
【就活生必見】地方銀行の業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
地方銀行はその地方であれば就活人気NO1であることが珍しくありません。地元の名士としても知られており、地元の学生からの人気は根強いです。地域ごとの就活人気ランキングでは常に上位にランクインしており、地域の有名大学やUターン就職を考えている都内の都内の有名私立大学や旧帝国大学の学生の多くが就活の選択肢に入れています。したがって、就活の難易度としては相当高いといっても過言ではありません。厳しい競争を勝ち抜いて内定を勝ち取るためには地方銀行について正しく理解し、その上で自分の強みや頑張ったことを、どう活かせるかを具体的にイメージし面接官に伝えることが重要です。この記事では地方銀行の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、地方銀行の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、地方銀行の就活に挑みましょう。
地方銀行業界とは
この章では地方銀行業界
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
- 最新トレンドについて
解説していきます。
業界構造
貸出金利による収益
貸出業務は銀行の最も代表的なビジネスです。地方銀行の業務粗利益のうち、実に85%を占める主力事業です。
銀行は個人や企業から預金という形で広くお金を集めます。まずは窓口で銀行の口座を開設してもらい、お金を預けてもらいます。お金を預けてもらう一方で銀行はお金の貸出先を見つけてきます。例えば、ある企業が事業拡大のために工場の設備の購入を考えているとします。
しかし、大規模な設備投資のために必要な大きな金額をいきなり準備することはこんなんです。そこでその企業は銀行に行ってお金を貸して欲しいと相談します。融資の相談を受けた銀行は企業の財務体質や将来性、事業の成長性などを総合的に判断します。将来性や成長性が見込める場合には融資をするという判断になります。
企業は銀行から融資されたお金をもとに工場の設備を購入し、それによって事業が拡大し、売上が増大します。その後、企業は銀行に借りたお金を返しますが、融資された元金に利息を上乗せして返済します。
これは個人の場合でも同様です。銀行は企業だけではなく、個人にも貸出をしています。例えば、とある個人が自動車ローンや住宅ローンを借りたいと考えていたとしましょう。自動車や住宅は高額なものなので、すぐに費用を用意できません。
そこで、銀行に融資を依頼します。銀行は個人の職業、年齢、年収など総合的に返済能力を調査・審査して融資の判断を行ないます。返済能力があると判断すれば融資実行となります。その後、その個人は銀行に元金+利息分を返済します。
しかし、個人や企業から融資したお金を返済してもらって終わりでは有りません。銀行は個人や企業から預金という形でお金を集めていますので、何らかの形で利益を還元しなければなりません。そこで銀行は預金者に対して利息を上乗せしてお金を返します。
銀行は融資をした個人や企業から返済された利息から預金者に還元する利息分の差額を利益としています。したがって、多くの預金を集めて、有望な貸出先を見つけることが銀行のビジネスにおいて非常に重要です。
有価証券の運用
銀行が個人や企業から広く預金を集めるのは融資の元手とするためですが、それだけではありません。銀行は預金者から集めた資金を活用して、市場から株式や国債、社債などを購入しています。株式は購入者に対して配当金という形で会社の利益が還元されます。
また、国債や社債はそれぞれ発行体である国と会社から利息が支払われます。銀行はこのようにして預金者から集めたお金を市場で運用しているのです。そして、運用して得た利益を利息という形で預金者へ還元しています。
手数料ビジネス
手数料ビジネスとは投資信託や保険商品、デリバティブ商品の販売手数料、ATMキャッシング手数料、クレジットカード手数料、口座管理手数料、M&A仲介手数料、コンサルティング手数料などです。
銀行業界において手数料ビジネスは拡大しつつあり、日本銀行の発表によれば、全国銀行ベースで手数料ビジネスの純利益は1991~1995 年度平均で1.67 兆円、1996~2000 年度平均で1.98 兆円、2001~05 年 度平均で2.14 兆円と増加傾向にあり、銀行の主力ビジネスとなりつつあります。
