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倉庫 業界研究

倉庫業界の業界研究|就活に役立つ事業構造・将来性・働き方など徹底解説します

日本のあらゆる産業の物流を支える倉庫業界はニッチな業界ですが、一部の学生から根強い人気を誇ります。ECサイトが発達する中で今後も成長性が期待されますので、人気が高まっている業界でもあります。この記事では倉庫業界各社の有価証券報告書や政府関係機関のレポートなどを参考にして、倉庫業界のビジネスモデル、業界のトレンド、各社の動向など倉庫業界の業界研究を網羅的に行っています。この記事で読んで、業界研究が仕上げたうえで自分の強みや経験がどのように活かせるのかを面接官に伝えましょう。

倉庫業界とは

この章では倉庫業界の

  • 業界構造
  • 将来性
  • 業界分類
  • 最新トレンドについて

解説していきます。

業界構造(Tier1・2や商流やメインビジネス(稼ぎ方)など)

総合物流企業としての倉庫業界

三井倉庫HD、三菱倉庫、住友倉庫など大手倉庫企業にはいずれも「倉庫」が会社名に含まれていますので、倉庫事業のみを行っていると想像されがちですが、実際には倉庫事業のみを行っている企業は稀であり、上記の企業も含めて大半の企業は不動産関連事業や物流事業などを行う総合物流企業として経営を行っています。

大手総合物流企業における倉庫事業の割合は売上高比率で全体の25%程度であるという試算を国土交通省が発表しており、割合としては倉庫事業25%、運送事業50%、不動産事業10%、その他15%というのが実態に近い数字です。
倉庫事業や不動産事業は物流と密接な関係にあるため、一つの企業がこれらの事業をすべて経営するのはある意味必然の流れとも言えます。

倉庫事業の収益構造

倉庫事業の基本的な流れとしては検品→入庫→保管→流通加工→ピッキング→仕分け→出庫という流れになります。

具体的な事業内容は以下のとおりです。

検品 顧客から預かった貨物が入庫される際に契約書通りの規格になっているか、個数や重量に相違ないかを照合する作業
入庫 貨物の特性に合わせて貨物の置き場所を決め、システム上に貨物の保管場所や数などを計上する作業
保管 貨物の保管・管理作業。保管方法によって常温保管、低温保管、冷蔵保管、サイロ保管、タンク保管などがある。
流通加工 包装、詰合せ、検針、組み立て、マーキングなど貨物に付加価値をつけるために行われる一連の作業
ピッキング “picking”という言葉の通り、倉庫から指定された商品を運び出す作業
仕分け 貨物を配送先、種類、用途などに応じてトラック単位に荷揃えをする作業
出庫 指定された場所や時間に合わせた倉庫から貨物を出荷する作業


これらの一連の事業のうち、顧客から手数料、保管料という形で報酬を受け取るのは保管に対する対価ですが、実際には入庫の段階で顧客から手数料が支払われます。

倉庫事業では様々な業界の多種多様な商品を倉庫で保管し、顧客のビジネススタイルや戦略に応じて、必要な時に・必要な場所に・必要なだけ供給します。
単に保管をするだけでなく、在庫管理や、商品の付加価値を高める役割も担うのです。

倉庫事業のビジネスモデル

倉庫事業の収益は保管している貨物の量によって決まります。
多くの貨物を保管していれば、それだけ保管料を受け取ることができます。
一方で、倉庫の物理的な大きさや収容能力には限界がありますので、収容能力限界まで貨物を保管することで利益を最大化することができます。

従来、倉庫事業は新規参入が難しい事業であると言われていました。
倉庫事業を開始するためには莫大な倉庫スペースと多額の設備投資が必要であるからです。
収益性が低く、投資した資金を長期間にわたって回収するため新規参入する企業が少なかったのです。
また、設備投資をして倉庫を新設する際には投資効果を最大化するために顧客から預かる貨物の見込み量をもとに倉庫規模を考えます。
契約している顧客の数やそれぞれの保管量などから必要な収容能力を計算し、倉庫を新設します。

