳細は不明ですが、基本的なトレンドに変化はないと考えられ、市場動向について考える上で参考になります。
同レポートによれば、国内の主要なシンクタンクの数は減少傾向にあります。

年度 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999
機関数 216 226 232 237 243 227 268
年度 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
機関数 332 337 325 311 295 296 271
年度 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
機関数 266 244 230 220 201 193 181

調査最終年度の2013年時点では181のシンクタンクがありましたが、組織形態及びジャンル、研究形態の内訳は以下のとおりでした。
 

【組織形態】

組織形態 営利法人 公益財団法人 一般財団法人 一般社団法人 その他
機関数 82 33 32 13 21

 

【ジャンル】

ジャンル 経済 総合 国土開発 産業 政治 環境 交通
機関数 34 31 28 20 12 10 10
ジャンル 国際問題 国民生活 資源 文化芸術 福祉医療 科学 通信
機関数 7 7 6 5 5 3 3

 

【研究形態】

研究形態 受託研究 自主研究 助成研究
件数 1067件 1610件 49件
割合 39% 59% 2%

また、委託者(クライアント)別の受託件数は以下のとおりです。
 

年度 2000 2007 2008 2009 2010 2011 2012
中央省庁 1104 658 606 653 542 380 369
地方公共団体 1593 890 827 1,013 938 857 769
政府機関等 851 494 342 327 236 200 201
営利法人 569 186 172 174 189 175 175
その他 94 67 189 97 95 103 96
合計 4,211 2,295 2,136 2,264 2,000 1,715 1,610

 

将来性

かつてバブル期は民間企業をクライアントとする受託収入が増加傾向にありましたが、その後の景気後退期に企業が経費削減を行ったことで、営業収入は減少しました。
近年では官公庁向けの受注収入が主となっており、堅実な経営を行っています。今後も官公庁から受注に依存した構造は続くと見られており、収益は安定的に推移するものの、成長性が高いとは言えません。

ただし、ここ数年は国内経済の回復によって売上は堅調に推移しており、シンクタンク業界の需要は拡大すると見られています。
一方で、中長期的に国内市場が縮小すると見られるなかで、海外展開が課題となっています。

業界の分類

政府系シンクタンク

政府系シンクタンクとは官公庁を母体とするシンクタンクであり、多くは非営利団体です。
従来は政策立案及び政策提言を行う政府系シンクタンクが主でしたが、現在では少数派となっています。
政府系シンクタンクには経済社会総合研究所(内閣府)、経済産業研究所(経済産業省)、防衛研究所(防衛省)、産業技術総合研究所(経済産業省)、日本国際問題研究所(外務省)などがあります。

民間系シンクタンク

民間系シンクタンクは銀行や証券、生保など金融機関のグループ会社が主となっています。
これらのシンクタンクはグループ企業や擁護団体から資金提供を受けたり、民間企業からの受託研究によって報酬を受け取っています。

民間系シンクタンクとしては三菱UFJリサーチ&コンサルティング、三菱総合研究所、みずほリサーチ&テクノロジーズ、みずほ情報総研、野村総合研究所、大和総研、浜銀総合研究所、ニッセイ基礎研究所、NTTデータ経営研究所、日本総合研究所などがあります。

最新のトレンド

モバイルリサーチが成長

シンクタンクには国内のみならず世界規模で調査・情報収集を行う大手シンクタンクがある一方で、特定のジャンルでの調査を専門とする調査会社やインターネット経由での調査を行うモバイルリサーチがあります。

近年では、シンクタンクの調査手法としてモバイルリサーチが台頭しています。
モバイルリサーチとはスマホやタブレットなどのモバイル端末を活用して、市場調査を行う手法です。
従来の手法と比べて、低コストかつ短期間で多くの層にアプローチできることから、インターネット上で調査を行うリサーチ会社やスマートフォンなどの携帯電話で調査を行うモバイル調査企業の規模拡大が予測されています。

日本マーケティングリサーチ協会の「第45回経営業務実態調査」によれば、2019年度の日本の市場調査業界の市場規模は前年度比4.6%増の2,291億円となりました。

シンクタンクの設立数は減少

アメリカのペンシルベニア大学が発表した「世界有力シンクタンク評価報告書」によれば、世界のシンクタンクの数は6618に上ります。
上位ランキングを見てみると、最も多いのはアメリカの1830となっています。
2位のイギリスが287ですから、アメリカのシンクタンクの数は突出しています。イギリスからドイツ、インド、中国と続き、日本は108で9位となりました。

日本では1970年代にシンクタンクの設立ブームがありました。
高度経済成長時代が到来し、政府だけではなく、第三者の観点から社会開発や政策提言を行うニーズが高まったことが背景にあります。
1965年に野村総合研究所が設立され、1969年に社会工学研究所、1970年に三菱総合研究所、1971年に未来工学研究所などが設立されました。

その後、バブル景気が到来し、民間企業に研究結果を提供するニーズが高まったことで金融や生保、証券系のシンクタンクの設立ブームがありました。
しかし、バブル崩壊とともにブームは沈静化し、近年ではシンクタンクの数は減少傾向にあります。

日本では欧米諸国に比べて、シンクタンクの数が少ないだけではなく、政治行政に及ぼす影響力が小さいことが指摘されてきました。
日本では官僚機構が政策立案や政策提言機能を独占してきたという背景があり、外部のシンクタンクが入り込む余地が少なかったと言えます。

また、欧米諸国のシンクタンクが寄付金に支えられているのに対して、日本のシンクタンクは資金面で制約があり、特定の財界や企業の主導で誕生したシンクタンク以外は新しいシンクタンクが設立される素地がないことが指摘されています。

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