
【就活生必見!】化学業界の業界研究|事業構造・将来性・働き方など徹底解説します
文系・理系問わずに就活生から幅広い人気を誇るのが化学業界です。大企業も多く、幅広いフィールドや安定性を求めて、難関大学の学生が多く志望します。なので大切なことは、化学業界についてどれだけ正しく理解し、その上で自分の強みや頑張ったことを、化学業界でどう活かせるかを具体的にイメージし面接官に伝えることが重要です。この記事では化学業界の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、化学業界の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、化学業界の就活に挑みましょう。
化学業界とは
この記事は専門家による詳細な調査記事になっています。
この章では化学業界について、以下の点から解説していきます。
- 業界構造
- 将来性
- 業界分類
- 最新トレンドについて
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業界構造
BtoBビジネスが主流
化学工業メーカーの事業内容は食品のラップ、洗剤といった安価な製品の製造からタイヤや住宅など比較的高価な製品まで幅広く存在します。
これらは消費者が生活において使用する完成品、つまりは最終消費財ですが、最終消費財の占める割合は実は小さいのです。
化学工業メーカーの事業の大半は中間投入財の製造です。
中間投入財とは商品やサービスを生産する上で必要とされる原材料等のことで簡単に言えば他の製品を作る材料のことです。
中間投入財の需要があるのは企業であるので、化学工業メーカーのビジネスはBtoBビジネスが主流になります。
BtoBビジネスはBtoCビジネスと比較して変化が少なく、比較的安定した収益を確保できるという特徴があります。
最終消費財でも中間投入財であっても主に海外から原材料を輸入し、国内にある化学工業メーカーの向上で加工・製造して消費者や企業のもとに製品が届けられます。
化学製品
化学製品は原子や分子の集合体であり、最も多く見かける高分子化学製品は1万以上の分子量から成っています。
化学製品の研究分野の特徴として、原子レベル・分子レベルで物資の性質や構造を研究して、化学反応によって新しい物質を生み出すことができるので、その適用範囲は非常に広いです。
工学や医学、理学、薬学、農業、環境など様々な分野に応用ができるので、多種多少な化学工業製品を製造することができます。
これらは最終的には接着剤や化粧品、医薬品、洗浄剤などの最終消費財に加工されたり、プラスチック成形加工品、合成繊維、化学肥料などの中間投入財として加工されるので人々の生活や様々な産業において大きな役割を担っています。
また、近年ではバイオテクノロジーやエレクトロニクス、新素材や高機能材料など現代科学の最先端技術に新物質や設計・製造の新手段を発明する上で欠かせないものとなっています。
川上・川中・川下
化学業界は製造している化学製品によって役割が川上・川中・川下に分けられており、それぞれビジネスモデルが異なります。
川上の化学工業メーカーは化学反応を利用してナフサやエチレン、ベンゼンなどの基礎科学製品を製造したり、原油や天然ガスを精製しています。
川上の役割を担っているのは総合化学メーカーと呼ばれる企業です。
川中の企業は基礎科学製品を原料として中間製品を製造しています。
中間製品にはポリエチレンやポリスチレン、合成ゴム、プラスチック、合成繊維などがあります。これらは誘導品とも呼ばれ、誘導品を製造するメーカーは誘導品メーカーと呼ばれます。
川下の企業は中間製品を原料としてプラスチック容器、化粧品、ガラス、電子部品、トイレタリー、タイヤ、写真用フィルム、衣類、洗剤などの最終製品を製造しています。
このように川上のメーカーが基礎化学製品を製造し、川中のメーカーが基礎化学製品を原料として中間製品を製造、そして川下のメーカーが中間製品を原料として最終製品を製造しています。
市場規模・将来性(シンクタンクのレポートなどを)
市場規模
化学業界の市場規模は2019年時点において32兆7,000億円となっています。
これは化学業界の主要対象企業192社の売上高の合計を示しています。
全業界136位中12位の規模であり、市場規模としてはIT業界や外食産業とほとんど変わりません。
