
【就活生必見】政府系銀行の業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
高給・安定性などで知られる銀行業界の穴場として知られるのが政府系銀行です。政府系銀行は政府が100%出資しており、安定性で知られる銀行業界のなかでも圧倒的に安定しています。都内の有名私大・旧帝大の学生の多くが志望する一方で採用人数が少ないので、いわゆる就活偏差値では最も高い位置に属しています。難関大学の学生の中でも官公庁や外資系の銀行、コンサル業界を志望する上位層が併願しておきますので、競争率は極めて高いと言えます。したがって、政府系銀行について正しく理解し、その上で自分の強みや頑張ったことを、政府系銀行でどう活かせるかを具体的にイメージし面接官に伝えることが重要です。この記事では政府系銀行の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、政府系銀行の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、政府系銀行の就活に挑みましょう。
政府系銀行業界とは
この章では政府系銀行業界
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
- 最新トレンドについて
解説していきます。
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業界構造
民間金融機関の補完
政府系銀行には民間金融機関の役割を補完することが期待されています。
民間の商業銀行(メガバンク、地方銀行など)はあくまで営利企業ですので、業績が悪化している企業やこれから新しく事業を開始する新規開業者には融資を積極的に行ないません。
民間金融機関はあくまで成長性・将来性があり、返済能力が担保された企業にのみ貸出を行います。
それは民間金融機関の融資の元手が預金者から預かった大切な預金であるからで、融資に慎重な姿勢を持っているのは仕方のないことです。
しかし、世の中には業績が良かったり、成長性の期待できる企業、既に開業している企業だけがあるわけではありません。
業績が悪く、民間金融機関から借入のできない企業もたくさんあります。
政府系銀行はそのような民間金融機関が投融資をためらうような企業にリスクマネーを投入する役割を担っています。
政府系銀行は預金業務を行っていないので、の融資の元手は預金ではなく、税金です。
日本政府が100%出資しており、その出資金から融資する資金を出しています。
税金を使って民間金融機関の手が回らない小規模事業者や中小企業への貸付を行ったり、銀行融資団のまとめ役としてリスクマネーを積極的に融資し、民間金融機関の融資の呼び水のような役割を果たしています。
日本政府の政策の実施
政府系銀行は日本政府が国民生活の安定や経済発展などの政策を実現する目的で法律を制定することで特殊法人として設立されています。
したがって、事業の目的は営利ではなく日本政府の政策目的の達成です。
例えば、日本では中小企業の倒産の増加という問題があります。
これに対して、政府系銀行は倒産の危機にある中小企業や小規模事業者に積極的に融資を行ない、企業の倒産を防ぎ、企業にある雇用を守るという目的を持っています。
今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって多くの企業の経営状況が悪化しましたが、企業の倒産を防ぐために無利子・無担保など優遇措置のある融資を積極的に行っています。
また、イノベーションが生まれず、新規開業者が増えないことも政策課題です。
新規事業が生まれなければ、長期的に見て雇用が増えず、日本経済の成長も頭打ちになります。
日本はすでに人口減少社会ですので、起業する人が減れば日本経済は衰退の一途をたどります。
そうなれば雇用が減るだけではなく、法人税の税収も減少し、国の政策を実行できなくなってしまいます。
したがって、政府はなんとかして起業する人を増やしたいと考えています。
市場規模・将来性(シンクタンクのレポートなどを)
貸付残高
最新の財務省の統計による政府系金融機関の貸付残高は以下のとおりです。
- 日本政策投資銀行…13.2兆円
- 日本政策金融公庫…18.0兆円
