
【就活生必見】クレジットカードの業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説
クレジットカード業界はメガバンクや生命保険ほどは知名度はありませんが、実は高給・安定・ホワイトという就活の「穴場」です。「激務は嫌だけどある程度がっつり稼ぎたい」という学生のニーズを満たしてくれるのがクレジットカード業界です。この事実を知っている学生はクレジットカードを第一志望に据えて、徹底した業界研究を行ってきます。クレジットカード業界は採用人数が多くないので、必然的に競争倍率も高くなりがちです。クレジットカード業界の内定を獲得して、夢のホワイトまったりの仕事を手に入れるためにはクレジットカード業界について正しく理解し、その上で自分の強みや頑張ったことを、クレジットカード業界でどう活かせるかを具体的にイメージし面接官に伝えることが重要です。この記事ではクレジットカード業界の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、クレジットカード業界の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、クレジットカード業界の就活に挑みましょう。
クレジットカード業界とは
この章ではクレジットカード業界
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
- 最新トレンドについて
解説していきます。
業界構造
クレジットカード利用者からの手数料
クレジットカードには店舗での支払いの際に利用代金を後払いにするというショッピング機能があります。クレジットカードの利用者は商品やサービスの購入費用をその場で支払うのではなく、クレジットカードが支払い、後日そのほかの購入費用と一緒に利用者に請求します。支払い方法としては一括払いが一般的であり、その場合には利用者に手数料は発生しません。しかし、大きな買い物をするためのお金がないときに分割払いやリボ払いを選択し、月の支払いを抑えることがあります。この場合、クレジットカードの手数料が発生します。
分割払いの手数料やリボ払いの手数料は銀行の利息収入に近いものです。分割払いは回数が増えて、支払期間が長いほど手数料が多くなります。リボ払いの場合には月々の支払いが定額になる一方で、実質年利は15%程度になっています。これは法人用クレジットカードにも当てはまり、以前は一括払いが一般的でしたが、今では分割払いやリボ払いに対応したクレジットカードが多数になっています。利用者が分割払いやリボ払いを利用すれば手数料収入が増えますので、クレジットカード会社は利用者に一括払い以外の支払い方法を勧めています。分割手数料やリボ払いの手数料はクレジットカード会社の大きな収益源となっています。
キャッシングビジネス
法人用クレジットカードにはありませんが、個人用のクレジットカードにはキャッシング機能が付帯しています。クレジットカードの申込の際に「キャッシングを希望する」かどうかのチェックを入れた経験があるはずです。
キャッシング機能とは銀行やコンビニのATMにクレジットカードを入れて、キャッシングを選択すると事前に設定された金額の範囲内で現金を借りることができる機能です。簡単に融資が受けられるので、利用者も多いようです。キャッシングは借金ですので、クレジットカード会社が設定した期日までに返済する必要があります。クレジットカードとATMがあれば簡単に利用できる便利な機能ですが、実は金利が高く設定されています。
消費者金融のカードローンの金利が3~18%であるのに対して、クレジットカードのキャッシング機能は15~18%が相場です。金利は以下の式で計算されます。
利息=借りた金額×実質年率÷365日×借りた日数
例えば、10万円をクレジットカードの一般的な金利である18%で50日借りた場合は以下のようになります。
10万円×18%×50÷365日=2,465円
この利息収入はクレジットカードにとって大きな収益源となっています。
加盟店の手数料
クレジットカードが利用できる店舗はクレジットカード会社と契約を締結している加盟店です。実は加盟店も利用者と同様にクレジットカード会社に手数料を支払っています。利用者がクレジットカードでお会計をすると、加盟店はクレジットカード会社に手数料を支払います。正確には加盟店はクレジットカードで支払われた代金をそのまま受け取らず、後日クレジットカード会社にまとめて請求し、利用手数料を差し引いた金額を受け取ります。手数料として支払う金額は業種や加盟店の規模によって異なりますが、一般的には2~7%となっています。したがって、加盟店でクレジットカード決済をする際には店舗にとって手数料の安いクレジットカードで決済するよう要請されることもあります。
クレジットカード会社にとっては加盟店からの手数料も大きな収益源ですので、クレジットカードが利用できる加盟店が増えるほど収益が増えます。加盟店を増やすための営業活動や利用者が増えるためにキャンペーンや特典をつけることもあります。