化学製品は化粧品からタイヤまで人々の暮らしに深く浸透しており、もはや生活に不可欠なものとなっています。
また、経済産業省が公表している「(参考)化学産業の現況・市場・今後の動向」によれば、出荷額の合計は約40兆円と全製造業の約14%を占め、生産している付加価値額の合計は約15兆円で全製造業の約17%を占める、さらには従事する就労者数が約86万人という巨大産業です。
市場規模の1年間での伸び率は約4%と業界全体としての成長率は決して高いわけではなく、市場規模としては全業界のうち上位ですが、既に成長率は鈍化しており、成熟期にある産業と言えそうです。
近年の傾向としては中国を含む東南アジア諸国の人口増加や急速な経済発展によって、2000年から2010年にかけて化学業界は大きく市場規模を拡大しました。
2010年までは市場は緩やかに拡大していましたが、2008年から2009年、そして2011年から2013年にかけては収益環境が悪化します。
この背景には原油価格の変動があります。
化学業界の原材料は主に石油ですので、原油価格の変動を受けやすく、原油価格が高騰すると仕入れコストが収益を圧迫する構造となっているのです。
さらに2009年以降はリーマンショックによる世界的な金融危機の影響を受けて、世界的に化学製品の需要が減少し、化学業界全体で業績悪化となりました。
しかし、2013年以降は原油価格が安定したことや円安の影響で原油価格の仕入れコストが縮小し、業績は回復しました。
さらに2017年から2018年にかけては世界的に経済の拡大が進んだことや石油化学製品の原料として用いられるナフサの価格が上昇したことによって市場規模はさらに拡大しました。
このように化学業界の市場動向は円安などの為替や原油価格の変動、世界の経済情勢に大きく左右されるため毎年乱高下しており、不安定なのが実情です。
したがって、各化学業界メーカーは価格の変動が圧しい石油製品への依存度を下げることや利益率の減少している製品からの撤退、コストや経費の削減などで対応しています。
さらには今後、人口減少によって国内の化学製品の需要が減少することが見込まれるため、多くの化学業界メーカーが人口増加・経済成長の著しい東南アジアを中心に海外進出を進めています。
2020年〜2021年時点では新型コロナウイルスの影響を受けた世界的な経済の縮小によって、業績に一部悪化が見られますが、技術革新や市場のニーズによっては、今後も着実に市場規模を拡大していくでしょう。
引用:
将来性
化学製品は洗剤、プラスチック、化粧品、自動車、電子機器など人々の生活や日本の産業に不可欠な素材を供給してますので、市場がなくなることはないでしょう。
実際に経済産業省が公表している「(参考)化学産業の現況・市場・今後の動向」によれば、出荷額の合計は約40兆円と全製造業の約14%を占めるほどの巨大マーケットを抱えています。
しかし、決して右肩上がりの産業というわけでもなく、ここ数年のマーケットを見てみるとほとんど横ばいで推移しています。
もともと化学業界は石油や天然ガスなど価格変動の激しい原材料が収益を圧迫するという構図がありましがた、少しずつ脱石油化を進めています。
しかし、市場が大きく成長しないのはなぜでしょうか。
まず考えられるのは価格競争の激化です。
日本は人口減少によって長期的にマーケットが縮小しますので、各社とも海外進出を進めていますが、進出先の東南アジアでは世界のグローバル化学メーカーとの激しい価格競争に晒されています。
日本の化学メーカーの製品は質が高いことで知られていますが、消費者の低価格志向によってより低価格で高品質なものを生産する必要性に迫られています。
また、完全に石油製品からの脱却をすることは難しく、原油価格の変動により安定した収益を生み出せないことも要因です。
脱石油化には技術革新が必要であり、これまでのビジネスモデルの見直しを迫られ、各社とも転換期を迎えていると言えるでしょう。
さらに化学製品全体として希少性がなくなってしまういわゆる「コモディティ化」が進んでいることも要因です。
化学製品はプラスチックから化粧品、電子機器などの素材となりますが、これらの製品は要求される技術レベルが高く、日本の化学メーカーが強いと言われていました。
しかし、時間が経つにつれて技術が一般化して、これらの高品質な製品も陳腐化してしまっています。
消費者はより低価格で高品質なものを求めており、化学メーカーがそれに応えられるかが今後の業績を左右するでしょう。
