
住宅設備業界の業界研究|就活に役立つ事業構造・将来性・働き方など徹底解説します
デベロッパーやハウスメーカーなどを志望する学生の併願先として人気なのが住宅設備業界です。私達の生活に身近な存在であることから比較的知名度の高い企業も多いです。ニッチな分野で活躍する企業も多く、一部の学生から根強い人気を誇ります。この記事では各社の有価証券報告書や公的機関のレポートなどを参考にして、住宅設備業界のビジネスモデルや商流、業界のトレンド、各社の動向などを詳細に解説し、業界研究を行っています。ぜひ最後まで記事を読んで、住宅設備業界の就活対策を仕上げましょう。
住宅設備業界とは
この章では住宅設備業界の
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
- 最新トレンド
について解説していきます。
業界構造(Tier1・2や商流やメインビジネス(稼ぎ方))
システムキッチン・洗面
システムキッチンとはキッチンの形態の一種であり、洗浄設備やコンロ、調理台、洗浄設備、作業台などの各種部材を組み合わせて、一枚板の天板によってすべての設備が一体化した台所設備を指します。
システムキッチンは店頭で消費者が見学しやすい商品ですので、住宅設備のなかでも「リフォームの入口」と言われています。
システムキッチンには様々なタイプがあり、ストレート型、広い調理スペースを確保できるコーナー型、複数人でキッチンを囲み、料理や片付けができる・オシャレなキッチン空間を演出できるアイランド型などがあります。
また、欧州を中心に輸入製のシステムキッチンもありますが、高い価格帯のものが多いので、需要は高くありません。
従来はキッチンは専業主婦の働き場所という位置づけでしたが、現在ではライフスタイルの変化や生活水準の向上に伴って、家族の憩いの場所としての機能を持ち始めています。
システムキッチンや洗面台の商流としては製造メーカーが不動産販売会社や住宅メーカーやその他流通業者を通じて、一般消費者のもとに届けられます。
マンションと戸建住宅によって商流は多少異なり、マンションでは不動産開発会社がマンション全体に取り付ける設備を選択しますが、戸建住宅では消費者が複数のメーカーの商品から選択することができます。
衛生設備
衛生設備とはトイレやバス、洗面台、化粧台などの水周りの住宅設備です。
これらの衛生設備の主な原材料は土です。
専用の土を型にはめて成型して、塗布を行います。
そのうえで、「トンネル窯」と呼ばれる焼成炉で焼き上げることで完成します。
土でできているため、他の住宅設備と比べて破損しやすい、傷ができやすいという特徴があります。
設備として寿命が長くないので、頻繁な修繕が必要となります。
近年では、電熱を通して便座を温める機能や芳香などの機能を備えた多機能型便座が普及しています。
システムキッチン同様に不動産販売会社や住宅メーカーやその他流通業者を通じて、一般消費者のもとに届けられます。
マンションと戸建住宅によって商流は多少異なり、マンションでは不動産開発会社がマンション全体に取り付ける設備を選択しますが、戸建住宅では消費者が複数のメーカーの商品から選択することができます。
ガス・石油設備
ガスや石油設備とはガス、電気、石油、太陽熱など様々な種類があります。
どのエネルギーを利用するかは居住する地域によって異なります。
例えば、ガスには都市ガスとLPガスが有りますが、道路の下のガス管を通じて供給される都市ガスは都市部など供給網が整備されている地域において採用されています。
一方でプロパンガスは液体化したLPガスをボンベで各家庭に運んでおり、供給網が整備されていない地域で採用されています。
また、北海道や東北などの寒冷地域においては暖房用途への給湯も多く、コストメリットの高い石油が採用されることが多いようです。
また、近年では調理・空調・電気・給湯などの熱源を全て電気で賄っている住宅「オール電化」が普及しており、これまでガスや石油会社の担当だった領域に電気会社が参入しています。
住宅建材
住宅建材とは住宅やビルなどを建築する際に利用される木材、コンクリート、砂利、鉄骨、瓦、畳、フローリングなどを指します。
日本は天候の変化が激しいほか、地震等の自然災害も多いので、建材も進化しています。
住宅建材は成熟産業であり、他の業界と同様に、メーカー→流通業者や卸売業者→小売店という商流となっています。
建材業界では流通業者は問屋、販売店を二次卸と呼びます。
二次卸からさらに大工や工務店などの施工業者へ販売されますが、木材を中心とした木建ルート、水まわりを中心とした管材ルート、電気まわりを中心とした電材ルート、窓やサッシなどを取り扱う建具ルートなど、建材の種類によってルートが異なります。
建材の種類によって流通ルートが異なるのは末端の施工業者によって施工職種や施工免許が変わるためです。
市場規模・将来性(シンクタンクのレポート)
市場規模
住宅設備関連機器メーカー主要81社の売上高の合計は2019年から2020年で10兆0,529億円となっています。
キッチン・バス工業会によれば、2020年度のシステムキッチンの市場規模(出荷額ベース)は118万3,688台(前年度比△0.3%)、システムバスは129万8,022台(前年度比△12.1%)、洗面化粧台は168万8,250台(前年度比△6.4%)となりました。