利用者の年会費
年会費無料のクレジットカードを利用されている方が多いかと思いますが、年会費が発生するクレジットカードもあります。名称は異なりますが、ゴールドカードやプラチナカードなどと呼称されています。また、本人のクレジットカードは年会費無料でも、家族カードの発行には年会費が発生する場合もあります。年会費はクレジットカードによって異なりますが、1万円以上が一般的なようです。クレジットカードの年会費はストック型のビジネスなので安定した収益が期待できます。発行するカードが増えるほど収益が大きくなるので、キャンペーンや特典を付帯して利用者を増やす試みが必要です。
ちなみに利用者から徴収した年会費は付帯サービスの充実のために活用されています。例えば、国内外の旅行保険サービスです。クレジットカードを保有しているだけで保険が適用される便利なサービスですが、クレジットカード会社が保険を提供しているわけではなく、クレジットカード会社と保険会社が契約を締結して、サービスが提供されています。年会費が高いと感じるクレジットカードでも付帯するサービスを見てみると意外と理由が分かってくるものです。
広告収入
利用者はクレジットカードの明細書を受け取りますが、明細書に同封して企業の広告やダイレクトメールが届くことがあります。クレジットカード会社は企業が宣伝したい商品やサービスの広告をうつことで、企業から広告収入を得ています。
市場規模・将来性(シンクタンクのレポートなどを)
クレジットカード事業の市場規模
株式会社矢野研究所の「クレジットカード市場に関する調査 2020年」によれば、2019年度のクレジットカード事業の市場規模は70兆7,821億円でした。また、経済産業省の調査によれば、2019年のクレジットカード取扱高は64兆9,419億円(前年比+10.3%)となりました。これらの調査からクレジットカード事業の市場規模は65兆円から70兆円という巨大市場であることがわかります。クレジットカード市場の規模は毎年拡大しており、過去最高を更新しています。クレジットカード業界の業績ランキング上位5社の業績は増収を記録しており、2020年3月期の各社の有価証券報告書によれば、日立キャピタルが4,640億円(前期比+2.4%)、イオンフィナンシャルサービスが4,572億円(同+4.3%)、クレディセゾンが3,114億円(同+2.2%)、オリエントコーポレーションが2,431億円(同+4.2%)、トヨタファイナンスが2,004億円(+10.9%)という結果になりました。
このようにクレジットカード市場が拡大している背景にはどのような要因があるのでしょうか?考えられる要因は以下の2つです。
1つ目はキャッシュレス決済の普及です。これまで国内のキャッシュレス決済はクレジットカードが主でしたが、それでも未だに日本は現金決済が主流であり、他の先進国のキャッシュレス率と比較すると大きな遅れを取っていました。しかし、政府がキャッシュレス化を推進し、2025年までにキャッシュレス決済の比率を現在の20%から40%に引き上げる目標を掲げています。クレジットカード各社もキャッシュレス決済の還元事業を相次いで発表し、例えば、QRコード決済、モバイル決済などこれまでなかった決済手段が普及し、それぞれの決済アプリに紐づくクレジットカードの取り扱いが拡大しました。最近では新型コロナウイルスの感染拡大により、接触のないキャッシュレス決済が推進されており、今後さらにクレジットカードと紐づくキャッシュレス決済の利用が普及すると予想されています。
2つ目はクレジットカード決済の利用範囲の拡大です。政府のキャッシュレス決済の推進により、これまでクレジットカード決済ができなかった百貨店や小売店で決済手段が充実したほか、Amazonや楽天などのネット通販の拡大、メルカリやPayPayフリマなどのフリマアプリの拡大よって、クレジットカード決済を利用する機会が増えました。さらに行政の側でもクレジットカード決済を広げる取り組みを推進しており、例えば、法人税、相続税、源泉所得税、ふるさと納税などの税金関連、電気や水道光熱費などの公共料金のクレジットカード決済も普及しています。
このようにクレジットカード事業には追い風の状況が続いており、2019年3月時点でクレジットカード発行枚数は2万8千万枚に達し、平均して一人当たり2.7枚を保有している状況まで普及しました。さらに矢野研究所の予測によれば、クレジットカード事業の市場規模は2021年度は76兆719億円、2022年度は84兆1,356億円、、2025年度には109兆3,357億円に達すると予測されています。
しかし、一方で、日本のクレジットカードの加盟店手数料は諸外国と比較して高い水準で推移しており、消費者の利益保護の観点から、政府から引き下げ要請が出ています。今後は全体的に手数料の引き下げ圧力がさらに強くなり、平均単価は減少する可能性があります。
進む業界再編
