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造船 業界研究

【就活生必見】造船の業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説

大企業が多く、就活生からも人気が高いのが造船業です。事務系や技術系、航海士など様々なキャリアが広がっており、事業内容もグローバルで魅力的なキャリアがあるのが造船業の特徴です。なので大切なことは、造船業についてどれだけ正しく理解し、その上で自分の強みや頑張ったことを、造船業でどう活かせるかを具体的にイメージし面接官に伝えることが重要です。この記事では造船業の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、造船業の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、造船業の就活に挑みましょう。

造船業界とは

この章では造船業界

  • 業界構造
  • 将来性
  • 業界分類
  • 最新トレンドについて

解説していきます。

業界構造

船舶の製造・販売

造船業界において船舶の製造・販売は最も代表的な事業内容です。造船業界は主に船主や海運会社から船舶の製造を受託し、販売しています。船舶製造の依頼者を探して、新しい船舶の建造に関するヒアリングをすることからスタートします。

船舶の製造・販売の工程

ヒアリング結果をもとに造船所で依頼通りの船舶をオーダーメイドで設計します。設計した船舶の設計図をもとに依頼主と船舶の製造について相談を重ね、双方が合意すれば船主や海運会社から正式に船舶の製造依頼がきます。その結果、船舶の契約が正式に成立するのです。

船舶の製造を始める際には必要となる設備や機材、部品、塗料などを仕入れて、製造を開始します。船舶の製造は多くの労働力と期間が必要になる大工事であり、船主や海運会社から依頼を受けてから、船舶の製造が完了するまでには最低でも1年、長いときには5年以上の期間がかかります。

船舶の製造で利益を上げるために重要になるのは低リスクで利益率の高い造船依頼を受けることです。船舶の製造には大量の機材や塗料が必要になり、造船会社はこれらの原材料を仕入れるわけですが、製造している段階で原材料の価格が高騰してしまう可能性があります。

造船会社は船舶の製造を通して、必要な原材料の価格変動を注視し、利益とのバランスを考えなければなりません。船舶は一隻あたりの価格が高く、一見すると高い収益が期待できそうですが、実際には造船所のスペースや造船会社の製造能力には限界があり、いかにしてリスクを抑えつつ、製造能力限界の造船依頼を受注するかがポイントです。

受注から1~5年が経過し、設計図通りに船舶の製造が完了したら、造船会社は船舶を海上で操作し、正常に操作できるかどうかのテスト運航を実施します。エンジンの性能、船の重量や重心、動作確認、速力、旋回能力、緊急停止などあらゆる項目の動作のチェックを実施し、依頼者のオーダーした仕様書通りになっていることを確認したら報告書や検査書などをまとめて船と共に依頼主に納品します。依頼主のオーダー通りに船舶を設計し、期限通りに船舶の引き渡しを行うことで造船会社は利益を得ているのです。

造船のビジネスフローチャート

造船会社は船舶のみを扱っているわけではなく、自動車や航空機などあらゆる移動手段の製造を担っている総合メーカーです。もっとも船舶の製造に特化して、すべての部品や機材を自社製造にすることで信頼性のある取引をできるように心がけているメーカーも少なくありません。

機械製造・販売

造船会社は船舶の製造だけではなく、船舶関連の機械や部品の製造やメンテナンスを行っています。具体的には舶用ディーゼル機関、産業機械、クレーン、運搬機、石油精製・石油化学関連設備、港湾関連構造物の製造・ 販売・設計などです。また、橋梁等の建設・据付・補修も行っています。

最近では船舶事業でも温暖化への対応が求められてお り、ガス燃料機関への需要が見込まれています。各社とも対策に迫られるなか、多燃料化、短納期化、デジタル技術を活用したアフターサービスなど、多様化する顧客ニーズに応えています。

メンテナンスは船舶関連の機械設備の修理や補修、アフターサービスなども行っており、製鉄所、石油精製プラント、発電設備用機器向けの定期点検作業や補修工事の受注、コンテナクレーンの移設・解体工事やクレーン安定稼動に向けた改修工事なども行っています。

また、船舶事業は人口増加・経済成長の著しいアジア諸国で需要が旺盛であり、それに伴って、船舶関連の機械や部品の製造、湾岸の新設・増設の需要も伸びています。

さらに海洋のみならず陸上でも機械設備の販売を行っています。例えば、老朽化したトンネル・道路・橋梁など社会インフラの劣化・損傷度の調査・診断作業の効率化が社会の課題となっていま すが、その重要ツールとしてレーダ探査技術、撮影技術、複合探査車とトンネル撮影車などを開発しています。

 

海洋開発

造船会社は海洋開発も手掛けています。人々の生活や経済活動には石油や天然ガスなどのエネルギーが不可欠ですが、これらの資源は陸上だけではなく、海底資源という形で海洋にも多数あります。

