
【就活生必見】メガバンクの業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
金融業界を志望する学生であれば、必ず選考を受けるであろう業界がメガバンクです。給与水準が高いことで知られており、都内の有名私立大学や旧帝国大学の学生の多くが志望します。採用人数は比較的多いですが、併願する学生も大変多いので、倍率は高くなります。したがって、必然的に就活難易度は高くなり、内定を勝ち取ることは容易ではありません。内定をもらうためには証券業界の事業内容や業界のトレンドについて正しく理解し、その上で自分の強みや頑張ったことを、銀行業界でどう活かせるかを具体的にイメージし面接官に伝えることが重要です。この記事では銀行業界の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、銀行業界の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、銀行業界の就活に挑みましょう。
銀行業界は社会インフラ
みなさんが銀行のお世話になるのは、バイト代の振込や、キャッシュレス決済のチャージの時くらいかもしれません。もちろんこれは、銀行業務のほんの一部ですが、入金パイプと出金パイプをセットにすることは、生涯取引の基礎となることから、銀行では顧客の早期囲い込みを重要視しています。つまりは、バイト代の口座に、携帯電話の引き落としをセットすることでお金を出金し、引落し口座に入金しておく手間(資金移動)なく、支払いができるので、支払い忘れもなく安心できます。
その便利な口座は、社会人になっても給与振込に使われ、住宅ローンやマイカーローンを申し込み、やがて退職金、年金の入金口座となります。生涯数千万円から数億円の資金が入金されるメイン口座となるわけです。
メイン口座となると、口座振替と呼ばれる電話代金や、クレジットカード利用代金を収納企業に代わって引落しすることで、一回につき数十円の手数料がずっと銀行に入り収益基盤となります。
そんな銀行業界も、個人や法人だけを顧客としているわけではなく、地方自治体などの公金も取り扱います。銀行業界は、一民間企業の殻を破った「社会インフラの担い手」そのもので、絶対不可欠の業界なのです。
「銀行」とひと口で言ってもさまざまな営業形態があります。
三菱UFJ銀行・みずほ銀行・三井住友銀行・りそな銀行のような全国展開している銀行をメガバンク(都市銀行・都銀)
福岡銀行・横浜銀行・広島銀行のような各都道府県の都心に本店を置く地方銀行(地銀)
さらに限定した地域店舗展開をする信用金庫(信金)、組合員と取引する信用組合(信組)
などがあります。
それぞれの銀行には、マーケットがあり営業エリアを持ち、監督する立場の官庁が違うことも特徴の一つです。
この他、三井住友信託銀行をはじめとする信託銀行は、通常の銀行業務に加えて、個人や企業から託された財産を受益者のために管理する「信託業務」や、個人の相続関連業務や株式発行管理を行う「併営業務」を主な業務としています。
銀行の業務は、銀行法で厳密に定められており、飲食業など銀行に関連のない業務はできないことになっています。インターネット環境の整備とともに、全国津々浦々に銀行があるおかげで、日本に金融サービスを受けられない金融難民はいません。
業界構造
銀行業界の商流やビジネスモデルについて解説していきます。
貸出金利による収益
銀行の貸出業務は一言で言えば、個人や企業から預かったお金を元手に、企業や個人にお金を貸し出し、金利によって利益を得ます。
銀行はお金を借りたい人とお金を貸したい人の仲介の役割を果たしています。融資するお金の元手となるお金を預金という形で個人や企業から広く集めることが重要になりますので、まずは預金を増やすことが大切になります。「この銀行ならば安心してお金を預けられる」という信頼感が銀行にとっては重要です。預金を増やすために出来るだけ多くの人に新規に口座を解説してもらいお金を預けてもらうのが貸出業務の入り口です。
一方で、世の中にはお金を借りたいと考えている企業や個人が多くいます。例えば、「新しいゲームを開発したい」「新しい工場を設立したい」など新しいビジネスを展開するためにはお金が必要になります。このように資金需要がある企業や個人が銀行に対して融資を申し込みます。銀行はお金を必要としている企業や個人と相談し、顧客のビジネスの現状や将来性を分析し、融資したら成功するかどうかを判断します。融資して大丈夫な顧客であると判断した場合にはお金を貸します。
お金を借りた企業や個人は融資されたお金を元手に新しいビジネスなどを展開し、お金を増やします。銀行は貸したお金が確実に返済されるように融資した企業や個人の返済が滞ったり、返済ができなくならないか貸出期間中もモニタリングをします。
融資を受けた企業や個人は融資されたお金に利息を上乗せして、銀行に返済します。銀行は返済されたお金をもとに銀行に預金をしてくれた人の預金に利息をつけて返還します。銀行が融資した企業や個人から受け取る利息と預金者に渡す利息の差額が銀行の利益となります。
手数料ビジネス
