
【サクセッションプランとは?】実際の成功事例をご紹介
皆さんは「サクセッションプラン」という言葉をご存知ですか?幹部人材の育成計画及びその育成計画の実行施策の事で、幹部候補者などの後継者育成に注目されている制度です。今回は、実際の3つの会社の事例を元に成功した理由を詳しく見ていきます。今後の教育の参考にぜひ一度ご覧くださいませ。
サクセッションプラン事例1.「日産」
「サクセッションプラン」とは「幹部人材の育成計画及びその育成計画の実行施策」のことです。企業が安定した経営を継続するには、経営に関わる後継者の育成が欠かせません。それに伴い。経営者候補や幹部候補者などを育成するサクセッションプランも必要不可欠です。
サクセッションプランでは、まず経営者候補や幹部候補者となる優秀な人材を選び分類します。その上で経営に携わるときに必要な知識やスキルを身につけられるよう、人材育成を行うマネジメントシステムです。ここでは「世界の日産自動車」が実践している「サクセッションプラン」を紹介します。
実施概要
日産自動車株式会社が「サクセッションプラン」を導入した時期は、今から約20年前の2000年です。実施概要は「グローバルな主要ポストの発掘と育成」が目的になっています。
特徴(Nomination Advisory Council=NACの立ち上げ)
日産自動車の「サクセッションプラン」の特徴を紹介します。最高経営責任者(CEO)を中心にした役員で構成する人事委員会を設立しました。その人事委員会は「NAC=Nomination Advisory Council」と称されています。
NACでは情報収集を目的として、社内の全ての会議に自由参加できる「キャリアコーチ」という特別な役職を全社で5名選出しました。人的な情報を自在に集められる「キャリアコーチ」が世界各地から次世代リーダー候補を発掘し、キーマンに最適な人材をNACへ提案する仕組みになっています。
結果(仕組み)
海外の優秀な人材の登用、高度なオペレーションを学んだ人材の排出による人材の底上げ
前章で説明しましたが、特別な役職である「キャリアコーチ」が最適な人材を発掘してNACへ提案・報告して選定に至る仕組みになっています。
「キャリアコーチ」は国内向けですが、外国人採用の仕組みであるRDP=Nissan Rotational Development Programと呼ばれる採用の取り組みも行っています。RDPは海外の優秀な人材を集めているビジネススクールから卒業生を採用します。
採用後は日本で業務を習得してそのノウハウを本国へ持ちかえってもらうという採用スタイルです。
技術の日産自動車が持つ高度なオペレーションを学んだ人材の配置は、人材の底上げを図ることにつながっているようです。
サクセッションプラン事例2.「花王」
花王株式会社が導入している「サクセッションプラン」を紹介します。花王は「花王ウェイ」に基づいた花王株式会社の人材(財)育成やパフォーマンス・マネジメントの基本的な考え方のグローバルに浸透させることと、花王マネジメントの体系的習得と現場での実践を導入しています。
「花王ウェイ」は
①花王の組織運営の方向性の習得、
②花王の人財開発基本方針の習得、
③花王のマネジメントの役割と責任の理解の習得、
④花王のパフォーマンス・マネジメントの基本プロセスの習得が基本となっています。
実施概要
花王株式会社が「サクセッションプラン」を導入した目的は「基幹人材の育成」です。
「基幹人材の育成」は、「花王ウェイ」および花王ビジネスコンダクトガイドラインに基づき、花王グループの人材(財)開発の基本となる考え方を示します。
全ての花王グループ会社のマネジャーと人材(財)開発担当者がこのプランを理解して、異動や評価・教育など人材(財)開発の様々なプロセスを有機的に結びつけられた一連のシステムとして、協働して実践することを目的にしています。
特徴
人材をすぐにでも後任となれるReadyNow、1~3年で後任となれるReadySoon、3~5年で後任となれるMidTeamに分類し、3段階でサクセッションプランを実施
花王株式会社の「サクセッションプラン」の特徴は人材(人財)を3つに分類して実施する「サクセッションプラン」です。
今すぐ後任になれる「ReadyNow」は候補者を必ず1名選びます。
1~3年後の活躍が見込まれる「ReadySoon」は、通常業務と並行して育成プログラムを実施し、能力開発を行います。
3~5年後に活躍が見込まれる「MidTeam」は、現時点ではまだ後任としてのスキルが不十分ですが、人材開発を行うことで必要な能力を発揮できるグループです。育成プログラムの実施と業務ローテーションで能力を育みます。
結果(仕組み)
サクセッションプランの対象者はサクセッションプランフォームで課題を把握。課題達成度のフィードバックにより気付きを促す仕組み
3種類に分類されたサクセッションプランの対象者には、サクセッションプランフォームを作成します。このフォームは必要なスキルや経験などの課題を確認できる内容です。
課題に沿ってコーチングやフィードバックを行うことで、気付きを促し成長につなげていきます。