しかし、2000年以降の規制緩和の中で外資系のデベロッパーが倉庫事業に参入しました。

主に物流施設に投資、開発、管理、運営している米の大手デベロッパーが莫大な設備投資を行い、倉庫を新設。倉庫を自社で運営するというよりは物流企業に貸し出すことで賃料収入を得るビジネスモデルを展開しています。

また、倉庫を管理する企業に求められる役割にも変化が生じています。
従来は顧客企業の貨物の保管機能が重視されてきました。
しかし、近年ではAmazonや楽天などECサイトが急速に進化し、注文から短期間で貨物を出庫する必要性が生じました。
現在では、倉庫には配送センターとしての機能が求められるようになり、顧客企業の貨物の保管・物流を担い、最適化するために在庫管理システムを導入して、効率的な出入庫管理、コスト削減やサプライチェーンの最適化への対応が求められるようになりました。

市場規模・将来性(シンクタンクのレポートなどを)

倉庫事業に参入している主要企業計41社の売上高の合計は2020年時点で2兆9,290億円となっています。
しかし、倉庫ビジネスには新規参入が相次いでおり、現在では2,500社以上が参入しています。
それらの中小企業も含めれば、市場は4兆円になると言われており、非常に大きなマーケットとなっています。

総務省のサービス産業動向調査(確報)によれば、2020年の倉庫業の売上高は3,116億円(前年比△3.2%)、事業従事者数は18万3,600人(前年比△0.7%)となりました。
日本通運や三菱倉庫、三井倉庫など主要21社を対象にした国土交通省の「営業普通倉庫の実績」調査によれば、2018年の月平均入庫数量は前年比240万トン(前年比+3.3%)、入庫金額は1兆450億円(前年比△0.1%)となり、金額は微減ながら、4年連続の1兆円超えとなりました。

また、2020年7月に国土交通省が発表した「物流を取り巻く動向について」によれば、倉庫業の市場規模は2兆2,448億円、事業者は 6,557、従事者数は11万2千人という大きなマーケットとなっています。

矢野経済研究所によれば、海運事業、3PL(サードパーティー・ロジスティクス)事業、宅配便事業(国内)、特別積合せ運送事業、普通倉庫事業、フォワーディング事業、一般港湾運送事業、冷蔵倉庫事業、引越事業、航空貨物輸送事業、鉄道利用運送事業、軽貨物輸送事業、国際宅配便事業、鉄道貨物輸送事業、トランクルームおよび周辺事業、バイク便輸送事業、納品代行事業など物流関連業界17業種を合わせた市場規模は以下のように推移しています。

(単位:億円)

2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年(予測) 2020年(予測)
202,445 215,350 211,599 204,050 202,375 207,185 215,760


倉庫業界の市場規模は横ばいで推移しています。
Amazonや楽天などECサイトの市場拡大に伴って貨物の保管需要が高まっています。
ECサイトは今後も発展すると期待されています。
その一方で倉庫業界の顧客である製造業や小売業は経営不振に陥っており、コスト削減のために倉庫業界に支払う保管料には値下がり圧力がかかっています。
また、規制緩和によって外資系企業を中心に新規参入が相次ぎ、競争環境は厳しさを増しています。
このように倉庫業界にとって追い風の要素とマイナスの要素が共存しており、市場は横ばいで推移しています。 

将来性

倉庫業界の将来性のプラス要因としてECサイトの拡大が挙げられます。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、倉庫業界の従来の顧客である製造業や小売業は打撃を受けていますが、近年急速に進化しているECサイトは外出自粛や緊急事態宣言による巣ごもり需要によって堅調に推移しています。
Amazonや楽天などのECサイトのサイトやネットショッピングなどのBtoCのEC市場は10年連続拡大傾向にあり、成長率も毎年増加しています。
新型コロナウイルス感染症の影響もありますが、人々の生活スタイルの変化によっていつでも、どこでも買い物ができるECサイトは拡大を続ける見込みです。
ECサイトの市場規模の拡大に伴って貨物の保管需要も高まると予測されます。