手数料ビジネスは従来は法律で銀行が参入することが制限されてきましたが、1998年に投資信託の販売が解禁され、2007年には保険商品の販売が解禁されました。従来の貸出業務には融資している企業や個人の貸倒れというリスクが有りました。しかし投資信託や保険商品などの手数料ビジネスは一つ一つの取引は単価の低い薄利多売のビジネスではあるものの、販売数に比例して確実に手数料が積み上げるというメリットがあります。
また、コンサルティング業務やM&Aの仲介、私募債のアレンジなどは単価が高く、サービスの対価として大きな額の手数料収入を得ることができます。今後も地方銀行は貸出業務だけではなく、手数料ビジネスに力を入れていくことが予想されます。
市場規模・将来性
縮小する市場規模
2019年から2020年の銀行業界の市場規模(主要行94行の経常利益の合計)は27兆9,586億円となっています。実は銀行の市場規模は毎年微増もしくは横ばいです。さらにSPEEDAによれば地方銀行の経常利益は直近20年間で5兆円前後、第二地方銀行の経常利益は3兆円前後で推移しています。市場規模として成熟産業であり、ここから急激に市場が拡大していくことは予想されていません。
また、帝国データバンクが2019年3月末及び2020年3月末に国内主要109行(大手銀行7行、地方銀行64行、第二地方銀行38行)に対して行った調査によると、地方銀行と第二地方銀行の合計102行について預金・貸出金はともに増加している一方で、貸出金利息は減少していることが分かっています。
銀行の本業である貸出業務で、元手となる預金が増えているにもかかわらず、利息収入が減少していることから銀行の市場規模は成熟期であると判断できます。
有力な貸出先の減少
手数料ビジネスを中心とする非金利ビジネスが拡大していますが、地方銀行の業務粗利益のうち、実に85%を占める貸出業務が銀行の基本的な業務であることには変わりはありません。しかし、貸出業務においては成長性・将来性のある企業に資金需要があることが前提です。したがって、貸出業務の市場は日本経済の成長性と関連しています。
日本ではバブル崩壊以降、長期に渡りデフレが続き、経済が停滞しています。特に地方では「地方の衰退」と言われるように低い経済成長率が継続しています。さらに地方銀行の主な顧客である中小企業では後継者問題が深刻になっており、地方における中小企業の数自体が減少しています。顧客層を大企業まで広げられれば理想ですが、大企業のメインバンクはメガバンクであることがほとんどです。
地方銀行の経営基盤である地方経済が衰退し、メイン顧客である中小企業が減少しつつあるなかで成長性が有り、資金需要が旺盛な貸出先は減少しています。実際に2020年の銀行の預貸率は6割程度と低い水準で推移しています。預貸率とは貸出金を預金で除したもので、数値が大きければたくさん融資しているということですが、実際には個人や企業から集めた預金の行き場がなく、やむなく株式や国債などの運用に回されているという現実があります。
日銀のマイナス金利政策
2016年に日本銀行は物価上昇率2%をターゲットとして、マイナス金利付き量的・質的金融緩和を実施しました。マイナス金利とは金融機関が保有する日本銀行の当座預金にマイナス金利を適用するというもので、市場金利を引き下げる効果があります。
銀行の主力事業である貸出業務では貸出利ざやと預金者への利息の差額が収入となっていますが、マイナス金利により貸出利ざやが減少しています。アメリカのS&Pグローバル・レーディングの調査によると日銀がマイナス金利を0.1%深堀りすると、地方銀行の本業収益は21%減少することが分かっています。
メガバンクと比較して、海外業務や手数料ビジネスが拡大していない地方銀行にとってマイナス金利政策は大きな打撃となっています。
日本経済がデフレから脱却し、物価上昇率2%を達成するには相当な期間が必要となると予想されており、地方銀行の収益環境の悪化は今後も続きそうです。
業界の分類
地方銀行には「地方銀行」と「第二地方銀行」という分類があります。地方銀行も第二地方銀行も地域密着型のサービスを提供し、地域に根差した金融機関という点で共通しています。
地方銀行
地方銀行は「第一地方銀行」とも称され、すべての地方銀行が全国地方銀行協会に加盟しています。戦前から現在と同じような銀行業務を経営しており、金融庁の銀行免許一覧では、「地方銀行」欄に名称が記載されています。
地方銀行は第二地方銀行と比べて、旧国立銀行の流れを汲むなど歴史が古く、地方ではメガバンクを凌いで企業のメインバンクとなっているケースも珍しくありません。経営規模・経営体力ともに大きく、戦後に破綻した銀行はありません。
地方銀行は全部で以下の64行存在します。