手数料ビジネスは投資信託などの個人向けの金融商品の販売や企業向けのサービス提供によって銀行が受け取る手数料収入です。
銀行の本来の業務は個人や企業から広く預金を低コストで集め、それをお金を借りたい企業や個人に貸し付けて、預金と貸出の金利差で稼ぐという貸出業務です。しかし、近年では優良の貸出先の不足や日銀のマイナス金利政策によって貸出業務が伸び悩んできました。そのような中で拡大しているのが手数料ビジネスです。
手数料が発生する主な業務は公共料金の引き落とし、クレジットカード手数料、口座管理料、ATMの利用や送金などですが、1998年に解禁された投資信託の販売や2007年に解禁された保険商品の販売も銀行の主要な収益源となりつつあります。
また、企業向けにシンジケートローンの組成や私募債のアレンジ、デリバティブ商品の販売、M&A仲介、証券仲介などの手数料ビジネスがあります。
貸出業務は貸出先の貸倒れリスクがありますが、手数料ビジネスは信用リスクがなく、薄利多売ながら、確実に手数料が積み上がるビジネスなので、銀行が力を入れている領域です。これら手数料ビジネスは以前は証券会社や生命保険会社の業務であったため、銀行の参入により証券会社や生命保険会社の業績に影響が出ています。
外国為替取引
外国為替取引とは円とドルなどの異なる2つの通貨をトレードすることです。円や外国通貨
は各国の政治・経済情勢などによって価値が変動しており、銀行は為替相場の変化を見極めつつ通貨の交換を行い手数料を上乗せして、利ざやを得ています。
また、円や外国通貨の送金の際に手数料を取るなどもしています。
銀行業界の現状と将来の見通し
銀行業界の市場規模や将来の見通しについて解説していきます。
縮小する銀行業界
一般社団法人全国銀行協会によると2019年の銀行業界の市場規模(主要対象銀行94行の経常利益の合計)は27兆9,586億円でした。銀行業界は金融業界の中でも大きい業界ですが、(123業界中14位)、市場としては成熟しています。
銀行業界の市場規模は2007年をピークに縮小傾向に有り、2014年時点では2007年より市場規模が5兆円縮小しています。
また、銀行業界では三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループのいわゆる3メガバンクが大きな業界シェアを占めています。
日銀のマイナス金利政策
銀行業界の市場規模が縮小している要因の一つに日銀の異次元の金融緩和、特にマイナス金利政策があります。
マイナス金利政策によって金利が低下し、メガバンク、地方銀行ともに収益悪化に苦しんでいます。銀行業界の本業は貸出業務による金利収益ですので、金利の低下の影響は大きく、今後も銀行業界の収益力低下は続くと予想されています。このような中で新型コロナウイルスの感染が拡大し、銀行が融資している企業の倒産や業績悪化により与信関係の経費が膨らんでいる傾向にあります。
メガバンクの2020年3月期決算の業績を見てみると、三菱UFJフィナンシャルグループが7兆2,990億円(前期比9.0%増)、三井住友フィナンシャルグループが5兆3,143億円(同7.3%減)、みずほフィナンシャルグループが3兆9,867億円(同1.6%増)でした。
また、地方銀行は全102行のうち、6割に相当する60行で純利益が減益もしくは赤字となりました。純利益の合計は3,993億円で前年同期比11.4%減となりました。純利益が4,000億円を割り込むのは2012年9月中間決算以来のことです。
今後新型コロナウイルスの状況次第では地方の企業の業績悪化により、さらに収益が厳しくなる可能性もあります。
地銀の再編加速
日銀のマイナス金利政策による利ざやの減少、人口減少、地域経済の衰退により地方銀行の収益力はかつてないほど厳しくなっています。収益環境が悪化する中で加速しているのが地方銀行の再編です。
2018年4月に第三銀行と三重銀行が持株会社「三十三FG」を設立し、同年5月には東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京が合併し「きらぼし銀行」が誕生しました。さらに同年10月には第四銀行と北越銀行が統合し「第四北越FG」が誕生しました。
2019年4月には近畿大阪銀行と関西アーバン銀行の合併により「関西みらい銀行」が誕生し、同年同月にふくおかFGが十八銀行を完全子会社化しました。2019年7月には横浜銀行が千葉銀行と業務提携を発表。同年9月にはSBIホールディングスが島根銀行との資本業務提携を発表し、続いて福島銀行、筑邦銀行、清水銀行、東和銀行への出資を実施しました。
2020年11月には、SBIホールディングスはきらやか銀行と仙台銀行を傘下に地元HDとの資本提携を発表しています。SBI HDは地方銀行への出資を進めており、将来的に10行まで提携先を増やす計画があります。
今後も地方銀行を取り巻く経営環境は厳しさを増すことが予想されますので、統合による経営体力の向上を図るため業界内でのM&Aや合併が続くと考えられます。
業界の分類
銀行業界といってもメガバンク、地方銀行、政府系銀行など様々なタイプの銀行があります。それぞれの特徴を知った上で自分に合った銀行は何かを考えましょう。