- 商工組合中央公庫…9.4兆円
- 国際協力銀行…14.4兆円
- 沖縄振興開発金融公庫…0.8兆円
メガバンクの三菱UFJ銀行の貸出金201兆円には及びませんが、三大地銀の千葉銀行の9.8兆円と比較すると遜色のない数字であることが分かります。
民間金融機関と違って、低金利・長期の融資、業績低迷先への融資などリスクマネーを積極的に投資できる政府系銀行の強みが表れていると言えます。
将来性
日本政府の100%出資ということで会社として絶対に倒産しないという安心感があります。
一方で、日本政府の政策に存在意義が左右されることから完全民営化の可能性もあり、その場合には民間金融機関との激しい競争に置かれることになります。
また、預金を持たないため調達は主に債券の発行と地銀からの借入で行っています。
仮に金利上昇局面と民営化のタイミングが重なればこれまでの低金利、長期、固定金利融資が裏目に出て逆利ざやとなる可能性を内包しています。
近年は政府系金融機関をめぐっては、民間金融機関を上回る好条件を示すことで過度な金利競争を誘発しており、民間の金融機関の業績を圧迫しているという批判が出てきており、民営化の議論は続きそうです。
しかし、ビジネスアイデアがあり、雇用を生み出し、税金を納めてくれそうな事業を思いついた人がいても資金がなければ開業ができません。
企業資金を全額自分で用意することができる人は限られている上に民間金融機関はリスクのある新規事業に投資したいとは思いません。
そこで、政府系銀行が税金を原資として起業家に融資を行ないます。
また、エネルギーや環境関連の国際的なプロジェクトに出資するという政策目標がある場合にも政府系銀行は登場します。
日本政府が直接お金を出すという形ではなく、政府系銀行が出資するという形をとって、日本政府が間接的に出資しています。
一般的に民間金融機関の融資の審査に比べて、政府系銀行は政策の趣旨に合致していれば融資をするので、審査のハードルが低いと言われています。
業界の分類
日本政策投資銀行
日本政策投資銀行は大口かつ長期の融資を主に手掛けており、顧客層には大企業や中堅企業が多いのが特徴です。
融資のみならず投資やコンサルティング、アドバイザリーの一体型金融サービスを提供しています。
日本の産業界の国際競争力強化にために将来性が見込まれると判断した場合はリスクを覚悟しても長期的な融資を行っています。
他の政府系銀行と異なり、比較的大規模なプロジェクトに参加しており、スカイツリーの建設にも出資をしています。
具体的にはスカイツリーの工事を担当した東武鉄道に融資と出資の双方の特徴を併せ持つハイブリッドファイナンスという手法で、支援をしています。
そのほかにも新興企業の育成や地域経済を担う中小企業へのリスクマネーの供給を担っており、まさに民間金融機関を補完する役割を担っていると言えるでしょう。
日本政策金融公庫
国民生活事業、農林水産事業、中小企業事業を担う3つの金融公庫が2008年に統合して、設立されたのが日本政策金融公庫です。
国民生活事業では地域活性化支援や小規模事業者への金融支援、中小企業事業では中小企業向けの中期資金融資、農林水産事業では農林水産関連事業者に金融支援を行っています。
また、新たに事業を始める事業者へ創業融資支援やコロナ等の経営環境の変化による対応が必要な事業者へ小口の事業資金融資を扱っています。
大規模災害発生時などにおいては金融秩序の混乱を回避するために積極的な金融支援を行っており、東日本大大震災ではセーフティーネット機能として融資や返済条件の緩和を実施していました。
商工組合中央金庫
政府と民間の共同出資で運営されている唯一の政府系銀行であり、自身の立場を「中小企業の、中小企業による、中小企業のための金融機関」としているように中小企業向けの融資が主な事業範囲です。
政府系銀行として80年以上の歴史があり、47都道府県すべてに店舗を展開し、地域の金融機関を補完する役割を担っています。
国の制度融資を活用した金融支援や融資のみならず、中小企業の海外進出など一気通貫の経営サポートを地域の金融機関と協働で実施しています。
国際協力銀行