このような市場動向のなかで最近ではM&Aによる化学業界の再編が起こりつつあります。
製品が低価格化して採算の取れなくなった市場から撤退し、より高収益な分野に注力したり、新規事業への参入を狙って企業を買収するといった動きです。
買収は国内企業にとどまらず海外企業とのM&Aも増加しています。
この傾向はさらに進むと考えられており、M&Aによる技術やノウハウの獲得、国内外の生産拠点及び販路の獲得が進むでしょう。
業界の分類
総合化学メーカー
総合化学メーカーとは基礎科学製品を原料として中間製品を製造する川中と中間製品を原料として最終製品を製造する川下まで一貫生産を行う企業のことです。
基礎原料から生産を行う総合化学メーカーは歴史が古く、他の化学メーカーより大規模である傾向にあります。
一般的には三菱ケミカルホールディングス、三井化学、住友化学、旭化成などを総合化学メーカーを呼びます。
誘導品メーカー
誘導品メーカーとは礎科学製品を原料として中間製品を製造する川中の部分を担当する企業です。
最終製品の製造を行っていないので、自社で生産する製品が直接消費者のもとに届くわけではありませんが、最終製品を製造するメーカーを通じて間接的に消費者とも関わっています。
一般的には信越化学工業、三菱ガス化学、ダイセル、JSRなどを誘導品メーカーと呼びます。
電子材料メーカー
電子材料メーカーとは川上の企業が製造した基礎製品や川中の企業が製造した誘導品をもとにPCや携帯電話、液晶テレビなどの電気製品を構成する半導体やディスプレイなどの部材や材料を製造しています。
一般的には富士フイルムホールディングス、日東電工、日立化成工業などを電子材料メーカーと呼びます。
最新のトレンド
米中貿易摩擦とコロナ
化学業界の過去の推移を見てみると、2000年から2010年にかけて化学業界は大きく市場規模を拡大しました。
2010年までは市場は緩やかに拡大していましたが、2008年から2009年、そして2011年から2013年にかけては収益環境が悪化します。
2013年以降は、業績は回復し、さらに2017年から2018年にかけては市場規模はさらに拡大しました。
特に2017年から2018年員かけては、自動車や半導体産業の成長や世界的な好景気に支えられたこと、石油化学製品の原料として用いられるナフサの価格が上昇したことによって化学業界は好調でした。
しかし、2019年以降は自動車・半導体向けの化学製品の需要が低迷しました。
2019年以降の化学製品の需要低迷の背景にあるのが米中貿易摩擦です。
米中がお互いの輸入品に対して高い関税をかけたことによって、世界のサプライチェーンが混乱しました。
石油業界は世界経済の影響を大きく受けますので、経済の不透明性がましたことで需要が低下します。
さらに2020年に入ると世界経済は、新型コロナウイルス感染症の大流行の影響により、経済活動が抑制されており、足下で急速に減速しています。
世界のサプライチェーンや物流網が一時的に遮断され、化学業界の今後も見通せなくなっています。
このようななかで化学業界の上位5社の2020年3月期決算は、三菱ケミカルHDが前年比6.8%減、住友化学が同4.0%減、信越化学工業が3.2%減、三井化学が9.7%減、旭化成が7.1%減と5社揃って減収となり、増益は0.7%増加の信越化学工業のみでした。
業界再編とプラントの停止
化学業界の市場動向は円安などの為替や原油価格の変動、世界の経済情勢に大きく左右されるため毎年乱高下しており、不安定なのが実情です。
化学業界では2011年から2013年には原材料と成る原油価格の高騰によって収益環境が悪化しました。
しかし、2013年以降は原油価格が安定したことや円安の影響で原油価格の仕入れコストが縮小し、業績は回復しました。
このような市場動向のなかで、最近ではM&Aによる化学業界の再編が起こりつつあります。
2009年2月には東レが新日本石油、三菱重工業など民間6社でバイオエタノール革新技術研究組合を設立し、同年年4月には三井化学が東セロを株式交換によって完全子会社化しました。
さらに、2010年10月には三菱ケミカルHDが三菱レイヨンを連結子会社化しました。
また、2014年に三菱ケミカルHDの子会社の三菱化学が鹿島事業所に設置しているプラント2基のうち1基を停止し、続いて住友化学も15年までに千葉工場のプラントを停止すると発表しました。
このように化学業界では設備過剰となっているエチレンプラントの停止や再編を行うことで収益の改善を図っています。