さらに矢野経済研究所の調査レポートによれば、住宅設備機器全体の市場規模は1兆7,011億円(前年度比△9.4%)となりました。
【主要住宅設備機器市場規模推移】
(単位:百万円)
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
住宅設備関連機器の市場規模が軒並み縮小した背景には新型コロナウイルス感染症の影響があります。
経済活動が抑制され、景気後退期に突入したことで新設住宅着工が大幅に減少したことが背景にあります。
国土交通省によれば、2020年の新規住宅着工戸数は81万5,340戸(前年度比△9.9%)と4年連続で減少しました。
(単位:万戸)
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
||
|
|
|
しかし、新規住宅着工戸数が減少している中でも建材業界は好調に推移しています。
経済産業省の商業動態統計年報によれば、2020年の建材卸の市場規模(販売額ベース)は1兆5,325億円(前年度比+15.2%)となりました。
これはホームセンターや家電量販店による展開強化や、建材メーカーによるECサイトなどの利益率の高い直販ルートの開拓などが進んでいることが背景にあります。
将来性
矢野経済研究所によれば、2021年の主要住宅設備機器の市場規模(水まわり設備機器+水まわり関連設備機器+省エネ・創エネ設備機器の合計値)は、前年度比9.4%減の1兆7,011億円と予測されます。
市場縮小の背景には2019年の消費増税後の国内の消費需要の反動減や新型コロナウイルス感染症の影響に因る新設住宅着工戸数の減少があります。
さらに、新型コロナウイルス感染症による外出自粛によって顧客訪問の自粛やショールーム・イベント営業の制限等、全般的な営業活動の自粛などがあり、市場規模は減少するものとみられています。
一方で、各メーカーは新設住宅着工数が低迷している中でリフォーム関連需要の取り込みを図っています。
住宅設備関連のなかでもリフォーム関連の市場は拡大しています。
近年の地球温暖化問題に対する社会の関心の高まりや住宅エコポイント制度が施行されたことなどにより、住宅リフォーム需要は拡大しています。
また、太陽光発電システムなどのエネルギー機器導入に際しての助成金制度は継続されることが見込まれることから、今後もリフォーム市場は概ね好調に推移するものと予測されています。
業界の分類
システムキッチンメーカー
システムキッチンではタカラスタンダード、LIXIL、クリナップなど、またシステムバスではTOTO、LIXIL、パナソニックなどが代表的なメーカーです。
衛生設備
衛生設備最大手はTOTOです。業界2位はLIXILとなっています。
1位のTOTOは市場シェアの6割、LIXILは4割を占めています。
住宅建材
住宅建材メーカーは全国に1,000社以上存在すると言われています。
木材を中心とした建材メーカーとしては住友林業、伊藤忠建材、三井住商建材、双日建材、丸紅建材、トーヨーマテリアなどがあります。
これらのメーカーは総合商社や大手ハウスメーカーの関連会社であることも珍しくありません。
ガス設備
ガス給湯器は東京ガス、大阪ガスといった大手都市ガス事業者ブランドと、リンナイ、ノーリツ、パロマ、パーパスといったメーカーブランドがあります。
エネファームはパナソニック、アイシンなどが大きな市場シェアを握っています。
石油給湯器は長府製作所、ノーリツ、コロナなどが主要メーカーで、同じく寡占市場となっています。
最新のトレンド
コロナ禍の影響により非接触操作需要が増加
新型コロナウイルス感染症の拡大によって新設住宅着工数が低迷している中で住宅設備関連の需要は低下しています。
その一方で手をかざすことでセンサーが感知し自動で吐水・止水可能な「タッチレス(非接触)水栓」など非接触操作関連の住宅設備の需要が高まっています。
タッチレス水栓を導入することで衛生面でのメリットを享受できるだけではなく、手動式の水栓に比べて節水効果があると言われています。
また、玄関ドアのハンドルに触れることなく、鍵の施錠や解錠ができるタッチレス施錠やリモコン操作で行うことのできる設備機器も登場しています。
これらは新型コロナウイルス感染症の影響下で非接触ニーズが高まっていることが背景にあります。
非接触操作のほかに非対面需要も増しています。
例えば、スマートフォンとの連動でオートロックや玄関ドアの施解錠ができるスマートキーシステムや、宅配事業者と非対面で荷物の受け取りだけでなく発送も可能なスマート宅配ロッカーなどの需要が高まっています。
市場の寡占化が進む
2010年に株式会社住生活グループが軽日軽、サンウェーブ工業を吸収しました。
さらに2011年にINAX、トステム、新日軽、サンウェーブ工業、東洋エクステリアと合併し、LIXILグループが誕生しました。
住宅設備業界では売上高規模でパナソニックと並んでいます。
一方のパナソニックは住宅機器や住宅建材を取り扱うパナソニック電工が2011年に解散しました。
解散後は中核組織がパナソニックの社内カンパニー「ライフソリューションズ社」となり、事業を引き継いでいます。
住宅設備業界はLIXILとパナソニックの2強体制となっており、当面はこの2強体制が続くと見られています。