メガバンク
メガバンクは都市銀行という言葉とほぼ同義になっていますが、グループ全体として総合的な金融ソリューションを提供し、大規模な顧客を持ち、日本全国の主要都市に支店を持っています。預金量や貸出量が圧倒的に多く、大企業や上場企業を取引先としています。
国際展開も積極的に推進し、海外も含めた多様なビジネス展開をしています。一般的には三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行をメガバンクと呼びます。
地方銀行
地方銀行は「地銀」とも呼ばれ、全国地方銀行協会の会員である銀行を指します。各地方や都道府県内を営業基盤として、地域の最大の金融機関であることも少なく有りません。
地紀伊企業や個人を対象とする地域に密着した取引先の多様なニーズに応えるのが特徴であり、地域の経済に大きな影響力を持ちます。
政府系銀行
銀行というとメガバンクや地方銀行を思い浮かべるかもしれまえんが、法律を制定することで特殊法人として設立され、政府の出資によって成立しているのが政府系銀行です。
民間企業への融資を行ない、商業銀行の手の届かない部分をサポートし、民間の融資を保管する役割を担っています。
最新のトレンド
銀行業界の最新ニュースやトレンドについて解説していきます。
フィンテック
フィンテックとは英語で”Fintech”であり、金融(FInance)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた言葉です。金融業界においてテクノロジーと金融との融合が進展しており、銀行業界への就活を考える就活生であれば必ず押さえておきたい言葉です。
フィンテックの例として電子決済サービス、仮想通貨とブロックチェーン、キャッシュレス決済、AIを活用した投資アドバイザー、ビッグデータの活用など様々なサービスが生まれています。
フィンテック技術の進展によりスタートアップ企業やベンチャー企業が金融業界へ続々と参入しています。例えば、会計ソフトfreee、LINEPayを提供するLINEなどが挙げられます。
フィンテック技術の進展は銀行にとってビジネスチャンスであると同時にこうした異業種の参入によって銀行業界の競争が激化し、収益力がさらに下がることが懸念されています。
人員・店舗削減
2017年に三菱UFJ銀行が大規模な人員削減計画を発表しました。2023年までに2017年に4万人いる銀行員のうち6,000人を削減するという内容です。希望退職は募集せず、バブル入社組の大量退職と新規採用の抑制で対応するとしています。
さらに長引く低金利環境を受けて、経営方針の中でIT技術の活用により9,500人分の業務量を削減する計画を立てています。人員だけでなく店舗数の削減にも取り組んでおり、2020年5月に店舗数を2023年度末までに300店舗まで削減する計画を明らかにしています。
また、同じくメガバンクであるみずほフィナンシャルグループはグループ全体で1万9000人の人員削減、三井住友フィナンシャルグループは5000人弱の人員削減を発表しています。
このように銀行ではフィンテック技術を使った異業種の参入や日銀のマイナス金利政策、人口減少による地域経済の疲弊によって経営環境が悪化しており、人員と店舗の削減による固定費の低減を図っています。
これに伴い新卒採用が減っており、3メガバンク合計で2021年度入社の新卒採用者数を1,450人程度とすることを発表しています。これは前年の2020年度から約15%削減するというもので、メガバンクでは5年連続で新卒採用者数が減少しています。
具体的には三菱UFJ銀行は前年度比22%減の400人、三井住友銀行は前年度比16%減の530人、みずほフィナンシャルグループは前年度比7%減の510人にするとしています。就活生にとっては採用枠が減り、倍率が高くなることが予想されます。¥
また、銀行に入社後も銀行内のポストが減り、昇格が難しくなる可能性も指摘されています。
海外進出
銀行業界では国内の収益環境の悪化を受けて、経済成長の著しい東南アジアへの進出が盛んになっています。特にメガバンクは2008年のリーマンショック以降、金融機関に対するM&Aによって海外展開を進めており、海外に拠点を設けることで世界規模で日系企業にサービスが提供できる環境を整備しています。
例えば、国内唯一の外国為替専門の銀行であった三菱UFJ銀行は国内トップの資金力を活用して積極的なM&Aを展開し、タイのアユタヤ銀行やインドネシアのバンクダナモンを買収し、海外に70以上の拠点を整備しています。同社では海外事業がグループ収益全体の約4割を占め、全貸出残高の4割も海外が占めています。同社が海外分野に強いことで、若手や中堅社員を問わず、海外勤務の機会があり、行員のうち約3割が海外に駐在しています。
同じくメガバンクの三井住友銀行も海外展開を積極的に推進しており、海外の貸出残高は約20兆円を超えています。これは10年間で約4倍のペースであり、同社の海外展開は今後も加速していくと見られています。
さらに海外拠点におけるリーダーシッププログラムや海外研修などを充実させており、海外人材の育成に取り組んでいます。