
【就活生必見】 信販・リースの業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
信販・リース業界は知名度こそは他の金融業界に劣るものの給与水準が高く、かつホワイトな業界として知られています。業界研究を徹底した学生からは根強い人気があり、金融業界を志望する学生の多くが併願するため倍率も高いです。採用人数が少ないので、就活難易度も高くなり内定を獲得することは容易ではありません。内定者の多くは都内の有名私立大学や旧帝国大学の学生であり、内定を獲得するためにはこれらの学生との競争に勝ち抜く必要があります。激しい競争を勝ち抜くためには信販・リース業界の業界研究を徹底する必要があります。この記事では有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、信販・リース業界について詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、信販・リース業界の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、信販・リース業界の就活に挑みましょう。
信販・リース業界とは
この章では信販・リース業界
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
- 最新トレンドについて
解説していきます。
業界構造
リース料収入(リース業界・信販業界)
リースとはリース会社が企業の代わりに設備などを購入し、企業に設備などを長期間貸与するという事業です。リース会社にとってはメインのビジネスであり、信販業界もオートリース事業を運営しています。
企業は事業経営の上で様々な機械や設備を必要としますが、予算の都合上すべての機械や設備を購入し、揃えることは難しい場合があります。リースを活用することで必要な設備を購入せずに使用でき、設備がビジネスで役に立つのか見極めることができます。
リースのビジネスモデルとしてはまず企業が対象となる機械や設備を選定し、リース会社に通知します。リース会社は機械や設備のサプライヤーと売買契約を締結し、購入します。そして、リース会社と企業の間でリース契約が締結され、サプライヤーから企業に機械や設備が納品されます。これら一連の流れが完了すると、企業は機械や設備の規模や借りる期間に応じてリース会社にリース料を支払います。
リースを利用することは機械や設備を借りる企業にとってもサプライヤーにとってもメリットがあります。企業にとっては自社で設備を購入するよりもコストを抑制し、一度に大量の出費をせずに済むことです。企業が設備を購入する場合には単価の高い設備やある程度まとまった数量が必要な場合は金銭的な負担が大きくなります。
企業によっては予算が潤沢ではなく、設備の購入に大胆な投資ができない場合があります。そのような場合にコストを削減することができるのです。また、リース料は基本的に一定ですので、出費の見通しが立てやすいほか、購入で一度に多額の出費をするよりも月々のリース料を支払うほうがリスクを抑えられます。
一方で、サプライヤーにとってもリース業者との関係で大きなメリットを享受できます。サプライヤーが企業に機械や設備を販売する場合には売上を回収できない販売リスクが常につきまといますが、リース会社と契約することで、リース会社が企業の代わりに機械や設備を購入するので、売上金が一括で手元に入ります。リース会社は販売リスクを気にすることなく、安心して販売活動に取り組むことができます。
カードローン事業(信販業界)
信販会社はカードローン事業を運営しています。カードローン事業とは「消費者が個人で消費する財やサービスの債務に対して、消費者の信用を担保にして金銭を貸付する事業」と定義されています。つまり、顧客の「信用」を担保として、主に個人を対象に少額の資金を無担保で融資するビジネスです。
利用者はカードローン事業を運営する信販会社に利息を支払い、利息収入が信販会社の収益源となります。銀行などの金融機関が主に企業向けの大口の融資をしているのに対して、信販会社は個人向けの少額資金無担保融資に注力しています。
カードローンの金利は1.5~15%と高い傾向にあり、利益率の高いビジネスです。また、ローン事業はストック型のビジネスであり、安定した収益が見込めるため今後も信販会社の主力事業であり続けることが予想されています。
クレジットカード事業(信販会社)
クレジットカード事業の主な収益源は手数料収入です。クレジットカードの仕組みとして利用者が加盟店で利用した場合にその場で支払うのではなく、クレジットカード会社が立て替えて、後日他の支払いとまとめて利用者に請求します。クレジットカード請求額を一括で支払う場合には手数料は発生しませんが、分割払いやリボ払いの場合には手数料が発生し、基本的には支払期間が長くなるほどリスクも大きくなるので、手数料も大きくなります。この分割払いやリボ払いの手数料が信販会社の収益源です。