サクセッションプラン事例3.「GE」
GE=ゼネラル・エレクトリック( General Electric Company)は、アメリカ合衆国を主な拠点とし電気事業をルーツとする多国籍コングロマリット企業です。
2001年に当時のCEOであったジョン・フランシス・“ジャック”・ウェルチ・ジュニアさんが、現CEOであるジェフリー・ロバート・“ジェフ“・イメルトさんに役職を引き継ぐとときに「サクセッションプラン」を活用したことで大きな話題となりました。
後任者となったジェフリー・ロバート・“ジェフ“・イメルトさんはバロンズ(BARRON’S)誌の「世界で最も優れたCEO」に3回選出されるなど、CEOとして多くの素晴らしい成果を収めました。
その成果には「サクセッションプラン」の有効性が世界中に知れ渡り、注目を集めることになったのです。
これからGE社の「サクセッションプラン」を紹介します。
実施概要
GE社の「サクセッションプラン」導入時期は1999年からです。2001年に「サクセッションプラン」で育成されたジェフリー・ロバート・“ジェフ“・イメルトさんが最高経営責任者(CEO)に就任して話題を集めました。
特徴 9ボックス
GE社は「サクセッションプラン」を「9ボックス」で実施していました。
※2019年現在は「9ボックス」の仕組みを休止中
GE社は人材育成のGrowth Valueを「外部志向」「明確な思考」「想像力と勇気」「包容力」「専門性」の5つと定義していました。
人材育成に関する明確な定義を持っているGE社では、2016年まで人材の分類に「9ボックス」を使っていました。5つのGrowth Valueを、パフォーマンスの高低を表す縦軸とポテンシャルの高低を表す横軸の9ボックスで評価する方法です。
9つのボックスには「ベスト」「要改善」「ミスマッチ」などの名前がつけられており、そこへ人材を振り分けます。
結果(仕組み)
組織内で自分がどのように評価されているかを客観的に見られる仕組みで、モチベーションアップにも効果的
9ボックスでは従業員を9つのボックスに分類します。ボックスの縦軸はパフォーマンスの高低を、横軸はポテンシャルの高低を表しています。
例えば「専門性」の9ボックスで、パフォーマンスもポテンシャルも高い右上のボックスには、組織内で最も専門性の高い従業員が入る仕組みです。
9ボックスを見ると、組織内での自分の能力を客観的に把握できます。他者評価を認識することで、モチベーションアップにもつながる仕組みです。9ボックスに人材を振り分ける考え方は、日本企業の人材育成に大きな影響を与えたといわれています。
サクセッションプラン事例4.「良品計画」
株式会社良品計画が導入している「サクセッションプラン」を紹介します。
「無印良品」の強力なブランド力により、国内外から多くの支持を得ている企業です。
株式会社良品計画は、社外取締役3名と社長、専務の計5名で構成される指名諮問委員会を中心として「サクセッションプラン」を行っています。その「サクセッションプラン」にはGE社で採用した「9ブロック」をベースにした「ファイブボックス」を活用していることが大きな特徴になっているようです。
実施概要
良品計画株式会社の「サクセッションプラン」は「プロフィールシート管理」「ファイブボックスによる評価」「キャリパー・ポテンシャル・レポート管理」が実施概要です。
-特徴 5ボックス
良品計画株式会社では「5ボックス」というオリジナルツールを使ってサクセッションプランを実施しています。対象者となる課長以上の後継者育成について、人事委員会検討するときに用いられるツールです。
5ボックスでは、横軸を潜在能力、縦軸をパフォーマンスとして人材を分類します。分類の結果、後継者に最も近い人材に加え、今後の成長次第で後継者になり得る合格範囲の人材まで選びます。
さらに詳細に人材を評価し、分類するために用いられるのが「キャリパー・ポテンシャル・レポート」です。
-結果(仕組み)
「プロフィールシート」「ファイブボックス」「キャリパー・ポテンシャル・レポート」の3つのツールを用いてサクセッションプランを実施
プロフィールシートで基本属性を管理し、ファイブボックスで人事評価を実施して人材を分類、キャリパー・ポテンシャル・レポートで意思決定や時間管理など要素別の人事評価を行います。
従業員の能力を的確に評価し、各々が得意なことを生かして活躍できるようにする仕組みです。
良品計画では、課長80~90名弱、部長約20名、常勤の役員約10名の計110名程がサクセッションプランの対象です。
まとめ
後継者の適任人材の選定は事業継続に重要なことです。
さらに東証上場企業になると機関投資家からの役員人事の承認が求められます。
後継者の適任人材選定に「サクセッションプラン」を導入する必要性があるようです。
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約90%の質問に回答が寄せられています。
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