世界的な人口の増加や発展途上国の経済発展によって世界のエネルギー需要は増加しており、石油や天然ガスの消費量も増加しています。これに伴ってこれまで開拓されていなかった海底に眠る石油や天然ガスの需要が増加し、新しく発見された石油・天然ガスのうち海底資源は60%以上を占め、今や世界のエネルギー消費量の約30%を占めるに至っています。上述のように世界のエネルギー消費量の増加によって、これら海底資源の掘削ニーズも中長期的に拡大すると見られています。

海洋開発の仕組み

海底にある石油や天然ガスを汲み上げるには、まず海底資源の調査・探査が必要です。そして、海底資源の存在が確認されたら、生産し、陸上へ輸送します。海洋から石油やガスを掘削する特殊な機械や構造物、そしてそれらを陸上へ運搬する船舶の製造を造船会社は担っています。

例えば、海底油田の掘削工事で最も活用されている設備であるFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)は海底にある石油をライザーと呼ばれるパイプラインで洋上に原油を汲み上げ、船体デッキ上の石油処理設備で一次処理を施したうえで生産した原油を船体タンクに貯蔵し、定期的に輸送用タンカーへ積み出します。

これらの設備の建設や稼働のための設備の市場はすでに30億円を超えており、今後の世界のエネルギー需要の増大に伴ってさらに拡大することが期待されています。したがって、海洋開発事業は造船業との関わりが深く、これまで造船業が培ってきたノウハウを活かすことができます。

海洋電力発電

海洋資源開発と並行して造船会社が取り組んでいるのが発電事業です。日本は石油などの天然資源に恵まれない国土ですが、島国であるという特性を活かして、海上の再生可能エネルギーを活用できないかという議論は以前からありました。最近では地球温暖化防止としてCO2排出量削減が強く求められていることや原子力発電からの脱却のために大きなポテンシャルを秘めているとして海洋電力発電事業への注目が高まっています。

海洋電力発電事業とは具体的には洋上風力、波力、潮流、海流、海洋温度差等を指しますが、なかでも最も事業化が進み期待されているのが洋上風力発電です。洋上風力発電はコストが比較的低く、世界的に支持を受けています。ヨーロッパでは1990年代から開発が進んでおり、イギリスなどには多くの風車から構成される洋上ウィンドファームが建設されています。

このような風力発電関連の設備・機械の製造や操業には多額の投資が行われれ、すでに世界全体で3兆円を超える巨大マーケットに成長しています。造船業界は海洋の船舶だけではなく、大型風力発電の事業地開発や建設、事業運営を行っています。

 

市場規模・将来性(シンクタンクのレポートなどを)

市場規模

2019年-2020年の造船業界の市場規模(主要対象企業9社の売上高の合計)は9兆3,189億円となっています。造船業の就労者数は約81,000人(このほか別途外国人就労者約2,400人)であり、ここ10 年は約80,000人前後で推移しています。市場規模の過去の推移を見てみると2009~2012年にかけては市場は少しずつ縮小し、2013年から2014年にかけては市場は拡大基調にありましたが、2014年以降は再び横ばいが続いています。

背景については考察してみましょう。中国を中心としたアジア新興国の経済発展に伴う世界的なエネルギー需要の増大や資源開発の活発化によって、造船事業や造船関連産業は成長を続け、2016年に世界の造船受注量が9,960万トンと過去最高を記録しました。

しかし、2009年以降はリーマンショックによる経済不況が始まり、新興国の経済成長に歯止めがかかったことで新規の造船発注や海上輸送、資源開発も低迷しました。その後、2013年頃から再び少しずつ市場に拡大へと向かいましたが、新規の造船受注量が低迷したリーマンショック時の受注船がほぼ竣工したことから再び市場は低迷しました。

さらに新規の船舶の大量建造によって船舶の供給過剰が問題になっています。これによって、船舶の単価が低迷し、世界的に市場が悪化しています。

このような状況の中で2020年3月期の造船重機大手6社の業績は芳しくありません。三菱重工業が前年同期比0.9%減、川崎重工業が前年同期比2.9%増、IHIが前年同期比6.5%減、住友重機械工業が前年同期比4.3%減、三井E&S HDが1前年同期比9.8%増、日立造船が前年同期比6.4%の増加となりました。

世界市場の寡占化

造船業界は世界的に寡占化が進んでいます。国土交通省の海事局が2016年に発表した「船舶市場の現状」によれば、2017年の世界の造船シェアは韓国が45%、中国が30%、日本が7%と日中韓を合わせたシェアは80%を超え、世界の造船市場が日中韓に寡占化されています。