北海道銀行、青森銀行、みちのく銀行、秋田銀行、北都銀行、荘内銀行、山形銀行、岩手銀行、東北銀行、七十七銀行、東邦銀行、群馬銀行、足利銀行、常陽銀行、筑波銀行、武蔵野銀行、千葉銀行、千葉興業銀行、東京都民銀行、横浜銀行、第四銀行、北越銀行、山梨中央銀行、八十二銀行、北陸銀行、富山銀行、北國銀行、福井銀行、静岡銀行、スルガ銀行、清水銀行、大垣共立銀行、十六銀行、三重銀行、百五銀行、滋賀銀行、京都銀行、近畿大阪銀行、池田泉州銀行、南都銀行、紀陽銀行、但馬銀行、鳥取銀行、山陰合同銀行、中国銀行、広島銀行、山口銀行、阿波銀行、百十四銀行、伊予銀行、四国銀行、福岡銀行、筑邦銀行、西日本シティ銀行、北九州銀行、佐賀銀行、十八銀行、親和銀行、肥後銀行、大分銀行、宮崎銀行、鹿児島銀行、琉球銀行、沖縄銀行
第二地方銀行
第二地方銀行はすべての地方銀行が第二地方銀行協会に所属しています。金融庁の銀行免許一覧では「第二地方銀行」欄に記載され、そのほとんどが相互銀行から転換した地方銀行です。相互銀行とは1951年の相互銀行法に基づき、中小企業専門の銀行です。敗戦後の日本に適合していた「相互掛金」という金融商品を扱っていた銀行です。
金融自由化のなかで1989年から1992年にかけて相互銀行は次々と普通銀行に移行し、現在では相互銀行は存在しません。
地方銀行は全部で以下の41行存在します。
北洋銀行、きらやか銀行、北日本銀行、仙台銀行、福島銀行、大東銀行、東和銀行、栃木銀行、京葉銀行、東日本銀行、東京スター銀行、八千代銀行、神奈川銀行、大光銀行、長野銀行、富山第一銀行、福邦銀行、静岡中央銀行、愛知銀行、名古屋銀行、中京銀行、第三銀行、関西アーバン銀行、大正銀行、みなと銀行、島根銀行、トマト銀行、もみじ銀行、西京銀行、徳島銀行、香川銀行、愛媛銀行、高知銀行、福岡中央銀行、佐賀共栄銀行、長崎銀行、熊本銀行、豊和銀行、宮崎太陽銀行、南日本銀行、沖縄海邦銀行
最新のトレンド
フィンテック
フィンテック(FIntech)とは金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、金融とテクノロジーを活用したサービスのことを指します。2015年前後から広く使われ始めたキーワードであり、モバイル決済、クラウドファンディング、仮想通貨とブロックチェーン技術、キャッシュレス決済、投資ロボなどのITを活用した金融サービスです。
フィンテック領域にはベンチャー企業やスタートアップ企業、メガバンクが参入しており、異業種からの金融業界参入も相次いでいます。地方銀行がフィンテックの流れに乗れず、これまでの業態を維持すると銀行の利用者が減少することが危惧されており、実際に地方銀行の役割は縮小していくと言われています。
地方銀行の再編
日銀のマイナス金利政策による利ざやの減少、人口減少、地域経済の衰退により地方銀行の収益力はかつてないほど厳しくなっています。収益環境が悪化する中で加速しているのが地方銀行の再編です。
2018年4月に第三銀行と三重銀行が持株会社「三十三FG」を設立し、同年5月には東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京が合併し「きらぼし銀行」が誕生しました。さらに同年10月には第四銀行と北越銀行が統合し「第四北越FG」が誕生しました。
2019年4月には近畿大阪銀行と関西アーバン銀行の合併により「関西みらい銀行」が誕生し、同年同月にふくおかFGが十八銀行を完全子会社化しました。2019年7月には横浜銀行が千葉銀行と業務提携を発表。同年9月にはSBIホールディングスが島根銀行との資本業務提携を発表し、続いて福島銀行、筑邦銀行、清水銀行、東和銀行への出資を実施しました。
2020年11月には、SBIホールディングスはきらやか銀行と仙台銀行を傘下に地元HDとの資本提携を発表しています。SBI HDは地方銀行への出資を進めており、将来的に10行まで提携先を増やす計画があります。
今後も地方銀行を取り巻く経営環境は厳しさを増すことが予想されますので、統合による経営体力の向上を図るため業界内でのM&Aや合併が続くと考えられます。
AI化
AI技術は例えば、コンピューティング技術、機械学習、音声認識や顔認識技術などです。AI技術の進展によってこれまで人が行っていた業務がAIに代替されると言われています。
世界経済フォーラムによると銀行業界において世界規模でフルタイム社員1億4,000万人の仕事が機械やシステムに置き換わると言われており、世界で6兆ドルの規模になると予想されています。これは日本も例外ではなく、地方銀行においても人員削減が進み、オートメーション化が進むことが予想されます。
実際に銀行業務は紙での処理業務が多く、機械に代替するハードルが低い業務が多くを占めていますので、今後はAI化が加速すると考えられます。