また、信販会社は加盟店からも手数料を徴収しています。利用者がクレジットカードを利用して、商品の購入代金を支払った場合には加盟店は支払われた金額をすべて受け取るわけではなく、信販会社が後日商品代金から利用手数料を差し引いた金額を振り込みます。商品代金と手数料の差額が信販会社の収益源となります。
さらに、クレジットカードそのものから手数料を徴収する場合があります。一般的には年会費無料のクレジットカードが多いようですが、なかには年会費が有料のクレジットカードも存在します。クレジットカードの年会費も信販会社の収益源です。
クレジットカード事業ではローン事業と同じような貸出業務もあります。クレジットカードにはキャッシング機能が付帯しており、コンビニや銀行のATMから現金を借りることができます。借入ですので、後日指定された期日に返済しますが、キャッシングの利息収入が信販会社の収益源となります。
市場規模・将来性(シンクタンクのレポートなどを)
リース事業の市場規模
2019年から2020年のリース業界の市場規模(主要対象企業17社の売上高の合計)は9兆2,913億円です。また、企業のリース取扱高から見た市場規模は2019年で5.3兆円となりました。国内でリースを利用している企業は90%を超えているという調査もあり、企業の経済活動にとってリース事業は不可欠のものであることがわかります。
一方で、近年では日本経済の成長鈍化によって、企業の設備投資が減少し、取扱高は横ばいです。リースは機械や設備の貸与というビジネスですので、リースの対象となる産業・工作機械、航空機、パソコン、不動産、パソコンなどへの設備投資が減少すればリース事業の業績も落ち込みます。2008年にはリース会計基準が見直されたほか、リーマンショックの影響によって2010年のリース取扱高は4.6兆円にまで減少しました。
その後もリース事業の取扱残高が減少する傾向が続いてきましたが、近年では日本経済の回復に伴ってリースの需要が盛り返してきたようです。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大によって再び日本経済が減速し、これまで好調だった航空機リースや国内オートリース需要は減少している状況にあるようです。
また、日銀のマイナス金利政策の影響で、企業の資金調達コストが低下してきており、銀行融資が容易になっていることを背景として、リースの優位性が失われつつあります。
クレジットカード事業の市場規模
株式会社矢野研究所の「クレジットカード市場に関する調査 2020年」によれば、2019年度のクレジットカード事業の市場規模は70兆7,821億円でした。また、経済産業省の調査によれば、2019年のクレジットカード取扱高は64兆9,419億円(前年比+10.3%)となりました。これらの調査からクレジットカード事業の市場規模は65兆円から70兆円という巨大市場であることがわかります。
クレジットカード市場の規模は毎年拡大しており、過去最高を更新しています。クレジットカード業界の業績ランキング上位5社の業績は増収を記録しており、2020年3月期の各社の有価証券報告書によれば、日立キャピタルが4,640億円(前期比+2.4%)、イオンフィナンシャルサービスが4,572億円(同+4.3%)、クレディセゾンが3,114億円(同+2.2%)、オリエントコーポレーションが2,431億円(同+4.2%)、トヨタファイナンスが2,004億円(+10.9%)という結果になりました。
このようにクレジットカード市場が拡大している背景にはどのような要因があるのでしょうか?考えられる要因は以下の2つです。
1つ目はキャッシュレス決済の普及です。これまで国内のキャッシュレス決済はクレジットカードが主でしたが、それでも未だに日本は現金決済が主流であり、他の先進国のキャッシュレス率と比較すると大きな遅れを取っていました。しかし、政府がキャッシュレス化を推進し、2025年までにキャッシュレス決済の比率を現在の20%から40%に引き上げる目標を掲げています。
クレジットカード各社もキャッシュレス決済の還元事業を相次いで発表し、例えば、QRコード決済、モバイル決済などこれまでなかった決済手段が普及し、それぞれの決済アプリに紐づくクレジットカードの取り扱いが拡大しました。最近では新型コロナウイルスの感染拡大により、接触のないキャッシュレス決済が推進されており、今後さらにクレジットカードと紐づくキャッシュレス決済の利用が普及すると予想されています。
2つ目はクレジットカード決済の利用範囲の拡大です。政府のキャッシュレス決済の推進により、これまでクレジットカード決済ができなかった百貨店や小売店で決済手段が充実したほか、Amazonや楽天などのネット通販の拡大、メルカリやPayPayフリマなどのフリマアプリの拡大よって、クレジットカード決済を利用する機会が増えました。さらに行政の側でもクレジットカード決済を広げる取り組みを推進しており、例えば、法人税、相続税、源泉所得税、ふるさと納税などの税金関連、電気や水道光熱費などの公共料金のクレジットカード決済も普及しています。