1990年代は日本が世界の造船業界を牽引している時期もありましたが、2000年代以降、中国と韓国は世界の造船シェアを急速に伸ばしてきました。しかし、リーマンショック以前に新規造船の大量受注があったこととその後のリーマンショックによる世界的な不況によって、世界的な造船供給能力過剰となっていますが、こうした造船業界を取り巻く環境の変化に対応できずに、中国・韓国とも受注量を大きく減らし、苦戦を強いられています。

一方で、日本の造船業界は為替が円高方向にふれ、競争力が強化されたこともあり、また、高性能・高品質で知られる日本の造船業への高い信頼性から日本の造船業への受注回帰の動きが見られます。その結果、2015年には韓国の受注量・シェアを抜いて、2位に躍り出ました。しかし、それ以降は世界的な海上輸送需要の低迷を受けて、日本も中国・韓国同様に建造需要の減少の打撃を受けています。2017年以降は世界の新規造船需要は回復傾向にあるものの、その後の展開は予測できません。

 

業界の分類

大手

小型船舶会社_大手会社

大手造船会社は戦前から旧日本海軍の軍用鑑の建造に関わっており、戦後の復興期および高度経済成長時代に大きく成長しました。各社とも造船の他に機械、プラントなどを手掛けています。大手の造船会社の例として三井造船、日立造船、川崎重工業、三菱重工業などがあります。

中堅

中堅造船会社

中堅の造船会社は大手とは異なり、全国にドックや造船所を持たず、地域限定で事業展開をしています。最近では造船需要の低下を受けて、一般商船の修理・補修にシフトする動きもあります。中堅の造船会社の例として、北日本造船、ヤマニシ、神田造船所などがあります。

小型船舶会社_中堅会社

モーターボートや帆船、漁船、水上オートバイなどの小型船をメインに取り扱っており、大規模な造船所が必要な大型船舶には参入していません。造船業界ではなく、輸送機器メーカーとして分類されることもあります。小型船の造船会社の例として、ヤマハ発動機、ヤンマー、日産マリーン、トヨタマリンなどがあります。

最新のトレンド

従事者の高齢化脱却

現在、日本で造船業および関連産業に従事している就労者は約8万人に上ります。2000年代以降は就労者の高齢化が問題となりました。国土交通省の海事局が2016年に発表した。

「船舶市場の現状」によれば、2007年には

  • 19歳未満が5%
  • 20~29歳が23%
  • 30~39歳が16%
  • 40~49歳が7%
  • 50~59歳が47%
  • 60歳以上が3%

と高齢化が進みんでいましたが、2017年には

  • 19歳未満が6%
  • 20~29歳が29%
  • 30~39歳が29%
  • 40~49歳が18%
  • 50~59歳が6%
  • 60歳以上が12%

と高齢化構造が大きく改善しました。他の産業や人材の獲得競争相手である建設業と比較しても55歳以上の就労者の割合が低く、他の産業に比べて若返りに成功しています。

一方で、60歳以上の割合も増加しており、技能に優れたベテランの再雇用に頼っている傾向も見えます。

船舶の過剰供給問題

船舶の需要が低迷する以前、すなわちリーマンショック以前の新規の船舶の大量受注によって現在、世界的な造船供給能力過剰(Excess Capacity)に陥っています。

国土交通省の海事局が2016年に発表した「船舶市場の現状」によれば、2016年の世界の船舶の需要は約6,500万トンですが、供給能力は10,000万トンを超えています。この供給能力過剰問題の解決には、経営難に陥った造船所が市場から退出することが必要となりますが、韓国の政府支援等により、経営難に陥った造船所が生き延び、供給能力過剰問題は改善されていないのが現状です。

最近では為替が円安に転じたほか、各社とも受注を抑制する姿勢を打ち出しているため、リーマンショック直後の低迷期は脱却したものの以前とした世界的な供給能力過剰問題の解決には至っていません。

このような状況の中でG20首脳宣言やOECD閣僚理事会議き長声明において、世界的な供給能力過剰問題の解決に 向け、政府支援防止の重要性を指摘しました。以下がG20ハンブルク・サミット首脳宣言の内容です。

「産業部門における過剰生産能力が国内生産,貿易及び労働者に与える継続的な負の影響を認識して,我々は,この地球規模の課題に対処する集団的な解決策を見出すための協力を一層強化することにコミットする。我々は,政府及び関連主体による市場歪曲的な補助金及びその他の支 援措置の撤廃を緊急に求める。我々それぞれは,真に公平な競争条件を促進するような集団的解決策を実行するために必要な行動をとることにコミットする。」

また、最近では各国とも環境規制を強めている他、新型コロナウイルスの感染拡大によって世界的なエネルギー需要や海上輸送需要が低迷することが危惧されています。

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