クレジットカード業界ではメガバンクを中心とした業界の再編が続いています。2007年には三菱UFJフィナンシャルグループ傘下のUFJ2コストDCカードが統合し、三菱UFJニコスが誕生しました。2009年には三井住友フィナンシャルグループ系列のクオークとオーエムシーカードとセントラルファイナンスが合併し新会社セディナを設立しました。2014年にはヤフーがKCカードを買収して、ヤフーカードが誕生しました。2015年には三井住友信託銀行がシティカードジャパンを完全子会社化しました。このようにメガバンクなどの資本力のある企業が中心となった再編成が進んでいます。業界再編によって、クレジットカード業界企業各社の明暗は分かれそうです。
業界の分類
銀行系
銀行系のクレジットカードはメガバンクや地方銀行などの子会社や銀行が運営しているクレジットカード事業です。キャッシュカード一体型のクレジットカードが多く、利便性が高いほか、セキュリティ面で安心感があり、ATM時間外の手数料が無料になるなどの利点があります。また、海外旅行保険などの旅行関連の付帯サービスも充実しています。一方で、ポイント付与率が低く、ポイントを活用したい人には不向きです。代表的なものとして、三井住友カードの三井住友VISAカードや三菱UFJカードの三菱UFJVISAなどがあります。
信販系
信販会社はクレジットカード事業を運営していることが多く、主力事業としている企業も多数あります。その一方で銀行に吸収されたり、異業種と提携するケースもあり、存在感が低下しているのも事実です。
旧日本信販が三菱UFJニコスとなり、ダイエー系のOMCカードがセディナとなるなど、相次いで業界再編があったことも信販系の存在感低下の要因です。
しかし、信販系のクレジットカードは高い還元率、有効期限のないポイントシステム、分割払いなど充実したサービスを提供している会社も多くあります。
代表的な企業としては、株式会社セディナ、株式会社オリエントコーポレーション、ライフカード株式会社、楽天カード株式会社などがあります。
流通系
デパートやスーパー、コンビニなどの小売企業や流通企業が発行しているクレジットカードです。スーパーなどでの毎日の買い物でポイントが貯まり、割引が多いなど主婦層を中心に人気があります。また、ネットショップで買い物をしている人にもおすすめのクレジットカードでもあります。ブランドの数だけ種類があるといっていいほど、多種多様なクレジットカードが存在します。
代表的な企業としては、、株式会社クレディセゾン、イオンクレジットサービス株式会社、株式会社エポスカード、株式会社セブン・カードサービス、高島屋クレジット株式会社などがあります。
最新のトレンド
海外進出
日本国内のクレジットカード市場は拡大傾向にあるものの人口減少社会である以上は長期的には市場は頭打ちになるでしょう。そこで、クレジットカード各社は海外進出を進めています。特にアジアの新興国の経済成長は著しく、インドネシア、ベトナム、タイなどのASEAN諸国を中心に提携先の銀行を増やしたり、加盟店ネットワークの拡大に動いています。また、東南アジアではインターネット普及率が低かったので、クレジットカードも普及していませんでしたが、インターネットをはじめとする生活インフラが急速に発達しており、開拓の余地があります。
JCBは2019年にインドネシア大手国営商業銀行マンディリ銀行、インドネシア民間最大手銀行バンク・セントラル・アジア(BCA)にて、JCBカードの発行を開始しました。これにより、カードやモバイル決済などキャッシュレス化が進むインドネシアにおけるクレジットカード市場の拡大が見込まれます。
また、業界最大手のクレディセゾンは2016年に東南アジア諸国で「金融インフラを提供することによって現地経済の発展に貢献し、展開エリアを拡大する」ことを発表しています。
また、クレジットカード会社の進出はアジアだけではありません。三井住友カードはアメリカのSquare社と提携して、Squareを開発しました。これによって、Square社が開発したシンプルで使いやすい決済サービスによって、今までクレジットカード決済が十分に浸透していなかった中小事業者の加盟店を開拓、支援できます。
今後もクレジットカード各社はグローバル展開を進め、さらなる市場シェアの拡大を目指すものと予想されます。
フィンテック
フィンテックとはFinance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語です。金融と技術を組み合わせたフィンテックの流れはクレジットカード業界にも来ています。身近なものではクレジットカードと連携した家計簿アプリがあります。クレジットカードやクレジットカードと紐付けた電子マネーで決済すると、家計簿に支出が自動で記録され、金額や支払日、商品・サービス名がすぐにわかります。
また、三井住友カードはNTTドコモと提携し、モバイル端末で後払いができる「iD」という決済プラットフォームを立ち上げました。また、PayPayやLINEPay、楽天スマートぺえ位などクレジットカードとスマホを紐付けて簡単に決済できるサービスも普及し始めています