国際協力銀行はJBICとも呼称され、「海外資源の開発及び取得の促進」、「日本産業の国際競争力の維持・向上」、「地球環境の保全を目的とする海外事業の促進」、「国際金融秩序9の混乱の防止・対処」の4つのミッションを掲げ、グローバルなビジネスの展開を通じて、日本企業の国際競争力の強化や企業や国が取り組む国際大型プロジェクト、中小企業の海外事業展開などの支援をしています。
また、地球温暖化防止など地球環境の保全を目的とする海外事業の推進や、国際金融秩序の混乱を防止するための国際機関との調整・協調・支援にも取り組んでいます。
沖縄振興開発金融公庫
沖縄振興開発金融公庫は沖縄公庫と呼称され、那覇市にある本店と県内5店舗を拠点として、沖縄県限定の地域密着型の政策金融機関としての役割を担っています。
沖縄における政策金融を総合的に実施しており、本土における日本政策金融公庫に相当する業務、つまり沖縄県全域の事業者を対象に良質な資金を供給することで民間金融機関を補完しています。
また、沖縄の地域的な政策課題に応える独自制度、地域開発や事業再生を支援する出資及びベンチャー出資を一元的に取り扱っています。
投資資金の回収に長期間かかる設備投資の分野においては日本政策金融公庫の長期・固定金利が適用され、長期資金を供給することで民間金融機関を補完し、沖縄の経済社会の振興開発に貢献することなどを目的としています。
また、経済情勢や政府の経済対策に則したセーフティネット貸付や創業・ベンチャー支援といった民間金融ではなかなか対応が困難なハイリスク分野についても、沖縄公庫は重点的に対応しています。
最新のトレンド
民業圧迫
政府系銀行が民間金融機関の業績を圧迫しているいわゆる「民業圧迫」問題が長い間議論の対象となってきました。
政府系銀行の意義は民間の金融機関の補完ですが、実際には政府系銀行の金融活動が肥大化し、民間の金融機関が融資を行ない利益を上げることのできる分野や領域まで、政府系銀行が融資・投資をしていると批判されてきました。
実際に政府系銀行は日本政府の100%出資という利点を活かして、低金利での資金調達、低金利での融資、補助金、法人税等の免除など民間金融機関から見れば特権を有しており、これらの特権をもとに民間金融機関では考えられない好条件で企業に融資することが可能となっています。
また、融資を受ける企業の側にとっても出来る限り低金利・長期融資での資金調達を選好するのは当然ですので、民間金融機関よりも政府系銀行からの資金調達を求める構造になっています。
これらの影響を受けて、過去20年間の貸出残高を見ると民間金融機関の貸出残高は約1.5倍の増加にとどまっているのに対して、政府系銀行の貸出残高は約1.8倍に肥大化しています。全貸出シェアにおける政府系銀行のシェアは20年間で約3%拡大しています。
こうした数字の変化を背景として、本来であれば民間金融機関でも十分に対応でき、返済能力を有する優良な貸出先にも好条件で企業を誘い、民間金融機関から需要を奪っているという批判がされてきました。
政府系銀行の本来の使命が民間金融機関の補完であり、リスクマネーの供給であることを考えると、このような状況は今後改善されるべきであると考えられています。
そのような議論の中で政府系銀行を削減もしくは全廃して民間金融機関と同じ条件で健全な競争環境に置かれるべきであるという「完全民営化」の議論も出ています。
不良債権の抱え込み
政府系銀行の役割は民間金融機関が融資するのをためらう融資先へのリスクマネーの供給です。
しかし、リスクマネーに注力した結果、不良債権を多数抱え込んでおり、税金の使いみちとして適当なのかという議論があります。
例えば、日本政策投資銀行などが出資して出来ている再生ファンドがダイエー、新潟鐵工所、西武百貨店などの返済能力が疑われる事業者に融資をしています。
一方で金融庁は公的資金を注入している大手銀行や地方銀行などに収益改善が進んでいないとして業務改善命令を度々出しています。
バブル崩壊以降の不良債権処理などで赤字を計上せざるを得なかった民間金融機関にとっては政府系銀行がリスクマネーを投入している一方で、業務改善命令が発出されることに対して、納得がいかないという声が上がっています。
政府系銀行が事業の成長性が疑われる企業に対して倒産を防ぎ、雇用を守るという名目で融資をしていることに対して、不良債権を民間金融機関から政府系銀行へ移管しているだけであり、最終的には政府系銀行が大量の不良債権を抱えることになる危険性が指摘されています。