このようにクレジットカード事業には追い風の状況が続いており、2019年3月時点でクレジットカード発行枚数は2万8千万枚に達し、平均して一人当たり2.7枚を保有している状況まで普及しました。さらに矢野研究所の予測によれば、クレジットカード事業の市場規模は2021年度は76兆719億円、2022年度は84兆1,356億円、、2025年度には109兆3,357億円に達すると予測されています。
しかし、一方で、日本のクレジットカードの加盟店手数料は諸外国と比較して高い水準で推移しており、消費者の利益保護の観点から、政府から引き下げ要請が出ています。今後は全体的に手数料の引き下げ圧力がさらに強くなり、平均単価は減少する可能性があります。
業界の分類
独立系リース
リース事業を主力事業としているのが独立系リースです。独立系は独自のノウハウに基づく個性的な事業展開を図っており、業界最大手のオリックス株式会社などが該当します。そのほかにも日本教育情報機器株式会社、株式会社日本包装リース、滋賀コープサービス株式会社などが代表的な会社です。
銀行系リース
銀行系リースはメガバンク等の銀行が出資しており、豊富な資金力や銀行の顧客基盤を背景に土地や建物、設備などの高額・大型案件に強みを持っています。メガバンクの海外進出に伴い海外収益の割合が高い企業もあります。代表的な会社は三菱UFJリース株式会社、東銀リース株式会社、芙蓉総合リース株式会社などです。
商社系リース
総合商社や商社系の旧財閥企業などが融合して誕生したのが商社系リースです。多角的な専門性やマーチャンダイジング、マーケティング、多様な販売チャネルなどに強みを持ちます。
代表的な会社は東京センチュリー株式会社、JA三井リース株式会社などです。
メーカー系リース
大手メーカーなどの販売金融手段として設立され、メーカーが運営している事業と深い関わりのある会社がメーカー系リースです。大手メーカーがリースの分野に進出して設立した経緯から、メーカーの製品をリースしているケースも多々あります。
代表的な企業は日立キャピタル株式会社、リコーリース株式会社、NTTファイナンス株式会社などです。
銀行系信販
メガバンクなどの銀行の豊富な資金力と信用力を裏付けにクレジットカード事業などを展開しています。銀行の窓口で勧誘されることが多いクレジットカードでもあります。代表的な会社は三菱UFJニコスや三井住友カードなどです。
独立系信販
メガバンクなどの銀行を背景に持たない専業の信販会社です。以前は高いシェアを持っていましたが、最近ではメガバンク系の信販会社の再編により押されている印象があります。代表的な企業としてはオリエントコーポレーション、ジャックス、セディナ、アプラスなどがあります。
最新のトレンド
リース業界の海外進出
国内のリース事業は日本経済の停滞や民間の設備投資の抑制、さらには最近のコロナウイルスによって、市場規模は縮小傾向にあります。しかし、国内市場に明るい兆候がないとしても、市場拡大を狙って、各社は海外展開を積極的に実施しています。
以前は借り手である企業が海外進出する際にサポート役として海外事業を展開していましたが、最近ではリース事業者が海外展開を進めています。リース業界の各社は積極的にM&Aを実施し、現地のファイナンス企業やリース企業を買収しています。
特に三菱HCキャピタル、オリックス、東京センチュリー、三井住友ファイナンス&リースは中国・ASEAN地域に展開するなど攻勢を強めており、現状は海外資産残高を1年で3割近く増加させるなど急速にグローバル展開が進んでいます。今後もこの流れは続くと見られており、海外での月日絵や業務提携が加速すると予測されます。
リース業界の再編
メガバンク、商社、メーカーなどが参入しているリース業界は最近では再編が進んでおり、1999年時点で340社あったリース企業は2004年には289社となっています。これは大手リース会社によるメーカー系リース会社の買収やメガバンク系、大手商社系リース会社の統合、銀行グループにおけるリース会社と他のノンバンクとの経営統合などが背景に有ります。
特に銀行系を中心とした再編には勢いがあります。
例えば、リース業界最大手のオリックス(2015年度の営業資産残高8兆9,724億円)は2013年に欧州の大手資産運用会社ロベコ、2014年にハートフォード生命保険を買収(2015年7月にオリックス生命に吸収合併)しています。
最近では特に銀行系を中心に再編が進み、業界3位の三井住友ファイナンス&リース(2015年度の営業資産残高4兆1,926億円)は、米ゼネラル・エレクトリックグループ(GE)が持つ日本のリース事業を2016年4月に買収し、GE日本法人の日本GEを子会社化。
これに対し、業界2位の三菱UFJリース(2015年度の営業資産残高4兆6,264億円)は、2016年5月に業界5位の日立キャピタル(2015年度の営業資産残高2兆9,471億円)と、資本・業務提携を発表し、将来の経営統合も視野に入れています。リース業界は依然大小様々なリース会社がしのぎを削っておりますが今後も業界の再編・統合は進展すると予測されています。