一方で、倉庫事業は規制緩和の流れやECサイトの市場拡大によって新規参入する事業者が増えているという現状があります。
競争環境は激しくなっており、小規模事業者が乱立する中において、合併・統合の動きも期待されます。
また、単に合併による規模の拡大にとどまらず、物流業界の潮流である3PL(物流業務の包括的受託)体制の確立や、ITシステムの導入、EC事業者とのせめぎ合いなどが予測されることから、大規模な業界再編の可能性も指摘されています。

業界の分類

大手4社

倉庫業界における大手4社は三菱倉庫、住友倉庫、三井倉庫、澁澤倉庫の4社です。
しかし、倉庫事業者は約6,000社存在すると言われており、新規参入が相次いでいます。
大手4社だけで市場全体のシェア10%程度しか占めておらず、今後業界再編が起こる可能性があります。

中堅中小企業

小規模事業者が乱立する倉庫業界において、比較的規模の大きい中堅中小企業として近鉄エクスプレス、キユーソー流通システム、日新、トランコム、日本トランスシティなどが挙げられます。

最新のトレンド

倉庫需要は拡大傾向

倉庫業界の市場規模の過去の推移を見てみましょう。
2009年のアメリカ初のサブプライムローン問題やリーマンショックによって主要顧客である製造業や小売業が打撃を受けたことから、物流関連費用がコスト削減対象となり、倉庫業界も影響を受けました。
しかし、その後は一貫して拡大傾向にあり、国土交通省によれば、2019年の所管面積(年平均)は前年比1.1%増の779万平方メートル、保管残高は前年比4.2%増の2兆4,692億円となりました。

倉庫業界にとって追い風となっているのがECサイトの需要拡大です。
消費者のライフスタイルに合わせてAmazonや楽天などECサイトの需要が拡大しており、大量の貨物を保管する倉庫の需要が高まっています。
倉庫は商品の配送拠点としての役割を担っていますので、拡大するインターネット通販の需要拡大で倉庫の重要性が増しています。

一方で、倉庫事業は安定した収益が見込めることや市場の拡大や倉庫事業の規制緩和に伴って外資系デベロッパーや商社、生命保険会社、従来の保管型倉庫を主流とする企業など異業種が倉庫事業に新規参入しており、競争は激化しています。
近年の倉庫業界は新規に参入する企業が増加し、供給過剰が懸念されています。

また、ECサイトでは消費者の注文から配送までの時間を短縮化する取組が行われており、需要が旺盛な首都圏を中心に物流施設の開発が急増しています。
ベイエリア、外環や圏央道といったエリアは利便性がよく、用地の取得競争が激しさを増しています。

倉庫業界は6,000以上の事業者が乱立しており、大手4社で市場の10%程度しかシェアがないことから将来の業界再編・統合が期待されます。

倉庫の自動化

ECサイトの需要拡大に伴って倉庫の需要は堅調に推移していますが、拡大する需要にキャパシティがついていけず、倉庫業界では人手不足が深刻化しています。
倉庫の稼働効率の向上という目的もあって倉庫を自動化する流れが加速しています。
倉庫の自動化とはAIや自動搬送ロボットを活用して、倉庫における貨物の入庫から出荷までの流れを自動化することです。

ラックの下に小型ロボットが潜り込んで貨物を持ち上げる自動搬送ロボットや貨物が保管されている棚を自動で運び、出荷する貨物を集める作業を自動化する自動ピッキングシステムなどがあります。
ロボットの活用によって、倉庫が無人化されて、倉庫作業員の肉体的負担や人件費の削減、慢性的な人手不足の解消などが期待されています。

倉庫事業を行っている企業の多くは倉庫作業の自動化を測っていますが、小規模事業者は自動化システムの導入による費用対効果以上に導入コストがかかることから自動化を進めにくい状況にあります。

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